ZOTAC EN1060前面のUSBポートのサイズからも明らかなとおり、非常にコンパクトな筐体構造である。ただし、空冷ファン+冷却ファンの関係で相応の厚みがある

コストの壁は厚かった ~コンパクトPCでのVRコンテンツ対応を考える~ 前編

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by [2016年12月19日]

ZOTAC MAGNUS EN1070現在市販されているコンパクトPCの中では数少ない「VRレディ」を満たす機種の一つ。NVIDIAのGeForce GTX 1070をマザーボードにオンボード搭載する

ZOTAC MAGNUS EN1070
現在市販されているコンパクトPCの中では数少ない「VRレディ」を満たす機種の一つ。NVIDIAのGeForce GTX 1070をマザーボードにオンボード搭載する

今更ですが、Oculus RiftやHTC Viveといったハイエンド寄りのVRデバイスを動作させるには、相応の高性能パソコンが必要とされています。

具体的に言えば、NVIDIAのGeForce GTX 980・1080、あるいはAMDのRADEON R9 Fury・RX480といったそれなり以上に高性能GPUや、Intel Core i7 6700Kのような高性能CPU、そしてそれらを支える強力電源など、2016年冬の時点で見てもハイエンドのゲームパソコンでもかなり上位に位置づけられるようなハイスペックなパーツを揃えてマシンを構成することが推奨されています。

これはひとえにリアルタイムで両目のために別々の画面を、それも通常の液晶ディスプレイなどよりも高いリフレッシュレートで生成して表示せねばならず、しかもその画面に表示される視界が、ユーザーの頭の向きの変化に追従して変化しなければならない、という3Dグラフィックスを使用したゲームとして考えても破格に厳しい動作条件に耐える必要があるためです。

NVIDIA GeForce GTX 960現行の一世代前となるMaxwellアーキテクチャベースのミドルレンジGPU。Oculus Rifローンチの時点ではRiftの「Minimum Spec」を満たさなかったが、最近のソフトウェアバージョンアップで対応機種に含まれるようになった

NVIDIA GeForce GTX 960
現行の一世代前となるMaxwellアーキテクチャベースのミドルレンジGPU。Oculus Rifローンチの時点ではRiftの「Minimum Spec」を満たさなかったが、最近のソフトウェアバージョンアップで対応機種に含まれるようになった

もちろん、メーカー各社はその負荷を少しでも下げるための努力を続けていて、例えばOculus Riftの場合はドライバなどのアップデートの度に少しずつ負荷が下がって現在では当初は対応外とされていたGeForce GTX960などの「ミドルレンジの上の方」だった機種でも動作するところまでハードルが下がってきています。

しかし、それでも現在のタブレットや一般的なノートPCでは動作がかなり難しい状況で、結果としてこうしたVRデバイスの動作には、ミドルタワーなどの大型の筐体を使用するデスクトップパソコンか、さもなくばテンキーがついているような大型でしかも先に挙げたような強力なGPUをオンボード搭載したウルトラハイエンドクラスのゲーミングノートパソコンのいずれかが必要となってしまっています。

しかし、日本のように住宅事情があまりよろしくない国では、そもそもそうした大柄なパソコンそのものを家に置くことでさえ忌避される傾向が強く、一般に市販されているメーカー製パソコンを見渡してみても、その大半がコンパクトなノートパソコンや「省スペースデスクトップパソコン」などと称される拡張性のほとんど無い小型パソコンで、果てはスティック型パソコンと呼ばれるディスプレイやテレビのHDMI端子に「本体」を直挿しして利用するような超小型パソコンまで幅をきかせるような状況です。

こんな状況では、高性能パーツを満載した大型パソコンの接続を当然とするようなVRデバイスの普及が進まないのも当然です。

そして、それが決して良いことではないというのは、恐らくパソコン、それにグラフィックスカードを製造販売するメーカー各社自身が既に認識しているのでしょう。

ZOTAC VR GOミニPCを基本としつつバッテリー駆動化により背負い式での動作を実現した、VRデバイス利用を前提とする「モバイル」パソコン

ZOTAC VR GO
ミニPCを基本としつつバッテリー駆動化により背負い式での動作を実現した、VRデバイス利用を前提とする「モバイル」パソコン

最近のVR関係の展示会で、思いあまってデスクトップパソコンを背中に背負ってVRデバイスを利用するスタイルでのデモが行われたりして、その後製品化されている(※注1)のも、VRデバイスに対応する高性能パソコンを小型化せよ、という業界・市場の無言の圧力が形になったと考えればわかりやすく、その延長上で家庭に持ち込みやすい「省スペースデスクトップパソコン」の性能をVRデバイス対応可能なレベルに底上げして欲しい、といった要望も少なくありません。

