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カジュゲとソシャゲの間を狙え! 坂本達夫氏が語る「アプリ内課金が小規模開発者にもたらす可能性」

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by [2016年4月01日]

株式会社VOYAGE GROUP 渋谷ファーストプレイスオフィスにて、アプリマネタイズのトレンドが分かるセミナーイベント「アドフリくんマネタイズナイトVol.7」が開催されました。本記事では、アプリマーケティングアドバイザーの坂本達夫氏の講演より、カジュアルゲームにどう課金要素を組み込み、収益を挙げていくのかというノウハウをお伝えします。

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“カジュゲ”と”ソシャゲ”の間『中年騎士ヤスヒロ』

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クリスマスのコスプレをしたヤスヒロの勇姿

『中年騎士ヤスヒロ』(以下ヤスヒロ)は、2015年の10月にリリースしたゲームで、ポラリスエックスとしては初めてのタイトルです。もともと韓国で出ていたゲームを日本向けにローカライズして出しました。ゲームシステムはRPGで、40代独身のオジサンが敵を倒して武器・ステータスなどを強化しながら塔を登っていく、というものです。難しい操作やガチャはなく、基本的には放置していれば勝手にどんどん進んでくれます。

カジュアルですがやりこみ要素もあって長く遊べるゲームです。いわゆるソシャゲ(ソーシャルゲーム)のように、最初に何十MBもダウンロードしたりチュートリアルが10分も続いたりといったこともないのでサクッと始められるという、カジュゲとソシャゲの良いところを取ってきたようなゲームとなっています。

ここからはこのゲームが、広告でのマネタイズに加えて、どのように課金を活用しているかをご紹介します。

わずか3人でも高成果

課金のゲームというと売り上げランキング上位のソシャゲが思いつきますが、ソシャゲは作るのはもちろん、リリース後のイベントやサポートも大変で、運営に何十人もかけているという話をよく耳にします。

ヤスヒロは、想像に難くないと思いますが、かなり少人数で運営しています。もともとの開発をした韓国のチームは、ゲームデザイナー、エンジニア、グラフィッカーの3人チームです。日本でローカライズしているチームは社長、通訳、マーケティング、サポートの4人ですが、全員がフルタイムで運営しているわけではないので実質的には3人くらいのチームです。

アプリ内課金が小規模開発者にもたらす可能性 〜「中年騎士ヤスヒロ」の事例〜 @tatsuosakamoto from Tatsuo Sakamoto

ヤスヒロは、この少ない人数でもかなり良い成果を挙げています。ダウンロード数は最近10万DLを突破し、現在も1日数百DLを維持しています。売上は最盛期で数十万~100万円、最近では数万~10万円となっています。リリース開始から5ヶ月以上経っていますが、売上は安定的に伸びています。グラフの青い線が累計DL数、赤い線が日別の売上を表しています。

アプリ内課金が小規模開発者にもたらす可能性 〜「中年騎士ヤスヒロ」の事例〜 @tatsuosakamoto from Tatsuo Sakamoto

1DLあたりの売上は「150~200円で上々」と言われていますが、ヤスヒロは「もう少しで300円」という勢いになっています。売上の比率は課金:広告=7:3と、課金メインで収益化していますが、課金しないユーザーからも広告で無視できないぐらいの収益をあげています。DAU(1日あたりのアクティブユーザー数)は5,000人前後で安定しています。

成果の裏に努力あり

このような高い成果を達成するため、色々なことをやってきました。

まず、リリース後もアップデートを何回かやっています。もともと韓国でも新しくコンテンツを追加したりしているので、日本でも新キャラを出す、ヤスヒロにコスチュームを着せて強化する、背景やBGMをクリスマス風にするなど、細かくアップデートを行っています。アップデート後にはTapjoyの仕組みを使って「アップデートしたよ」といったプッシュ通知も送っています。プッシュ通知だけでアクティブユーザー数がしばらく伸びたりするので、本当はもっとやりたいと思っています。

また、App StoreやGoogle Playなどに動画を載せると良いのでは? と思って、iCON CASTというサービスを使ってYouTuberさんに動画も作ってもらいました。

もともとBGMだけの動画に、声優の後輩にお願いして、関西弁でナレーションを入れてもらいました。「ナレーションの有る無しでその後のユーザーの動きが違うんじゃないか!?」と思ってTwitterで動画広告を出したんですが、全く違いは出ず、完全に僕らの自己満足でした(笑)。

この他、自分たちでプレスリリースを出したり、広告出稿もやっています。Twitterでは、株式会社鮭熊さんにお世話になっています。鮭熊さんはWeb広告の代理店のような会社で、1日あたり数千~1万円ほどしか出稿していないのですが、複数のクリエイティブを回したり文言を変えたりなど、SNSでの広告をかなり細かく運用してくれます。そのおかげで1DLが平均100~150円で獲得できています。1DLあたり「もう少しで300円」くらいなので、広告を打てば打つほど黒字になるという状態です。広告経由で獲得したユーザーからの売上もきちんとトラッキングしていて(SDKはAppsFlyerを使用)、ROAS(広告費用対効果)がプラスになるように運用しています。

課金はメリットばかり!

