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4Kテレビを考える ~4Kテレビを今買うべきか~ 後編

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by [2016年2月02日]

前編では4K2K解像度対応について、テレビや家庭用据え置きゲーム機の状況を中心に見てきました。

後編ではBlu-rayの後継となる光学メディアやパソコンの事情を中心に見てゆきたいと思います。

ようやく本格始動したばかりのUltra HD Blu-ray

さて、(衛星放送やケーブルテレビ系だけとはいえ)今後テレビ放送が現行よりも高解像度になり、それに合わせて受像器の解像度も引き上げられるのであれば、気になるのは放送される映像コンテンツを録画保存、あるいは映像ソフトの市販パッケージ化手段の高解像度化です。

現行のBlu-rayはDVDの後継規格として2002年2月19日に最初の仕様が制定され、2007年頃まで、東芝が推進していたHD DVDと市場シェアを争った後、圧倒的劣勢になった東芝が2008年2月19日にHD DVD事業を終息させることを発表して市場の一本化が実現されるという経緯をたどって名実ともにDVDの後継規格としての地位を確立させたという経緯がありました。

かつての家庭用ビデオカセットテープ規格におけるβとVHSの争い(ビデオ戦争)以来、SDとMMCD(※注1)もそうでしたが特許ライセンスビジネスの旨みがあまりに大きいこともあって、この種の記録媒体の規格標準化は毎回大きなもめ事になってきたのですが、動画のネット配信が普及してきた今世代ではそうした大きな争いにはならず、割とすんなりと2015年5月に規格化完了が発表されました。

 ※注1:当時はSuper Density Disc(SD)と呼ばれていた、東芝主導で松下・日立・パイオニア・日本ビクターなどが参加した光学ディスク規格と、MultiMedia Compact Disc(MMCD) と呼ばれていたソニー・フィリップス連合によるCD後継光学ディスク規格の2つが争い、最終的にビデオ戦争の再来を恐れた業界各社の仲介で2陣営が手打ちを行い、SDを基本としてMMCDの高性能エラー訂正メカニズム(EFMplus)を採用した光学ディスク規格がDigital Versatile Disc(デジタル汎用ディスク)つまりDVDとして標準化されました。もっとも、このDVDで東芝が主導権を握って自社の都合の良いように規格化を進めたことは各社の不満の種となりました(※その成立経緯から特に不満の大きかったMMCD陣営の2社とレーザーディスク開発元のパイオニアは東芝主導のDVD6Cという特許プールから離反し、別の特許プール組織(DVD3C)を作っていたほどです)。この件は各社ともよほど腹に据えかねたらしく、後に次世代光学ディスク規格開発の際に「東芝抜きで」Blu-rayが制定される遠因の1つとなりました。

実のところ、地上波デジタル放送ではまともに放送不能、衛星放送でもビットレートをやや落としてどうにか放送、理想を言えば光回線経由でのネットワーク配信が望ましい、などという恐ろしい状況になっている4K2K映像コンテンツの配信については、現状では規格普及を促進するにはこの種の光学メディアに頼るのが割と手っ取り早いというのが実情です。

パナソニック UBZ1 製品紹介ページ「世界初」のUltra HD Blu-ray再生対応機であることが誇らしげに示されている

パナソニック UBZ1 製品紹介ページ
「世界初」のUltra HD Blu-ray再生対応機であることが誇らしげに示されている

そのためもあってか、このUltra HD Blu-rayはBlu-rayを基本としつつ、その拡張規格として用意されていたBD-XLと呼ばれる多層化技術によって1枚のメディアに収録できるデータ量を増大させてデータ転送速度も高速化、さらに動画圧縮伸張コーデックとして4K2Kテレビ放送と同じHEVC(H.265)を採用することで、特に革新的な新技術を採用せず既存技術の応用で4K UHD解像度の動画を無理なく収録可能としています。

こうした事情から、この規格に対応したUltra HD Blu-rayレコーダの発売は既に始まっています。

まぁ、肝心の市販Ultra HD Blu-rayディスクコンテンツの発売がろくに始まってもいないのですが、Ultra HD Blu-rayは従来のBlu-rayよりも広色域かつ高ダイナミックレンジで規格化されていて映像規格として素性が明らかに良いのは大きなメリットです。

