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PlayStation VRのキーマン、吉田修平氏が語る「VRが可能にするエンターテインメントの世界」

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by [2016年1月19日]

 東京ビッグサイトで開催された『ウェアラブルEXPO』では、ウェアラブル端末の活用と技術の展示の他にもさまざまなセミナーが行なわれた。ここでは、ゲームの世界をさらに拡げるVRが可能にするエンタテインメントについて、PlayStation VRのキーマンが語る「VRが可能にするエンターテインメントの世界」の模様をお届けしたい。

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(株)ソニー・コンピュータエンタテインメント ワールドワイド・スタジオ プレジデント 吉田修平氏。1986年ソニー(株)に入社、1993年2月にSCE設立メンバーとして参加。以降「プレイステーション」プラットフォーム向けに発売された数々のソフトウェアタイトルをプロデュース、2000年にアメリカへ赴任後、SCEのアメリカにおけるゲーム制作部門を担当。2008年5月SCEの制作部門であるSCEワールドワイド・スタジオ プレジデントに就任、代表的な制作担当作品は「ゴッド・オブ・ウォー」「アンチャーテッド」各シリーズなど。また2014年3月に発表したバーチャルリアリティシステム「PlayStation VR」の開発も務める

2016年、VR時代の幕開け

 昨今VR(バーチャルリアリティ)という言葉が、メディアで大きく取り上げられる機会が増えてきました。1990年代に一世を風靡して消えていったVRですが、2016年はVR元年と言われており、VRは現実のものとして、一般の人にも届けられる時代が来ようとしています。なぜ今、VRという言葉をよく聞くようになったのでしょうか?

コンポーネントの向上 VRに必要な要素が総合的に揃ってきたからです。近年のスマートフォンの爆発的な普及で、大量に作られ、技術が発展し、コンポーネントとしてのディスプレイ、センサーが飛躍的に向上し、コストが下がってきたということ。スマートフォンのコンポーネントとVRのコンポーネントは共通点があり、GoogleのCardboardとSamsungのGear VRなどのスマートフォンそのものを使ったVR機器が開発されています。

パフォーマンスの高いコンピュータの出現 素晴らしいVR体験をするには、リアルタイムで3Dグラフィックスを表示することが必要です。そのためのコンピュータのパフォーマンスが実現できています。

コンテンツの開発 リアルタイムの3Dを使ったコンテンツを作るデベロッパーがUnity、Unreal Engineというゲームエンジンを使って多くの人がコンテンツを作れるようになりました。

 これらがほぼ同時に実現されたことで、VR体験をコンシューマーに届けられる価格でできてきていることが、VRが騒がれている、期待されている理由です。

没入感を超える「プレゼンス」

 それでは我々のPlayStation VRの話をさせていただきます。PlayStation VRは頭に装着するディスプレイでPlayStation 4につなげてVR体験をするというシステムになっています。

 PlayStation VRのきっかけは、PlayStation 3に遡りますが、社内のメンバーが草の根的に、PlayStation 3にPlayStation Moveをつないで簡易的なVRを趣味で作り始めたことです。PlayStation Moveは、コントローラーの三次元空間における場所、傾きを正確に測定でき、カメラからの距離を簡単にトラッキングできるデバイスです。それから2011年にメンバーを募って、PlayStation VRのプロジェクトが始まりました。
 さて、VRにおける良い体験とは何でしょうか? これは「プレゼンス(Sense of Presence)」という言葉で表されます。これはVRによって、没入感という感情を超え、今自分がいる場所でない他の場所に自分が実際に存在しているということを信じ込んでしまうことを表します。
 この「プレゼンス」ができると、非常に心地良い感覚になれます。しかし「頭の動きに映像が追随しているか」「音の立体感」「コントローラーのインタラクション」「ヘッドセットの負荷」「コンテンツの作り方」などに違和感があると醒めてしまいます。デベロッパーには「プレゼンス」を達成するための、VRに関する知見と努力と工夫が必要になってきます。
 PlayStation VRは、家庭用ゲーム機のPlayStation 4につないで使うものなので、老若男女問わずVRの体験ができることを念頭においています。

プラグアンドプレイ PlayStation 4を持っていれば、PlayStation VRを買ってきてつなぐだけで、すぐにVRで遊ぶことができます。

ヘッドセット 子供から大人まで誰でも使えるように調節ができるようになっています。
全体の重さを頭の上で支えるようにヘッドセットのバランスを工夫しましたので装着していることを忘れてしまうつけ心地です。ディスプレイ部分はスライドできるようになっており、ゲーム中にジュースを飲んだり、会話したり、スマホのチェック等ができます。

視界の広さ オプティクスと言っていますが、目の前の映像を引き伸ばすことで高い視野角を得られます。解像度が低くなってしまう心配があると思いますが、人間が一番注目する目の前の解像度は高くして、周辺部分の解像度を落とすということを行なっています。

リフレッシュレート 120Hzで動作するカスタム有機ELディスプレイを使っています。ゲーム機は普通のテレビにつないで使っているので60Hzですが、その倍の速度で動かすことで、頭を動かしたときの遅延を解消し、気持ちのよいVR体験ができます。

