熊谷プロフィール

秘密はゲームクオリティへの徹底的なこだわり~ネクソン流ゲームの発掘&育成方法を聞く

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by [2015年11月30日]

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熊谷プロフィール

お話を伺った、株式会社ネクソン 経営企画室長 熊谷峻平氏

 PCやモバイル向けオンラインゲームでおなじみの株式会社ネクソン。同社のメイプルストーリー、アラド戦記、マビノギ、サドンアタックといったタイトルは、ゲーム好きなら耳にしたことがあるだろう。
 これらは、今では世界中で多数のユーザーがプレイするようになっているが、いずれもネクソンとの関係構築後に、じわじわとユーザー数を増やしてきたことをご存知だろうか?
 果たして、ネクソンは将来人気が出そうなゲームをどのように発掘しているのか? あるいは運営の仕方に秘密があるのか? ネクソンが手がける人気ゲームの共通項を探ってみたい。

グローバルなゲームのデベロッパー&パブリッシャー

改めましてネクソンとは?
 ネクソンは、韓国ソウルに設立され、2005年に日本へ本社を移転、2011年12月に東京証券取引所第一部に上場、アメリカ人が社長を務める国際的なゲーム会社です。創業以来、良質なオンラインゲームやモバイルゲームの制作・開発、配信を行っています。
 ネクソンでは2014年に代表取締役社長に就任したオーウェン・マホニーのゲームに対する考え方「Games are ART」すなわち「ゲームはアート(芸術)である」という考え方を大切にしています。アートビジネスで成功するカギは素晴らしいアートを生み出すことであり、ゲームを作る人はアーティストとしてこだわりを持った品質の高いゲームを作り出すことが重要であると考えています。

既存タイトルを、ご紹介いただけますか?
 現在では、約150に上るゲームタイトルを配信し、アジア・北米・南米・欧州を初めとする150を超える国と地域にてサービスを展開しております。なかでも代表的なゲームタイトルである『メイプルストーリー』『アラド戦記』『カウンターストライクオンライン』『マビノギ』及び『サドンアタック』は、ロングヒットを記録しています。
 ネクソンはこれまでに2つの世界初を世に送り出しました。世界初のグラフィックMMORPG『風の王国』を作ったのもネクソンですし、世界で初めて基本プレイ無料のビジネスモデルを取り入れたゲーム『Quiz Quiz』を成功させたのもネクソンです。
 ネクソンにおいて最も売上規模が大きいタイトルは『アラド戦記』の中国サービスです。ネクソンはまさに、グローバルなゲームのデベロッパーでありパブリッシャーです。

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Nexon Developers Conference for Partners(NDCP)参加者との記念の一枚

Quality Focusが決め手

新規タイトルを選定する基準はありますか?
 2014年3月にオーウェン・マホニーが新社長となり、徹底的にゲームのクオリティ(面白さ、独創性)にこだわっていくことを最優先することが明確化されました。
 パートナーとなる開発会社を選ぶ決め手は「目先の売上よりも、ゲームの品質を重視して、ゲームを作りたい」というネクソンのビジョンに合致するか否かという点です。IPホルダーとのパートナーシップでは、Final Fantasy XIやLEGOのような事例があります。有力IPを活用する提携を行う場合には、ネクソンが持つオンラインゲームの開発及び運用や基本プレイ無料に関する知識や経験を組み合わせることで、品質が高く、ユーザーに長期間に渡ってプレイいただけるゲームを作ることができるかどうかを重視しています。いずれも、根本にあるのは「Quality Focus(品質へのこだわり)」の考え方です。

