筆者の下へ届いたOculus Rift CV1 製品パッケージ非常に高価な機器だけあって、かなり大きく立派なパッケージに収められていた

古いマシンでも一定条件を満たせばOK?~第一世代Core i7相当でOculus Riftを動かしてみた~中編

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by [2016年8月03日]

前編に続いてOculus Riftが動くマシン構成を考えていきたいと思います。

どのあたりのマシンから動く可能性が出てくるのか(続)

最難関のGPU

NVIDIA GeForce GTX 1080一般向けでは記事執筆時点で最高性能のグラフィックスカード。VRでも非常に高性能を発揮するが、当然のようにお値段も高い

NVIDIA GeForce GTX 1080
一般向けでは記事執筆時点で最高性能のグラフィックスカード。VRでも非常に高性能を発揮するが、当然のようにお値段も高い

VR環境実現にあたって中核となるのが、ヘッドマウントディスプレイ本体に映像出力を行うグラフィックスカードであり、そこに搭載されたGPUチップであることに異論のある方は恐らくおられないことでしょう。

これは推奨マシンスペックに示されたパーツ群の中で、グラフィックスカードの価格が飛び抜けて高価となっていることや、これについては推奨されるGPUの最下限機種の型番が具体的に明示されていることからもうかがい知ることができます。

AMD RADEON RX480(上)とRADEON R9 290(下)下のRADEON R9 290がOculus RiftやHTC Viveの推奨環境の最下限に位置するグラフィックスカードであり、これと同等程度の性能を発揮するRADEON RX480も同様にVR環境で利用可能と期待できる。ただし、消費電力や価格の点ではRX480の方が圧倒的に有利である

AMD RADEON RX480(上)とRADEON R9 290(下)
下のRADEON R9 290がOculus RiftやHTC Viveの推奨環境の最下限に位置するグラフィックスカードであり、これと同等程度の性能を発揮するRADEON RX480も同様にVR環境で利用可能と期待できる。ただし、消費電力や価格の点ではRX480の方が圧倒的に有利である

発売からそれ相応に時間が経過し充分こなれてきた現在でさえ、Oculusが製品版(Consumer Version 1:CV1)Riftで推奨GPUの最下限として挙げたAMDのRADEON R9 290やNVIDIA GeForce GTX 970の価格が3万円台となっていて、それらの後継あるいは1ランク下の機種の後継として低価格のVRヘッドセット対応グラフィックスカードとして発表されたRADEON RX480やGeForce GTX 1060でさえも同程度の価格帯にあって、CPUの推奨最下限機種であるCore i5-4590よりも1万円以上高くなってしまっています。

ただ、RADEON RX480もGeForce GTX 1060も、低消費電力化しつつ性能が向上するなど前世代の機種からの改良点が多く、VRでの画面表示の機能に一定以上の性能を要求しないのであれば、これらの機種がおすすめです。

AMD RADEON RX480のブラケット部クローズアップ購入直後のため保護キャップがついたままだが、4つある映像出力端子の内、右端の1基がHDMI 2.0、それ以外の3基はDisplay Port 1.4対応となっている。このため、Oculus Rift接続時には右端のHDMIポートを利用することになる

AMD RADEON RX480のブラケット部クローズアップ
購入直後のため保護キャップがついたままだが、4つある映像出力端子の内、右端の1基がHDMI 2.0、それ以外の3基はDisplay Port 1.4対応となっている。このため、Oculus Rift接続時には右端のHDMIポートを利用することになる

なお、Oculus Riftの場合はHDMI 1.3以上、HTC Viveの場合はHDMI 1.4またはDisplayPort 1.2以上の映像出力端子が備わっていることをグラフィックスカード側に求めています。

推奨の範囲にあるグラフィックスカード製品では流石にHDMI 1.3以上に対応していない製品は無いのですが、それでも例えばAMDのRADEON RX480などはHDMI端子が1基、Display Port端子が3基搭載となっていて、フルHD解像度のHDMI対応液晶ディスプレイとOculus Riftを併用したい場合、Display PortをHDMIに変換するアダプタなどを別途用意しなければ同時にはつながらない、という不便なことになってしまいます。また、変換アダプタには往々にして信号変換に伴う表示遅延の問題がつきまとうため、これを併用する場合にはできるだけVRヘッドマウントディスプレイ側をグラフィックスカードのHDMI端子に直接接続する様にした方が良いでしょう。

