フルHD解像度と4K UHD解像度のサイズ比較4K UHD解像度はフルHD解像度を縦横それぞれ2倍に画素数を増やすため、1画面の処理にフルHD比で単純計算しても4倍の負荷がかかることになる。

4Kテレビを考える ~4Kテレビを今買うべきか~ 前編

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by [2016年2月01日]

2011年7月末に地上波アナログ放送が終了するのに伴う買い換え特需の後、日本のテレビ受像器市場は揺り戻しでかなりの不振状態に陥りました。

それはつまり、本来であれば何年かかけて購入されていた筈のテレビやチューナー搭載の録画機器などがアナログ放送終了までの短期間に新規購入、あるいは代替購入された結果として生じた不振で、予想されていたとは言え結構な打撃をメーカー各社に与えました。

これは特需でデジタル放送対応の受像器やレコーダなどが多数売れた後、「それ以上」をアッピールできるような新製品の開発が難しい状況にあった事が一因です。

当然ながら、各社とも様々な工夫を凝らした新製品を投入しましたが、韓国メーカーなどによる激しい低価格化攻勢もあって、なかなか当初予定していたようには上手く行かなかったのです。

その後も海外メーカーによる低価格化攻勢は続いたためテレビ市場は長期にわたって低迷気味で、かつてテレビメーカーとして大きなシェアを持っていた東芝やシャープなど、他の要因もあるにせよテレビ受像器の製造販売を行う部門の不振が深刻化している会社が何社もあって、下手をすると事業売却や事業所閉鎖、あるいは会社消滅の危機さえあるような状況となっています。

フルHD解像度と4K UHD解像度のサイズ比較4K UHD解像度はフルHD解像度を縦横それぞれ2倍に画素数を増やすため、1画面の処理にフルHD比で単純計算しても4倍の負荷がかかることになる。

フルHD解像度と4K UHD解像度のサイズ比較
4K UHD解像度はフルHD解像度を縦横それぞれ2倍に画素数を増やすため、1画面の処理にフルHD比で単純計算しても4倍の負荷がかかることになる。

そんな中で、すっかり左前のテレビ受像器市場で次代を担う新規格として期待されているのが、「4K2Kテレビ」や「4Kテレビ」あるいはより高解像度の規格と合わせて「4K 8Kテレビ」と呼ばれる、フルHDを上回る高解像度画面によるテレビ放送規格(※注1)です。

 ※注1:規格としては「4K UHDTV」等とも呼ばれます。

この「4K」というのは、水平方向の画素数が概ね4,000前後のピクセル数となることから付いた名称で、3,840×2,160ピクセル(※注2)の解像度となっています。

 ※注2:スケーリング(拡大縮小)による既存映像ソースの表示の処理単純化を考慮して、現在一般的なフルHD解像度を縦横共に2倍に画素数を増やしたこの値となっています。3,840ピクセルを四捨五入して「4K」=4,000と称している訳です。ちなみに8K放送も同じ理由から4K解像度を縦横2倍して7,680×4,320ピクセルの解像度としています。一方、パソコン用ディスプレイでは4K解像度のディスプレイが普及する前にHD解像度を縦横それぞれ2倍したUWHD(2,560×1,440ピクセル)解像度のディスプレイが一般化していたこともあって、これを縦横それぞれ2倍した5Kディスプレイ(5120×2,880ピクセル)が製品化されてiMac等に採用されています。

昨今のスマートフォンの画面解像度向上ぶりをご存じの方には今更でしょうが、同じサイズのディスプレイパネルでは、基本的により画素数が多い方がより高い画質を得られます。

そのため、フルHDの4倍の画素数を備える4K UHD解像度のテレビは、基本性能として既存のフルHDパネル搭載テレビよりも格段に高密度で精細感の高い画質が期待できます。

そのため、最近では液晶パネルの低価格化などもあってこの規格に対応するテレビが割と普通に販売されるようになってきており、同様に液晶パネルを使用するパソコン用ディスプレイでも4K解像度での入力・ドットバイドット表示に対応する機種が増え始めています(※注3)。

 ※注3:そればかりか直接は関係しないスマートフォンでさえ、4K2K解像度のディスプレイパネルを搭載した機種(ソニー Xperia Z5 Premium)が現れています。

そのためこれから先、ディスプレイやテレビを購入する際には、特にハイエンド機種やミドルレンジの上の方のグレードの機種を購入する場合、この4K2K解像度に対応するかどうかが判断材料の1つとなってきます。