パートナー企業に共通項はありますか?
 直近でネクソンがパートナーシップを組んでいる多くの欧米のゲームスタジオは、大手コンソール会社などで著名なゲームの開発プロジェクトに関わっていた経験豊富なクリエイターが独立したところが多いです。なかでも「F2PのPCオンラインゲームやモバイルゲームを開発したい」と考えているクリエイターの方々が多いです。
 事例をご紹介しますと、DomiNationsの開発を手がけたティム・トレイン氏(Big Huge Games CEO)は有名なストラテジーゲーム『CivilizationⅡ』の開発に携わっていました。クリフ・ブレジンスキー氏(Boss Key Productions CEO)はEpic Gamesリード・デザイナー時代に『Gears of War』や『Unreal Tournament』といった人気ゲームに携わっていました。
 現在のネクソンの連結売上収益に欧米が占める割合は1割未満に過ぎません。しかし、欧米には大きな事業機会があると信じています。オーウェン・マホニーは、前職では約10年間エレクトロニック・アーツで世界中の事業開発に携わっていました。世界のゲーム市場での経験が豊富なオーウェン・マホニーの指揮のもと、今後欧米事業を強化していきたいと考えています。

提携相手にとってネクソンの魅力は何でしょうか?
 大きく2つあると思います。1つは、グローバルにパブリッシングを行う力です。現在、ネクソンは150以上の国と地域でゲームをサービスしている実績があります。日本、韓国、欧州、米国など世界の主要ゲーム市場にグループ会社の拠点があります。「パートナー企業が世界にゲームを配信するときに、ネクソンならばグローバルパブリッシングができるので、ワンストップでゲームを世界中に配信できる」のが魅力です。
 もう1つは、F2P(基本プレイ無料)に関するノウハウです。欧米のコンソールゲーム出身の開発者の方々は、昔ながらのパッケージゲームのビジネスモデルには長けていても、F2Pには慣れていないケースが多いです。そのため、当社のF2Pに関するノウハウをパートナー企業に供与することも数多くあります。

パートナーを選ぶにあたって競合企業を意識することはありますか?
 市場がこうだから、競合企業がこうだから、パートナーを組むまたは組まないといったことは原則としてありません。ネクソンの「Quality Focus」の考え方やビジョンが合う会社・機会があれば積極的に協業しています。

パートナーと出会うきっかけは何ですか?
 画一的なプロセスはありません。ネクソンからお声がけをする場合もありますし、ご紹介をいただいてご縁をいただく場合もあります。韓国ではNPC(Nexon Partner Center)というベンチャー支援プログラムを実施しており、プログラム参加企業を募集しています。
 出資はパートナー企業の株をネクソンが取得させていただくことだと思いますが、ネクソンのパートナーの組み方は柔軟です。株式の出資をせずにパートナーシップを組ませていただく事例もあります。

出資が決まるまでのプロセスをお聞かせいただけますか?
 全体としてどのような協業の仕組みにするのか、株式への出資をする場合に値段はどうするのか、契約書の交渉など踏むべきステップは色々ありますが、一番重視しているのはパートナー候補企業のゲームの品質です。

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代表のオーウェン・マホニー氏

パートナーをサポートする仕組み

パートナー企業との取り組みについてお聞かせください
 大きく2つあります。
 1つは、ノウハウや経験の共有、及びパートナー企業間の相互関係強化を目的にした場の提供です。
<例>Nexon Developers Conference for Partners(NDCP)の開催
 2015年11月9日から12日までの4日間、パートナーシップ契約を締結しているゲーム開発会社を対象に、第2回NDCPを開催しました。ネクソンは毎年韓国でゲーム開発者向けのカンファレンス「Nexon Developers Conference (NDC)」を開催しています。こちらは歴史が長く、来年10周年を迎えます。
 一方で、ネクソンはパートナー企業向けに「Nexon Developers Conference for Partners(NDCP)」というイベントも開催しています。NDCPはゲーム開発の経験及び運用ノウハウの共有と相互の連携強化を目的にパートナー企業を招待して、昨年より開催しているカンファレンスです。本年度は、Big Huge Games、Socialspiel Entertainment、QC Games、Shiver Entertainment、Boss Key Productions 等のパートナー企業をはじめ、パートナーシップを締結しているゲーム開発会社約10社とネクソンの各国法人の関係者がNDCPに参加しました。カンファレンスの内容としては、初日にモバイルゲームに関連したセッションが開催され、Googleによる市場動向やネクソンがグローバルで配信を手掛ける『DomiNations』のアジアローンチ時のプロモーション戦略の紹介が行われました。また、2日目には、人気FPSタイトル『サドンアタック』のゲーム運用ノウハウに加え、サーバー及びネットワーク環境等、PC オンラインゲームに関する発表がありました。セッションに加え、参加者たちは韓国最大のゲームショウ「G-STAR 2015」の会場や、ネクソンの e-Sports 専用施設である「NEXON ARENA」を訪れ、韓国ゲーム市場やeスポーツ文化を体験していました。