このあたりはDisplay Port端子も持っているHTC Viveの方が融通が利くと言えます。

厄介な電力問題

筆者の愛機(HP Z800)に搭載しテスト中のAMD RADEON RX480(中央)ご覧のとおり、カード中央後ろ寄りの基板後端部分に設けられた6ピンPCI Express電源コネクタに電源ケーブルを接続して最大75Wを給電、PCI Expressスロット経由の75Wと合わせて最大150Wの電力の枠内で動作する

筆者の愛機(HP Z800)に搭載しテスト中のAMD RADEON RX480(中央)
ご覧のとおり、カード中央後ろ寄りの基板後端部分に設けられた6ピンPCI Express電源コネクタに電源ケーブルを接続して最大75Wを給電、PCI Expressスロット経由の75Wと合わせて最大150Wの電力の枠内で動作する

ちなみにGPUが最難関となるのは、何も単純な推奨GPU搭載グラフィックスカードの価格ばかりによるものではありません。実のところ、値段以上に厄介なのがこれらの必要とする電源容量・給電能力の問題です。

最近相次いでVR対応を謳って発売されたRADEON RX480とGeForce GTX 1060はいずれもリファレンスモデルで接続を要求されるPCI Express補助電源ケーブルが6ピンのもの1本となっていて、これはつまりそのカードが必要とする電力量が75W + 75W = 150Wの枠内に収まっていることを示しています。

このクラスの電源容量が必要なカードならば、恐らく殆どのマシンで問題なく利用できると考えられるのですが、問題はこれらよりも上位の機種ではほぼ例外なくより多くのピン数あるいは本数の補助電源ケーブルの接続が求められることです。

AMD RADEON R9 290のPCI Express電源コネクタ部6ピン+8ピンでスロット部と合わせ最大300Wまで給電できる。上位機種ほど消費電力が大きくこのピン数も多くなる傾向が強いが、消費電力が大きければ高性能と決まっている訳でもない

AMD RADEON R9 290のPCI Express電源コネクタ部
6ピン+8ピンでスロット部と合わせ最大300Wまで給電できる。上位機種ほど消費電力が大きくこのピン数も多くなる傾向が強いが、消費電力が大きければ高性能と決まっている訳でもない

具体的には、GeForce GTX 970・980では6ピン補助電源ケーブルが2本(75×3 = 225W)、RADEON R9 NanoとGeForce GTX 1070が8ピン補助電源ケーブルが1本(75 + 150 = 225W)、RADEON R9 290・290X・390・390X、それにGeForce GTX 980Ti・TITAN X・1080が6ピン補助電源ケーブル1本と8ピン補助電源ケーブルが1本(75 + 75 + 150 = 300W)、RADEON R9 Fury・Fury Xが8ピン補助電源ケーブル2本(75 + 150×2 = 375W)となっており、AMDもNVIDIAも一般に上位機種ほどより多くの電力供給を必要としていること(※注11)がわかります。

 ※注11:PCI Expressの仕様を策定するPCI-SIGの規定ではPCI Expressへの補助電源ケーブル接続は6ピン + 8ピン、つまりスロット自身の75Wと合わせて75 + 75 + 150 = 300Wが上限値とされているのですが、実際には上記の通り8ピン2本接続により75 + 150×2 = 375Wを上限とするルール破りの製品が当然のように市販され、さらにオーバークロックモデルなどでは8ピン×3本で525W給電を要求する製品まで存在するという、ある意味無法地帯じみた状況となっています。

そして搭載GPUの世代差から、大電力消費の機種が必ずしも高い性能を発揮するとは限らない、という面倒な問題があります。

具体的に言えば、一世代前のハイエンド機種よりも最新のミドルレンジ機種の方がよりよいパフォーマンスを発揮するケースが少なからずあるのです。

これはGPUチップの半導体製造プロセスが長期間に渡ってプロセスルール28nmのままに留められ、にもかかわらず性能向上が求められたことから、必然的に総トランジスタ数の増加した分だけチップサイズが大きくなってしまったことが理由です。新しいRADEON RX480やGeForce GTX 1060で消費電力が激減しているのはまさにこのプロセスルールが14nmあるいは16nmに切り替わって久々に、そして飛躍的にチップサイズが縮小された事に理由があって、GeForce GTX 970・980・980 Tiの後継となるGeForce GTX 1070・1080で劇的に性能が向上しながら、ケーブルの構成が一部変わったものの実質的な要求給電能力が同じのまま据え置かれているのも同じ理由によります。

いずれにせよ、VRに対応するマシンではこれらのGPUを搭載するグラフィックスカードが必要であり、その搭載の可否はそのマシンに搭載されている電源ユニットの給電能力やそれに備わっている電源ケーブルのコネクタ構成によって決まります。

