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アダルトコンテンツがVR普及の鍵となる3つの理由

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by [2016年8月04日]

10_DLSiteVR ビデオ、ゲーム、DVD……新たなメディアが創出されるとともに、必ずと言っていいほどその普及を影で牽引してきた「アダルトコンテンツ」。VRにおけるアダルトコンテンツの体験価値はいかなるものなのか、そしてビジネスになりうるのか、ここではその可能性について考えていく。文/フリーライター、ImagineVR 日本担当ディレクター 佐藤カフジ
※本稿はアダルトコンテンツをテーマにしているため、18歳以上の方を対象とした内容になっています。

VR技術への期待に応えてくれたのはバーチャルキャラクターだった

 2013年春、現在のVRブームに火をつけたOculus Riftの開発キット第1号「Development Kit 1(DK1)」が世界中の開発者に向けてリリースされた。DK1の解像度は低く、また、位置トラッキングも実現されていなかったが、モバイルデバイス用のディスプレイとシンプルなレンズを組み合わせた技術的な構成には大きな伸びしろがあり、多くのギークやコンテンツクリエイターに、将来の発展可能性を大いに感じさせるものだった。
 DK1の機能のうち特に重要だったのが、現実と同様の映像視野角と、左右独立のレンズによる両眼立体視である。VR表示装置としての必須条件となるこの2点が満たされていたことで、解像度は低くとも、ポリゴンで描かれたオブジェクトが“実際にそこにある感じ”や、周囲の空間の広がりをリアルに感じ取ることができた。これはリアルタイムの3DCGに“実在感”をもたらす技術としてこの上なく強力であり、リアルタイム3Dの高度なノウハウを蓄積してきたゲーム業界がいちはやく食いついたことも自然な流れだった。
 筆者自身もゲーム産業の発展を追うライターとして、DK1のデビューからはじまるVR界隈の急速な発展・拡大ぶりを見てきた。
 従来のフラットスクリーンでは決して得られなかった“実在感”と、魅力的なバーチャルキャラクターが組み合わされたとき、だれもが予感したことと思う。「VRはポルノで最大の威力を発揮する」と。

ユーザー自身が“行為”の当事者になれる

 2014年春に、位置トラッキング機能をサポートし、より解像度が高くなった「DK2」がリリースされると、実際にポルノ産業からのVR熱が顕著になってきた。HMDがかろうじて実写映像の表示にも耐えられる解像度になったことで、欧米では早々にVR映像を用いたポルノサイトがスタートしている。
 その皮切りとなった「VirtualRealPorn」では、Oculus Rift/GearVR/Cardboard等に対応する多数の180°3Dビデオを見ることができる。このような実写系VRポルノ事業の動きは早く、オンラインポルノサイト大手「Pornhub」にも「VR」カテゴリが新設されるなど、既存企業・スタートアップの区別なく多数のサイトが運営されるようになってきている。「VR Porn」でネット検索をすれば、その多さに驚くだろう。
 また、「VirtualRealPorn」と同時期にオープンしたドイツ発のVRポルノサイト「VRGIRLZ」では、実在の女優を3Dスキャンした高詳細な3Dデータを用いた、“女体鑑賞VRアプリ”とでもいうべきコンテンツを配信している。このコンテンツはリアルタイムレンダリングによるVRであるため、ユーザーが能動的に空間内を動き、モデルを好きな距離・角度から眺められるのが特徴だ。しかし実写さながらの3Dモデルに動きを付けるのはやはり難しいようで、女優がまるで蝋人形のように静止しているのが難点だ。
 海外を中心に始まったこのムーブメントには、明確に2つの流れがある。実在の女優・俳優を使った実写系VRと、リアルタイム3Dを使ったCG系VRだ。
 実写系VRは、比較的にコンテンツの製造が容易であり、また、説得力のあるVR映像を素早く作り出せるというメリットがある。一方、CG系VRは、製造工数は格段に高まるものの、より理想化された世界やキャラクターを構築できる上、VR内での位置トラッキング等、より高いレベルでユーザーの参加が可能であるという魅力がある。
 そのどちらも、VRならではの高い実在感でセクシーな部位を楽しむことができるという点が共通している。フラットスクリーン用のDVDやBlu-Rayコンテンツでは決して得られない感動、興奮がそこにある。ユーザー自身が“行為”の当事者になれる、深い没入と臨場感ある体験。VRシステムというまだまだ高価なガジェットを購入するための動機として、充分すぎるほどのインパクトがある。

