Apple iMac Retinaディスプレイ搭載モデル現行のiMac 2モデル。いずれも高解像度の美麗な液晶ディスプレイを搭載し普段使いには全く不満のない出来の機種であるが、ことVRデバイスの接続となるとGPU性能の不足が露呈し、さらにその方面での拡張性が皆無であることが致命傷となる

Oculus社創業者(現時点での)RiftのMac非対応を公言~各機種をVRの観点でチェックしてみる~前編

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by [2016年3月29日]

Palmer Luckey氏の発言を報じたSHACKNEWSのページ

Palmer Luckey氏の発言を報じたSHACKNEWSのページ

いよいよ製品版の出荷が始まったOculus Riftですが、先日同社の創業者であるPalmer Luckey氏が(Oculus Riftの動作条件を満たす機種が存在しないために)Macに対応しないと発言したことが明らかになりました。

そこで今回は、何故MacがOculus Riftに対応できないのか、考えてみたいと思います。

Windowsパソコンとは若干異なった道を歩むMac

今更ですが、ここでMacのシリーズラインナップを整理しておきたいと思います。

Intel製CPUを搭載するようになってからのMacのシリーズラインナップは機能・用途別に以下の6系統に大別されます。

 ○Mac Pro:クリエーター向けプロ用デスクトップ
 ○Mac Mini:コンパクトデスクトップ
 ○iMac:ディスプレイ一体型デスクトップ
 ○MacBook Pro:ハイエンドノート
 ○MacBook Air:薄型ノート
 ○MacBook:コンパクトノート

どうにもならないノート機

Apple MacBookご覧の通り非常にエレガントなデザインの機種だが、そもそもUSBポートがType-Cソケット1つのみという大変に潔すぎる設計で、GPU性能以前にこの段階でもOculus の提示した推奨ハードウェアの要件を満たさない

Apple MacBook
ご覧の通り非常にエレガントなデザインの機種だが、そもそもUSBポートがType-Cソケット1つのみという大変に潔すぎる設計で、GPU性能以前にこの段階でもOculus の提示した推奨ハードウェアの要件を満たさない

今回問題となるOculus Riftへの対応という観点では、まずノート3シリーズは最初から除外して構わない状態です。

これらの機種は公式サイトでCPU型番が明確に示されていませんが、現行モデルで搭載GPUの型番と対応メモリの種類(LPDDR3あるいはDDR3L)からMacBook ProとMacBook Airがコードネーム「Broadwell-U」と呼ばれる第5世代Core iプロセッサを、MacBookが「Broadwell-Y」こと第五世代Core Mプロセッサを、それぞれ搭載していることは明白です。

このため、CPU命令セットレベルでは要件を満たすのですが、いずれの機種も処理能力よりも消費電力低減に性能を振った特性であるため動作クロック周波数が低く(※注1)、また16GB搭載可能なMacBook Pro以外はメモリが最大でも8GB搭載で、「8GB+」というOculus Riftの推奨条件にぎりぎりで足りない(※注2)状況です。

 ※注1:CPUコアの動作クロック周波数が1.1GHzあるいは1.2GHz(いずれもデュアルコア)で最初から超低消費電力動作を謳うCore Mプロセッサ搭載のMacBookは論外としても、MacBook AirでBTOオプション適用により2.2GHzデュアルコアのCore i7搭載が上限、MacBook Proでも2.8GHzクアッドコアのCore i7が上限となっており、一世代古いとは言え定格で3.3GHzクアッドコア、ターボブースト時では最大3.7GHzに達するCore i5-4590「以上」というOculus Riftの推奨条件に手が届いていません。
 ※注2:そもそもこれらの機種ではメインメモリの一部をGPUのビデオメモリとして占有・利用するため、例え8GBフル実装でもOS側(≒CPUコア側)からはそれ以下の容量しか認識・利用できません。つまり、この種のメモリが最大でも8GBしか積めない、そしてGPUをCPUに内蔵していてメインメモリの一部をビデオメモリとして利用するタイプのマシンは、それだけで推奨要件を満たせていないということになります。なお、MacBook Proに(画面解像度が製品版より低い)dk2版のOculus Riftを接続したところ結構画面がカクついた≒処理落ちが発生していたという報告もあって、やはりこれらの機種でのスムーズな動作は望み薄と考えるべきでしょう。