 ※注1:ZOTAC VR GO、それにMSI VR Oneとして製品化されています。ただし、流石に普通のデスクトップパソコンをそのまま背負うのは無謀に過ぎたか、どちらも省スペースデスクトップパソコン+α程度の筐体として製品化されており、前者は今回ご紹介するMAGNUS EN1070+α程度の機能・性能となっています。

そして先日、有力グラフィックスカードメーカーの一つであり、同時に省スペースデスクトップパソコンの製造販売としても知られるZOTACが、通常の「省スペースデスクトップパソコン」としてみてもコンパクトな部類に入る小型筐体にもかかわらず、GeForce GTX1070・1080といったいわゆる「VRレディ」なハイエンドGPUを搭載し、しかもCPUも「VRレディ」な高性能CPUを選択できる、ハイエンド省スペースデスクトップパソコンでも言うべき機種群をリリースしました。

そこで今回は、この一連のZOTAC製高性能コンパクトパソコンを通じて、今後のVRレディパソコンに求められるものについて考えてみたいと思います。

ZOTACってどんな会社?

ZOTACは2006年に香港で創業した、この種のグラフィックスカードなどのパソコン関連機器ベンダーとしては比較的新しいメーカーです。

同社は、元々Windows 95ブームの頃に創業した、PC Partnerという他社へのOEM・ODM製品供給を行うメーカーが自社独自のブランドで製品販売を行うためのグループ企業として創設したという経緯もあって、新興ブランドながら当初からその技術力は当時の水準を超えるレベルにあり、親会社が世界中の大手メーカーなどに製品を供給することから部品の仕入れなどでも価格的優位性を確保しやすい、スケールメリットを享受できる立ち位置にありました。

こうした事情から、ZOTACは新興ブランドであったにもかかわらず現在ではNVIDIAのTier 1、すなわち同社製GPU製品を取り扱うグラフィックスカードベンダとしては最上位の扱いとなる一次下請けメーカーの1社となっています。

このZOTACはグラフィックスカード製品ではリファレンスモデルよりも強力な冷却性能を備えたオーバークロックモデルや長期使用に耐える部品を搭載する高耐久モデル、それにリファレンスモデルよりもコンパクト化したモデルなど、グラフィックスカードの多彩な製品展開で知られています。

そんな同社は、コンパクトのグラフィックスカードを搭載する側の小型マザーボードや省スペースパソコンのベアボーンキットなどにも2008年頃(※注2)から手を出していて、GPU製品を使用することに基軸を起きつつ徐々にその市場の範囲を拡大しています。

 ※注2:この時期、2005年に発表されたAppleのMac Miniの影響で薄型軽量、しかも洗練されたデザインのコンパクトPCへの関心が高まっており、幾つかのメーカーが(言い方は悪いのですが)「Windowsの動くMac Miniもどき」を製品化していました。ZOTACの参入はそうしたブームを経てこの種のコンパクトPCがジャンルとして定着した時期となります。

ZOTAC MAGNUS EN970いわゆる「VRレディ」なコンパクトPCとしては最初の世代の機種

ZOTAC MAGNUS EN970
いわゆる「VRレディ」なコンパクトPCとしては最初の世代の機種

今回ご紹介するのは、同社が「エンスージアスト向け本格ゲーム機」とするEシリーズと呼ばれる一連の機種群です。

このEシリーズ、最初に登場したのはGeForce GTX 860M搭載の、つまり末尾の「M」が示すように本来はモバイルノートなどに搭載される低消費電力のGPUを流用したEN760・EN860などの機種で、続いてGeForce GTX 960搭載のMAGNUS EN970シリーズや冷却性能を大幅強化した分厚い新設計筐体を採用してGeForce GTX 980を搭載したMAGNUS EN980シリーズへ発展しています。

さらに、MAGNUS EN970シリーズの薄い筐体の系統は現行製品ではGeForce GTX 1060・1070を搭載したMAGNUS 1060・1070シリーズとなり、MAGNUS EN980シリーズの分厚い筐体の系統はGeForce GTX 1080搭載のMAGNUS EN1080シリーズとなっています。

また、記事執筆時点では日本で未発売となっていますが、MAGNUS EN1060・EN1070のGPU違いのバリエーションモデルとして、NVIDIAではなくAMDのRADEON RX 480を搭載したMAGNUS ERX480という機種も発表されています。

Eシリーズの現行VRレディ各機種の仕様

それではここで、これらのEシリーズ各機種の内、現在日本で市販されている各機種の主な仕様を、完成品のパソコンとして販売されているモデルについて確認してみるとしましょう。

ZOTAC EN1060前面のUSBポートのサイズからも明らかなとおり、非常にコンパクトな筐体構造である。ただし、空冷ファン+冷却ファンの関係で相応の厚みがある

ZOTAC EN1060
前面のUSBポートのサイズからも明らかなとおり、非常にコンパクトな筐体構造である。ただし、空冷ファン+冷却ファンの関係で相応の厚みがある

