マブラヴVRブース案内表示

「ニコニコ超会議2016」のVR展示を振り返る~マブラヴVR前編~

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by [2016年7月04日]

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前回の記事では、2016年4月29・30日に千葉県千葉市の幕張メッセ 国際展示場で開催された「ニコニコ超会議 2016」のVR関連展示の中からAMDのブースについてご紹介しました。4回目は株式会社デジカの協力による「マブラヴVR」ブースをご紹介いたします。

▼「ニコニコ超会議2016」のVR展示を振り返る

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  4. マブラヴVR 前編

デジカとSteam

筆者が最初にデジカ(DEGICA)という会社の名を耳にしたのは、同社がゲーム「Half-Life」シリーズや「Counter-Strike」などで知られるValveが開発・運営しているゲーム配信プラットフォーム「Steam」で日本のゲームコンテンツを販売し始めた2012年頃のことでした。

Steamは使用権を登録したコンテンツをインターネットに接続できるパソコンならばどのマシンからでも(※注1)アクセス・利用可能とするための汎用性の高いゲームプラットフォームです。

 ※注1:ただし、当然ながらプレイにあたってはそれぞれのコンテンツで示されている動作環境のハードウェア要件を満たす必要があります。つまり、ローエンドかつ低性能のパソコンでリッチな3Dグラフィックス描画のゲームが快適にプレイできるようになったりする性質の物ではありません。

Steamのショッピングカート画面ご覧のとおり購入には「自分用に購入」と「ギフトとして購入」の2パターンが用意されていて、アカウントへの紐付けの状態を変えてあることが見て取れる。ちなみに、Steamではかなり頻繁に、それも驚くほど高い割引率(この画面の「ストライダー飛竜」の場合は70パーセントオフ)で割り引きセールが行われるのが特徴の1つである

Steamのショッピングカート画面
ご覧のとおり購入には「自分用に購入」と「ギフトとして購入」の2パターンが用意されていて、アカウントへの紐付けの状態を変えてあることが見て取れる。ちなみに、Steamではかなり頻繁に、それも驚くほど高い割引率(この画面の「ストライダー飛竜」の場合は70パーセントオフ)で割り引きセールが行われるのが特徴の1つである

このプラットフォームでは有償無償を問わずそのコンテンツの使用権がユーザーそれぞれに紐付けられる、つまり有償のタイトルで常に問題となる、転売や中古売買などによる諸問題が実質的に排除できる仕組みが採用されていて、しかも流通が簡素化されるために中間マージンが圧縮されて低価格設定での販売でもそれ相応に充分な利益が得られるというゲームを開発している企業にとって無視できないメリットがあります。

また、そもそも市販ソフトウェアパッケージの流通を握る大手パブリッシャーなどとの取引が難しい、例えばPlayStationシリーズやXboxシリーズといった家庭用ゲーム機向けでは数が出ないため販売が難しいような小規模メーカーによる、言い方は悪いのですがニッチかつマイナーな、けれども新しい創意工夫に満ちあふれた実験的なタイトルに対しても広く門戸を開け放ちその販売を手助けしてきたこともあって、この「Steam」は欧米では熱烈な支持を受けてきました。

Steamは日本でも利用可能なのですが、当初は支払いがUSドル決済のみでしかも困ったときの頼みの綱となるヘルプやサポートを含め対応言語が英語のみ、しかもいわゆる洋ゲーしか遊べず、ゲームを探すときの助けになるカテゴリ分類も明らかに洋ゲーに最適化されたものであったため、日本のユーザー的には色々ハードルの高いプラットフォームという印象が強い状況でした。

分かりやすく言えば、PlayStationシリーズのように大作路線のRPGなどではなく、Xboxシリーズで積極的にリリースされる洋物の3D FPSゲームなどを好んで遊ぶ、特に英語を読むのを苦にしない人用(※注2)の汎用化されたPC向けゲームプラットフォームだったわけです。

 ※注2:逆に言えば、銃を構えて撃ちまくる、その種のゲームを心から愛する人々の間では日本でも当初から熱烈な支持を集めました。こうした日本では多分にマニアックと見なされるタイプのゲームが積極的にリリースされる傾向そのものは今もあって、提供されるようになった日本のゲームコンテンツでもやはりXboxシリーズに移植された実績がある高難度の弾幕シューティングゲームなど、少数ながら長年にわたる熱烈なファンを持つ、かなりマニアックな方向性のタイトルが少なくありません。