Intel製CPU搭載Macの統合GPUについて説明したAppleのページCPUとメインメモリを共有する統合GPUと専用のビデオメモリを搭載するディスクリートGPUの違いについて簡単に解説されている

Intel製CPU搭載Macの統合GPUについて説明したAppleのページ
CPUとメインメモリを共有する統合GPUと専用のビデオメモリを搭載するディスクリートGPUの違いについて簡単に解説されている

しかも、Intel Iris Graphics 6100やIntel Iris Pro Graphics(MacBook Pro)、Intel HD Graphics 6000(MacBook Air)、あるいはIntel HD Graphics 5300(MacBook)といったCPU内蔵GPUが標準GPUで、MacBook Proの15インチRetinaディスプレイモデルの、それも最上位モデルでやっと内蔵GPUとの自動切り替えによる外付けGPU(※注3)搭載があるという状況ですから、これらのノート各機種でOculus Riftがまともに動作することは全く期待できません。

 ※注3:AMDのRADEON R9 M370X(GDDR5 2GB)を搭載しています。ただし、型番の10の位が「7」となっていることや搭載DRAM容量が2GBしかないこと、それに製品発売後あちこちで発表されたこのGPUを搭載するMacBook Proのベンチマークテスト結果から、Oculus RiftのGPU推奨条件の最下限機種の一方であるRADEON R9 290(※最低でもメモリとしてGDDR5 4GBを搭載)の域に全く達していないことは明白です。

まぁ、ノートパソコンについてはWindowsパソコンでもGeForce GTX 980M搭載のほとんど冗談のような怪物級ゲーミングマシンでもなければ、大概の機種がCPU内蔵の統合GPUに依存する設計となっているため、Oculus Riftがまともに動作しないことが明らかになっていますから、これは致し方ないでしょう。

潰しの効かない現行デスクトップ機

Apple iMac Retinaディスプレイ搭載モデル現行のiMac 2モデル。いずれも高解像度の美麗な液晶ディスプレイを搭載し普段使いには全く不満のない出来の機種であるが、ことVRデバイスの接続となるとGPU性能の不足が露呈し、さらにその方面での拡張性が皆無であることが問題となる

Apple iMac Retinaディスプレイ搭載モデル
現行のiMac 2モデル。いずれも高解像度の美麗な液晶ディスプレイを搭載し普段使いには全く不満のない出来の機種であるが、ことVRデバイスの接続となるとGPU性能の不足が露呈し、さらにその方面での拡張性が皆無であることが問題となる

問題は、デスクトップ機です。

ノートパソコンのマザーボードを極薄・超小型の筐体に押し込んだようなMac Miniはお値段や容積などの点で対応しないのは仕方ないと言える(※注4)のですが、「並み外れたRetinaと、けた外れのRetina」と謳い、「究極のデスクトップ体験」を標榜するiMacでもCPUはどうにか及第点を出せるもののGPUが上位機種でもノートのIntel Iris Graphics 6100に毛が生えた程度のIntel Iris Graphics 6200搭載で外付けGPUを一切選択できないというのは全くいただけません。

 ※注4:CPU性能もGPU性能もノート3シリーズと大差なく、同様に期待できません。

このIntel Iris Graphics 6200は、これまでのIntel製のCPU内蔵GPUとしてはかなりの高性能を発揮して評判になったのですが、それは大変失礼ながら、そもそもそれまでのIntel製CPU内蔵GPUがあまりにひどい性能であったというだけの話でしかありません。

