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ビッグデータが教育に革命を起こす!? 岡山大学寺澤孝文氏が語るeラーニングの可能性

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by [2016年6月06日]

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ここ数年間におけるIoTの進歩を受け、存在感を日に日に増すビッグデータ。マーケティングや地域復興など様々な分野で活用されつつあるが、教育分野でも大きな変革をもたらすかもしれない。

先日開催された学校関係者を対象とした展示会『教育ITソリューションEXPO』にて、岡山大学の寺澤孝文教授(写真)が「教育ビッグデータ」「eラーニング」の現状について語った。

ビッグデータは集めただけでは意味がない

寺澤氏の実績

ビッグデータという言葉自体は、ここ2~3年で各種メディアで取り上げられる機会が急増した比較的新しい言葉だが、寺澤氏はこの15年間教育ビッグデータについて研究してきた。

茨城や岡山など様々な学校で検証実験を多数行った後、岡山県赤磐市とベネッセの産官学連携事業をスタート。その結果、寺澤氏が開発した新型ドリルにより確実に成績が上昇しただけではなく、子供一人ひとりに成績をフィードバックすることで、子供の学習意欲を長期に渡り有意に向上させることに成功した。
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教育ビッグデータの抱える課題

教育ビッグデータが抱える問題は、端的にいうとデータを単純に集めるだけでは、一人ひとりの子どもの成績の上昇は、決して検出できないという点に帰結する。

人は一度感覚情報を入力すると(何かしらの感覚を受容すると)、その情報を長期間にわたり、脳内に固定、瞬時に再構成している。それにより、例えば2ヵ月前に1~2回聴いた、意味のないメロディを弁別できる驚くような実験結果が得られている。 つまり、たとえ些細な経験でも、固定され長期間にわたって影響を与えるので小さな経験(イベント)の効果でさえ軽視できないのだ。
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また、そうした経験(イベント)がいつ起きるのか、いつ評価するのかというのも個人によって異なるため、多数のデータをひとまとめで管理すると、ミクロなイベントの影響が埋もれてしまうという恐れもある。
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教授の対策法

そうした課題に対し、寺澤教授がとった対策が、スケジューリング法だ。事前に膨大なイベントの生起を緩やかに制御、解析時に類似したイベントを集約させることで、個人の行動変容を高い精度で描き出すことに成功した。
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すなわち「いつ」というタイミングと、学習とテスト(測定)の間のインターバルなど、科学的に扱われてこなかった時間軸上に想定される新たな条件の影響を考慮したスケジューリングの原理の確立を目指したというわけだ。

実際に、実験の成果として、個人の成績予測が高いレベルで可能となり、学習者の自覚できない成績の上昇を世界で始めて、個別に可視化することに成功した。
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今までの学習法が無駄だったなんて!

今回のビッグデータ分析によって、一般的な学習効果のイメージとは大きく異なる事実が多数明らかになった。

例えば、一般的には一つの単語を一日に何度も反復学習するという学習法があるが、1ヶ月後に残っている実力には5回以上の繰り返しの効果が検出されないことが分かった。すなわち、単語の出現頻度や学習のタイミングを管理しなければ無駄の多い学習になってしまうということだ。
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また、1日5分に満たない学習を5週間継続しただけで、250語の読みの難しい漢字を習得できる可能性があることも分かった。長期にわたり、学習を計画的に分散させることでかなりの学習効果が期待できるのだ。
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機械学習が解決する教育の諸問題

さらに、長年にわたる実験を通し、eラーニングならではの教育に関する諸問題への、独自のアプローチが開発されてきた。

例えば、ドリルの最後に4個の意識調査項目をスケジューリングして入れることで、子どもの抑うつ傾向、学習意欲等の時系列変化を個別に可視化することに成功している。これにより、子供の危機的な状況を察知することができるようになり、危機的状況にある子供をピックアップし、水面下で直接サポートすることが可能になった。
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不登校の生徒に関しても、成績のフィードバックを行うことで学習意欲が劇的に向上、面白みがないドリルでも学習量が増えるという結果が出た。成績のフィードバックを地域の支援者が自宅へ届ける方法を導入したことにより、不登校の子供支援の最大の問題点である接点が作れないという問題の解消に成功し、成績向上だけでなく、不登校問題の解決まで手を伸ばしている。
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紙とデジタルを融合した新たなe-Learningテクノロジー

最近では、新たな技術T-Code通信を活用することで、eラーニングが更に進化するのではないかと注目を浴びている。

T-Code通信とは、紙メディア、郵便、メール、FTP、LINE、Facebook、Twitter等の通信を融合する技術で、ユーザーの何枚もの紙のドリルデータをクラウド経由で回収・記録・解析することが可能となる。
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この技術によって、何万枚ものペーパー教材に書き込まれた子どもたちの反応を全て収集、記録し、そこから個人の特性を描き出し、その詳細な情報を個人や企業にフィードバックすると同時に、学術共同利用するための大規模なコンピュータ・システムを構築、人材育成を行えるようになる。
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また、この技術は教育だけでなく、広告分野にも応用でき、広告効果を可視化してマーケティング方法を高度化したり、個人のライフイベントに対応した反応ターゲティング効果も実現可能になるとのことだ。

●参考リンク
Terasawa Takafumi official web site
教育ITソリューションEXPO

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