Apple iMac Proディスプレイ一体型Macのラインナップに追加された、高性能上位機種

Appleが示すVRの進む道~Apple、VR対応iMac・iMac Proを発表~後編

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by [2017年7月05日]

前編では先日開催されたWWDC 2017にて発表されたAppleの新機種である「iMac Pro」のハードウェア仕様について見てきました。後編ではこの続きとMac OSでのVR対応、それにiMacのVR対応モデルなどについてみてゆきたいと思います。

4ポート搭載されたThunderbolt 3

「iMac Pro」は入出力端子として背面にUSB 3.xポートを4基と、Thunderbolt 3ポートを4基搭載する構成となっています。

ThunderboltはIntelとAppleが共同で開発したデータ転送インターフェイスの規格で、3世代目となるThunderbolt 3では何とUSBでは現状で最速規格であるUSB 3.1 Gen.2比4倍にあたる上下それぞれ40Gbpsで最大80Gbpsの高速転送を実現しています。

またこのThunderbolt 3では機器間の接続に使用するコネクタにUSB 3.xと同じくUSB Type-Cコネクタを採用しているのも大きな特徴です。

ご存じの方も多いと思いますが、Appleは現行のMacBookで外部入出力端子をUSB Type-Cコネクタに一本化してしまっており、USBについてはこのコネクタで接続するのを標準とする方針を明確に打ち出しています。

そのため、本来ならばこの「iMac Pro」でもUSB 3.xポートのコネクタについてUSB Type-AではなくUSB Type-Cコネクタを使用すべきなのですが、流石のAppleもUSB 3.x専用のポートと映像出力もサポートするThunderbolt 3ポートで同じコネクタを使用することで誤接続によるトラブルが頻発するのを避けるためか、それとも純然たるUSBデバイスの接続ならば未だ搭載機器の多いUSB Type-Aコネクタとした方が利便性が高く得策と判断したか、USB 3.xポートをUSB Type-A、Thunderbolt 3ポートをUSB Type-Cコネクタ※注6として物理的に誤接続を防ぐ設計としています。

※注6:Thunderbolt 3ではDisplayPort規格準拠の映像信号、USB、それにPCI Expressを基礎とするThunderbolt固有のデータ送受信を行うように設計されているため、接続ピン数の多いUSB Type-Cコネクタでの接続が事実上必須となります。このため他の各種インターフェイスとの接続には変換アダプタ・変換ケーブルを必要としますが、一応アナログRGB出力(VGA出力)まで対応し下方互換性が確保されています。なお、変換アダプタを介したThunderbolt 3ポートからのDisplayPort映像信号出力については1ポートあたり4K解像度のディスプレイ2台あるいは5K解像度のディスプレイ1台の出力をサポートしていますが、映像信号を出力するGPU側の性能的な制約によるものか、Thunderbolt 3で2ポート分の接続、つまり5K解像度で2台、4K解像度で4台の外付けディスプレイの外部出力が上限となっており、内蔵GPUを使用する限りはこれ以上の台数のディスプレイ接続に対応していません。

理想を言えば背面のUSB 3.x・Thunderbolt 3ポート計8基が全てThunderbolt 3ならばコネクタも統一出来て申し分ないのですが、CPUのI/Oインターフェイス回りやチップセット、それにGPUの性能を考えればそれは難しく、4+4で8ポートとした今回のiMac Proの仕様は1つの落としどころと言えそうです。

10Gbps接続をサポートするイーサネットインターフェイス

「iMac Pro」ではネットワーク接続について、IEEE802.11acまで対応するWi-Fi接続と最大で10Gbpsでの通信に対応する10G Base-T有線接続がサポートされています。

Wi-Fiについては現状では搭載アンテナ数やMIMO利用の可否、最大通信速度などについて明らかになっていないためこれ以上は語る言葉がないのですが、注目すべきはようやく搭載された10G Base-T有線LANインターフェイスです。

前世代にあたる1000 Base-TがIEEE 802.3abとして標準化されたのが1999年で、筆者が記憶する限り2002年頃から普及が始まっていたことや、その前の100Base-TXは1998年頃に本格的な普及が始まっていたことなどを考えると、それらとの比較で言うとこの10G Base-Tはその本格的な実用化までに随分と時間がかかったことになります。

もっとも、物理層レベルで10Gbps、つまりPCI Express Gen.3で1レーン使用して接続せねば性能をフルに発揮出来ないこのインターフェイスの広帯域ぶりやそれをLANケーブルで接続することの困難さを考えると、100Base-TXの制定からたった15年でこれほどの高速通信規格が一般使用可能なレベルまで下りてきたことにこそ驚くべきかも知れません。

ただし、当然ながらと言うべきか、このインターフェイスがその性能を最大限に発揮するには、これに接続されるネットワークハブやケーブル(Category 6以上)も対応品とする必要があります。

現状ではケーブルはともかくハブについては、例えば全ポートが10G Base-T対応の8ポートハブだと安い物でも7万円以上もする大変に高価な機器であるため、これが充分こなれた価格で流通するようになるまでは、実際にこの高速インターフェイスの恩恵を受けられるのはかなり限られた環境・ユーザーとなるでしょう。

