「KDDI IoTクラウド ~トイレ節水管理~」サービス紹介ページ人感センサーによる便座への着座時間から大用・小用を判定し、便器の洗浄の際に流す水量を自動的に制御することで節水を実現する

トイレもIoT時代へ ~KDDIが提供する法人向けIoTサービスを見る~

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by [2017年2月28日]

KDDIが新たに提供を開始する新サービス「KDDI IoTクラウド ~トイレ空室管理~」の紹介ページここに示されている概念図では明示されていないが、その処理はクラウドサーバで行われる

KDDIが新たに提供を開始する新サービス「KDDI IoTクラウド ~トイレ空室管理~」の紹介ページ
ここに示されている概念図では明示されていないが、その処理はクラウドサーバで行われる

例えば大規模量販店などを訪れて、お腹の調子が悪くなってトイレに向かい、そこに行列が出来ているのをみて、あるいは、会社の昼休みに用を足しにトイレに行っていつまでも先客が出てこないことにイライラしたこと、ないでしょうか。

男子用の小便器は余程のことがない限り短時間で入れ替わってゆくので多少行列が出来てもさして苦にならないのですが、室内の様子が見えずいつ先客が出てくるか、トイレットペーパーを引き出すカラカラという音や水を流す音くらいでしか判断がつかない(それさえあまり当てにならない)個室便所は、男女ともに特に切迫した状況ではイライラするだけでは済みません。

尿意や便意というのは当人の意思では制御しきれない、完全な生理的反応なのでそれが生じた時点で直ちにトイレで用を足すのが望ましい訳ですが、休憩時などに皆が一斉に同じ行動を取る職場などではどうしてもトイレの利用が短時間に集中しがちで、そうなると必然的に限られた「個室」をめぐる椅子取りゲーム状態となります。

この際、自分の最寄りのトイレ、具体的には自分の今いる階に空いている「個室」があれば良いのですが、往々にしてそうではないことがあって、そうなると混雑状況の判らない他の階のトイレに空きがあることを期待して移動するか、いつ空くか判らない目の前のトイレの個室が空くのを待つか、の二択となります。

ここで他の階あるいは他の場所のトイレの現在の使用状況が何らかの手段により判ればどんなに便利だろうか、と考えたことのある方も恐らく多いことでしょう。

今行ったら確実に「個室」が空いていて利用できるのであれば、何階上のトイレでも労を厭わず足を運ぶでしょうし、またそこにある「個室」が全部塞がっているのならばどんなに近くのトイレでも行かず無駄に行列をつくって並ぶということもなくなるでしょう。

そういう意味では、トイレの利用状況可視化というのは、便意を催す利用者にとって結構切実なものがあります。

だからでしょうか、トイレの利用状況の可視化をIoT技術によって実現するプランはここ1年ほどの間に各社・各種組織から多数発表されています。例えばリクルートライフスタイルでは昨年2月頃から社内エンジニアの開発したトイレ利用状況確認のためのアプリを試験運用していることが公表されていますし、伊藤忠テクノソリューションズやインテリジェンス・ビジネスソリューションズといった企業によるIoTトイレの製品化など、昨年だけでも結構な数の「トイレ空席状況の可視化」を目的としたIoT技術開発の発表例が見られました。

実際、Twitterなどで見ていても、それほど大がかりではない、Raspberry PiやArduino※注1などの小型コンピュータボードで制御・監視・報告機能を実装したソフトウェアを動作させて、各種センサーと組み合わせることで廉価にこの種の機能・サービスを実現するための実験もあちこちで行われているようです。

 ※注1:Raspberry Piはそれ自体が小なりと言えどもOSの動作する、そしてネットワークインターフェイスを標準搭載したスタンドアローンなコンピュータであり、これを利用してシステムを構築した場合、これ自体をホストとすることでミニマムなシステムを構築できます。一方、Arduinoは本当に最小限の機能のみを備えた所謂制御用マイコンの類で、メモリも僅か96KB程度と非常に小容量となっているため、どのような通信手段を用いるにせよWeb経由での管理には別途ホストマシンが必要となります。

