総務省による大手3キャリアに対するスマートフォン料金負担軽減および端末販売等の適正化要請を告知するページ

長期利用者がお得に? ~総務省、スマホの料金負担軽減および端末販売適正化をキャリア各社へ要請~

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by [2016年1月05日]

総務省による大手3キャリアに対するスマートフォン料金負担軽減および端末販売等の適正化要請を告知するページ

総務省による大手3キャリアに対するスマートフォン料金負担軽減および端末販売等の適正化要請を告知するページ

筆者が携帯電話を使い始めたのは、大学卒業後の話なので結構遅い方なのですが、それでもキャリアを一切変えずに使い続けてきたため、もう11年ほどもauとおつきあいをしてきたことになります。

その間、端末を4回機種変更(※注1)して今に至っているのですが、その度に思ってきたことがありました。

 ※注1:当初は今は亡き鳥取三洋電機のA5405SA(2004年)、次がソニーエリクソンW44S(2006年)、3台目がソニーエリクソンBRAVIA Phone S004(2010年)、4台目がHTC J Butterfly(HTL21:2012年)、そして現行のiPhone 6 Plus(2014年)の順で、W44Sを気に入って長く使っていました。

「……どうして長期間契約を続けている俺らが機種変で他社から乗り換える連中より高い値段を支払わねばならないのだ?」

それが、シェア確保のためのインセンティブ制度だ、と言われてしまえばそれまでの話だったのですが、そうした不満は長年ずっとくすぶり続けてきました。

特に、最近は何かの手続き等でサポートセンターに電話すると「長年ご利用ありがとうございます」と慇懃に言われるようになりましたので、なおのことそうした思いが募るようになってきていました。

それは筆者だけでは無かったようで、このほど総務省が「スマートフォンの料金負担の軽減及び端末販売の適正化に関する取組方針」を策定するとともに、スマートフォンの料金及び端末販売に関して講ずべき措置について携帯電話事業者各社に対し要請(※注2)を行いました。

 ※注2:許認可権を握る官公庁の行う「要請」は、今も昔も被許認可対象事業者に対する実質的な行政命令の性質を持ちます。少なくともこの「要請」を受けた各社で、字義通りそれをただの要請と受け止めた所は無いでしょう。

そこで今回は、現在の携帯電話料金制度や端末販売の何が問題であったのかを、この総務省の新施策を通じて考えてみたいと思います。

何が問題だったのか

総務省が今回問題としたのは、根本的には日本のスマートフォン普及率が世界の先進国中で低い水準にとどまっていることです。

これは一面では日本で先行してフィーチャーフォン、つまりいわゆるガラケーが普及していて、多くのユーザーはそれに満足しているためだ、という見方もできるのですが、それと共に端末の価格が高性能化と歩調を合わせるように高騰した結果、また携帯電話番号ポータビリティ(MNP)などにより新規に端末を購入し通信契約を行う利用者に対する販売促進策としてのインセンティブ政策が各社で進んだ結果、そうしたMNPを利用し優遇策の恩恵を享受する利用者と、機種変更を行わず長期間にわたって同じキャリアと契約を続けた結果、何の補助も十分な特典授与もないままに放置されて機種変更の動機もない利用者との間で著しい公平性の問題が生じていることも無視できません。

家族割などのサービスを利用している利用者の場合、家族中で一人だけMNPを行うことも難しく、そのため機種変更を行う際には同一キャリアのままでMNPを行う場合と比較して明らかに高い価格を支払うことを強要され、しかもそうしたMNP利用者の優遇策の原資はめぐり巡って長期利用者たちの高止まりしたままの通話料金であるのですから、明らかに不公平であるのです。