ハード的には贅沢の極み

ここまで「iMac Pro」のハードウェアを見てきましたが、総じて言えばハイエンド機種に相応しい、ほぼ金に糸目をつけない類の大変に贅沢なハードウェア構成・設計です。

 Hewlett Packard Z1 G3 Workstation XeonをCPUとして搭載するディスプレイ一体型ワークステーション。同社のZシリーズワークステーションに属する機種だが、これでもiMac Proよりはパソコンに近い仕様を備える

Hewlett Packard Z1 G3 Workstation
XeonをCPUとして搭載するディスプレイ一体型ワークステーション。同社のZシリーズワークステーションに属する機種だが、これでもiMac Proよりはパソコンに近い仕様を備える

ハイエンド寄りの、CPUにXeonを搭載するような構成のディスプレイ一体型パソコンは、いわゆるWindowsパソコンでヒューレット・パッカードの「Z1 G3 Workstation」※注7など前例が無い訳ではありませんが、それらと比較しても今回の「iMac Pro」のスペックと性能は圧倒的です。

※注7:ただしこの機種はCPUがXeonでもLGA1150のモデル(Xeon E3)を搭載しており、今回の「iMac Pro」よりはスペック的に1ランク以上見劣りします。

これならば、VRデバイスを接続して利用する場合でも、そのコンテンツ制作に利用する場合でも、長期間充分なパフォーマンスでの使用が期待出来そうです。

問題があるとすれば、それはこの機種の価格で、WWDC 2017基調講演で発表された時点で4,999ドルから、つまり日本円に単純換算して55万円から※注8となっています。

※注8:ただしこれはあくまで北米での発売予定価格であって、この価格で日本にて発売される事を意味しません。また日本市場ではそのニーズに合わせて最適化の上で投入されることがあるため、ラインナップ構成も価格設定も異なったものとなる可能性も当然ありえます。

55万円から、というのはそれが最下位グレードという意味ですから、RADEON Pro Vega 64と18コアプロセッサを搭載したモデルの価格はもっと高いということで、その場合は恐らく70万~80万円コースを覚悟する必要がありそうです。

通常のiMacだと高い機種でも25万円までといったところですから、いかにこの機種が贅沢な設計で製造コストが跳ね上がっているかが理解できますが、それでもApple自身は基調講演中で競合他社のワークステーションの写真を示して同程度のスペックのそれ※注9が7,000ドル(約77万円)以上するからこの「iMac Pro」は安い!と強弁しています。

※注9:型番は明言されていませんが示された写真からヒューレット・パッカードのZ640 Workstationであることが判ります。ちなみに同社の日本向け直販サイトでのこの機種の販売価格は285,000円からとなっており、5Kディスプレイをセットで購入するにしても、iMac Proを買った方が安いとは限りません。また、こちらの機種はディスプレイは別途接続でしかも拡張スロットを一定数備えXeon E5 V4のデュアルCPU構成にも対応する1年以上前に発売のタワー型機、つまりAppleで言えばMac Proに相当する全く方向性の違う機種であるため、そうした仕様や開発時期の差を無視して乱暴に比較するのは決して良い事とは言えないでしょう。なお、AppleはMac Proの後継機種については開発に時間がかかる事と2018年の発売を予告しています。

価格については2017年12月と発表された発売時期までの情勢の変化によって変動する可能性もあるのですが、何にせよ結構なお値段となることは覚悟しておく必要がありそうです。

OSのAPIレベルでのVR対応

Apple iMac (2017)  基本的な性能には大差が無いが、搭載GPUは右端の27インチ 5K Retinaディスプレイ搭載モデルのみがVRデバイス接続に対応する

Apple iMac (2017)

基本的な性能には大差が無いが、搭載GPUは右端の27インチ 5K Retinaディスプレイ搭載モデルのみがVRデバイス接続に対応する

さて、この「iMac Pro」、そして同時に発表された「iMac Retina 5K 27インチモデル」※注10では、標準搭載OSであるMac OS(macOS 10.11.6以降。ただしmacOS High Sierra開発者向けプレビュー以降を推奨)において、Macとしては初のVRデバイスサポートが行われることが発表されています。

 ※注10:基本的には下位の21.5インチ Retina 4Kディスプレイ搭載iMacと共通ですが、5K解像度ディスプレイ搭載による負荷増大を考慮してかGPUがPolaris 20系のRadeon Pro 570・575・580からの選択となっており、下限に近いスペックとなりますがHTC ViveやOculus Riftの必須条件を満たせるレベルの性能が得られます。ただし、VRデバイスを本格的に利用するのであれば性能に余裕のあるRADEON Pro 580搭載モデルを選択すべきでしょう。

また、現段階では開発者版となりますが、ノートパソコンであるMacBookでもThunderbolt接続※注11による外付けGPU BOXにAMD RADEON RX580を搭載・接続することで将来的にVRサポートが提供される予定である事も発表されており、最新世代のMacでは今後一気にVR対応が進む事になります。

