Windows 10 デスクトップ画面

Windows 10無償アップグレード終了まで残り2ヶ月半 ~より賢いアップグレードを考える~ 前編

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by [2016年5月17日]

Windows 10 デスクトップ画面

Windows 10 デスクトップ画面

Windows 10が正式リリースされてから早くも9ヶ月半が経過しました。

厳密に言えば、2015年7月29日の正式リリース時点ではWindows 7 Service Pack 1(SP1)・Windows 8.1 Updateからの無償アップグレードが開始され、その後同年8月1日にいわゆるDSP(Delivery Service Parther)版、つまりPCパーツなどとセットで購入し、それらのパーツを使用して組み立てたマシンにインストールして使用することが前提の新規インストール向けライセンス版の販売が開始されました。

つまり、初動の段階では新規販売されるパソコンへのプリインストールよりも既存Windowsパソコンへの無償アップグレード版提供を優先するという、これまでにない施策を伴ってリリースが進められた訳で、正式なパッケージ版(リテール版)およびダウンロード版の発売は2015年9月4日までずれ込みました。

既存のWindows 7 SP1・8.1 Update、つまりより広義にはこれらへの無償アップグレードが可能なWindows 7・Windows 8も含めた、Windows Vistaよりも後にリリースされたx86/x64系CPU搭載パソコン向けクライアント版Windows全バージョンとそのほぼ全てのエディション(※注1)を対象とするこのWindows 10への無償アップグレードサービスは、当初より正式リリースから1年間と期限が切られていることがアナウンスされてきました。

 ※注1:Windows 7・8・8.1の各Enterpriseエディションについてはこの無償アップグレードの対象外となっています。ただし、Microsoft社との間でボリューム ライセンス契約を締結してこれらの各エディションを利用していて、なおかつソフトウェア アシュアランス (Software Assurance:SA) が有効な状態のユーザーの場合に限っては、SAの特典という扱いでWindows 10 Enterpriseへの(事実上の無償)アップグレードが行えます。

つまり、この記事の執筆時点でWindows 7・8・8.1からWindows 10への無償アップグレード期間は残すところ2ヶ月半を切った状況で、「様子を見て後でゆっくりアップグレードすれば良いか」などと考えておられた方も、そろそろ無償アップグレードを行うかどうか真剣に検討すべき時期になってきたと言えます。

そこで今回は、ここ9ヶ月半の筆者自身のWindows 10使用状況も踏まえつつ、Windows 10へのアップグレードについて考えてみたいと思います。

Windows 10が動作する環境

Windows 10が動作する環境のシステム要件としてMicrosoft社のWindows 10製品ページで示されているのは下記の要件です。

・プロセッサ:
1 ギガヘルツ (GHz) 以上のプロセッサまたは SoC

・メモリ:
32 ビット版と 64 ビット版で 2 GB

・ハード ディスクの空き領域:
32 ビット版 OS では 16 GB、64 ビット版 OS では 20 GB

・グラフィックスカード:
DirectX 9 以上 (WDDM 1.0 ドライバー)

・ディスプレイ (画面解像度):
800×600

ただし以前の記事でもご紹介しましたが、特にプロセッサについては厳密な要件はこんな単純な話ではなく、Intelで言えば実質的にはCoreプロセッサ(※注2)以降、AMDでもソケットAM2あるいはソケットF以降に対応のプロセッサが必要となっていて、1GHz駆動のx86/x64系CPUなら無条件でx86・x64版Windows 10が問題なく動作することが保証されている訳ではありません。

 ※注2:Core SoloやCore Duoなど。x64版ではCore 2 DuoやCore 2 Quadなどの世代以降。

もっとも、ここ6,7年ほどの間に市販されたパソコン・Windowsタブレット(※注3)であれば少なくともx86版(32ビット版)については余程妙な構成にしていないかぎり普通は問題なくインストールできるのも確かです。

 ※注3:ARM系SoC搭載のWindows RTプリインストールモデルを除く。

Windows 10へアップグレードすべきか否か

ところで「Windows 10にアップグレードして本当に問題がないのか?」と考える方は少なくないことでしょう。

Windows 8・8.1からのアップグレードの場合は、筆者自身の経験に照らしてほぼメリットしか無いような状態ですし、またOSとして基本的な部分での仕様変更もわずかであるため、恐らくアップグレードを行っても苦情や不満が出るケースはデスクトップのユーザーインターフェイス変更に関わる部分を別にするとごくわずかと推定できます。

