「MAXぱわあ!」ゲーム画面必要な情報が綺麗に整理されて表示される、なかなか良くできた画面構成で、そのダイナミックな画角の選び方もあって、心沸き立つものがある。それだけに、現状では操作性に難がある印象を受けたのが少々残念であった

Ocufes Finalを見て歩く【その5】木造校舎ノ夜~富士山ビューワーVR~MAXぱわあ!

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by [2016年3月04日]

前回はおもしろい入力デバイスの展示を見てきました。

今回は実際に存在する事物を対象とするコンテンツを中心にご紹介いたします。

懐かしい木造校舎

木造校舎ノ夜ブース画面からは、ホラー的な怖さよりもどこか懐かしい空気が漂う

木造校舎ノ夜ブース
画面からは、ホラー的な怖さよりもどこか懐かしい空気が漂う

まずはirondrillさんの『木造校舎ノ夜』から。

筆者が子供の頃、地方の中核都市レベルであった地元の街では、老朽化が目立ち始めていた各小中学校で木造校舎の建て替えが急速に進行していました。

おかげで筆者は小学校入学から中学校卒業まで鉄筋コンクリートの真新しい校舎で過ごすことができた(※注1)のですが、それでも時折木造校舎から引き継がれたとおぼしき古びた木製の机や椅子を使う機会があり、木造校舎時代から使われていた古風な講堂がまだ残っていましたし、近隣の校区の学校にはまだまだ残っていましたから、木造校舎の姿を目にする機会は少なからずありました。

 ※注1:もっともその後県立高校に入学すると、鉄筋コンクリート造の筈なのに雨が少し降れば当たり前に雨漏りがあり、冬になればすきま風と共に粉雪が舞い込んでくるような凄まじい年代物の校舎が待ち構えていて、教室の外に設置されていた「非常階段」が「床板が腐って抜ける恐れがあって非常に危険なので使用しないように」と通達される「非常に危険な階段」であったなど、想像を絶するような状態で3年間を過ごすことになりました。

木造校舎ノ夜はiPhoneとVRアダプタの組み合わせで体験できた

木造校舎ノ夜はiPhoneとVRアダプタの組み合わせで体験できた

まぁ、今にして思えば木造校舎がそれなりの規模の工業都市で現役だった最後の時代を目にしたわけですが、今回ご紹介する『木造校舎ノ夜』はそんな筆者には懐かしい木造校舎を「主役」に据えたコンテンツです。

木造校舎ノ夜このようにいかにもなホラー仕立ての演出のための小道具が用意されていた

木造校舎ノ夜
このようにいかにもなホラー仕立ての演出のための小道具が用意されていた

このコンテンツ、体裁としては学校の怪談的なホラー仕立てで、怪しげな少女と何度も遭遇するのですが、そんなことが気にならなくなる位には舞台となる木造校舎の再現度が高く、また張り紙の1つ1つ、黒板に書かれた内容の1つ1つに至るまで実に濃やかに意が注がれており、何というか建築マニアでもある筆者としては、謎だの恐怖だのはほっぽり出して校舎を練り歩きそこに漂う空気を満喫するだけで充分過ぎるほど満足できる一品です。

そこで会場におられたirondrillのお二人にお尋ねしたところ、やはりというか、今も現存する木造校舎を取材してこの作品を作ったとのことでした。

木造校舎ノ夜教室内かつての木造校舎を知る者には懐かしい、さまざまな小道具の数々が郷愁を呼び起こす。黒板に書かれた文字の内容が微妙にマニアックだったりするのはご愛敬

木造校舎ノ夜教室内
かつての木造校舎を知る者には懐かしい、さまざまな小道具の数々が郷愁を呼び起こす。黒板に書かれた文字の内容が微妙にマニアックだったりするのはご愛敬

実際、教室内に置かれた机や椅子など、実物を見たことがなければちょっと再現するのが難しいような形状・色となっており、もう30年以上も前に使ったことのある実物を思い出してしまったことでありました。

第1回でご紹介した『戦艦大和VR復元計画』もそうでしたが、こうした現物を見たり触れたりすることの難しい/不可能な過去の事物を仮想空間内とはいえ実物大で再現するのは、様々な意味で価値のあることだと筆者は考えます。

特に、これほどの密度・再現度となると並大抵の手間ではなかった筈で、今後も更に完成度を高める作業が続くものと思いますが、それが果たしてどれほどの出来となるのか、期待して完成を待ちたいと思います。

これは航空写真の取り込みではない

富士山ビューワーVRブース素っ気ない印象のブースで、まさかそこからこれほど広大無辺な仮想空間への旅が始まるとは到底予測できなかった

富士山ビューワーVRブース
素っ気ない印象のブースで、まさかそこからこれほど広大無辺な仮想空間への旅が始まるとは到底予測できなかった

次は、Voxcell Designさんの『富士山ビューワーVR』です。

これはその名の通り、空から富士山を眺めるアプリです。

富士山は地理学的には成層火山と呼ばれる、同じ火口から噴出した溶岩が積み重なって形成された火山ですが、歴史的には浅間信仰の対象にして山岳信仰の霊場であり、今でも登山道以外の8合目より上の土地は富士山本宮浅間大社の所有する私有地となっています。