カメラ PlayStation 4につないで使用するPlayStation Cameraを発売しています。これは映像センサーを2つ搭載していることで、三角測量の要領で奥行きの距離を測れます。カメラからヘッドセットとコントローラーの場所を簡単にトラッキングできる環境が整っているので、デベロッパーが扱いやすくなっています。

マイク マイクも仕込んであるので、ソーシャルな楽しみ方ができます、自分がVRである場所に行ってコミュニケーションをすることで、よりVRのなかでの存在を感じることができます。

バイノーラルオーディオ PlayStation VRは、ステレオヘッドセットでいろんな音を三次元空間にポジショニングすることで、立体感を表現できます。

ソーシャルスクリーン その場にいるみんなが一緒にVRの世界を楽しめる機能です。これには2つのモードがあります。
 ミラーモードは、ヘッドセットの右目、左目のそれぞれの映像をレンダリングして表示させる途中に、プロセッサーユニットをかませて、テレビにもヘッドセットと同じ映像を表示するものです。
 セパレートモードは、ヘッドセットをかぶっている人用とテレビを見ている人用のまったく異なる2つの映像を同時にPlayStation 4でレンダリングして、ヘッドセットとテレビへそれぞれ送るものです。

 いろいろな会社がVR機器を発表している中で、家庭用ゲーム機であるPlayStation VRの強みは、長い間、同じハードウェアを作り続けるので、比較的ハイエンドで、安価で使いやすいシステムであることと、ハードの仕様が全てのユーザー様が同じであることから、デベロッパー自身が発売前にユーザーと同じ環境で体験できることです。

PlayStation VRを遊べる日は近い!? バラエティに富んだゲームデモ

Job Simulator
 いろんな仕事を両手を使って仮体験できます。普段やってはいけないようなことができてしまうゲームです。本当に楽しそうにプレイしていますね。

RIGS: Machine Combat League
 ロボットに乗って3対3でスポーツゲームのように戦うシューティングゲームです。男の子のロボットに乗りたいという夢を実現させたゲームです。

Monster Escape
 ソーシャルスクリーン機能のセパレートモードを使用したゲームです。ヘッドセットをかぶってモンスターになった人の映像と、テレビを見ながらモンスターと戦うロボットを操作している人たちの映像が確認できます。

サマーレッスン
 バンダイナムコさんの、家庭教師になって女の子とコミュニケーションをとるゲームです。この映像ではアメリカ人の女の子に日本語を教えてあげるという設定です。VRの世界に入りますと、デジタルなキャラクターでも存在感や距離感に圧倒されます。

Rez Infinite
 Rez(当時のセガが発売)というPlayStation 2、ドリームキャスト向けのゲームが10年前に出ましたが、そのVR版です。開発者の水口さんによると、これを開発しているときからプレーヤーがVRの世界で楽しめたらと思いながら作っていたとおっしゃっていて、彼のやりたいことに技術がやっと追いついたということです。私も体験させてもらったのですが、技術デモで彼は全身にバイブレーターを26個つけたスーツを用意していまして、音楽やシューティングに反応して、バイブレーターが動くことで、すごい体験ができました。

100見は1体験に如かず

 映画会社などはコンピュータグラフィックスを使った映像を作っています。それを映画の公開のときにプロモーション用途にVRを体験できるようにすることが流行っています。最近ですと『ザ・ウォーク』があります。

 この他にも、シミュレーションの分野がVRの発展に最も寄与していて、軍事シミュレーターや外科医のトレーニングをVRのシステムで行なうといったことができます。
 またVRは、手軽にスケール感を伝えられるので、教育や研究で非常に有効に使われると思います。バーチャルトラベルで仮体験してもらったり、ライブやスポーツイベントではテレビでは見られないような会場の雰囲気が伝わってくるでしょう。「存在している」という感覚は、普段は行けないような場所を体験できるので、ジャーナリズムの世界でも活用されていくと思います。
 一方でVRには課題もあります。
 いくら技術があっても、中身がないとユーザーに「プレゼンス」を提供できません。デベロッパーの方々と情報交換しながら業界全体で魅力的なコンテンツを作っていく必要があります。
 そして、やはり体験したことのない方に、VRがどのようなものであるのかを伝えるのは非常に難しいです。なので体験の機会を増やしていくということが重要です。またVR機器は頭に装着して使用するので、1人で遊ぶというイメージを持たれるかもしれませんが、人と人とのつながりを強くするような新しいメディアであるという積極的なイメージ作りも大切ではないでしょうか。3月2日から東京・お台場の日本科学未来館で行なわれる『GAME ON』というイベントでもPlayStation VRの展示がありますのでぜひ体験してみてください。

 VRという言葉を耳にする機会が日に日に増えています。仮想空間に入り込むさまざまなデバイスが発売されることで、人間の世界が何倍にも広がっていくのでしょうか? VRがメディアとして新聞・雑誌、テレビ、ネットと並ぶ日も、そう遠くないのかもしれません。

PlayStation®VR | プレイステーション® オフィシャルサイト
GAME ON
ウェアラブルEXPO —ウェアラブル端末の活用と技術の総合展

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