まずはいわゆるVRレディ機の最下限に近いこのシリーズのローエンドモデルであり、メーカー自身も「THE SMALLEST VR READY MINI PC」とする「MAGNUS EN1060 with Windows 10(ZBOX-EN1060-W2B)」から。

  • プロセッサ:Intel Core i5-6400T(4コア、定格2.2 GHz、Turbo boost時最大2.8 GHz)
  • チップセット:Intel 100シリーズ
  • メモリ:DDR4 8GB SODIMM (2スロット:最大32GB)
  • OS:Microsoft Windows 10 Home 64bit
  • グラフィックス:
  •  GPU:NVIDIA GeForce GTX 1060
  •  ビデオメモリ:GDDR5 6GB(192ビット接続)
  •  出力端子:HDMI 2.0×2 + DisplayPort 1.3×2
  • ストレージ:
  •  6.0 Gbps SATA:1TB 2.5インチHDD ×1
  •  M.2インターフェイス:PCI Express 4レーン/SATA接続タイプのSSDスロット×1(2242/2260/2280対応。未搭載)
  •  メモリカードリーダー:SD/SDHC/SDXC対応×1
  • USBポート:
  •  USB 3.1 ×2(内1ポートはType-Cコネクタ搭載)
  •  USB 3.0 ×2
  •  USB 2.0 ×2
  • 通信:
  •  Wi-Fi:IEEE 802.11 b/g/n/ac
  •  Bluetooth:Ver.4.0
  •  LAN:1000 Base-T ×2
  • 筐体サイズ:210×203×62.2 mm
  • 電源:ACアダプタ(直流19.5V 180W)
  • 冷却システム:ファン+ヒートシンク
ZOTAC MAGNUS EN1080ZOTAC Eシリーズの現行ハイエンドモデル。NVIDIA GeForce GTX 1080を搭載し水冷ユニットを内蔵するため、EN1060・EN1070と比較して倍以上の厚みがある

ZOTAC MAGNUS EN1080
ZOTAC Eシリーズの現行ハイエンドモデル。NVIDIA GeForce GTX 1080を搭載し水冷ユニットを内蔵するため、EN1060・EN1070と比較して倍以上の厚みがある

次はハイエンドモデルである「MAGNUS EN1080 10 Year Anniversary Edition with Windows 10 Home(ZBOX-EN1080-W2B)」です。

  • プロセッサ:Intel Core i7-6700(4コア、定格3.4 GHz、Turbo boost時最大4.0 GHz)
  • チップセット:Intel
  • メモリ:DDR4 8GB SODIMM (2スロット:最大32GB)
  • OS:Microsoft Windows 10 Home 64bit
  • グラフィックス:
  •  GPU:NVIDIA GeForce GTX 1080
  •  ビデオメモリ:GDDR5 8GB
  •  出力端子:HDMI 2.0×3 + DisplayPort 1.3×2(最大4ディスプレイ接続対応)
  • ストレージ:
  •  6.0 Gbps SATA:1TB 2.5インチHDD ×1
  •  M.2インターフェイス:PCI Express 4レーン/SATA接続タイプのSSDスロット×1(2242/2260/2280対応。未搭載)
  •  メモリカードリーダー:SD/SDHC/SDXC対応×1
  • USBポート:
  •  USB 3.1 ×2(内1ポートはType-Cコネクタ搭載)
  •  USB 3.0 ×4
  • 通信:
  •  Wi-Fi:IEEE 802.11 b/g/n/ac
  •  Bluetooth:Ver.4.2
  •  LAN:1000 Base-T ×2
  • 筐体サイズ:225×203×128 mm
  • 電源:ACアダプタ(直流19.5V 180W)×2
  • 冷却システム:水冷

なお、ここで挙げなかった「MAGNUS EN1070 with Windows 10 Home(ZBOX-EN1070-W2B)」は「MAGNUS EN1060 with Windows 10(ZBOX-EN1060-W2B/W3B/W4B)」のGPUをNVIDIA GeForce GTX 1070(GDDR5 8GB 256bit接続)に変更しただけで、それ以外の仕様はMAGNUS EN1060に準じます。

後編へ続きます。

▼参考リンク
ZOTAC Powers Up MAGNUS to Give Gaming and VR Performance Wings | ZOTAC
The MAGNUS 10 Series Gaming Mini PC | ZOTAC

ZOTAC Launches World First AMD Radeon™ Powered Gaming Mini PC for VR and Next Gen Gaming | ZOTAC

MAGNUS EN1060 with Windows 10 | ZOTAC
MAGNUS EN1070 with Windows 10 Home | ZOTAC
MAGNUS EN1080 10 Year Anniversary Edition with Windows 10 Home | ZOTAC

VR GO | ZOTAC

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