そしてこのほどKDDIが、IoTクラウドサービス「KDDI IoTクラウド ~トイレ空室管理~」と「KDDI IoTクラウド ~トイレ節水管理~」を2017年3月より提供開始することを発表しました。

これまでKDDIはIoTサービスのための基礎的なサービス、つまり動作保証のある通信モジュールのメーカー各社との共同開発であるとか、IoTクラウドサービス構築のためのサービスの提供であるとか、そういったIoTサービスをした支えするためのサービス提供を行ってきたのですが、今回の2つのサービスはそこから一歩踏み込んで、具体的な応用例的サービスを提供するという点で注目されます。

そこで今回はこれら2つのサービスについて見てゆきたいと思います。

節水管理

「KDDI IoTクラウド ~トイレ節水管理~」サービス紹介ページ人感センサーによる便座への着座時間から大用・小用を判定し、便器の洗浄の際に流す水量を自動的に制御することで節水を実現する

「KDDI IoTクラウド ~トイレ節水管理~」サービス紹介ページ
人感センサーによる便座への着座時間から大用・小用を判定し、便器の洗浄の際に流す水量を自動的に制御することで節水を実現する

今回のKDDIの発表で何より注目されるのは、ハードウェア的にはそれほど難しいことはしておらず比較的簡単にサービスを構築・運用できる※注2空室管理だけでなく、給水系への特別な制御機能を備えた弁装置の追加設置とその制御が必要となって、それを提供・サポートできるそれなり以上の規模と技術力の会社でないと運用の難しい、節水管理のサービスを提供していることです。

 ※注2:2016年中に各社が相次いで同様のトイレ空室管理サービスを発表したのも、そうしたサービス構築上の難度が比較的低いことが一因に挙げられます。

現在のトイレ、特に公共施設などの男子用トイレに設置されている小用の便器については、使用の有無に関わらず定期的に水を流して洗浄を行うことで、その清潔性を保つ仕組みが導入されているケースが大半を占めています。

しかしこれは、その使用状況を勘案せずタイマーで定期的に弁を開いて貯水槽に溜められた水を流しているだけのごく単純な仕組みで、使用状況を勘案しない点で節水対策からはほど遠い代物※注3です。

 ※注3:ただしこの種の装置を内蔵した小便器は、近年では便器上部などに人感センサーを設置しているケースが大半で、定期的な自動洗浄の他、人がその前に立つと一定時間経過後、およびその人が立ち去った後で自動的に水を流して便器を洗浄する仕組みが導入されています。

一方、「個室」の大用便器については、これまで基本的にはレバー操作あるいは手などをかざすことでセンサー感知によって弁を解放し水を流す仕組みが一般的で、その利用者の水の使用状況を監視し流量を制御するような仕組みにはなっていませんでした。

今回KDDIが発表したサービスの内「KDDI IoTクラウド ~トイレ節水管理~」は、こうしたトイレの利用状況を人感センサーを用いることで常時監視し、節水を実現しようというものです。

具体的に言うと、個室内滞在時間の長短で利用者の目的が小用なのか大用なのかを判定、洗浄に流す水量を最適化することで自動的に節水を図るというのがこのシステムの最大の目的となります。

また、個室利用で何より不愉快な、先の利用者による水の流し忘れ対策として、利用者が退出する際に水を流さなかった場合、一定時間経過後に自動的に水を流して便器を常に清潔な状態に保つ機能も挙げられています。

これまで、大用便器のインテリジェント化と言えば良いのか、電子制御の導入は温水便座等の形で、個々の便器で独立した、スタンドアローンな形で行われてきました。

つまり、便座の洗浄ノズルの制御がどのような形で行われていようとも、またどのような頻度で利用されていようとも、それをトイレを管理する側がリアルタイムで「知る」ことはこれまで困難でした。

それが人感センサーと遠隔操作可能な弁装置、IoT技術、そしてクラウドサーバでの処理の組み合わせにより、統計的な管理情報の取得を行える形でネットワーク化できる様になった訳です。

この技術を用いれば、例えばどのフロアのトイレの個室滞在時間が長いかを検出して、そのトイレのトイレットペーパーの交換周期を短くする=トイレットペーパーの補充漏れを防ぐこともできるでしょうし、また高頻度で入れ替わる≒小用での利用が多いと考えられる場合には、そのトイレについて衛生用のシートカバーや座面洗浄液の補充管理に意を注ぐこともできるでしょう。

