アイキャッチ画像

また一歩、星新一に近づいた『きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ』

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

by [2016年4月05日]

「ショートショート(短編小説)の神様」と呼ばれる星新一。彼の作品は「理系文学」とも言われています。彼の想像力は、現実の科学をも強烈に刺激します。将来、いまの世の中にないモノを開発していきたいと考えている、一理系学生として、星新一のように優れた発想力の持ち主の作品は、自分の中にぜひ取り入れていきたい物の一つです。
そんな「理系文学」を土俵に、アイディアとその先にある物語を競う賞として、開催されているのが「星新一賞」です。

人間以外の応募作品も受け付けます……!?

次のスクリーンショットは、星新一賞のホームページの募集詳細の一部です。

無題

なんと、

人間以外(人工知能等)の応募作品も受付けます。

との記載があります。
では、人間以外の誰(?)が「星新一賞」に応募しているというのでしょうか…?

人工知能にクリエイティブな表現はできるのか?

以前から人工知能によるクリエイティブな作品を作ろうという動きは、音楽や絵などであります。例えば、人工知能で絵を描くソフト『Aaron(アーロン)』、自動作曲システム『オルフェウス』です。しかし、音楽や絵の場合、適当に音や色を配置しただけでも「新しい!」と評価されたりもします。また文学でも、俳句や和歌が人工知能によって創作されています。例えば、俳句を作る『Hitch Haiku』、和歌を作る『星野しずる』、官能小説を作る『七度文庫』」です。俳句と和歌に関して言えば、文字数の制限があるため、フレーズをランダムに組み合わせれば、それなりのものができる可能性は高いです。また、官能小説はシチュエーションが限定的で、目的がはっきりしているため、自動生成しやすいようです。

無題

これらのジャンルと違って、文字数の制約もなく、目的が限定されておらず、あらゆる表現やシチュエーションが可能な小説において、質の高いものを人工知能に創作させるのは、非常に困難なチャレンジです。

そんな小説を執筆する人工知能の開発にチャレンジしているのが『きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ』です。
このプロジェクトが立ち上がったのは2012年で、星新一の作品の文章の長さや扱っている単語、ストーリーの構造などの特徴を人工知能で解析して、新しい作品を作りだしています。

「星新一賞」一時審査通過の快挙!!

そしてなんと『作家ですのよ』が「星新一賞」の一時審査を通過したというのです。

人工知能(AI)による小説の創作に取り組んでいる研究者らは21日、第3回日経「星新一賞」(日本経済新聞社主催)に応募した4作品についての報告会を東京都内で開いた。作品の一部は1次審査を通過。(日本経済新聞より)

もちろん、作品は人工知能によって作られたものであることは伏せて応募しています。どの作品が一次審査を通過したのかは発表されていませんが、作品は『作家ですのよ』ホームページの成果作品のページで見ることができます。ぜひ一度、作品を読んでもらいたいのですが、どの作品も人工知能によって生成されたものとは思えないくらい自然な文章となっています。「本当は、人工知能が作った文章を、あとで人間が手直ししているんじゃないかな?」なんて思ったりもしてしまいますが『作家ですのよ』の文章生成部分を担当している名古屋大学教授の佐藤理史氏によると「人間は一切手を加えていない」そうです。

人工知能による星新一風小説の作り方は?

『作家ですのよ』は、文章生成部分だけを自動化しています。小説全体の構造を決め、小説に登場するいろんな属性をパラメータ化し、設定する作業は人間が行っています。人工知能はその結果をもとに、小説となる日本語の文章を生成します。ソフトウエア開発でいうと、昔ならCASEツール、今なら超高速開発ツールのように小説を自動生成しています。

このように現段階では「人間が8、人工知能が2」を作成していると言われています。とはいうものの、プロ並みの小説を創作する難易度は、囲碁よりも数段上です。最近、囲碁で人間に勝ったGoogle『DeepMind』が話題になっています。囲碁は、将棋やチェスに比べると組み合わせの数は多いのですが、それでもルールや勝ち負けが明確なゲームです。それに比べると、小説というのは良し悪しの判定や、そもそも小説であるか否かの定義が非常に曖昧です。さらに、組み合わせの数も桁外れに多いです。囲碁の初手は361通りなのに対して、小説の初めの単語は約10万通りあります。これが5,000語の短編小説になると、その組み合わせは、10万の5,000乗も存在するのです!!!

このように、人工知能による小説の創作というのは非常に無謀な挑戦にも思える試みです。しかし、もしこれが成功すれば、いま、人々が多く時間を費やしている文章の作成(例えば、報告書や申告書類、マニュアルなど)を人工知能に任せられる日がくるかもしれません。

[参考リンク]
第3回 日経「星新一賞」公式ウェブサイト
きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ
日本経済新聞「人工知能創作小説、一部が「星新一賞」1次審査通過」
自動作曲システム Orpheus(オルフェウス)
Hitch-Haiku
星野しずるの犬猿短歌
官能小説自動生成ソフト七度文庫

タグ:
PageTopへ