この富士山、その秀麗な山容の一方で登山の対象としては非常に峻厳な事で知られており、救急医療体制が整備され、ヘリコプターによる救助体制も整えられた現在もなお、毎年何人もの遭難による死亡・行方不明者が出続けています(※注2)。

 ※注2:最近は特に世界遺産指定のおかげもあって、無謀な軽装の登山客が増えて、それによる遭難も増えている由です。有名税というにはいささか重すぎる問題です。

そんな、近寄って見たいけども近寄るのが怖い富士山を、それも通常ならば救助ヘリにでも乗らなければまずお目にかかれないような、いやそれ以上の位置・角度から眺めることができるというわけです。

この『富士山ビューワーVR』には大きな特徴があります。

それは、仮想空間に構築された富士山が、航空写真などを元にして作成されたものでは無く、国土地理院が測量して作成した地形図などから得られた数値を元にして生成された、純然たる数値データによる地形となっていることです。

このため、適当なスケルトンにパノラマ写真を継ぎ合わせたテクスチャデータを貼り付けて作ったような場合と比較してどの向き、どの角度から見ても破綻が(理論上は)生じることがなく、上空からの鳥瞰でも低空からの俯瞰でも、自由自在に富士山を眺めることができるわけです。また、加えて言えば、国土地理院の公開地形図から作成したものであるため、衛星写真や航空写真などを使用する際に発生する権利問題が存在しないことも大きなメリットとなるでしょう。

さて、実際にOculus Riftを装着し『富士山ビューワVR』を体験させていただきました。

サンワサプライ「リングマウス プラス 400-MA040BK」今回富士山ビューワVRで視点移動の操作に使用したポインティングデバイスだが、既にメーカーで販売終了となった製品である。なかなか独特の構造の製品であるため、これの代替は意外と難しいかもしれない

サンワサプライ「リングマウス プラス 400-MA040BK」
今回富士山ビューワVRで視点移動の操作に使用したポインティングデバイスだが、既にメーカーで販売終了となった製品である。なかなか独特の構造の製品であるため、これの代替は意外と難しいかもしれない

このアプリでは、操作に指に嵌めたポインティングデバイス(※注3)を使って前進と後退のみ操作し、後は利用者の視線の向きに合わせて方向転換するというシンプルな操作体系を採用しています。

 ※注3:後で確認すると、以前サンワサプライが販売していた『リングマウス プラス 400-MA040BK』という名称の製品でした。

そのため、操作自体はすぐに慣れる事ができたのですが、問題はその操作で移動できる範囲です。何と、富士山周辺の何百キロ四方もの空間がデータ化され、その空間内を自由に飛行できるようになっていたのです。

富士山ビューワVRで山頂上空から火口部を望むこのように通常ならばまず見られないようなアングルで富士山をめぐる景観を愛でることができる

富士山ビューワVRで山頂上空から火口部を望む
このように通常ならばまず見られないようなアングルで富士山をめぐる景観を愛でることができる

どうせ富士山周辺の狭い範囲でしか移動できないのだろう、と思っていたのですが、これはうれしい誤算でした。

何しろ、三保の松原であろうがどこであろうが、そのエリア内に存在するのであればどこの景勝地からでも富士山を眺めることができ、そればかりか上空の雲海を飛んで移動することすら可能なのです。

こんな視点移動は実在するいかなる乗り物でもできるものではありませんから、これが体験できるだけでもこの『富士山ビューワVR』には大きな価値があります。

実際、富士山の写真はごく限られた航空機からの撮影のものを除くと必然的に地表からの視点となるため、構図がかなり制限されているのですが、このアプリで空中、それも北東方向から宝永山の火口を見下ろすと、それこそ銭湯の壁画から北斎の浮世絵に至るまで様々な形で見慣れてきたはずの富士山が、これまで見たことのない表情を現してきます。

私たちは富士山のことを知ったつもりでいたけど何も知らなかったんだ、と思い知らされたことでありました。

また、富士山の頂上を越えるようにして視点を移動させた時の印象の変化も新鮮で、限られたわずかな時間しか体験できないことが恨めしく思えさえしました。

やはりVRの真価の1つは、非日常を体験することにあるということなのでしょう。いや、本当に良いものを見せていただきました。

MMORG?