もちろん、予算青天井で購入できるのならば、また単にテレビ放送を視聴するだけならばより高解像度で精細な画像を楽しめる4K2K解像度対応機種の方が良いのは分かりきった話なのですが、それ以外の要素を判断材料に含める場合、実は現時点ではそれがそうならない場合が結構あるのです。

そこで今回は、この4K2k解像度ディスプレイ/テレビについて色々考えてみたいと思います。

導入メリットがありそうでなさそうな4K2Kテレビ

まずは今使っているテレビを買い換える場合。

最初にお断りしておかねばならないのですが、実は今4K2Kテレビを買っても、そのメリットが生かせる範囲は限られています。

というのは、利用する周波数帯域の関係で放送の通信データレート的に有利なBS・CS衛星放送でさえ4K2K解像度というのはかなり高負担で、ただでさえ画質を犠牲にしてどうにか放送を行っている(※注4)地上波デジタル放送の場合、何をどうやっても通信帯域が絶対的に不足します。このため、少なくとも現時点では地上波で4K2K放送を行う予定は全く立てられていません。

 ※注4:全ての走査線を順次表示するプログレッシブ表示ではなく、奇数列と偶数列を交互に表示することで負担を軽減するインターレース表示を採用し、さらに1,920×1,080ピクセルの画面をほとんどの番組で水平方向に圧縮して1,440×1,080ピクセルとすることで送信されるデータのビットレートを最大で16.85Mbpsの枠内に収めています。現在放送中のCSによる4K2K放送では、映像圧縮伸張コーデックをMPEG2-TSから現行最新のH.265に変えてなお最大ビットレートが35Mbps程度とこの倍以上の値となっており、現状のシステムではそのまま地上波で4K2K放送を行うのは事実上不可能です。仮に地上波で4K2K放送を行うとすれば、各局で2ch分ずつの周波数帯を使用して衛星放送と同程度のクオリティを維持するか、さもなくばビットレートをフルHDと同じ程度に落としてそれでも画質を維持できるような新コーデックを開発・利用するか、といった送信側にも受信側にもハードウェア面で何らかの改修や機能追加が必要となるような策を講じる必要があって、実現するとしても2020年開催の東京オリンピックに間に合わせるのは難しいでしょう。

こうした事情から、ただ単に地上波の番組を見るだけで他に何の機器もつながないような使い方をする人の場合、わざわざ4K2Kテレビを買う理由は全くありません。それどころか、4K2K解像度のテレビでフルHD解像度の地上波デジタル放送を視聴する場合、常に画面をフルHDから4K2K解像度に変換して表示することになりますから、表示遅延対策の観点ではかえって悪い結果にすらなりかねません(※注5)。

 ※注5:信号変換が必ず入ることになるため、その処理時間の分だけ表示が遅延し、場合によってはフレーム落ち=特定の画面のコマが表示されないという問題の原因となります。後述しますが、これは高遅延の場合特に1フレーム単位で相手の動作を読み合う対戦格闘ゲームなどではかなり深刻な問題となります。もっとも、さすがに最近の機種であればこの辺のスケーリング程度の処理で目立って大きな遅延が発生するようなことはなくなっています。

ただし、BSやCSあるいはケーブルテレビなどで現時点、あるいは今後近い時期に4K UHD放送を視聴する予定がある、あるいはその可能性がある方の場合は、購入を検討している機種でそれ以外の使途での性能的な問題が出ないことを確認した上で、予算と相談して4K2Kテレビを買った方が良いでしょう。

そのくらい、4K2K解像度とフルHD解像度の間には厳然たる画質差があります。

シャープ TU-UD10001TBのHDDを搭載する、4K2K放送録画対応ハードディスクレコーダ。実売で7万円前後と思ったよりも安く売られているが、本文中でも記したとおり制約だらけで、しかも放送局が開局する度にソフトウェアアップデートが必要になったりと、色々厄介なことになっている

シャープ TU-UD1000
1TBのHDDを搭載する、4K2K放送録画対応ハードディスクレコーダ。実売で7万円前後と思ったよりも安く売られているが、本文中でも記したとおり制約だらけで、しかも放送局が開局する度にソフトウェアアップデートが必要になったりと、色々厄介なことになっている

なお、CSでは記事執筆時点で既に「スカパー!4K 総合」および「スカパー!4K 映画」として商用放送が開始されており、またケーブルテレビ系のサービスでもCATV向け4K放送「ケーブル4K」が昨年12月1日に開局、放送を開始しています。