VRシステムの普及の鍵は“実用性”にある

 そして2016年春、Oculus「Rift」やHTC「Vive」といった、高精度の位置トラッキングをサポートするハイエンドのVRシステムが製品版となり、消費者市場に届けられ始めた。しかし、まだまだ普及へのハードルは高い。
 これらのVRシステムが現在、公式にウリにしているのはVRゲームコンテンツが中心だ。VRでプレイするゲームは、確かにフラットスクリーンにはない面白さがある。レースゲームをプレイすれば、自分自身がまるで高級スポーツカーの車中に居るような臨場感で楽しめるし、フライトシミュレーターなら、自分自身がパイロットとなって、リアルスケールのコックピットに収まっている感じを楽しめる。
 これらのジャンルはVRにうってつけだ。しかし、そのためにVRシステムを必要とするほどのコア層の数は極めて限られている。メインとなるのは従来からハンドル形コントローラーや専用チェア、フライトコントロールシステム一式などを5~10万円以上もかけて購入してきたような層だ。
 一方、より広いオーディエンスを対象とするアクションやアドベンチャーといったゲームジャンルでは、フラットスクリーン市場に伍するような大作タイトル、いわゆるキラーコンテンツが現れていない。OculusストアやSteamのVR対応タイトルを眺めても、カーレースやフライトものを除いたカテゴリーで、本当に強力なゲームコンテンツを見つけることができないのだ。今のVRには「Withcer 3」や「Fallout 4」「GTA 5」あるいは「Metal Gear Solid V」「Darksouls 3」のように、数百時間も楽しめて、数百万~数千万本を売り上げるような、広さと深みのあるゲームが存在しないのである。
 VRはユーザーへの負担が高く、長時間のプレイや、多数の要素が目まぐるしく動きまわるようなハイスピードのコンテンツに適さないという重大な弱点がある。多くのゲームではフラットスクリーンならではの良さというものが本質的に重要であり、VRがその世界に食い込み、上回っていくには、さらなる技術上の革新やコンテンツ面の革命が必要になるだろう。
 しかし、多くの識者やアナリストは、いずれはVRシステムがクリティカルマスに到達し、既存のコンピュータやモバイルデバイスを置き換えるほどまでに爆発的な普及を果たすと考えている。そのための鍵はどこにあるのだろうか? それは、コンピュータやスマートフォンが普及した理由について考えてみればわかる。
 鍵となるのは“実用性”だ。実用性というのは、そのシステムが生活や仕事の役に立ち、既存の媒体を置き換えて生活必需品になることだ。WindowsやMacのコンピュータは、ワープロや表計算、画像処理など、紙とペンにとってかわる情報制作ツールとなることで普及したし、スマートフォンは、既存の電話にかわるコミュニケーションツールとして必須のものになることで爆発的な普及を果たした。
 ここでのポイントは、既存の媒体で用をなしていた情報活動に対し、新たなシステムがより高い実用性を提供することで“とってかわった”ところにある。VRの普及についても同じことが言えるだろう。
 VRの持つ媒体としての凄みは、間違いなく“実在感”にある。Facebookのようなソーシャルコミュニケーションを扱う大企業がVRに注目するのは、その“実在感”がソーシャルコミュニケーションの形を大きく変革する可能性があるからだ。そこでは“空間”という既存の媒体を、VRで置き換えることが念頭にあると考えられる。

繰り返し体験したくなる中毒性

 一方、ソーシャルコミュニケーションと同様に大きな実用領域と考えられるのが、性欲処理である。この分野には現在、物理媒体やデータとして流通するビデオコンテンツや、PCで利用できるアダルトゲーム、実在の女性とふれあう性風俗産業といった複数のビジネス領域があり、巨大な市場を形成している。
 そこにVRがもたらすのは……実在の人物や理想化されたバーチャルキャラクターとの、現実並の“実在感”を伴う性的な接触体験だ。フラットスクリーン用のビデオコンテンツよりも遥かに深く没入でき、自分自身が主人公となる一人称体験が可能であり、現実のような実在感がありながら、性風俗に比べれば法的リスクや病気リスクがないに等しく、金銭的コストも軽微であり、現実にはありえないようなシチュエーションを楽しむこともできる。原理的には唯一、触覚がないことが弱点だ。
 多くのクリエイターは、VRコンテンツについて「繰り返し体験したくなるようなものを作るのは難しい」という。実際、巷には一回体験すればそれで良いような、刹那的なVRコンテンツが多く存在している。しかし、人間の根源的な欲求にダイレクトに訴求するジャンルでは、その限りではない。性欲は、一度解消されても、しばらくのちにまた持ち上がってくるものだ。お気に入りの女優、お気に入りのキャラクターには、繰り返し出会いたくなる。
 筆者自身もDK2を手に入れた2年前から、HTC Viveを常用するようになった今日まで、VRシステムを使って最も多くの回数・時間、アクセスしたのは、アダルトコンテンツだ。しかも、既に体験したものより低いレベルの体験、つまりフラットスクリーンや紙のコンテンツに対しては関心が薄くなる。
 VRとポルノの相性は、VRとレースゲーム・フライトシミュレーターの相性と同じか、それ以上に抜群だ。その“実用性”は極めて高い。ある米国の調査会社は、VRポルノ産業は2025年に米国内で10億ドルの規模に拡大すると予想している。VHSビデオが映画館という古来の媒体からポルノ映像産業の大部分を奪ったように、VRは既存のアダルトビデオや、アダルトゲーム、性風俗等から市場を奪いながら、VRシステムそのものの普及を加速していくと思う。