ちなみにグラフィックスカード1枚で最大150W ~ 375Wを消費するということは、CPUやメモリ、ストレージなどの消費電力も勘案すると最低でも500~600W、大きい方だとグラフィックスカードの複数枚挿しによるCrossFire X・SLI動作やデュアルCPU構成も考慮する場合には余裕を見て1,000~1,500W程度の給電能力を備えた電源ユニットが必要となります。

また、これだけ大消費電力のグラフィックスカードを搭載した場合、マシンの内部から外部への排熱も重要な問題となります。GPUの消費電力というのはつまり、計算を行うことで電力を熱エネルギーに変換しているということで、理論上のピーク値とはいえグラフィックスカード1枚の規格上限で60Wの白熱電球6~7個に相当する熱量がマシン内部で発生するのですから、その効率の良い排熱手段を求めてCPU並に水冷化が行われたりするのもある意味当然と言えるでしょう。

ともあれ、どのグラフィックスカードを利用するにしても、それなり以上に容量の大きな電源が必要です。一般に電源ユニットは容量上限ぎりぎりの状態で恒常的に使用すると、変換素子の温度上昇もあって寿命が縮まり効率も良くないという傾向があります。そのため必要な電力量に対してある程度以上余裕を持たせた電源ユニットを選ぶのが望ましいと言えます。

割とハードルの低いメモリ

メモリ96GB実装状態でOculus RiftからProjeckLuckyを動作させた場合のメモリ使用状況ちなみにメモリ96GB実装時にはWindowsを起動しただけで約8GB近いメモリがシステムに消費されるため、OculusのシステムとProjeckLuckyのアプリケーションは約1.2GB程度のメモリを消費していることになる

メモリ96GB実装状態でOculus RiftからProjeckLuckyを動作させた場合のメモリ使用状況
ちなみにメモリ96GB実装時にはWindowsを起動しただけで約8GB近いメモリがシステムに消費されるため、OculusのシステムとProjeckLuckyのアプリケーションは約1.2GB程度のメモリを消費していることになる

Oculus RiftやHTC Viveの推奨ハードウェア要件の内で、筆者が驚いたことの1つに、推奨メモリ容量が8GB以上、あるいは4GB以上と意外と小さかったことがあります。

グラフィックスカードでさえローカルで8GBのメモリを搭載している機種が珍しくなく、CPUとGPUでメモリを共用するとは言え家庭用据置型ゲーム機でさえメモリを8GB搭載している昨今の情勢では、いかにWindowsパソコンではストレージにメインメモリのデータを待避・復帰させる仮想記憶の機能が実装されているとしても、8GBや4GBというのはいくら何でも少なすぎるという印象を受けたのです。

しかし、筆者が試した範囲ではメモリ容量を8GBまで順次減らしていってもOculus Riftの挙動には特に目立った影響は現れておらず、またOculus Rift上でアプリを起動した場合とWindowsを起動した直後とでは約1GB前後のメモリ消費量の差となっていたため、どうやらOculus RiftやSteam VRのソフトウェア環境は思ったよりも規模がコンパクトにまとまっていると考えて良さそうです。

もちろん、今後ポリゴン数が膨大かつ複雑なテクスチャを備えたオブジェクトが仮想空間内に多数登場する様なコンテンツがつくられる様になれば、メモリ8GBでは足りなくなるのは明白で、現にある大規模VRコンテンツ制作者の方にお尋ねした際にはPlayStation VRへの対応と絡めて将来的にその問題が表面化することが指摘されていた(※注12)のですが、少なくとも現状ではその種のコンテンツを別にすれば、その問題が表面化する様な状況には至っていないと見てよろしいでしょう。

 ※注12:PlayStation VRの場合、接続されるPlayStation 4がVRAMとメインメモリを共有で8GBしかメモリを搭載していないため、この問題がより深刻です。

ただ、DDR4 8GB DIMMのお値段を見ていると、割と普通に2枚ないしは4枚買えてしまう、つまりメインメモリ容量16GBや32GBのマシンを用意するのが難しくない昨今の情勢で、ノートパソコンですら搭載メモリ容量が最大16GB以上の機種が増えてきている位ですから、仮に今後多少必要メモリ容量が増えても実害は無さそうな印象です。