それに、製品仕様には小さくしか書かれていませんが、BD-RE Ver.3.0およびBD-R Ver.2.0、つまり3層で100GBの容量を持つBD-RE XLメディアと、3層で100GB、4層で128GBの容量を持つBD-R XLメディアの読み書きに対応していて、この機能は動画の解像度に影響されないため、4K2K解像度のコンテンツを観たり録画したりせずとも、ただ「とても大容量のBD-R/REに録画データを書き出せて4K2K解像度へのアップスケーリング機能も搭載するBDレコーダ」として使うだけでも充分なメリットがあります。

このため、4Kテレビは買わずとも、このUltra HD Blu-rayレコーダだけ先行して買うというのは、筆者的には「かなりアリ」な判断です。

問題は、録画に使用する3層のBD-R XLメディアが未だ1枚1,000円前後と結構高価で販売されていて、4層のBD-R XLメディアに至っては未だかつて製品にお目にかかったことがない、という凄まじい状況にあることですが、これは今後Ultra HD Blu-rayレコーダが普及するにつれて改善されるでしょう。

高解像度化のメリットを比較的容易に享受できるパソコン

さて、ここまで見てくると、4K2K映像出力というのは結構前提条件が多いというか、ただこの解像度に対応するディスプレイやテレビを買っただけでは済まず、実現までのハードルが高いことがわかります。

これは、前編でも述べたように画面を構成する画素数がフルHD比で2×2=4倍に増えるためです。

特に3Dゲームの場合は、画素数が4倍に増えることから単純に考えても処理に使用されるシェーダの負担も4倍となります。

このため、フルHD解像度の場合と比較してフレームレートその他の描画性能を落とさずに4K2K解像度での映像出力を行うには、ストレートにシェーダー数を4倍に増やすか、シェーダー性能をある程度引き上げてなおかつシェーダー数自体も増強し、トータルの性能を4倍にするかのいずれかの方策を講じる必要があります。

また、いずれの場合にもGPUに搭載されるメモリとそれに接続されるメモリコントローラの部分、それに内部接続データバスの性能向上が必須で、最近ではHBMと呼ばれる広帯域かつ高速のメモリ実装方式の採用や、GDDR5メモリからGDDR5Xメモリへの変更によるデータ転送帯域向上など、4K2K解像度への対応をにらんだ抜本的な性能向上策が講じられるようになってきています。

そのあたりを勘案すると、3Dゲームをパソコン上で快適に4K2K解像度でプレイするだけでも、相応に高性能で新しめのGPUを使用する必要があります。

付け加えて言うと、4K UHDテレビ放送では動画圧縮伸張コーデックとしてH.265を採用しており、これは専用のハードウェアデコーダを利用しない場合かなりCPUに負荷をかける特性を持っています。

このため、最新のGPUではこのデコーダが搭載されているのでそれほど負担にならないのですが、ハイエンドGPUでもこのデコーダが搭載される以前の機種を使用している場合、4K2K解像度のH.265で圧縮された動画の表示はCPUにとって結構な負担となります。

Sapphire R9 NANO 4G HBMAMD製GPU搭載カードを販売するメーカーとしては最大手のSapphire社が発売したRADEON R9 NANO搭載カード。動画再生と3Dグラフィック描画の双方で4K2K解像度に対応し、60fpsでの4K2K解像度出力に対応するDisplayPort端子を複数搭載、さらに比較的低消費電力で動作、といった条件を満たすGPUカードとなると現時点では意外と少数派である

Sapphire R9 NANO 4G HBM
AMD製GPU搭載カードを販売するメーカーとしては最大手のSapphire社が発売したRADEON R9 NANO搭載カード。動画再生と3Dグラフィック描画の双方で4K2K解像度に対応し、60fpsでの4K2K解像度出力に対応するDisplayPort端子を複数搭載、さらに比較的低消費電力で動作、といった条件を満たすGPUカードとなると現時点では意外と少数派である

つまり、パソコンで3Dグラフィックも動画も4K2K解像度で快適に、ということを考える場合、GPUは最新のH.265をサポートする動画再生支援機能を搭載した世代のもので、しかもできるだけメモリ性能やシェーダ性能の高いハイエンドの機種を選ぶのが望ましいということになります。