問題はWindows 7からのアップグレードの場合です。

以前の記事でも何度か触れましたがWindows、特にx64対応の64ビット版の場合、Windows 7までとWindows 8以降では大きく内部構造やその挙動が変わっている部分があり、両者をアプリケーションソフトウェアの動作互換性の点で同等、あるいはWindows 10がWindows 7に対して完全に上位互換性を保っていると見なすことはできません。

言い替えると、Windows 7(のx64版)で問題なく動作していた既存アプリがWindows 8以降では全く動作しない、あるいは正常動作が期待できないといった状況に陥ることがありえるのです。

Windows XP ModeWindows 7に搭載されていて、Windows 8以降で搭載されなくなった機能の中で最も影響の大きなものの1つ。意外と失念しがちだが、この機能を利用して古いアプリを互換モードで動作させていた人は注意と対策が必要となる

Windows XP Mode
Windows 7に搭載されていて、Windows 8以降で搭載されなくなった機能の中で最も影響の大きなものの1つ。意外と失念しがちだが、この機能を利用して古いアプリを互換モードで動作させていた人は注意と対策が必要となる

特に、Windows XPモードを使用して古いXP時代以前のアプリを動作させている方の場合、そもそもXPモードおよびその基礎となるVirtual PCそのものが(OSそのものの構造変更で)動作せず削除されてしまうため、そうしたアプリを今後も利用したい場合は別途PCエミュレータと古いWindowsのライセンスを用意して仮想マシン上にレガシーなWindows環境を構築しない限りWindows 10へのアップグレードを行ってはなりません。

また、筆者の経験した範囲でも、Windows 7からのアップグレード環境ではそもそもアプリが起動しない、あるいはシリアルナンバーを登録し正常にアクティベートされたはずの市販アプリがWindowsの再起動後に起動してみると毎回シリアルナンバーの入力を要求される、といった何故そうなるのか理解に苦しむような挙動を示すソフトがありました。

Padius DiscJuggler 6.0のレジストレーションダイアログWindows 10へのアップグレード後、このソフトでは起動の度にシリアルナンバーの入力が求められるようになってしまった

Padius DiscJuggler 6.0のレジストレーションダイアログ
Windows 10へのアップグレード後、このソフトでは起動の度にシリアルナンバーの入力が求められるようになってしまった

ただ、こうした不具合が発生しているのは相当特殊な部類に入るアプリやかなり極端な環境に限られているのも事実(※注4)で、多くの場合はこうした不具合によるデメリットよりも使い勝手の改善によるメリットの方が大きいのもまた確かです。

 ※注4:ちなみにシリアルナンバーの入力を毎回求められる問題は、フランスのPadius社が発売していたDiscJuggler 6.0という既にメーカーが開発と販売を終了した古い光学メディアライティングソフトで起きました。

さらに、ここ数年の間にリリースされたソフトならば、例えばメーカーが倒産するなどよほどのことがない限りは不具合があってもWindows 10対応のアップデート版が提供されており、またそうでなくともWindows 8対応のアップデートが提供されていればWindows 10で正常動作するようになる(※注5)ことが期待出来ます。

 ※注5:筆者が確認した範囲では、Windows 7からWindows 10へのアップグレード後に正常動作しなかったWindows 7対応ソフトでもWindows 8あるいはWindows 8.1のx64版対応とするための修正モジュール等が提供されていたものについては、概ねそれらの修正の適用後にWindows 10環境で正常動作するようになっています。

重要な改善とドライバサポート問題が混在するサウンド

筆者所有のマシンのWindows 10上でDirectX 診断ツールを実行した状態

筆者所有のマシンのWindows 10上でDirectX 診断ツールを実行した状態

特に、サウンド機能周辺の改善・改良は結構重要なものが多く、例えばこれまでDirect Soundに対応していなかった、WDM・ASIOのみ対応のサウンドデバイスでDirect Sound対応のゲームのBGMが再生可能となったりしています(※注6)。

 ※注6:例えば筆者が長年愛用のドイツRME社製PCIバス対応オーディオカードであるHammerfall DSP 9632(HDSP 9632)はWindows 7などではDirect Xに対応するWindowsに標準搭載のdxdiag.exe(DirectX 診断ツール)でDirect Soundデバイスをチェックしても一切認識されず、RME社によるドライバ更新履歴でも一度もDirect Soundへの言及がなかったのですが、Windows 10環境ではなぜかこのカードの各チャネルがDirect Soundで検出され、Direct Soundに対応する各種ゲームでも正常に音が出力されるようになっています。

