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ビッグデータの人工知能への利用法を探る『人工知能技術の最新動向と今後のビッグデータ活用の展望』

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by [2015年11月05日]

 ビッグデータ活用展【秋】において、「人工知能技術の最新動向と今後のビッグデータ活用の展望」と題して、人工知能へのビッグデータへの活用事例やこれからの人工知能開発の展望について語られた。
 現在、昨今のディープラーニングや自動運転での成功事例や、これからのIOTデータの増大により、産業分野のIT化がますます拡大していくことが想定される状況だ。1990年代から古典的なAIとデータに基づく機械学習の融合が始まり、現在、ビッグデータの開発により、実践的なレベルに到達した。データと技術が揃った今、この先どうなっていくのか非常に注目を集めている。

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スピーカー:国立研究開発法人 産業技術総合研究所 人工知能研究センター 副研究センター長 本村陽一氏

AIの国際的な立場

 海外では、米国を始めとして、巨大IT企業のもとで、データの集積とシーズの成熟、ニーズの顕在化が集合し、大きな駆動力を生み出しています。一方で、日本は研究者が大学や研究所に分散しており、海外勢に比べ不利な状況にあるのが現状です。そこで、産業技術総合研究所では、AI研究センターを開かれた存在とすることで、現状を打開し、海外との競争に負けないような構造を築き上げています。
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AI研究センターの特徴的な構造

 2015年5月1日から始動したAI研究センターはAI開発により生まれたシーズをニーズやビッグデータと組み合わせるために、ビジネスへの応用分野を戦略的に絞っています。さらに、企業の実際のサービスに、新しい技術を投入し、ビッグデータを回収しつつ、技術開発しています。
 コンソーシアム(2つ以上の団体が同じ目標を目指しリソースをプールするために作る1つの団体)のかたちをとったり、個別の共同研究や、企業の中からAI技術に興味を持っている人をパートタイム兼業として受け入れることで、企業との協力を図っています。
 また、他分野とも技術を共有できるように共通基盤(AI cloud)を提供していきたいと考えています。そして、その中で、新しいアルゴリズムを実用的なニーズやデータと組み合わせることで、技術の競争を生もうと考えています。現在は、製造、科学、生活現場の三分野を柱に、技術の標準化、生産の効率化を図っています。
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AIの構築手順

 ここでは、将棋をプレイする人工知能の例を挙げます。まずは、実空間の中の現象をAI上で構築します。将棋においては、盤上で起きる様々な現象をシミュレートするわけです。その後、実際のデータから現象の計算のモデルを作ります。将棋では、シミュレートした中から、最も勝率が高い手を選択できるようにします。最後に、計算機を最適化させることで、AI応用システムを作るわけです。
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次世代AIに求められるモノ

 現在、AIの分析能力は飛躍的に向上しました。一方で、AIの技術が信頼できない、その内容を正しく理解できないということが問題視されています。この事は、アルゴリズムが正しくても、学習データに問題があった場合、誤りに気づきにくく、訂正するためには、毎回一から学習しなおさなくてはならないという問題も引き起こします。
 こうした問題に対応するために、我々は、人と親和性が高い人工知能を目指しています。人と親和性が高い人工知能とは、データと人の知識を融合するデータ・知識融合型人工知能と人間の考えに近い脳型人工知能のことを指し、人間との共通言語、共通表現を持たせることで、人間協調型の人工知能技術が確立していくと考えています。
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 具体的には、AIが人と相互理解が出来るようにします。すなわち、AIがユーザーモデルによって、人に合わせて適切な対応をとれるようになる。一方で、人がAIの中で起きている現象を理解出来るようにします。

ビッグデータを活用したモデリング

 ビッグデータを活用するメリットは、社会システム全体を観測できるようになり、現象の計算を作ることで、最適化を図れるようになることです。つまり、ビッグデータの情報から、条件を見つけることで、行動を予測できるのです。
 購買行動であれば、購買履歴や店に入った時間など利用者の行動履歴を集めれば、条件付確率としてモデル化、最適化が出来ます。例えば、化粧品が購入されたならば、性別や買った日などの条件を調査することで、男性より女性のほうが高かったり、週末のほうがより高かったりと、高い確率で購買行動が予測できるというわけです。
 そうした条件を上手く見つける仕組みとして、機械学習のアルゴリズムを使い、ベイジアンネットワーク(因果関係を確率により記述するグラフィカルモデル)を作る方法があります。条件だけではなく、因果関係に近いものを求めると、正しく制御が出来るのです。
 現在、受身のビッグデータだけでなく、操作をしたときに、どうなったかというアクティブ型のビッグデータを集めることで、ベイジアンネットワークの精度を上げることに多くの技術者が挑戦しています。
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ビッグデータ活用の例(1)循環型バリューチェーン

 購買行動調査の際、ID-POS(顧客ID付きPOS)データに集積する各々のユーザーが選んだ商品のデータをセグメントで分類することは重要です。しかし、商品が数千点ありますので、ほとんど買われていないものが沢山あり、似たようなユーザーを探すのが難しいです。そこでPLSA(確率的潜在意味解析法)を使うことで、適切なユーザーセグメントに分類することが出来ます。つまり、アンケートやID-POSのデータを取得し、PLSAでセグメントを分け、ベイジアンネットワークにより、構造を理解することで、商品の購買確率を予測できるようになるというわけです。
 提供者側に分析から得られた事実をフィードバックすることで、製品やサービスの品質の向上、競争力を高める、循環型のバリューチェーンに活用していくことが出来るのではと考えています。
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ビッグデータ活用の例(2)人工知能による専門医療

 病院でも日々の看護の行動をデータ化することで、看護業務の最適化をするという取り組みがなされています。それに加え、医療機器がIoT化することによるデータの蓄積。医療の高度化や安全確保を進めることが出来ます。
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 また、パターン認識の精度を上げることで、医療画像から症例を診断する事ができるようになります。しかも、ただ判定するだけでなく相互理解できるAIであれば、判定の理由を医師に伝えることが出来ます。
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 これからは、ビッグデータを活用した事例とともに、よりよく活用できる仕組みを提供して、それを実際の社会でどう持続的に使えるかといった検証を行い、アクティブ型のデータを、AIセンターを中心に持続的に集める手法を発信していきたいと考えています。

▼関連リンク
ビッグデータ活用展【秋】
産業技術総合研究所 人工知能研究センター

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