nanoSIM

「デュアルSIMスロット」ミステリー前編~何故LTE対応SIMが1枚しか利用できない?~

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by [2016年2月23日]

nanoSIMMVNO事業者とそのサービスの増加で、最近「格安SIM」の文字を目にする機会が増えてきました。

これまでですと、SIMというと機種変更やMNPによるキャリアの変更の際などに取り出す機会がある程度で、それ以外はずっと携帯電話やスマートフォンのSIMスロットに挿しっぱなしでその存在すら意識する事は希でした。

しかし、こうしたMVNO事業者の台頭で通話料金やサービスの内容に差が生じるようになってくると、またプリペイドタイプのSIMカードが提供されるようになってくると、そうも言っていられません。

実際、状況によってはNTTドコモ・au・ソフトバンクの国内大手3キャリアのSIMカードを挿しっぱなしにして使うのが(人によっては)ばからしくなるような料金格差が生じる訳で、もちろんMVNO事業者だから一律に安く上がるというものでも無いですし、それを選ぶことで利用できなくなるサービスがあることも理解しておく必要があるのですが、少なくとも今挿しているSIMカードが適切かどうか、他のキャリアのものに変更を検討すべきなのではないかといった形で望むと望まざるとに関わらず、ユーザー側がSIMカードの存在を意識せざるを得ない状況となりつつあります。

こうなってきて痛感させられるのが、最近の端末で使用されているSIMカードのあまりの小ささと抜き挿しの面倒さです。

ソニー・エリクソン BRAVIA Phone S004 のバッテリーケース部に設けられたMicro SIMリーダー(右下)この機種に限らず、携帯電話のSIMカードはこうして内蔵バッテリーを取り外さねば抜き挿しできない位置に設けられたリーダーに挿して使用するのが一般的で、使用中のSIMカード交換は基本的に考慮されていなかった

ソニー・エリクソン BRAVIA Phone S004 のバッテリーケース部に設けられたMicro SIMリーダー(右下)
この機種に限らず、携帯電話のSIMカードはこうして内蔵バッテリーを取り外さねば抜き挿しできない位置に設けられたリーダーに挿して使用するのが一般的で、使用中のSIMカード交換は基本的に考慮されていなかった

そもそも、通信キャリア大手3社などにとってみればSIMカードは一度挿せばそのユーザーが使用し続ける限り、またそのキャリアと契約し続ける限り、その端末が機種変更されるまでずっと挿しっぱなしになるデバイスであったのですからある意味当然の話ではあるのですが、一般に大手キャリアが提供する端末各機種のSIMスロットは頻繁なSIMカードの交換を前提とした構造にはなっていません。

もちろん、どの機種でもユーザー自身がSIMカードの抜き挿しが行えるように最低限の配慮は行われているのですが、それが普通にできるようになっているかと言えば、答えは否です。

iPhone 6 Plusで本体右側面のSIMスロットイジェクトピン孔にイジェクトピンを差し込んでSIMカードトレイを引き出した状態非常に細く剛性の高いピンでないと引き出せず、またnanoーSIMカードは非常に小さくピンセットが無ければまともにSIMカードトレイにセットするのも一苦労という状況である

iPhone 6 Plusで本体右側面のSIMスロットイジェクトピン孔にイジェクトピンを差し込んでSIMカードトレイを引き出した状態
非常に細く剛性の高いピンでないと引き出せず、またnanoーSIMカードは非常に小さくピンセットが無ければまともにSIMカードトレイにセットするのも一苦労という状況である

また、SIMカードそのものも端末そのもののダウンサイジングや機能の高度化・高性能化が進むにつれてクレジットカードサイズ大のフルサイズSIMにはじまってmini-SIM、micro-SIM、nano-SIMとどんどん小型化を繰り返し、nano-SIMに至っては、ピンセットがなければ上手くSIMスロットに挿入することさえも難しい状況(※注1)です。

 ※注1:筆者の個人的な感想としては、この種のカードで抜き挿しを気楽に行えるサイズの最下限はMicro SDカードサイズで、それとて側面に突起や窪みを設ける・押し込み時に押さえる辺の端を少し厚く作るなどといった形状の工夫でどうにか持てるように、あるいは引き抜けるように作ってあればこその話でしかありません。その意味では、抜き挿し時にほぼピンセット必須で取り扱いに細心の注意を求められるnano-SIMカードは頻繁な交換を事実上否定した設計・規格であると言わざるを得ません。

こうした状況で、最近のスマートフォンではMVNO事業者が取り扱う機種を中心にSIMスロットを2つ備えたデュアルSIMスロット端末を見かけることが増えてきました。

SIMカードの抜き挿しがそれほど大変ならば、2枚を挿しっぱなしにして利用できるようにすれば良いということで、SIMカードを目的に応じて使い分ける、つまり「通信サービスを選んで使う」ユーザーの立場ではこれは大変に歓迎できる動きです。

そこで今回は、このデュアルSIMスロット端末がどのような仕組みになっているのかについて考えてみたいと思います。

SIMカードの役割と仕組み

さて、デュアルSIMスロット端末の仕組みの前に、まず携帯電話でSIMカードが果たす基本的な役割を確認しておくとしましょう。

SIMカードはそのSIMという名称がSubscriber Identity Module(加入者識別モジュール)の略であることからも明らかなように、通信事業者と契約し電話サービスに加入したユーザーを識別するための固有ID番号(※注2)を格納したメモリカードです。