MAXぱわあ!ブース見るからにいかにも本格的なレーシングゲームで、期待が高まる

MAXぱわあ!ブース
見るからにいかにも本格的なレーシングゲームで、期待が高まる

3番目は株式会社SQさんの『MAXぱわあ!』です。

これはMMORG、つまり大規模多人数同時参加型オンラインレーシングゲームという聞き慣れないジャンルのゲームです。

名前からして、いわゆるMMORPGのレーシングゲーム版ということなのは予想できるのですが、一体レーシングゲームの何をどうMMO化しているのかは当初、筆者にはちょっと想像ができませんでした。

MAXぱわあ!ブースに貼られていたポスター今時、この手のレーシングゲームでも「萌え」の要素から無縁でいられないのか、と少々戦慄混じりに眺めてしまったが、暴走族に対する社会的な締め付けが特に厳しい昨今、広範なユーザーを獲得するにはこのような戦略もアリなのだろう

MAXぱわあ!ブースに貼られていたポスター
今時、この手のレーシングゲームでも「萌え」の要素から無縁でいられないのか、と少々戦慄混じりに眺めてしまったが、暴走族に対する社会的な締め付けが特に厳しい昨今、広範なユーザーを獲得するには、このような戦略もアリなのだろう

そこでブースに貼られていたポスターの掲載内容を確認してみたところ、要するにサーキットのコース上のあちこちでPvEやPvPのバトルが発生し、複数のプレイヤーキャラクターやNPCが絡み合いぶつかり合うことでイベントが進行したりするタイプのレースゲームということのようです。

このゲーム、開発は鳥取に本社を置く株式会社SQさんなのですが、プロデュースはかつてセガエンタープライゼズで『ハングオン』『アフターバーナー』などの名作の開発に携わり、その後元気株式会社で『キリーク・ザ・ブラッド』『首都高バトル』『玉繭物語』などのプロデュースを行った浜垣博志氏が担当しています。

MAXぱわあ!ゲーム画面必要な情報が綺麗に整理されて表示される、なかなか良くできた画面構成で、そのダイナミックな画角の選び方もあって、心沸き立つものがある。それだけに、現状ではGearVRでの操作性に難がある印象を受けたのが少々残念であった

MAXぱわあ!ゲーム画面
必要な情報が綺麗に整理されて表示される、なかなか良くできた画面構成で、そのダイナミックな画角の選び方もあって、心沸き立つものがある。それだけに、現状ではGearVRでの操作性に難がある印象を受けたのが少々残念であった

かつて絶頂期のセガ製大型筐体アーケードゲーム群にそれはそれなりに結構なお金を貢ぎ、建前はともかく実態としては半ば以上移植版のそれらのゲーム遊びたさにX68030(※注4)を買ったようなものであった筆者などは、この方の名前を聞いただけでも期待のボルテージがかなり上がってしまうのですが、特にそれがどのようなものであれレーシングゲームであるとなると、もう辛抱たまりません。

 ※注4:1993年にシャープが発売した、MC68EC030という32ビットCPUを搭載する国産独自規格パソコンシリーズ(X68000/X68030シリーズ)の最終機種。X68000/X68030シリーズはアーケードゲームの移植作が特に多かった事で知られています。

ちなみに登場する車種についてはさすがに何百種類というわけにはいかないようですが、現状でもある程度の数が用意されていて、チューンなどの要素も盛り込まれる由です。ただ、画面上に現れた車を見る限り(車にはあまり詳しくない筆者の目からすると)割と一般車寄りの車が多そうです。

そこで筆者もGearVRで実際に現状でのゲームをプレイさせていただいたのですが、操作自体はシンプルながら独特の操作性に手が追いつかず、コースアウトを繰り返してしまうなどかなり残念な結果になってしまいました。

この手のレーシングゲームは割と操作性命みたいな部分があって、その意味では右側面のあまり使い勝手のよろしくないタッチパッドを方向操作に利用するGearVRでは、元々この手のゲームを下手の横好き状態で遊んできた筆者にはまともにコースを周回することさえ難しい状況で、何というかハンドルタイプのコントローラが欲しい感じでした。

とはいえ、そんないささか不完全燃焼状態でプレイしても、レーシングゲームとしての基本的な部分でこのゲームの素性が悪くないのは伝わってきます。何というか、地を這うようなその視界と路面に吸い付くような車の走りは、下手でも遊んでみるとなかなか良い感じです。

他の環境でどうなっているのかを確認したわけでは無いので断言はできないのですが、また現状では販売を担当するパブリッシャーが決まっていないようなのですが、少なくともGearVR版については操作性の問題さえクリアできれば、これは大化けする可能性もあるのではないでしょうか。

以下、次回に続きます。

▼参考リンク
irodrill
voxcell design
リングマウスプラス(指マウス・5ボタン)400-MA040の販売商品 |通販ならサンワダイレクト
株式会社SQ|鳥取県鳥取市にあるホームページ制作会社、スマホアプリ制作、WEBサービス運営(※記事執筆時点ではこの会社公式サイトに『MAXぱわあ!』の情報掲載はない)
Oculus Festival in Japan | into VR

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