 ※注11 :ここではThunderboltのPCI Express相当の通信プロトコルによるデータ転送機能を利用するため、Thunderbolt 3をサポートする最新世代のMac Bookが必要となると考えられます。また、Thunderbolt 3をもってしてもPCI Express Gen.3の16レーン接続と比較すると1/3以下のデータ転送帯域性能しか確保できないため、この外付けGPU BOXに搭載するグラフィックスカードはローカルメモリの搭載量の多い上位機種が望ましいと言えます。その意味では開発者版において比較的消費電力が低めで8GBのメモリを搭載するRADEON RX580を搭載して開発が進められているのは理に叶っていると言えます。ちなみに、この種の外付けGPU BOXによる高性能GPUカードのノートパソコンへの外部接続利用はWindowsのゲーミングパソコンが先行しており、ここ数年来様々な実証実験やデモ、そして製品化が行われています。なお、Thunderbolt 3接続で外部グラフィックスカードを使用してVRサポートが可能ならばMac ProでもVR対応が可能そうに思えるのですが、残念ながらMac Proは最新モデルでもCPUがXeon E5 V2世代まで、つまりIvy Bridge世代までとなっているためHaswell世代以降というこの種のVRデバイスの要求条件を満たしておらず、またそもそもの話として搭載しているThunderboltポートの世代も古いため、対象外となっているようです。

これを満を持してとみるべきか、それとも遅ればせながらと見るべきか、評価の分かれるところではありますが、ハードウェアとOSの関係が密接でハードが出ないことには対応しようのないAppleのOS事情を考えると、ここは満を持しての登場とみておくべきでしょう。

ただ、OSのサポートも充分得られない状況でVRデバイスメーカー自身による環境整備がまず行われたWindowsの場合とは異なり、今回のAppleの発表ではOSのグラフィックス機能を司るAPIであるMetal 2において、グラフィックスパイプライン処理の改良などVRデバイスに接続・描画する際にサポートされているのが望ましい機能のサポートや改良が実施されることが示されています。

また、対応デバイスとして示されたHTC Viveの標準VRコンテンツ動作プラットホームであるSteam VRでも今回の発表と前後してMac OSのサポートが発表され※注12、現状でVR対応ゲームエンジンの2大巨頭となっているUnityとUnrel Engine 4の双方でもMac OSへの対応が行われ、さらにApple自社の動画編集ソフトウェアである「Final Cut Pro X」(Final Cut Pro 10.3)でVR対応を前提とした360°視界動画の編集に対応したプラグインが提供されるなど、VRデバイスへの直接的な対応よりはむしろVRコンテンツ開発のための大規模な周辺環境整備を伴った対応が行われています。

※注12:Steam VR SDKとMetal 2の連携動作でHTC Viveは動作するため、このサポートは必須となります。なおSteam VR自体はOculus Riftをサポートしていますが、OculusはMacサポートを行っていないため、またOculus RiftのSteam VRの動作にはさらにOculusのランタイム環境の併用が必要となるため、現状ではMac OS High Sierra上のSteam VRでOculus Riftを使用して対応VRコンテンツを動作させることは出来ない可能性が高いと言えます。言い替えれば、Oculusのランタイム環境が対応しさえすればOculus RiftがMac OS上で動作しSteam VR対応コンテンツをプレイできる可能性があるという事になります。センサー類の設置条件の厳しさを考えるとHTC ViveよりもOculus Riftの方がまだ運用しやすい日本の家庭事情を考えると、できればOculus RiftもMac OSに対応して欲しいところです。

このあたりはOSもハードもアプリも開発環境も何もかもをひとまとめにして自社で手がけるAppleならではの施策と言えるでしょう。

ともあれ、これまで出遅れていたAppleが、それもこのようにコンテンツ制作側にフォーカスした形でVRサポートを推進する姿勢が示されました。

このあたり、同時発表されたiOSデバイスでのソフトウェアによるARサポートと連動した、大規模な仮想現実環境開発の動きと解することもできますが、選択肢が増えるのは大変喜ばしい事です。

この施策が今後どのような結果をもたらすかは判りませんが、いずれにせよVRコンテンツの整備・開発が進むことが期待されます。

▼参考リンク
Oculus’ Palmer Luckey will consider Mac support if Apple ‘ever releases a good computer’ | Shacknews
これまでで最もパワフルなMacとなるiMac Proが12月に登場 – Apple (JP)

Apple、iMacのグラフィックス、プロセッサ、ディスプレイをアップデート – Apple (JP)

iMac Pro – Apple(日本)
iMac – Apple(日本)
Metal 2 – Apple Developer
VR with Metal 2 – WWDC 2017 – Videos – Apple Developer
Final Cut Pro X – Apple(日本)
HP Z1 G3 Workstation 製品詳細・スペック – HP Workstations ・PC通販 | 日本HP
Steam コミュニティ :: グループへのお知らせ :: SteamVR
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XR on iOS and macOS – Unity Blog

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