Steamクライアントソフトウェア上でシューティングゲーム「斑鳩」(トレジャー)の製品紹介ページを開いた状態このように日本語化されたSteamではメジャーではないが熱烈な支持者を持つ国産ゲームの移植が徐々に増えてきている

Steamクライアントソフトウェア上でシューティングゲーム「斑鳩」(トレジャー)の製品紹介ページを開いた状態
このように日本語化されたSteamではメジャーではないが熱烈な支持者を持つ国産ゲームの移植が徐々に増えてきている

そんな「Steam」の日本語話者にとっては使いづらいユーザーインターフェイスやヘルプ機能、サポート体制などの状況は、デジカの参入と同社とValveの間での業務提携によって、2014年にデジカの決済システムを利用した日本円での決済や公式サイトの日本語表示対応など、日本語を母語とするユーザーが利用する上で障害となりそうな要素についてのローカライズが実現されたことで大きく改善されました。

また、それまで海外では殆ど知られていなかったようなタイトルを含む日本のゲームコンテンツがデジカの手によって「Steam」上で提供されるようになったことで、同社自体も徐々に注目を集めるようになったのです。

デジカという会社

デジカ公式サイトeコマース、オンライン決済、デジタルパブリッシングの3つを主力事業としており、いずれもその歴史的経緯から海外との関係が深い

デジカ公式サイト
eコマース、オンライン決済、デジタルパブリッシングの3つを主力事業としており、いずれもその歴史的経緯から海外との関係が深い

このデジカという会社、実はWindows 9xの時代からシェアウェアのソフトウェアライセンスのオンライン販売やパッケージ版販売などで先駆的な事業を行っていたピーアンドエー(※注3)の事業を引き継ぐ形で2005年に設立された、会社の系譜的には栄枯盛衰や合従連衡による変遷の激しいこの業界でも結構古株の会社です。

 ※注3:ベテランのパソコンユーザーであれば、「P&Aシェアウェア」名義でのシェアウェア販売や、Windows XP登場より前の時代に登場し低価格グラフィックソフトとして名を馳せた「Paint Shop Pro」の日本語版販売を行っていた会社として同社の名を懐かしく思い出される方も少なくない事と思います。

その創業の経緯から、この会社は海外の優れたソフトウェアを日本に紹介し、また逆に日本の優れたソフトウェアを海外展開する手助けを行うことを使命の1つとしてきたのですが、その一環として「Steam」にも参入・関与するようになったわけです。

そうした経緯を考えれば、このデジカが「Steam」でも「Steam VR」として展開が始まったVRコンテンツとその動作環境の普及に積極的に関わるようになったのは当然の成り行きであったと言えるでしょう。

ある意味戦略兵器? ~マブラヴVR~

秋葉原ベルサールで開催されたMuvluv × HTC Vive体験会の案内ページこのようにVRヘッドマウントディスプレイであるHTC Viveの体験会とセットにする形で[マブラヴVR」の体験デモイベントが何度か開催されている

秋葉原ベルサールで開催されたMuvluv × HTC Vive体験会の案内ページ
このようにVRヘッドマウントディスプレイであるHTC Viveの体験会とセットにする形で[マブラヴVR」の体験デモイベントが何度か開催されている

そんなデジカがVRの普及促進に向けて送り出したのが、今回のニコニコ超会議2016で出展されていた「マブラヴVR」です。

このコンテンツが何故誕生したのかなどについては後ほどご紹介する予定ですが、age(※注4)が2003年に発売したアダルトゲーム「マブラヴ」(※注5)を起点として続編である「マブラヴ オルタネイティヴ」(2006年:ゲーム)、その外伝/スピンアウト作品に当たる「マブラヴ オルタネイティヴ トータル・イクリプス」(2007年~:小説)、「マブラヴ」のスピンアウト作品にあたる「シュヴァルツェスマーケン」(2011年~2014年:小説)など様々なメディアで発表された一連のシリーズ作品群の世界観をベースにしたこのタイトルは、そのタイトルの知名度の高さや内容から、発表されるやいなや大変な話題になりました。

「マブラヴ」初回限定版(CD-ROM版)2003年2月28日に発売されたシリーズ最初の作品(※18禁版)。メディアがCD-ROM4枚組(他に音楽CD1枚同梱)というあたり時代を感じるが、このいかにもな学園ラブコメ作品的パッケージイラストから後のハード極まるストーリー展開やシリーズ展開を誰が予想し得たであろうか