また、放送される番組の録画に必要となるレコーダーも、シャープなどから発売されていますが、外付けHDDへの4K放送録画やLAN経由での4K番組視聴、あるいは光学メディアへの番組書き出しが不可となっており、まるで初期のHDCP対応DVDレコーダーを思わせるような大変に窮屈な仕様となっています。

こうした面倒な制約があり、契約は必要になってお金はかかりますし、しかも現状で利用できるチャンネル数は恐ろしく少ないのですが、「4K2K解像度のテレビ放送」を継続的に視聴する環境は既に存在しています。

最初から4K2K出力をサポートしていたが使いにくいPlayStation 4とXbox One

ソニー・コンピュータエンタテインメント PlayStation 4AMD製の8コアCPUと高性能GPUを統合したカスタムプロセッサを搭載する現行家庭用ゲーム機。フルHD解像度でのプレイを前提にハードウェアが設計されており、4K2K解像度以上でのゲームプレイは性能的に困難である

ソニー・コンピュータエンタテインメント PlayStation 4
AMD製の8コアCPUと高性能GPUを統合したカスタムプロセッサを搭載する現行家庭用ゲーム機。フルHD解像度でのプレイを前提にハードウェアが設計されており、4K2K解像度以上でのゲームプレイは性能的に困難である

次に、4K2K解像度で出力可能な家庭用ゲーム機を接続して使用したい場合。

これについては、留意すべきことがあります。

それは「現状で市販されているPlayStation 4とXbox Oneは共に4K2K解像度での映像出力をサポートするが、これはゲームをこの解像度でプレイできることを意味しない」という点です。

これは、PlayStation 4とXbox Oneが共にAMD製の統合プロセッサを搭載していて、メモリの構成や内蔵GPUに搭載されている汎用シェーダの数など若干構成には差異があるものの、基本的には内蔵GPUが2012年3月に発表された開発コードネーム「Pitcairn(ピトケアン)」と呼ばれるGPUを基本とする、AMD自身が「Graphics Core Next(GCN)」と呼んだ当時最新のGPUアーキテクチャの第一世代品であることに理由があります。

このRADEON HD7850/7870は当時のAMD製シングルGPUとしては上から2番目のレンジに位置しており、当時としてはかなりの高性能GPUだったのですが、それでもWQHD解像度あるいはそれ以上の解像度で使用するには性能が足りない状況でした。

そもそも4K2K解像度で出力する場合、同程度の描画速度を確保するには画素数の増加に比例して、単純計算でフルHD解像度で動作した時の4倍の描画性能が必要となります(※注6)。

 ※注6:これは単位時間あたり表示される画面のフレーム数が決まっているためです。そのため、例えばフルHD解像度で1秒あたり60フレームの表示をぎりぎりのところで実現しているGPUだと、4K2K解像度では単純計算で1秒あたり15フレームしか表示できず、かなりカクついた表示になってしまいます。余談ですが、筆者は以前一時的にRADEON HD7870を使用したことがあるのですが、UWHD解像度のディスプレイ単独で使用する分には特に不都合はなかったのですが、UWXGA解像度(1,600×1,200ピクセル)のディスプレイを併用しマルチモニター表示にしたところ途端にGPU性能の不足が露顕して応答が鈍くなり、上位のRADEON HD7950に買い換えることを強いられました。このことから、UWHD解像度の少し上あたりにこの系列のGPUの実用解像度上限があると考えられます。

つまり、元々画素数が4K2K解像度のおよそ半分弱のWQHD解像度を超えたあたりで息切れが見え始める程度の描画性能しか備わっていないRADEON HD7850/HD7870では、上位のRADEON HD7870でさえ実用的な描画性能(≒フレームレート)を維持したままで4K2K解像度出力を行うのは計算上ほぼ不可能で、それらを若干デチューンしたGPU(※注7)を内蔵するPlayStation 4やXbox Oneでゲームを4K2K解像度出力するのもまた、不可能ということなのです。

 ※注7:PlayStation 4およびXbox Oneの内蔵GPUはシェーダー構成等は基本的にRADEON HD7870に準じますが、メインメモリとGPUのグラフィックメモリを共用する構成であることなどから、概ねRADEON HD7850とHD7870の中間程度、搭載メモリの性能差などからPlayStation 4の方がXbox Oneを若干上回る性能となっています。