もっとも、パソコンでは特に拡張スロットにGPUカードを挿して利用しているような場合には、GPUをより高い性能を備える機種に交換することも可能です。

もちろん、その場合にはそのマシンに備わっている電源ユニットの容量や性能がそのマシンに搭載できるGPUカードの性能上限を決定することになると言っても過言では無いのですが、いずれにせよGPUをよりハイスペックなものに交換してそれで正常動作を期待できるのであれば、パソコンで4K2K映像出力に対応したゲームやこの解像度の動画を楽しむのは射程距離に入っていると言って良いでしょうし、またゲームに限らず日常使用でもより高解像度な4K2Kディスプレイのもたらすメリットには大きなものがあります。

ただ、こうしてパソコンに接続して使用することを前提とした場合、出力先となる4K2K解像度対応テレビやディスプレイ側には、一定の制約が課せられることになります。

具体的には、先にも触れたようにテレビ/ディスプレイ側の映像信号入力端子としてHDMI 2.0以降に対応の機種を使用するか、さもなくばHDMI 2.0よりも早い時期から4K2K解像度をサポートしているDisplayPortのバージョン1.2以降(※注2)を搭載する機種でなければ、4K2K解像度でのフレームレートの上限値が30fpsとなってしまいます。

 ※注2:2009年制定のバージョン1.2より4K2K解像度に対応しています。ただし、パソコンからは1本のケーブルでディスプレイに接続できますが、内部的には画面を2分割してそれぞれの間をディジーチェイン接続することで4K2K解像度に対応する回路構成となっています。

また大きな問題となるのが、映像信号の表示遅延です。

これは通常のテレビ放送を視聴したりする分にはあまり大きな問題とはならないのですが、ゲームの場合は、家庭用据え置きゲーム機と同様にリアルタイムで1フレーム単位での攻防が行われる対戦格闘ゲームやシューティングゲームを中心に、表示遅延が命取りになることが結構あるためです。

iiyama ProLite G2773HS-2iiyama(マウスコンピュータ)ブランドの27インチフルHD解像度ゲーミングディスプレイ。高い応答速度、高コントラスト白色LEDバックライト液晶搭載、そして垂直リフレッシュレート144Hzでの映像信号入力に対応、と最近のゲーミングディスプレイの標準的な仕様を満たす機種の1つ

iiyama ProLite G2773HS-2
iiyama(マウスコンピュータ)ブランドの27インチフルHD解像度ゲーミングディスプレイ。高い応答速度、高コントラスト白色LEDバックライト液晶搭載、そして垂直リフレッシュレート144Hzでの映像信号入力に対応、と最近のゲーミングディスプレイの標準的な仕様を満たす機種の1つ

このあたりの問題については、最近では「ゲーム機対応」「ゲーミングディスプレイ」などと謳っている機種を中心に、これまでよりも大幅に高性能のプロセッサを搭載して単位時間あたりの処理能力を引き上げる、あるいは内部に搭載されている高画質化のための特別な回路を極力スルーして遅延を最小限に抑えるバイパス内部経路を用意することで、外部に現れる遅延時間を最小限にとどめるような対策が講じられるようになってきています。

もっとも、先にも触れたように4K2K解像度のディスプレイ/テレビでは何しろ扱われるデータ量がフルHD比4倍となるため、フルHD解像度では遅延を最小限に抑えられる機種でも4K2K解像度では処理が追いつかないため遅延が生じるケースがあって、そのあたりが重要な方は購入を検討するディスプレイ/テレビのスペック欄にそういった但し書きがないかどうか、事前に調べておく必要があります。また、当然ですが高速データ転送が行われるため、HDMIでもDisplayPortでも高品質なケーブルで接続しないと画面表示が安定しないことが多々あります。