「マブラヴ」初回限定版(CD-ROM版)
2003年2月28日に発売されたシリーズ最初の作品(※18禁版)。メディアがCD-ROM4枚組(他に音楽CD1枚同梱)というあたり時代を感じるが、このいかにもな学園ラブコメ作品的パッケージイラストから後のハード極まるストーリー展開やシリーズ展開を誰が予想し得たであろうか

 ※注4:アージュ。リーフ(アクアプラス)の「To Heart」(1995年)が大ヒットしたことに始まるWindows向けアダルトゲームブームの絶頂期に「君がいた季節 ~Primary~」(1999年)でデビューを飾り、以後「化石の歌」(2000年)、そして衝撃作「君が望む永遠」(2001年)と順調にタイトルをリリースしてきた事で知られます。ちなみに、ここまでに挙げたタイトルは基本的には世界観が「マブラヴ」と一貫・連続しており、実際にも「マブラヴ」にはこれらの作品の登場人物や舞台が登場しています。
 ※注5:当初「君が望む永遠」に続き2001年秋発売予定として発表され、何度も発売延期を繰り返した末に2003年2月末にようやく発売となったものの、内容が実は全体の約半分、前半だけの状態(ただしこれはこれで一応は物語が完結しています)であることが発覚し、さらに続編つまり後半部分の完結編に当たる「マブラヴ オルタネイティヴ」の発売が発表されたことで大きな話題を呼びました(筆者は「ジオング状態かよ!」と内心で思いつつも黙って両方買いましたが)。このシリーズでは物語について複数の世界線・時間軸が存在しており、作中での物語ルート分岐を全て経験することに意味が生じるその複雑な世界・物語構造故か本編にあたる「マブラヴ」と「マブラヴ オルタネイティヴ」は話題を呼んだ人気作にもかかわらず未だアニメ化されておらず、その一方で外伝あるいはスピンオフ作品であり、どちらかと言えばエロそっちのけでカッコいい戦術機と呼ばれる二足歩行ロボットが激しい戦闘を繰り広げる「マブラヴ オルタネイティヴ トータル・イクリプス」と閉塞した社会情勢にあった東ドイツを舞台にした、ポリティカル・フィクションの色濃い異色作であり最初は小説として発表された「シュヴァルツェスマーケン」の2作が先行してアニメ化されるという、ちょっと変わったメディアミックスが行われた事でも知られています。

Kick starterのマブラヴ英語版プロジェクトページ最終的に7,890名の出資により、当初想定額を遙かに上回る1,255,444ドルの資金調達に成功した。なお、背景に使われている澄み渡る空を複数のロボット(戦術機)が飛んでいる画像は後に上に挙げたページのように「マブラヴVR」でもキービジュアルとして使用されたものだが、実は「マブラヴ オルタネイティヴ」でも有数のネタバレ画像であったりする

Kick starterのマブラヴ英語版プロジェクトページ
最終的に7,890名の出資により、当初想定額を遙かに上回る1,255,444ドルの資金調達に成功した。なお、背景に使われている澄み渡る空を複数のロボット(戦術機)が飛んでいる画像は後に上に挙げたページのように「マブラヴVR」でもキービジュアルとして使用されたものだが、実は「マブラヴ オルタネイティヴ」でも有数のネタバレ画像であったりする

ちなみにこのシリーズ、「マブラヴ オルタネイティヴ トータル・イクリプス」のTVアニメ化やコミックス「進撃の巨人」の作者である諫山創氏がその作品執筆に当たって「マブラヴ オルタネイティヴ」に(殆どトラウマと言って良いような)影響を受けたことを公言したことなどもあってか海外からも注目を集めていて、シリーズ作品のSteamを用いた海外配信・移植版発売などのための資金調達キャンペーンをKickstarterによるクラウドファンディングで始めたところ、開始から何と8時間以内で目標金額の25万ドルを突破、最終的に125万ドル以上を調達するという大成功を収めています。実は、この「マブラヴVR」もそうした海外向けの動きと歩調を合わせる形で実現したものなのです。

