Oculus Rift(右)2016年3月29日に出荷開始が発表されたのだが・・・

出荷遅れは画期的ハイテク製品のさだめ?~製品版Oculus Riftはいつ届く~

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by [2016年4月13日]

Oculus Rift(右)2016年3月29日に出荷開始が発表されたのだが……

Oculus Rift(右)
2016年3月29日に出荷開始が発表されたのだが……

今年の1月7日に予約が始まり、3月末に発売開始されたOculus Rift。

しかし、1月7日の深夜に予約手続きを行い、3月発送との通知を受けていた筆者の下には、発売開始当日どころかエイプリルフールになっても(ある程度予想していたように)Oculusからの発送通知は届かず、そればかりか4月2日になって発送が遅れていて4月12日にならないといつ発送できるかの通知もできない旨の謝罪メールが届く有様でした。

2016年4月12日に更新された筆者のOculus オーダーヒストリーページEstimated Ship Dateが5/23/2016 - 6/2/2016となっている

2016年4月12日に更新された筆者のOculus オーダーヒストリーページ
Estimated Ship Dateが5/23/2016 – 6/2/2016となっている

そして4月12日、ようやく更新された筆者のオーダーヒストリーページを確認してみると、

 Estimated Ship Date(おおよその配達日)

の欄が

 5/23/2016 – 6/2/2016

に更新されていました。

つまり、予約開始初日に、それも予約開始直後に予約した筆者でも当初の発送予定時期から2ヶ月ほど出荷が遅延している(※注1)ということで、生産で何らかの不都合・不具合が生じているのは明らかです。

 ※注1:海外での報道では発売日当日に出荷された幸運な人もいたようです。このあたりの状況から考えると、1月7日予約でも遅くに予約手続きを行った人ほどこれより遅延が大きくなる可能性が高いと言えます。

ネット上での反応を見ていると、やはりというかこの出荷時期遅延は予約者・予約時間帯によってかなり広範囲にばらついているようで、記事執筆時点で予約を行った場合、8月まで出荷時期が遅れることが案内されています。

そしてこの点については、筆者が受け取った謝罪メールによれば

 We’ve been working through an unexpected component shortage, and unfortunately, that issue has impacted the original shipping estimates for some early customers.
 (我々は予想外の部品不足に取り組んできました、そして残念ながら、その問題は一部の初期顧客向け出荷時期見積りに影響を及ぼすようになってきています)

とのことでした。

この種の問題が生じるのは、つまり部品供給元各社のいずれかで生産歩留まりが期待通りに上がらず、部品を予定数量予定期日に供給できなかったと考えられます。

加えて言えば、まるで届いた順に部品を組み付けて出荷しているような今回の出荷時期通知状況から判断するに、現在もなお問題の部品の歩留まり問題は根本的には解決しておらず、状況によっては更に遅れる可能性があることが推定できます。

どの部品が不足している?

この種の歩留まり問題が「予想外」に発生するのは、おおよそディスプレイパネル周りかプロセッサ周りと考えてよろしいでしょう。

汎用の部品であれば当初の供給元で何か起きてもセカンドソースを確保すればよほどのこと(※注2)がない限り、他の供給元から供給を受けられるのですが、例えばカスタマイズして設計されたASICによる専用プロセッサや特別な解像度・サイズのディスプレイパネルとなると、おいそれと生産委託先を増やすこともできません。

 ※注2:例えばそれらの部品製造元最大手の工場が爆発事故や天災などによって重大な被害を受け、長期的に当該部品の市中供給量が激減した場合など。先年の東日本大震災の際には、茨城県に所在した自動車用制御マイコン最大手のルネサスエレクトロニクスの工場が被災し、同工場が担当していた汎用部品もカスタマイズ品も全て生産がストップしてしまったため、同工場製チップの供給を受けていた世界中の自動車メーカーが生産ラインストップの危機に陥りました。さすがにこの際は、影響があまりに甚大であったことから関係各社が総力を挙げて応援・支援を行い、当初復旧に1年~2年かかると見積もられていたところをわずか3ヶ月足らずで製品出荷できるところまで復旧したことが知られています。こうした、大災害が起きたような事例を別にすれば、汎用部品の供給で「予想外」の部品不足というのは考えにくい状況です。

特に今回のOculus Riftの場合は解像度が1,080×1,200ピクセルでリフレッシュレートが90Hzと他にない特殊な有機ELディスプレイパネルを2枚ずつ搭載することが明らかとなっており、恐らくこれがネックになっていると推測できます。