Microsoft Xbox OneフルHD解像度対応家庭用据え置きゲーム機としては間違いなく前世代を大幅に上回る高性能機だが、それでも4K2K解像度でのゲームプレイには性能が不足する

Microsoft Xbox One
フルHD解像度対応家庭用据え置きゲーム機としては間違いなく前世代を大幅に上回る高性能機だが、それでも4K2K解像度でのゲームプレイには性能が不足する

実際、これらの機種における4K2K解像度での映像出力はどちらかと言えば動画再生や静止画鑑賞、あるいはWebブラウジングなどの用途のためにサポートされているにすぎず、これをゲームプレイのために利用することはほぼ考慮の枠外となっています。

もちろん、理論上はほぼ静止画に近い、あるいは特に高負荷の3D描画を必要としないような画面表示で済むようなゲーム(例えば落ちもののパズルゲームなど)ならば4K2K解像度でもそれなりに動作する可能性がありますが、これらのゲーム機向けに発売されているゲームタイトルを眺める限りは、それは非現実的な「対応」としかなり得ず、またそもそも今時はその手のゲームでさえリッチな3Dグラフィックエフェクトを導入していたりするので、そのあたりを勘案するとその種のゲームですらまともに動作しない可能性があります。

東芝 REGZA Z20Xシリーズ製品ページの「4Kゲーム・ターボプラス」と名付けられた超低遅延でのゲーム映像出力機能紹介ページ。破格の高性能映像処理プロセッサを搭載することで、遅延が0.05フレーム(0.083ミリ秒)の範囲内に収まるという驚異的な応答性能を実現している。この位の性能の機種ならば、アップスケーリングでフルHD解像度の映像を4K2K解像度に拡大しても充分遊べるレベルである

東芝 REGZA Z20Xシリーズ製品ページの「4Kゲーム・ターボプラス」と名付けられた超低遅延でのゲーム映像出力機能紹介ページ。破格の高性能映像処理プロセッサを搭載することで、遅延が0.05フレーム(0.083ミリ秒)の範囲内に収まるという驚異的な応答性能を実現している。この位の性能の機種ならば、アップスケーリングでフルHD解像度の映像を4K2K解像度に拡大しても充分遊べるレベルである

加えて言うと、現行のPlayStation 4とXbox Oneはいずれも映像出力としてHDMI 1.4aをサポートしていますが、このコネクタ規格では4K2K解像度での出力は可能なもののその最大フレームレートが30Hz(=30フレーム毎秒)となっていて、現行最新のHDMI 2.0のように4K2K解像度かつフレームレート60Hzでの出力はできません。

こうした状況を踏まえると、少なくとも現行の家庭用ゲーム機では4K2K解像度出力を利用するのは正直あまりメリットのある話ではなく、フルHD解像度で出力するにしても記事執筆時点での現行機種で言えば東芝REGZA Z20Xシリーズのように非常に性能の高い画像処理エンジンを搭載して力業でこの辺の問題を解決してしまった機種を別にすれば大概は解像度変換に伴う遅延がついて回るため、他に理由がなければ積極的な導入を検討すべき性質のものではありません(※注8)。

 ※注8:もちろん、一部で噂されているように今後ソニーやMicrosoftがPlayStation 4・Xbox OneのマイナーチェンジモデルとしてGPU性能を向上しHDMI 2.0以降のHDMI端子を搭載したモデルを出すのであれば、充分検討に値しますが。

むしろ、現時点でこの用途に特化するのならば、表示遅延が少ないことをセールスポイントとするゲーマー向けフルHD解像度ディスプレイ/テレビを導入した方がコストパフォーマンスが良いと言えるでしょう。

以下、後編に続きます。

▼参考リンク
4K試験放送「Channel 4K」(日本最初の4K2K解像度によるテレビ試験放送の公式サイト。なお、この「Channel 4K」2015年3月21日午後10時で試験放送を終了している。)
2016年試験放送に向けた8Kスーパーハイビジョン設備整備 NHK技術局スーパーハイビジョン開発部 部長 三谷公二(PDF)
スカパー!4K(4K放送)|ココロ動く、未来へ。スカパー!
目に見えてヤバい!ひかりTV 4K|ひかりTV
Z20X/TOP|液晶テレビ|REGZA:東芝
Z20X/機能/エンターテインメント|液晶テレビ|REGZA:東芝
概要 | TU-UD1000 | 4Kレコーダー:シャープ

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