意外と見落としがちなUSB 3.0インターフェイス

Oculus Riftをパソコンと接続する際に必要(※注13)なのが、USB 3.0インターフェイスです。

 ※注13:HTC Viveの場合はUSBについてUSB 2.0以上の規格に対応するポートが1基必要とされています。

長らく利用されてきたUSB 2.0規格の上位規格として開発されたこの規格は、実効速度が最大で500MB/sに達する、PCI Expressの通信技術を導入した高速インターフェイスです。

この規格はその高速さ故にチップセットへの内蔵が難しく、インテルではIntel 7シリーズ、つまりLGA 1155やLGA2011に対応するX79やZ77と言ったチップセットにそれも2ポート分のコントローラが搭載されたのが最初の搭載例で、そのため第2世代のCore iシリーズCPU以降を搭載したパソコンで初めて標準搭載できる様になりました(※注14)。

 ※注14:USB 3.0そのものの規格制定はこれらのチップセットよりも先行しており、第1世代のCore iプロセッサを搭載した機種でもNEC(現・ルネサスエレクトロニクス)のPCI Express接続対応USB 3.0コントローラを別途マザーボードに搭載してUSB 3.0対応とした機種が存在しました。この種の外付けUSB 3.0コントローラはIntel 7シリーズの世代以降でもUSB 3.0ポートの数を増やすために搭載されているケースがあります。

このUSB 3.0規格では、従来のUSB 1.1/2.0と比較して1ポートあたりの給電能力が電流量で500mAから最大900mAへ引き上げられてより大きな消費電力のデバイスが利用可能となっています。

Oculus Rift付属のセンサーユニットご覧のとおりセンサー本体下部から1本の太めのUSB 3.0ケーブルが延びるだけで、他に電源ケーブルは用意されていない

Oculus Rift付属のセンサーユニット
ご覧のとおりセンサー本体下部から1本の太めのUSB 3.0ケーブルが延びるだけで、他に電源ケーブルは用意されていない

実のところ、Oculus RiftなどでUSB 3.0接続が求められるのは通信速度もさることながらこの給電能力によるところが大きいようで、実際スタンド付きのそれなりに大きなセンサーユニットには直づけのUSB 3.0ケーブルがあるだけで電源ケーブルは用意されていません。

このことは、言い替えるとパソコンに用意された1つのUSB 3.0ポートにバスパワー動作の、つまりACアダプタなどから外部給電されないタイプのUSB 3.0ハブを接続し、それにOculus Rift本体と付属センサーユニットを接続する様な構成とした場合、給電能力やデータ転送能力が不足する可能性があるということです。

筆者が試した範囲ではバスパワーのUSB 3.0ハブにこれらのデバイスを接続して使用しても特に不具合はなかったのですが、例えば4ポートのハブで空きの2ポートにUSBからの給電で動作する外付けハードディスクドライブなどを接続した場合、供給電力やデータ転送能力の不足で誤動作をする可能性があることは留意しておくべきでしょう。

なお、Oculusからはこれらのデバイスの消費電力量について記事執筆時点では公表されていません。

ちなみにUSB 3.0の後継規格であるUSB 3.1ではUSB 3.0比で最大2倍の転送速度向上が実現する一方でUSB Power Delivery Specificationという新規格が制定されていて、接続された各デバイスが通信しながら電圧と電流量を制御することで、最大20V 5A、つまり100Wの大電力をUSBケーブル経由で給電可能とする機能が実現しています。

ただし、これは給電に関わるデバイス全てがUSB Power Delivery Specificationに対応していることが求められます(※注15)。

 ※注15:例えばUSB 3.1対応かつUSB Power Delivery Specificationに対応するインターフェイスカードとそれに接続されたUSBハブにUSB 3.0以前のUSB Power Delivery Specification非対応デバイスを接続した場合、インターフェイスカードとハブの間はUSB Power Delivery Specification準拠で高電圧大電流給電が行われ、一方非対応デバイスには従来互換の給電が行われます。非対応デバイス単独で見るとメリットが無い様に見えますが、ハブまではこの機能によって大電力が供給可能となるため、原則的にはハブの各ポート全てで接続デバイスが規格的に許容する上限電力での給電が可能となり、非対応デバイスでも一定の恩恵が期待できます。

そのため、この機能を利用するためには色々準備が求められるのですが、USB 3.1インターフェイス+USB 3.1・USB Power Delivery Specification対応ハブの組み合わせの場合は給電能力が大幅向上するため、この組み合わせにOculus Rift等を接続するのは安定動作確保の観点で一考に値します。

後編に続きます。

▼参考リンク
Oculus Rift | Oculus
My CPU does not meet the recommended specifications | Oculus Support Center>
Vive | ホーム
SteamVR

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