ちなみに、最近のパソコン用ゲーミング対応液晶ディスプレイではNVIDIA提唱の「G-Sync」やAMD提唱の「Free Sync」(※注3)といったゲームプレイ中にフレームレートが低下してぎくしゃくした動きになるのを防ぎ滑らかな描画表示を実現する、ディスプレイのフレームレート同期化技術が導入されるケースや、ディスプレイの垂直リフレッシュレート(≒フレームレート)120Hzや144Hzなど従来よりも高い値とすることでより滑らかな表示を実現する機種が増えてきているのですが、こうした技術は共に4K2K解像度との共存が可能で、むしろあった方がより快適にゲームプレイ可能となる性質のものです。そのため、遅延の問題と合わせてディスプレイ購入時には検討すべき要素です。

 ※注3:ディスプレイの標準化団体であるVESAでの名称は「Adaptive-Sync」。

メリットも多いが現状ではやや時期尚早か

以上、4K2K解像度のテレビを導入する場合についてみてきましたが、少なくとも記事執筆を行っている2016年1月の時点では、これを充分活用するための周辺環境の整備が不十分でほとんどそのメリットを享受できない、という状況にあります。

特に、家庭用据え置きゲーム機が事実上4K2K解像度での動作に対応していないのは致命的で、次世代機あるいは現行機のブラッシュアップによる改良強化モデルでも出ないことには、この辺の問題は解決しそうにありません。

無論、BSおよびCSでの本格的な商用4K UHDテレビ放送の始まるとされる2018年頃にはもう少しまともな環境が整備されるでしょうし、現時点でも例えばパソコンでのディスプレイ出力などでは画像編集や表計算などこのクラスの高解像度表示には大きなメリットのある使途はいくらでも思いついて筆者としても是非欲しいところなのですが、そちらはそちらでかなり高性能なGPUを積んだハイエンドクラスのマシンでないと色々厳しい(※注4)というのが実情です。

 ※注4:VRマシンのOculus RiftがDK2版以降でディスプレイ解像度をフルHDパネル2枚構成とした結果、RADEON R9 290あるいはGeForce GTX970以上というかなり厳しい対応GPU要件となってしまっていることも考えると、これと同程度の条件を満たすマシンでないと実用に耐えない部分が出てくる可能性が高いと言えます。

テレビに限っていえば、例えばBDの後継規格が一般化し家庭用ゲーム機でもきちんと4K2K解像度でのゲームプレイが可能となる、あるいなネット経由で4K2Kコンテンツの配信が行われるなどの環境整備が進むまでは、またデジタル入出力端子が全てHDMI 2.0以降かDisplayPort 1.2以降対応となって4K2K解像度で60Hz以上の高リフレッシュレート信号をきちんとサポートするようになるまでは、無理をして急いで4K2K解像度での表示に対応する機種を導入する必要はなさそうです。

ただし、映画マニアの方などで既にフルHD解像度での放送の画質が我慢できなくなっているような場合には、今すぐ対応テレビを購入し、CSやケーブルテレビの4K2K放送を契約しても満足できると思います。

恐らく、メーカーや放送局は2020年の東京オリンピック開催の時点での4K UHDテレビ放送普及を目標に開発や放送設備の整備を進めていると考えられるため、それまでにはあと3年~4年程度の猶予期間があります。

その間のハードウェアの技術的な進歩や今後の放送形態の変革、それに対応機器の価格下落などを勘案すると、特に切迫した理由や事情がないのであれば、できるだけ遅くにテレビやディスプレイを買い換えた方がよりよい環境・よりよいコストパフォーマンスでオリンピック放送を視聴できることになるかも知れません。

このあたりの「買い時」がいつになるのかはユーザーそれぞれの環境や事情次第で変わるため断定はできないのですが、少なくとも現時点では、特にキラーコンテンツがなくとも実用でストレートに大きなメリットを享受できるパソコン用ディスプレイや、現行テレビ放送でも大容量の書き出しメディアを利用できる点で大きなメリットを享受できるUltra HD Blu-rayレコーダ以外は、もうしばらく様子見した方が良いのではないでしょうか。

▼参考リンク
UBZ1 | ブルーレイ/DVDレコーダー | Panasonic
Ultra HD ブルーレイ再生対応ブルーレイディスクレコーダーDIGA(ディーガ) プレミアムモデル DMR-UBZ1 を発売 | プレスリリース | Panasonic Newsroom Japan
ProLite G2773HS-2 | PLG2773HS-GB2 | 27型 | モニター・液晶ディスプレイの iiyama

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