さらにこの技術で収集できる情報からは、具体的にどのフロアのどのトイレがどの時間帯に空いているかを判定することができますから、スケジューリングによる効率的なトイレ清掃も実現出来ます。

また、空室管理の場合も同様なのですが、トイレの利用時間帯やその頻度をチェックすることで、企業であれば社員の勤務状況の確認や、健康管理に役立てられるかも知れません。

もっとも、このあたりの情報収集は、そうした有用性の一方で、個人情報の取り扱いでデリケートな問題に抵触する可能性があります。

具体的に言えば、どの個室で利用者がいつからいつまでトイレに籠もって用を足していたというデータを年中集めて、それを例えばトイレ入り口に設けた監視カメラの映像と紐付けて個々人を特定するところまでやって、それを集計管理して何らかの目的で利用するとなると、それはどこかの時点で個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)の第十五条~第十八条のいずれかに抵触してしまう恐れがあるのです。

しかし、その一方で例えば病院などの医療施設の場合は、本人あるいは家族の同意が必要となるでしょうが、病室のトイレについてどの患者が毎日どの程度の時間トイレを利用しているのか、その利用時間帯や利用時間を検出することで、患者の病状変化の兆候をより早期に掴むことが可能となることは期待できそうです。

つまり、同じ利用方法であってもその目的によっては問題になり、あるいは病気治療に大きく貢献する可能性もあるということで、そのデータ利用については特に細心の注意を要することになりそうです。

何と言えば良いのか、この種のIoT技術は往々にして強い毒にも良い薬にもなり得る訳ですが、これについてはかなりシビアにプライバシーに関わる情報を取り扱うことになるため、今後何らかの法規制がかかるようになる可能性もあり得るでしょう。

空室管理

さて、節水管理から話がやや脱線してしまいましたが、もう一方のサービスであるトイレの空室管理についても見ておきましょう。

空室管理は先にも少し触れましたが、各トイレの個室使用状況を検出し空きの有無を示すことで、個室の空いているトイレへ利用者を誘導し、より効率的なトイレの利用を実現するのが目的のサービスです。

auによるこのサービスでは個室扉の開閉を監視して利用状況を案内するために各個室の扉に開閉センサーを設置、そのセンサーとゲートウェイとの間で低消費電力なBLE(Bluetooth Low Energy)あるいはWi-Fiにより無線通信を行うことでリアルタイムに個室の使用状況を取得・表示する仕組みとしています。

BLE対応デバイスであれば、そのデータ通信で消費される電力を最小限に抑えられてボタン電池1つで数年は使用でき、Wi-Fiであれば電力消費量は大きくなり電池交換の周期が短くなるデメリットはありますがゲートウェイとの間に障害物が多数あっても通信でき、また5GHz帯での通信を行えばBluetoothとWi-Fiの干渉が起きにくくもできます。

このあたりはこのサービスを導入する各ユーザーの選択に任される部分で、設置場所の状況やWi-Fi中継機の設置可否など様々な条件によって使い分けられることになるでしょう。

さらに、各トイレに設置される※注4ゲートウェイは各個室に設置されたBLEあるいはWi-Fiによる通信デバイスとの通信、およびそうして集められたデータをクラウドサーバへ送信するためのLTE通信の中継を行うだけのもので、Webブラウザ経由での利用者やこのサービスを導入する各施設の管理者への情報提供サービスそのものはあくまでクラウドサーバ上で処理する仕組みとなっています。

 ※注4:今回のサービスの料金体系は各トイレごとに1台ずつの設置を要するゲートウェイが1台あたり月4,600円、各個室に1台ずつ設置されるセンサーは1台あたり月450円としてそれぞれ1台あたりの利用額、それに各機器の設置作業料金とLTE通信の事務手数料という形を採っており、処理の中枢をなすクラウドサーバでの処理・サービス提供の部分については価格が示されていません。これはゲートウェイおよびセンサーの数でクラウドサーバでの処理量やその規模が定まり、これらに各処理の料金を分担させた方が合理的な料金体系となるためと推定できます。