国内のアダルトVRコンテンツ及びサービスの動向

実写動画のVR化から始まった日本市場

 VR市場は始まったばかりだ。今のところ主人公となっているのはVR専門のスタートアップ企業群や、インディー系のゲームスタジオ群で、中でもVRゲームおよびソーシャルVR関連では大型の投資を受けて、実験レベルを脱した本格的なプロジェクトを抱える企業も多数でてきている。
 一方、アダルト系VRコンテンツについては、多くのスタートアップや既存企業が手弁当でコンテンツ開発をせざるを得ない実情がある。18禁コンテンツを扱うために上場企業のVR向けファンドによる直接投資を受けにくく、また、アミューズメント施設向け等のB2B展開も見込みにくく、結果として大型の資金調達が難しい。このため、コンテンツビジネスとしての立ち上がりは比較的に草の根レベルから始まっている印象が強い。

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AdultFestaVR。アダルト向け動画配信サービス「AdultFestaTV」が立ち上げた、VR専門の配信サービス

 国内で最も早く商業ベースのアダルトVRコンテンツ配信に手を付けたのは、アダルトビデオの総合ポータルサイトである「Adult Festa TV」。本サイトはもともと、ノンVRのアダルトビデオ配信を手がけてきており、コンテンツ連動型のアダルトグッズを使ったタイアップ商品の展開など、アダルトコンテンツに新技術を用いることに非常に積極的な姿勢を見せている。VRという新技術に目をつけたのも自然な流れと言えるが、新たにオープンしたVR専門カテゴリ「Adult Festa VR」では既に50件以上の180度ステレオVRビデオコンテンツ(Oculus Rift DK2とGearVRに対応)が配信されているなど、前のめりの姿勢が伺える。
 「Adult Festa VR」では、VRならではの主観視点によるアダルトビデオを多数見ることができる。中でも“複数人に責められる”という、現実ではまずありえないシチュエーションの比率が比較的に高いことが面白い。どこをみてもアクターがいるというのは、180度の広い視野角をフルに活かすという点で、VRのコンセプトに非常にマッチしたコンテンツデザインだ。1対1のシチュエーションを扱うコンテンツであっても、接近感を強調する動きにいろいろな工夫をしているところも含め、VRコンテンツの作り方についての一般論として幅広く応用できそうな部分と言える。

数は少ないが威力は強烈な日本発の3DCGコンテンツ

 しかし、リアルタイム3D系のアダルトVRコンテンツについては、国内クリエイターの動きはまだ重い。レーティングや性能上の問題でPCをメインプラットフォームとせざるを得ないところ、Oculus RiftやHTC ViveといったPC用ハイエンドVRシステムが充分に普及しておらず、オーディエンスが非常に限定的であるというのが大きな課題である。そのため、既にフラットスクリーン市場で成功を収めた作品が、お試し版やスピンオフ的にVR対応するというのが現状見られる主要な例となっている。

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カスタムメイド3D2。3Dモデルのかわいい娘が楽しめるアダルトゲームとして人気のシリーズ

 例えば3DアダルトゲームブランドのKISSでは5月に入り、昨年発売された同社のメイド育成ゲーム「カスタムメイド3D2」をHTC Vive/Oculus Riftに対応するパッチを公開。国産の商用アダルトゲームとしては初めて、VRでのゲームプレイをサポートした。本作では育成したメイドと“夜伽”を行ったり、「撮影モード」では好きなポーズ、動きをつけて鑑賞することができるが、VRで見る存在感やエロチシズムは強烈で、アダルトゲームのプレイ方法のひとつとして非常な有望性を感じさせる。

 また、美少女ビジュアルノベル「ネコぱら」シリーズのSteam向け配信で大きな成功を収めている同人ゲームサークルNEKO WORKsも、VRへの関心は高い。

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ネコぱらいぶ。サイトからは体験版がダウンロード可能。対応OSはMicrosoft Windows Vista/7/8/8.1/10

 NEKO WORKsではかねてより作品登場キャラクターの3Dモデル化を進めてきており、去る4月1日にはいわゆるエイプリルフールネタとして、キャラクターたちが歌い踊るVRコンサートアプリ「ネコぱらいぶ」を公開。商業作品顔負けの高品質でファンを唖然とさせた。