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G-STAR 2015で韓国ゲーム市場を体験

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NDCPでのセミナー聴講

 もう1つは、パートナー企業向けに、ノウハウ共有の場の設定や支援サポートを実施しています。
<例>NPC(ネクソン&パートナーズセンター)
 こちらは日本では未実施の取り組みなのですが、韓国ではスタートアップ企業の支援を行っています。
 NPCとは韓国で実施している起業家向け入居施設であり、スタートアップ企業に対してオフィスの提供及び、会計・法務など、スタートアップ企業にとって、通常の専門外となる分野のサポートを提供しています。
 2015年10月には、NPCに入居していたN-Pie Gamesにネクソンが戦略的投資を実施し、『Gunpie Adventure』というモバイルFPSゲームのパブリッシング契約を締結しました。NPCがきっかけとなり、ネクソンと入居していた企業が両者の開発及び運用ノウハウを掛け合わせ、新たなシナジーを生み出すべく協業するケースも登場し始めています。

パートナー企業との協業タイトルにおける成功事例を教えてください
 ビッグ・ヒュージ・ゲームズとの協業による初のタイトルである『ドミネーションズ』の事例を紹介します。

1.欧米で2015年4月に先に配信を開始し、配信開始日からわずか3日で100万ダウンロード、2カ月で720万ダウンロード、そして4ヶ月後には累計1,000万ダウンロードを突破。

2.アジア地域での配信開始にあたり、アジア各国の市場ごとのアプローチを実施。ネクソンの長年のノウハウや経験を生かし、それぞれのマーケット特性に合わせローカライズされたゲームの提供をした。

3.結果として、全世界では累計1200万ダウンロード突破、日・韓・台の3カ国においては、配信からわずか1週間で100万ダウンロード突破、さらに1カ月以内に300万ダウンロードを達成。

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スマホ向け歴史ストラテジーゲーム『ドミネーションズ』


DomiNations_グローバル1200万ダウンロード記念

ダウンロード数が増える→未プレイのユーザーが遊んでみようと思う、という好循環が生まれる

マネタイズありきでは無い御社は、何をもって成功としていますか?
 売上第一ではなく、ユーザー満足していただけるような、クオリティの高いゲームを作ること、クオリティの高いゲーム運用を実現すること、また、その結果として当社のゲームが息の長いロングランとなることを目標にしています。
 また、成功を図る一つの方法とも言える社内指標も、これまでは売上を特に重視していましたが、現在はユーザー継続率等の売上以外のKPIを重視しています。ユーザーがどれだけ愛着を持ってネクソンのゲームをプレイしてくれているかどうかという点を、成功を図る一つの指標にしています。

場合によってはクローズもありえますか?
 ネクソンでは「ゲームクオリティ」を重視しているため、求めているクオリティに達しなかった場合は、クローズするケースもあり得ます。