これは、例えばそれぞれのトイレが所在する施設単位で何らかのデータ処理および情報のWeb経由での公開を行うためのハードウェアを設置した場合、そのトイレや個室の数、あるいはその施設での空室情報へのアクセス数などの増減に対してスケーラブルな対応が難しいことに理由があると考えられます。

例えば、大規模なイベント施設の最寄り駅などの場合、そのトイレの空室状況へのアクセス数はイベント開催時と閑散時で大幅に変動する=イベント開催時にアクセスが集中することになりますが、クラウドサーバ上でのデータ処理であれば、各センサーからの情報を受け取った(通信回線の太い)クラウドサーバ側がそのアクセス数差による負荷変動を吸収してしまうことができます。

これが、例えば各ゲートウェイ単位、あるいは各ゲートウェイからの情報を集約する形で施設ごとに個別にWebサーバを立て、各施設のLAN回線に間借りする形で空室情報を公開する様な仕組みであると、そうした極端にアクセスの負荷変動の大きな場所では肝心の混雑時に空室情報公開ページへのアクセスが集中し情報を確認できないといった本末転倒な状況に陥る恐れがあります。

もちろん、そうした方式でも回線を強化しWebサーバの応答性能を向上すれば対応は可能ですが、ピークとオフピークでのアクセス数に極端な差があり、しかもピークになる状況がそれほど多く生じないケースだと、この対応はあまりに不経済です。

その点でゲートウェイとクラウドサーバの間の通信量を概ね一定に保ち、利用者からのアクセス数変動をクラウドサーバで吸収してしまう、今回auの採った手法はサービスのスケーラビリティの点で良く出来たやり方であると言えます。

また、ここでゲートウェイがクラウドサーバとの間でWi-Fiや有線LAN経由での通信を行わずLTE通信に絞っているのは、恐らくトイレへのLANの配線引き回しが困難な場所が少なからずあることや、現状ではアクセスポイントが限られているWi-Fiによる通信と比較して基地局整備が進んでいて通信可能エリアが広いことなど、様々な理由が考えられます。

これについては、KDDI自身がauブランドでLTE通信サービスを提供する国内キャリア大手3社の一角を占めていることも当然理由の一つと考えられますが、どこをどう経由してゲートウェイからクラウドサーバへ情報が伝達されるかについて全く保証がないWi-Fiや有線LAN経由よりも、基地局以降の経路が自社回線内となるLTEの方が応答性や接続性などの点で有利という見方も出来そうです。

意外だったIoTの「応用分野」へのKDDIの進出

以上、KDDIが2017年3月より正式サービスを開始する2つのIoTクラウドサービスについてみてきました。

これまでの同社のIoTへの取り組みから考えれば、基本、あるいは応用の下地となるような諸サービスを提供してきたKDDIが、言わば「応用分野」と呼ぶべき具体的に特定の目的で利用されるサービスへそうした諸サービスで培ってきた技術やノウハウを投入してきたことには、正直言って意外という印象しかありませんでした。

実際、これまで同社が提供してきたIoTサービスは概ねIoTサービスを構築するためのユーティリティであるとか、そのサービスを実施するに当たって必要となる機材の販売であるとか、本当に基礎の基礎にあたるものが大半でした。

それだけに、応用編にあたる今回の2サービス実施は、KDDIの社内でのこうした問題への取り組み方の変化を示すものであって、今後の展開や状況の推移が注目されます。

▼参考リンク
「KDDI IoTクラウド ~トイレ空室管理~」と 「KDDI IoTクラウド ~トイレ節水管理~」の提供を開始 | 2017年 | KDDI株式会社
「KDDI IoTクラウド ~トイレ空室管理~」と 「KDDI IoTクラウド ~トイレ節水管理~」の提供を開始 | 2017年 | KDDI株式会社
KDDI IoTクラウド ~トイレ空室管理~ | IoTソリューション | au 法人・ビジネス向け | KDDI株式会社
KDDI IoTクラウド ~トイレ節水管理~ | IoTソリューション | au 法人・ビジネス向け | KDDI株式会社
>KDDI IoTクラウド Standard | IoTソリューション | au 法人・ビジネス向け | KDDI株式会社

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