早期発売を優先するか、十分な供給を優先するか

PlayStation VR性能的にはOculus Riftよりも若干下のレンジに位置する製品であるが、世界的に多数が出荷されているPlayStation 4の周辺機器としての位置づけであり、またWindowsへの将来的な対応検討も報じられており、あなどれない

PlayStation VR
性能的にはOculus Riftよりも若干下のレンジに位置する製品であるが、世界的に多数が出荷されているPlayStation 4の周辺機器としての位置づけであり、またWindowsへの将来的な対応検討も報じられており、あなどれない

ここで筆者が思い浮かべたのは、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEI:現・ソニー・インタラクティブエンタテインメント)が2016年3月15日にPlayStation VRの発売日と価格を発表した際の関係者インタビューです。

そのいずれでも、何故今年10月上旬まで発売時期が遅れたかについての質問がなされていたのですが、そこでは期待感を考慮しての遅れ、つまりローンチ時に十分な製品数量を供給するための準備期間の確保と、その間にアプリを開発する各デベロッパーに(十分とは言えないまでも)クオリティを高めるための開発期間を提供するため、発売時期を遅らせたことが語られていました。

拙速を取るか巧遅を選ぶかは各メーカーの戦略ということになる(※注3)のですが、VRデバイスに対する期待が高まる中で、それも発売後すぐに製品を入手できた人々が(少数でも)いる状況で、出荷時期の遅延が通告されるというのは正直あまりよいことではありません。

 ※注3:ソニーの選択した発売時期は明らかに年末商戦をターゲットとしたもので、なおのこと十分な数量の確保が必要です。

何より、「おあずけ」を喰らった予約者にとってはその製品がいかに素晴らしいか、その体験を何ヶ月も聞かされ続けるというのは本当に苦痛でしかありませんし、高額な製品ゆえいつクレジットカードから代金を引き落とされるのか判らない状況が続くというのも、財政的に余裕のある人ならばともかく、自由にできる金額の限られている人にとってはほとんど拷問でしかありません。

そして、現在通知されている出荷時期がその通りに履行される保証もないのです。

2016年4月12日に筆者の下へ届いたOculusによるオーダーヒストリースページ更新の連絡。2016年4月1日11時59分(太平洋夏時間)までの受注分について送料・手数料をOculus側が負担することが通知されている

2016年4月12日に筆者の下へ届いたOculusによるオーダーヒストリーページ更新の連絡。

なおこの遅延についての対応として、今回届いたメールで

We’ll also cover all shipping and handling costs for orders placed through 11:59 PDT on April 1, 2016.
(また、 太平洋夏時間にて2016年4月1日 11:59までの発注のすべての送料と手数料コストを我々が負担します)

との一文が有り、当初10,800円と告知されていた送料についての記述が筆者のオーダーヒストリーページから消えていました。

財政的に色々厳しい筆者などからすると、これはこれで嬉しい話ではありますが、その代償として製品を手にする時期が2ヶ月も遅くなることを考えると、全く喜べない話ではあります。

恐らく、会社の財務状況から3月末の発売をどうしても動かせなかったのではないかと推測しますが、ローンチ時に一括して十分な出荷台数を確保できなかったことは、この送料・手数料負担やPlayStation VRが将来的なWindowsへの対応を検討していることが報じられる状況も踏まえて考えると、長期的・将来的に小さくない影響をOculusにもたらすのではないかと筆者は考えます(※注4)。

 ※注4:過去の製品で、同様に発売日に十分な数量を揃えられなかったためにスタートダッシュによるシェア確保に失敗したケースはかなりの数に上ります。

まぁ、あのMicrosoftでさえ、Xbox 360の発売時(2005年)にGPUチップの十分な供給を受けられずスタートダッシュで下手を打った(※注5)という話もあるので、半導体・ディスプレイデバイス系部品の歩留まり問題は本当に難しいのですが、十分な供給数量を確保できるところまで発売時期を遅らせるというのもソニーのようにブランド力・資金力が相応に大きな大手でなければ難しいところで、この種の画期的ハイテク製品の適切な発売タイミング見極めは本当に難しいと言えます。

 ※注5:ATi Technologies(現・Advanced Micro Devices:AMD)が開発した史上初のユニファイド・シェーダー搭載GPUであるコードネーム“Xenos”を搭載していたのですが、これのチップ生産を委託されていた日本電気で十分な歩留まりが得られず供給数量が予定を下回り、結果として発売直後の需要に充分応えきれませんでした。

筆者としては、今回5月末~6月初頭と案内された出荷時期が守られることを切に祈らずにはいられません。

▼参考リンク
Oculus

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