身も蓋もないことを言ってしまえば「高性能になった」と評されたIntel Iris Graphics 6200でさえ、こと3D描画性能という観点でディスクリートのGPUと比較すればPCショップなどで1万円~1万5千円ほどで売られているAMD RADEON R7シリーズのミドルレンジ機種と良い勝負といった程度の非常に貧弱な性能でしかない(※注5)のです。

 ※注5:さすがに数千円レベルの価格帯で販売されている、「とにかく表示できる画面数を増やすのが目的」といった感のあるローエンドのAMD RADEON R5シリーズクラスの機種が相手であればそろそろ圧勝できるようになってきていますが、それは正直に言ってしまうと今更自慢できる話ではありません。

これは5K解像度での動画再生や2Dデスクトップ表示などAppleが想定した利用状況においてであれば、Apple自身が製品紹介ページなどで主張するように問題なく快適に利用できますが、Oculus Riftが求めるような4K解像度相当での3Dグラフィックス描画に十分な性能はまるで備えていないのです。

これで、外付けGPUカード/モジュールの搭載が可能な設計となっていればまだしも潰しが効いたというか救いがあるのですが、CPU内蔵GPU以外の搭載を全く考慮していないのですから、Oculusがどうこう言う以前に3Dグラフィック描画性能の拡張性、アップグレーダビリティの観点ではどうにもならない設計であると言えます。

まぁ、Appleにはメモリ増設すらユーザーが自由に行えなかった初代Macintoshの頃から、いや更に遡ってApple IIの頃から、クローズドで拡張性が事実上皆無の機種とオープンで高い拡張性を備える機種の間で設計方針が行ったり来たりを繰り返し(※注6)、ローエンド~ミドルレンジのディスプレイ一体型モデルではほぼメインメモリとストレージ以外は選択の余地が皆無のクローズドな機種を出し続けてきた歴史があったりするのですが、こうしたクローズドなアーキテクチャは同世代のシリーズ各機種間での性能の均一化を約束/可能とする反面、こうして技術革新で新しいデバイスが登場し、それらを搭載する必要が生じた場合の対応を難しくするという問題があります。

 ※注6:特に今は亡きスティーブ・ジョブズが開発に関与した機種では、その是非はともかくとしてあの初代iMacをはじめクローズドかつ均質なハードウェア構成とされるケースが多々あって、ことによるとハードウェアとしては(恐らくは開発者らの考えで)何らかの内部拡張スロットが搭載されていても、製品発表時の仕様上はそうしたスロットが一切「なかったこと」にされたケースすらありました。遺憾ながら現在のAppleでも、(同じビジネスモデルを採用するiPhoneやiPadが商業的に大きな成功を収めたこともあって)そうしたユーザーの手による後々のハードウェア拡張(およびそれに伴うハードウェア仕様の多様化)を一切拒否するような設計が踏襲される傾向が強く、時代の変遷による技術の進歩について行けなくなった機種のユーザーは否応なしにマシンの買い換えを強いられるような状況となっています。

今回のOculus RiftをはじめとするVRデバイスの出現と、それに対応した高性能GPU搭載の必要性というのは、まさにこうした問題の典型です。高性能GPUを追加で搭載するための広帯域データ通信を可能とする拡張スロットも、高性能GPUを動作させるに十分なだけの電源容量も共に与えられていない現行のMac MiniやiMacでは、Apple側がそれらのVRデバイスの要求を充分満たすだけのスペックを備えた機種を発売し、それらに買い換えない限りはそもそもハードウェアの基本仕様の時点で対応できないのです。

それではハイエンドモデルのMac Proについてはどうでしょうか? 後編に続きます。

▼参考リンク
Oculus’ Palmer Luckey will consider Mac support if Apple ‘ever releases a good computer’ | Shacknews
Mac Pro – Apple(日本)
Mac Pro – パフォーマンス – Apple(日本)
Intel ベース Mac の統合ビデオについて – Apple サポート

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