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数学と物理の成績がアップ! 人工知能プロジェクト『ロボットは東大に入れるか』

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by [2016年11月24日]

国立情報学研究所が中心となって進めている人工知能(AI)プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」(東ロボ)は、平成23年4月にスタート。平成25年度からは毎年大学入試の模試に挑戦し、各年度の研究成果を評価・検証しながら技術課題を抽出しています。
そして今回、東京大学第2次学力試験に向けた論述式模試とマークシート式の大学入試センター試験模試に挑戦し、論述式模試の数学(理系)で偏差値76.2、センター試験模試の物理では偏差値59.0と、昨年度を大幅に上回る成績をあげました。
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昨年度までの課題

AIはいずれ人間に取って代わるだろう、そんなことが最近はよく耳に入ってくる時代になりました。
このプロジェクトの目的の1つは、「AIが人間に取って代わる可能性のある分野は何か」という問題を考える際の指標を示すことです。大学入試問題では問題文を解析する自然言語処理をはじめ様々な技術が求められます。また、点数と偏差値により成果を定量的に評価することが可能です。これらのことから、AIの挑戦結果を基にAIの進化の客観的なベンチマークを指し示すことができるのです。

そしてもう1つの目的が、コンピューターやロボットと人間との協調を必要とするAIの開発に役立たせることです。
数学ではまず人間にとって理解しやすい自然言語や数式で表現された問題文を、計算プログラムで実行可能な形式に変換します。その後、数式処理のプログラム(ソルバ)で問題を解き、人間にとって理解しやすい自然言語で解答します。
一方、物理は、現実の問題に近い問題設定になっています。例えば、「問題のテキスト」はロボットにおける「人間からの命令」、「図」は「カメラ映像」といったような対応です。
これら双方の技術や応用が今後のAI開発の大きな助けとなっていくでしょう。

数学では、これまで等価な数式に変形しながら解を導く数式処理技術である限量記号消去を適用したソルバで問題を解いていました。これは多項式の等式・不等式を扱う実数問題に対する汎用的な解法である一方で、三角関数を含む問題には直接適用できないため、対応できない分野が残っているという問題がありました。
また、物理では、まずAIが問題テキストを言語処理技術により解析して、内部形式に変換。その後それを元に物理シミュレーションの初期条件を構築し、シミュレーション結果から回答する、というシステムを目指していました。そして昨年度までの開発により、シミュレーションの初期条件を人が設定すれば、物理現象を再現することで、一部の入試問題が解けることは確認できていました。しかしこの方法では人の解釈が必要なため、内部形式からの自動化は達成できていないという課題が残っていました。

数学と物理は東大でもトップクラスに!?

数学では、これまで解けなかった三角関数の問題のうち入試問題によくあらわれるタイプの問題に対して、限量記号消去を適用できる形に変換して解く技術が開発され、ソルバの対応できる問題が広がりました。
また、言語処理部分では数式解析部と文間関係解析部の開発、文法と辞書の拡充および、構文解析技術の改良などの言語処理の機能拡張により、自動で解ける問題の範囲も拡大しました。
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これらの開発の結果、「東大入試プレ」の理系において、AIは完全に自動で偏差値 76.2 (80点)を獲得しました。80点という得点は、東大受験生の中でもかなり数学が得意な人しか出せない高得点です。人工知能の優秀さには感服です。

物理では、言語処理が生成可能と想定される内部形式からその状況を表す条件式を構築し、それを限量記号消去で解いてシミュレーションの初期条件を生成する技術が開発されました。
また、入試問題用のシミュレーション部品の追加・初期条件が答えそのものになる問題などAIが扱いづらい問題に対して画像の情報も利用して解く専用のソルバの開発により対応範囲が広がりました。
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これらの対策により、昨年度より自動化の範囲を広げた課題設定で、偏差値59.0 (62点)を獲得し、これまでより大幅な向上を達成しました。今年度までに大学入試センター試験で高得点をマークすることが目標の一つだったということで、見事目標達成ですね。

今後、本プロジェクトでは構文解析処理や文間関係解析処理といった個々の言語処理ステップのさらなる高精度化や、言語処理と数式処理の中間段階での処理手順の工夫、また、言語処理と数式処理のさらなる融合によって、「考えながら読む」技術の研究開発を進め、より多様な問題に対して正確に解答する技術の開発を目指していくそうです。他の科目もAIがマスターし、東大合格者をAIが追い抜く日もそう遠くないかもしれませんね。

▼参考リンク
ロボットは東大に入れるか。Todai Robot Project

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