高品質なゲームを続々と

中期、長期での戦略、今後の展望についてお聞かせください。
 PCオンラインゲームとモバイルゲームのいずれも、今後複数の高品質な新規ゲームが登場する予定です。当社としてはPCオンラインゲーム、モバイルゲーム、どちらかだけで成長するつもりはなく、いずれも素晴らしい作品がパイプラインにありますので、PCオンラインゲーム、モバイルゲームの両方で売上収益の成長を達成したいと思っています。
 当社はゲームの品質向上に注力してきました。今後もこの方針に変わりはありません。ゲームの品質とは、面白さ、独創性、差別化されているかどうかといった点です。ゲームの品質にこだわるのは、目先の売上収益を追わなくても、品質の高いゲームタイトルであれば結局のところロングランタイトルとなり、大きな売上収益を創出することができるからです。当社が配信中の既存ゲームにおいても品質にはこだわります。『アラド戦記』や10年以上の人気を誇る『メイプルストーリー』など、既存タイトルに関しても、引き続きユーザーに長く楽しんでいただけるように、高品質なコンテンツアップデートを実施して参ります。
 また、戦略的パートナーシップ締結に、今後も力をいれて参ります。当社は冒頭に紹介した通り、グローバルなPCオンラインゲーム及びモバイルゲームのデベロッパーでありパブリッシャーです。また、当社はオンラインゲームの開発及び運用、F2Pビジネスモデルに関する知識、経験が豊富です。当社が持つ強みとパートナー企業の強みをお互いに持ち寄って、高い品質のゲームを世に送り出したいと思っています。アジア、欧米など地域を問わず、世界中の優れたゲームクリエイターの方々と協業する機会を今後ますます増やしていきたいと思っています。

VR、ウェアラブルといった新しいプラットフォームへの取り組み、展開の予定など
 VRやウェアラブルなどの新しいプラットフォームの動向は興味深いですが、最も重要なのはどれだけゲームが面白いか、ゲームの品質です。現段階では特に発表できる内容はありませんが、今後は取り組む機会があるかもしれません。

今後リリースする予定のタイトルを教えてください。
 PCオンラインでは、12月1日より第2次CBTが開始する『ツリーオブセイヴァー』、及び先日CBT開始を発表した、板垣伴信氏率いるヴァルハラゲームスタジオとの協業タイトル『Devil’s Third Online』の配信開始を控えています。
 モバイルに関しては、11月19日(木)にTCG『マビノギデュエル』を、日本を含む153カ国にて同時配信開始したほか、パートナー企業であるオーストリアのSocialspiel Entertainmentが開発を手がける『レガシークエスト』 の配信を2016年上半期に予定しています。今後も多数のタイトルを皆さんにお届けできる予定です。

ゲーム開発者へメッセージをお願いします
 ネクソンは、ゲーム開発者の皆様のクリエイティビティを重視しています。ネクソングループでは、韓国のネクソンコリアに最も多くのゲーム開発者がいます。そのネクソンコリアでは、会社全体のクリエイティビティは、クリエイター個々人のクリエイティビティを上回ることはない、だからこそクリエイター個々人のクリエイティビティを会社は尊重すべき、という考え方に立っています。
 ネクソンが10年前に日本に本社を移したのも、上場する場所として東京証券取引所を選んだのも理由は、日本のゲーム業界とクリエイターをリスペクトしているからです。最近では、欧米での戦略パートナーシップのニュースが多かったですが、ネクソンは日本でも戦略パートナーシップを強化していきたいと思っています。今回のインタビューを読まれて、ネクソンとの戦略パートナーシップにご興味をいただける開発者の方がいらっしゃいましたら、是非お話をさせていただきたいです。

▼ネクソンのリリース予定タイトル
ツリーオブセイヴァー

Devil’s Third Online

マビノギデュエル

レガシークエスト

▼参考リンク
Nexon Developers Conference for Partners 2015(NDCP)
Nexon Developers Conference(NDC)
Nexon Developers Conference for Partners 2014
無料ゲーム・オンラインゲームのNEXON(ネクソン)

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