このあたりの互換性に関わるトレードオフがどうなっているのか、日々アップデートが続いていることもあってか、その全貌は未だ明らかではありません。

ただ、そうして使い勝手が良くなった部分が多々ある反面、他社製オーディオデバイスを含めASIO対応機種のWindows 10対応ドライバの更新履歴でマルチメディアデバイスのCPUタスク占拠時間などの優先度を決めるMMCSSに関わる不具合への対応やMMCSS新規サポートなどといった文言が並んでおり、少なくとも現状のWindows 10では特にレイテンシの問題がタイトかつシビアなASIOで問題が露顕しやすいことは見て取れます。

このため特にDTMが目的でWindowsを使用している方は、(さすがに正式リリースから9ヶ月も経つと大抵の各社現行製品や現行サポート対象製品で対応や対策が完了しているものの)Windows 10へのアップグレードにあたってそのマシンで自分が使用しているオーディオ/サウンドデバイスの最新版ドライバやDTMソフトウェアのアップデータ提供状況についてチェックが必要でしょう。

また、Windows 10ではマルチメディアデバイス、ことにサウンドカード関係で各社の古いデバイスのドライバサポートがかなりばっさりと切り捨てられており、例えばWindows XP末期からWindows 7初期にかけて一世を風靡したVIA社のEnvy24系サウンドコントローラ(※注7)を搭載するサウンド/オーディオカードではWindows 10用ドライバがコントローラチップ開発元であるVIA社自身から提供されておらず(※注8)、MicrosoftがWindows 10に同梱で提供しているInBoxドライバでは全機能が利用出来ない、デバイスとしては認識されるが音が出ないといった問題が発生しています。

 ※注7:Envy 24・Envy 24HT・Envy 24HT-Sなど。元々はイギリスのICEnsemble社が1990年代末に開発したPCIバス対応のサウンドコントローラチップで、モデルによってサポートされる機能に差があるものの192KHz 24ビットPCM再生や7.1チャネルサラウンド出力に対応するなど基本性能が優れていたことから、2002年の台湾のVIA社による同社買収以降PCIバススロットの撤廃が進む頃まで世界的に広く販売されました。
 ※注8:同社サイトではEnvy 24系コントローラは「Legacy」かつ「EOL(End of Life)」扱いとなっていて、ほぼ完全にサポートが切られています。ちなみに、このシリーズを搭載していてそれなり以上のヒット作となったオンキヨーのSE-150PCI・SE-200PCIシリーズのサポートページを確認してみても、2010年10月で更新が止まったままで、今後Windows 10対応ドライバが提供されることは望み薄となっています。

VIAのEnvy24HTを搭載していたDTMカードの代表例の1つであるM-Audio Delta Audiophile 192のWindows 10ドライバ対応状況ご覧のとおり対応ドライバは一切提供されていない。一時期Envy 24系コントローラはDTM向け、一般向けを問わずかなりの数のサウンド/オーディオカードに採用されていたが、筆者の確認した範囲でWindows 10に対応したドライバがメーカーから提供されているケースは皆無である

VIAのEnvy24HTを搭載していたDTMカードの代表例の1つであるM-Audio Delta Audiophile 192のWindows 10ドライバ対応状況
ご覧のとおり対応ドライバは一切提供されていない。一時期Envy 24系コントローラはDTM向け、一般向けを問わずかなりの数のサウンド/オーディオカードに採用されていたが、筆者の確認した範囲でWindows 10に対応したドライバがメーカーから提供されているケースは皆無である

そのため、これらEnvy 24系チップを搭載したカードを使用している方は、今後カードメーカーから独自にWindows 10対応ドライバが提供されていない限り、対応ドライバのあるサウンドデバイスに交換することを推奨されるというかなり困った状況に陥ってしまっています。

こうした状況はサウンドカード最大手のCreativeでも同様で、一部製品について日本のCreativeの公式サイトではドライバが提供されていないが(その製品が日本より遅くまで販売されていた)米国のサイトでは提供されている、といった結構理不尽というか会社の都合だけが前面に押し出されたようなサポート状況が露呈しています。

まぁ、この辺は今ならUSB接続のサウンド/オーディオデバイスを買えば済む話ではあるのですが、ASIO対応のきちんとしたオーディオデバイスはそれなりに高価であるため、現在DTM用途でWindows 7マシンを使用している人は検討を要する部分です。

後編ではグラフィックスカードの交換やWindows 10へのアップグレード可否判断、アップグレード手順などについて考えます。

▼参考リンク
Windows 10 アップグレードガイド TOP – Microsoft atLife
Windows 10 の仕様とシステム要件 – マイクロソフト
Windows 10(Windows 10メディア作成ツールダウンロードページ)

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