更に言えば、こうした優遇策は最近のMVNO事業者の新規参入や事業拡大の障害となっており、その点でも問題であると言えます。

総務省は何をキャリア各社に求めるのか

今回の要請で総務省が大手3キャリアに対して要請したのは以下の各点です。

・スマートフォン料金負担の軽減
・端末販売の適正化等
・MVNOのサービスの多様化を通じた料金競争の促進

最初の「スマートフォン料金負担の軽減」はそのものずばり、長期利用者やそれほど通信量の多くないライトユーザーに対する負担の少ないスマートフォン料金プランの導入などといったスマートフォン料金体系の見直しと、それの取り組み状況報告を求めるものです。

そもそも、10年あるいはそれ以上に渡って一貫して利用してきた、黙って料金を支払ってきた(優良な)ユーザーに対して何の優遇策も講じないというのは普通の商売であればまず考えられないこと(※注3)です。

 ※注3:その背景には何よりもまず見かけ上の自社シェア拡大を至上命題としてきた大手各キャリアの販売施策の構造的な問題があったのですが、ここでは省略します。

また、ほとんどデータ通信を行わず電話もあまりかけないユーザーに、毎月上限一杯まで通信量を使い切るようなヘビーユーザー(※注4)のための設備投資負担を料金の形で転嫁するのも、負担の公平性の観点で大きな問題があります。

 ※注4:そうしたヘビーユーザーは往々にしてキャリアが提供する各種サービスのヘビーユーザーでもあって、そちらでの収益を期待できるためにヘビーユーザーを優遇してきた、という事情もあるのですが。

例えば、今年で76歳になる筆者の母はやはり10年以上にわたってauのガラケーを愛用し続けていて、バッテリーをフル充電すれば1週間以上は持つような、非常に使用頻度の低い使い方で月額1,600円程度の通話料を支払っているのですが、そんなユーザーにいきなりキャリアの都合でガラケーを止めたいからスマートフォンに機種変更しろ、ほとんど使わないサービスのために月額8,000円ほどにもなる高額の通話料や端末代金を支払ってヘビーユーザーの浪費を下支えしろ、というのは全くの無理筋と言わざるを得ません。つまり現在の料金体系を続ける限り、スマートフォンの普及率を上げられる訳が無い状況にあるのです。

そうした観点で見ると、今回のこうした要請は長期ユーザーをMNP利用者が喰いものにし、ヘビーユーザーがライトユーザーを喰いものにしてきたという非常にいびつな料金制度を是正することを求めるということで、筆者としては大いに歓迎できることです。

2番目の「端末販売の適正化等」も疑問を差し挟む余地は余りありません。

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筆者の自室近所にある某携帯ショップの宣伝ポスター
こうしたMNP利用者をターゲットとした端末代金0円+高額のキャッシュバックといった通常の商道徳上ありえないような常軌を逸した「サービス」は今後徐々に減ってゆくことになろう

MNPを行う利用者に対して高額の端末を実質0円、あるいはむしろキャッシュバックでお金を貰って新品の端末を購入できるような常軌を逸した割引や値下げサービスを行うというのは、結局の所各キャリアにとって安定財源となっている既存のユーザー、特に機種変更を行わない長期利用者の通話料が原資でなければとてもできない(※注5)ことです。

 ※注5:ただし、こうした長期利用者は往々にして端末も長期使用となって故障時に修理が要求されるため、端末メーカーやキャリア側が補修部品の長期保有や修理サービス体制の維持といった形でコスト負担を強いられていることは一定程度割り引いて考える必要がありますが。

それが横行してきたのは、端末価格の値引きや通信量割引などの具体的な状況がキャリアや販売店によって明らかにされることが無く、一般利用者にとって実態がよくわからない/わからせない状態で放置したままそうした割引や値引きが行われてきたことに一因があったのは間違いありません。

そのため、そうした割引や値引きの具体的な内容を示し、さらにはMNP利用者に対する端末購入補助を端末価格0円あるいはキャッシュバックが発生するといったあまり極端なレベルで実施することを事実上禁止し、最終的に(総務省が考える)適正額のレベルに押さえ込むことを(遠回しにでも)求める今回のこの要請は、1番目の要請と共に、公平性を重視する総務省の方針を明確にしたという点で、高く評価できます。