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セクシービーチプレミアムリゾート。3Dモデルが鑑賞できるのみだが、オープンワールドVR化への期待は高い

 一方、3Dアダルトゲームの老舗ブランドであるILLUSIONについては、異なる傾向が見られる。同社は、DK2がリリースされた2014年から2015年にかけて、3DスキャンされたAV女優によるアダルトVR体験シリーズ「プレイガールズ」(2016年7月29日をもってサイト閉鎖)を配信したり、昨夏発売された冒険ゲーム風味のアダルトゲーム「セクシービーチ プレミアムリゾート」ではDK2対応の「キャラカスタム体験版」を展開するなど、非常に前のめりの姿勢を見せていた。しかし、その後はVR向けの動きが表に現れていない状態だ。こちらについては、水面下で何かしらを準備中であることを期待したい。

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DMM.VR R18[β]。ティザーサイトのまま動きがないものの、DMMではGear VRやHTC VIVEの貸し出しサービス等を行っているので、今後新たなサービスが出てくる可能性も

 開発機時代の勢いに陰りが見えている例としては、DMMが2014年末にオープンしたサイト「DMM.VR R18[β]」がある。こちらはGoogle Cardboardやハコスコなどのスマホ用VRビューワを使って視聴できるビデオコンテンツとなるが、Adult Festa VR等とは違い、ノン3Dの360°動画となっているのが特徴。しかし360°全周囲の視界で立体でないというフォーマットは、アダルトコンテンツとしての手応えはいまひとつ。サイトの更新も長期にわたってストップしていることから、全く別の形で再始動することになるかもしれない。

VR専門のプラットフォーム登場によって広がるビジネスチャンス

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DLSite&ImagineVR。日本最大級のゲームDL販売サイトと海外発の新興プラットフォームがタッグ

 そんなエマージェントなアダルトVR界隈にあって、同人系クリエイターへのアプローチを強めているのが、同人作品のダウンロード販売ポータル大手のDLSiteと、VRコンテンツ専門配信プラットフォームのスタートアップ企業であるImagineVRだ。
 DLSiteとImagineVRではVRコンテンツについてのクロス配信契約を提携しており、同人系VRクリエイターの発掘や、国内コンテンツの海外向けローカライズといった分野で協力体制を敷く。一方、同人クリエイターたちは、VR展開への興味を示しているサークルは非常に多いものの、既存のファンべースにコンテンツを届けることがファーストプライオリティになっているケースが多く、実際の開発プロジェクトにまで発展しているケースはまだ少ない。

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なごみの耳かきVR。現在はAndroid、iOS用のアプリが無料でダウンロード可能

 そこで、DLSiteとImagineVRでは、市場発掘と拡大の目的をもって、それぞれに内製コンテンツのプロジェクトを進めている。DLSiteでは4月27日のVR専門ストアの開設に合わせ、Android/iPhone向けVRコンテンツ「なごみの耳かきVR」を公開。寝転がった状態で使用し、和服少女の膝枕でバーチャルな耳かきをしてもらうという全年齢向けのエクスペリエンスではあるが、かわいらしい3Dキャラクターとの接近体験を多くの人に知ってもらうという企図に沿った内容となっている。

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Beach HouSex。Oculusに対応したセックスシミュレーションはImagineVRで配信中

 ImagineVRは米国に本拠を置くことから、海外クリエイターへのアプローチに強みがある。3月末には、フィンランドのアダルトVRゲーム開発スタートアップCitor3とのタイアップを行い、日本のクリエイターが制作した3Dモデルを使用したVRエクスペリエンス「Beach HouSex」を販売開始。このアプリでは複数の体位における性体験を、一人称で楽しむことができる。

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ImagineGirls。アダルト用途で使用できる3Dモデルの配布から新たなビジネスが生まれる可能性に期待

 ImagineVRではそういった海外製コンテンツの国内向け配信を手掛けると同時に、国内同人クリエイターへの支援を意図し、無料の3Dモデルシリーズ「ImagineGirls」を製作中だ。誰でも自由にこの3Dモデル自体を楽しんだり、同人や商用アプリの制作に利用できるというのがコンセプトである。アダルト用途にも自由に活用できるというのは、ちょっと他に例がない。

 一般のVR市場と同様に、アダルト向けのVR市場が本格的に立ち上がるまでにはまだまだ、年単位の時間がかかると見込まれる。市場が成立するまでにビジネス的な活動を展開するのは非常に大きな野心と勇気が必要だが、そこに大きな可能性が横たわっていることは間違いない。

▼参考リンク
ImagineVR

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