課金をやってよかったことは大きく2つあります。

1つは広告が打てるようになったことです。DL数を上げるには当然ユーザーの目に触れることが大事で、そのために手っ取り早いのがApp StoreやGoogle Playのランキング上位に入ることです。でも、個人や小さいチームが出しているゲームが大規模なソシャゲと競ってランキングの上位に出る、というのはブーストなどをやらない限り厳しいです。ヤスヒロでは細く長く1日数百ずつダウンロードされていますが、決してランキング上位に入っているわけではありません。

ではユーザーがどこから来ているのかといえば、多くが広告からなんです。広告にかけた費用より売上が大きければ黒字になるので、運用さえきちんとできれば広告をやらない理由はないんです。Twitter広告ではこれまで160万円くらい出稿して、この時点で課金のみで200万円が回収できています。広告による売上も入れるとおそらく100万円前後の利益になると思われます。

このように、1ユーザーあたりの売上が上がれば広告はどんどんやったほうがいいんです。これくらいの単価で課金ユーザーが獲得できるところがあればもっともっと増やしていきたいと思っています。

もう1つのメリット、これはゲームの内容にもよると思いますが、収益が長期間にわたって得られることです。ゲームを出した直後はDL数が伸びていくと思いますが、一定期間経つとDL数が落ちてアクティブユーザー数も減ってしまいます。当然課金でも広告でも利益が得られなくなり、これでは生活できなくなってしまうので新しいゲームを……というように、短いサイクルでゲームを作り続けなければならないという状況になりがちだと思います。

しかし、まとまった収益が長い期間にわたって得られると、新しいゲームを作るための構想をゆっくりと練ることができます。実際、ポラリスエックスはまだヤスヒロしか出しておらず、次のヤスヒロの企画や他タイトルの検討を進めているのですが、このように「ゆっくりやっても(会社が)死なない」というのはかなり大きいかなと思っています。

『感情をデザイン』が課金マネタイズのカギ

とりあえずゲームだけ作って、バナー広告入れてゲームオーバーのときに動画広告を見るとコンティニューできるようにしようか、という考えが浅い作り方だとなかなか課金ではうまくいかないです。

ではどうすればいいのか? 僕自身もまだ研究中ですが、一番のカギは「ユーザーの感情をコントロール・デザインする」ことだと思います。

ヤスヒロでは「300階まで来たけど、ここから先に進めない」という”壁”をいくつか設定してあります。もちろんコツコツ頑張って経験値を貯めれば突破できるようにはなっています。そのような「進めないけど今やめるのは悔しいな」というタイミングで課金という選択肢を入れることで初めてユーザーは課金してくれるんです。サクサク進めすぎても、ストレスを与えすぎてゲームを辞められてもダメなので難しいですが、そのバランスをきちんと取ることが重要です。ストレス要素をもともと組み込んでおいて、それを課金によって取り除けるようにする、それによってユーザーのテンションを上げる仕組みがあれば、長期間プレイ&課金してくれると思っています。

次に僕らが日本に持ってくるゲームを探すときには、実際に長時間プレイしてみて課金したくなるかどうかを重視して見ています。課金したくなる感情にどういう種類があるのかは、アプリマーケティング研究所さんがちょっと前に出していた、課金する理由を国別でイラストにしたものがかなり参考になります。

この傾向にこだわらなければならないということはありませんが、「このゲームにユーザーが課金するとしたらこういう理由で課金するよね」というのをどこまで深く突き詰めて考えられるかがカギだと思っています。

カジュゲとソシャゲの間が狙い目

ちょっと俯瞰的な見方ですが、今までのカジュアルゲームは、広告収益は多いけど課金収益はほぼゼロ、逆にソシャゲは課金で儲けて広告は入れない、という感じでした。でも、海外ではその真ん中のハイブリッドモデルが出てきています。例えば『クロッシーロード』では広告:課金=7:3くらいですし、その他少人数でヒットさせているタイトルも広告と課金を組み合わせることでアクティブユーザー数を維持し、収益でも成果を挙げています。

アプリ内課金が小規模開発者にもたらす可能性 〜「中年騎士ヤスヒロ」の事例〜 @tatsuosakamoto from Tatsuo Sakamoto

日本のハイブリッドモデルは、まだホワイトスペースなので、広告メインのカジュゲと課金メインのソシャゲ両方よりも魅力的なゲームを作れるんじゃないかと思います。これを意識してこの市場で勝っていこうというのが、非ソシャゲのゲーム屋さんの課題となっていくのではないでしょうか?

▼参考リンク
「中年騎士ヤスヒロ」公式オリジナルTシャツver1
中年騎士ヤスヒロ(GooglePlay)
中年騎士ヤスヒロ(AppStore )
株式会社ポラリスエックス
株式会社鮭熊
【アプリ×動画広告×課金】アドフリくんマネタイズナイトVol.7@渋谷【無料】

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