なお、ここではこれまでのSIMロックフリー化などの施策の継続も明確に示されており、総務省が大手3キャリアによる寡占と、それを背景としたいびつで高い通話料金について少なからず不満を抱いていたことがうかがい知れます。

3番目の「MVNOのサービスの多様化を通じた料金競争の促進」は、現在の携帯電話のシステムでは大手3キャリアが独占している加入者管理機能をMVNO事業者に開放する/解放を促進することを求めるものです。

この加入者管理機能は携帯電話番号、端末の所在地、顧客の契約状況といった通信ネットワークの制御に必要となる基礎情報を管理するデータベースで、これらを大手キャリアに握られたままであるが故に、現在のMVNO事業者は今以上の積極的で価格競争力の強いサービスの展開が(協議レベルですら)大手キャリアによって阻まれている状況があります。

更に言えば、この機能をMVNO事業者が自由にできないが故に複数事業者のサービスを1枚で利用可能な複合タイプのSIMカードが実現できないでいるわけで、そうしたユーザビリティの向上の観点でも、この加入者管理機能の解放はMVNO普及促進の鍵となる案件です。

当たり前のことが当たり前に行われるよう求めているに過ぎない

元々安倍首相からの値下げ指示という形で始まったため、首相に批判的な立場をとる新聞各紙などから何かと色眼鏡で見られてきた今回の総務省の要請ですが、少なくとも筆者の見る限り、これは至ってまともな、言い替えれば当たり前のことを当たり前に行われるようにすることを求めているだけの話で、そこに何らかのねじくれた政治的な意図を見いだすことはできません。

むしろ、料金体系や端末販売のインセンティブについてはこれまでこうした要請が行われてこなかった/どこの大手マスコミもこのことについて積極的な問題提起を行ってこなかったことの方が不思議ですらあります。

もっとも、総務省がこうして「要請」を出した以上、受けた側の大手3キャリアは早急にそれに対する回答を出す必要があるわけですが、実際にこうした施策が本格化するまでには当分時間がかかることでしょう。キャリア側にすれば、今日「要請」を受けたからと言ってそれなりの時間をかけて準備してきた現在展開中のキャンペーンなどをいきなり止める訳には行かないのです。

実際、それを見越したのか今回の「要請」では具体的な実施の期限を切らず、多分に対応までの時間的猶予についてかなり含みを持たせた書き方(※注6)がなされています。

 ※注6:本文を読むとよくわかりますが、それどころか現在のMNP利用者等に対する端末購入補助を止めることは直接には求めず、「適正化に向け取り組むこと」といった非常に曖昧で解釈の幅の広い、言い替えれば大変にピントのボケた言葉を用いることで漸進的な状況の改善を促しています。

まぁ、それも含めて典型的な官僚的作文という印象があるのですが、今日明日で突然「端末0円」の広告が乱舞する現在の携帯電話ショップの状況が変わるとは思えないものの、MVNO事業者の台頭による低価格化圧力が強まっている現状を踏まえて1年あるいは2年後といった長期的スパンで見ると、いずれ大きな影響が出てくることでしょう。

無論、auの長期ユーザーである筆者としては何らかの料金割引などによる還元が早急にあることを期待したいところですが、そのためにはまず「端末0円+キャッシュバック」などのあまりにいびつな端末販売状況が是正され、還元に必要となる財源が捻出される必要があります。

そのため、MNP利用者向けの「端末0円+キャッシュバック」の広告が店頭から姿を消し、筆者がそうした恩恵を実感できるようになったときが、「要請」が実現した時ということになるでしょう。

果たしてそれはいつの日になるのか、本当に実現するのかどうかは定かではありませんが、少なからず期待して待っていようと思います。

▼参考リンク
総務省|「スマートフォンの料金負担の軽減及び端末販売の適正化に関する取組方針」の策定及び携帯電話事業者への要請
別紙1 スマートフォンの料金負担の軽減及び端末販売の適正化に関する取組方針
別紙2 スマートフォンの料金及び端末販売に関して講ずべき措置について(要請)

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