元々このシリーズでは網膜投影型のMRディスプレイデバイス、つまり装着者の視界に重ね合わせるようにして各種情報や映像が表示されるタイプのディスプレイ(※注6)が戦術機と呼ばれる二足歩行ロボット(※注7)の操縦システムの一部として登場しています。そのため、そこだけ抜き出しても充分にVRやMRでコンテンツ化するのに適した作品であったと言えます。もっとも、その一方でBETA(ベータ:Beings of the Extra Terrestrial origin which is Adversary of human race =人類に敵対的な地球外起源種)と呼ばれる敵性存在(※注8)をはじめとする色々かなりきついグロ表現や、前作「君が望む永遠」に連なる学園ラブコメパートも含まれる多彩な作品群であったため、一体作中のどの要素をどんな風にVRで表現するのかが注目されたのです。

 ※注6:左右のほほの脇から上方の網膜に映像情報を投影する構造で、そこにMRディスプレイが内蔵されているとはまず気づけないような外形デザインと設定となっています。この種のVR/MRディスプレイをロボットの操縦系に導入した作品としては「装甲騎兵ボトムズ」(1983年)や「ガサラキ」(1998年)など幾つかの先行例が存在しますが、それらのロボットに搭乗するキャラクターが顔出しのままでそれを(設定上のこととは言え)本格的に実現したのは、恐らくこの「マブラヴ」シリーズが最初の事例となります。
 ※注7:実在する/過去に実在した世界各国の航空機メーカー名をもじった社名を持つメーカー群が開発したという設定の、そしてそれらの航空機メーカーが手がけた軍用機のテイストを多分に含んだデザイン・設定の戦術機が作中に多数登場します。実はスピンオフ作品である「マブラヴ オルタネイティヴ トータル・イクリプス」は当初、有力模型雑誌である月刊ホビージャパン誌での戦術機の作例を利用したフォトストーリー連載という形で始まったもので、機動戦士ガンダムにおけるモビルスーツバリエーション(MSV)よろしく「マブラヴ」や「マブラヴ オルタネイティヴ」に登場した戦術機のバリエーションモデルやその発展型、あるいは先行機種を紹介・解説するのに多くのページを割くという、大変にメカメカしい作品でした。また、この連載にのみ登場の機種を含め、作中に登場した戦術機各種はボークスによって完成品フィギュアとして、壽屋によってインジェクションプラスティックモデルキットとして、それぞれ製品化されています。
 ※注8:ちなみにこのBETAの姿は最初の「マブラヴ」では伏せられて何が何だかよく分からない黒いシルエットのままで終わっていました。続編である「マブラヴ オルタネイティヴ」の作中でも当初は登場せず「episode7 許されざる者」で初めてその姿が描かれ、さらに「episode8 涙落ちる果て」で光線属種2種(「光線(レーザー)」級、「重光線(重レーザー)級」)、大型種3種(「要撃(グラップラー)級」、「突撃(デストロイヤー)」級、「要塞(フォート)」級)、そして小型種3種(「戦車(タンク)級、「闘士(ウォーリア)級」、「兵士(ソルジャー)」級)という3つの属種と8種の基本種別が存在することと、それぞれの種別ごとの性質が明らかにされました。このシリーズのグロ描写要素のほぼ全てをになう恐るべき存在です。

マブラヴVR体験デモ会場全景ご覧のとおり同時に2人ずつプレイできる環境が用意されていて、それなりに潤沢に整理券が発行された筈であるが、それでも瞬く間に品切れとなった。作品の人気と注目度の高さを思い知らされる一瞬である

マブラヴVR体験デモ会場全景
ご覧のとおり同時に2人ずつプレイできる環境が用意されていて、それなりに潤沢に整理券が発行された筈であるが、それでも瞬く間に品切れとなった。作品の人気と注目度の高さを思い知らされる一瞬である

さすがに、最初にタイトルが発表された後で何枚かのスクリーンショットが公開され、「大量の地球外生命体『BETA』と,戦術歩行戦闘機(戦術機)『Tactical Surface Fighter(TSF)』の戦いをリアルに描いた内容」と告知されたことでミリタリー色の強いその方向性が明らかとなったのですが、原作シリーズの知名度が高くちょうど外伝の1つである「シュヴァルツェスマーケン」のTVアニメ版放映とタイミングが重なったこともあって、ファンの間では期待が高まりました。

次回は、この「マブラヴVR」のプレイ感などについてお話ししたいと思います。

▼参考リンク
デジカ | 海外展開をシンプルに
Steam へようこそ
MUVLUV.com | エントランス
Muvluv x HTC Vive 体験会
Muv-Luv: A Pretty Sweet Visual Novel Series by The Muv-Luv Team — Kickstarter

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