 ※注2:国や通信事業者に個別に割り当てられたID番号、および加入者個人に割り当てられたID番号などが格納されています。

SIMカードトレイに載せたnano-SIM(右)とmicro SDHCメモリカード(左)ご覧の通りどちらも非常に小さいが、抜き挿しを考慮し誤挿入防止および着脱時の取り扱いの便を図って形状に工夫が凝らされたmicro SD系カードと比較すると、nano-SIMの形状には頻繁な着脱を想定した工夫はほぼ皆無である。なお、形状はこのように異なるが、これらはいずれもFlashメモリチップを内蔵するメモリカードであり、基本的な構造には差はない。ただ、格納されるデータの特殊性故にSIMカードは特別な位置づけとなっているのである

SIMカードトレイに載せたnano-SIM(右)とmicro SDHCメモリカード(左)
ご覧の通りどちらも非常に小さいが、抜き挿しを考慮し誤挿入防止および着脱時の取り扱いの便を図って形状に工夫が凝らされたmicro SD系カードと比較すると、nano-SIMの形状には頻繁な着脱を想定した工夫はほぼ皆無である。なお、形状はこのように異なるが、これらはいずれもFlashメモリチップを内蔵するメモリカードであり、基本的な構造には差はない。ただ、格納されるデータの特殊性故にSIMカードは特別な位置づけとなっているのである

つまり、形状が固有で通信規格も固有のものを採用していますが、本質的にはSDメモリカードなどと同じメモリカードの一種で、特別の形状をしたそれに加入者固有のID番号という特別なデータが書き込まれて保存されているからこそ、SIMカードはSIMカードたり得るわけです。

そして、携帯電話端末では基地局経由でのキャリア回線との通信に際してこれらの固有ID番号をやりとりし、それを電話局の交換機にて加入者の契約している電話番号に変換して公衆電話回線網に接続する仕組みとなっています。

ここまでで分かると思いますが、実はSIMカードそのものは単なるデータの入れ物でしかなく、そこに格納された固有ID番号というデータこそが、携帯電話端末の通信に必要なものなのです。

つまり、この固有ID番号を端末本体のメモリに保存できるのならば、それを一旦読み込んだ後のSIMカード本体は特に必要ないということになります。

そのため携帯電話端末自体の搭載フラッシュメモリ容量が増えた最近では、Virtual SIM(仮想SIM)と称してSIMカードなしでのSIMカード相当の機能を実現するソフトウェア的な仕組みの研究が進められていますが、その一方で契約者の個人情報やいわゆる「電話帳」のデータといった固有IDに紐付けられた情報もこのSIMカードに保存されるのが一般的で、さらに新しい世代のSIMほどその容量が大きくなって特別なアプリを格納したりNFC機能の中核を担ったりするようになっているため、SIMカードがこのVirtual SIMに移行することは恐らく当分は無いでしょう。

SIMカードの挿された端末は通電している限り、常時通信し続ける

さて、契約済みの固有IDを格納したSIMカードの挿された端末では、携帯電話サービスやデータ通信サービスを成立させるために、契約されたSIMカードの挿された端末が今どこに所在しているのかを契約者の住所を含むエリアを担当する電話局に置かれた交換機に常時伝え続ける必要があります。

つまり、例え画面が消えていようとも電源が入っていわゆる「待ち受け」状態になっている限り、端末はその電波の届く範囲にあって通信が成立する直近の基地局に対して自己の存在を電波を使って報告し続けるようになっています。

こうすることで、基地局から交換機、交換機からその固有IDで契約している利用者の契約時の住所をサービスエリアとする交換機にその固有IDを持つSIMカードの挿された端末が今どこに位置しているのかが報告され、その固有IDに紐付けられた電話がかかってきた時には、その位置情報を把握している交換機へ問い合わせが行われ、得られた位置情報に基づいて最寄り基地局まで回線が接続されて端末との通話が行えるようになっているわけです。

携帯電話やスマートフォンを使っていて、こちらが特に何もしていないのにメールやメッセージを当たり前のように受信できるのも、この基地局との常時通信が行われていればこその話なのです。

ちなみに、それぞれの基地局と接続されている交換機には、必ずしもその固有IDの位置情報は保存されていません。位置情報を持っていない交換機はその固有IDの位置情報がどこの交換機に保存されているのかという情報だけを保持しており(※注3)、その固有IDに紐付けられた電話番号への通話申し込みがあると、(例えその固有IDの所在地情報を保持している交換機の実際の所在地がどれほど離れていようと)交換機に保持されている情報に従って該当する交換機に問い合わせを行うことでその位置情報を知る仕組みになっています。

 ※注3:そうでなければそもそも基地局から上がってきた固有IDの端末位置情報をどこに報告するのか、という話になってしまいますから、この情報を保持しているのは当然と言えば当然の話です。

携帯電話端末で電話をかけた場合に固定電話よりも最初の応答までの時間が長いケースがあるのは、この位置情報取得から回線接続までのプロセスが固定電話よりも大規模な仕組みとなっているためなのです。

位置情報は1台の交換機で一元的に管理するのが合理的ではあるのですが、これは各交換機間が高速の光ファイバー回線で接続されていて距離的な問題をほぼ考慮する必要の無い現在の電話回線網があればこそ実現した仕組みであると言えます。

もっとも、こうした仕組みである以上、それぞれの端末は常時電波を発して最寄りの基地局に対して自分の所在を伝え続けなければならず、いわゆる「待ち受け」状態を含む通電中は常に一定の電力消費が発生し続けることになります。

後編では、3種類あるデュアルSIMスロット端末を見ていきます。

▼参考リンク
Gobi Modem Specs | Qualcomm
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Aterm MR04LN | 製品一覧 | AtermStation

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