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オープンイノベーションを自動車産業へ ~AZAPA株式会社 近藤氏が描くクルマの未来~

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by [2015年11月16日]

欧米ではApple car play、Google Android Autoなど、スマホ連動の自動車用OSが話題に上ることが多くなってきた。今回、自動車開発は巨大産業で閉鎖的というイメージの中にあって、この体質に風穴を開けようと考えている自動車産業のイノベーターに話を伺った。高度な技術力と豊かな発想力で、オープンイノベーションを牽引することをビジョンに掲げているAZAPA株式会社。同社代表の近藤氏にAZAPAの自動車業界の役割、そして業界の未来について語っていただいた。

AZAPA

AZAPA株式会社 代表取締役社長 & CEO 近藤康弘氏

AZAPAの自動車業界での役割とは

───まず、会社設立までの経緯を教えていただけますか?
 私は大学卒業後、PC周辺機器メーカーで通信機器の製品開発に携わりました。すぐに、製品の企画からハードウェア、ソフトウェア開発、マニュアルに至る全てを自分自身で行わなくてなりませんでした。卒業したばかりで社会人としての大人の理解もほどほどに世界で販売させる製品を開発するのです。私のものづくりに対する意識やリスクヘッジも含めた大きな経験をここで学ぶことができました。その後、大手メーカーへ転職し、銀行システムの開発プロジェクトを任され、システムにおける脆弱性の担保、頭取から技術担当までの説明責任から、組織とその組織上での役割などを学んで、自動車開発の機会を得たのです。
 自動車メーカーでは、AZAPAのコア技術となる「エンジン制御システム」の開発に十数年携わりました。エンジン制御システムは、自動車のコアであり、自動車に搭載される機能システムの全てを把握する必要があります。ドライバーの意思をアクセルワークから読みとって、リアルタイムに他の要求と調停し、全ての機能システムを制御しなければなりません。それゆえに自動車をよく知るということになるのです。この自動車を知ることこそ、国内自動車メーカーと共感が得られる最大限の強みです。

───独立されたきっかけは何かあるのでしょうか?
 独立したのは2008年、リーマンショックの直後です。当時は業界の停滞期と重なったこともあり、市場が大きく変遷していました。そうした中で、”自動車産業の日本における重要性と新たな価値創造”を強く感じました。閉鎖的な自動車産業クラスタを開放的にし、価値を組み合わせ、イノベーションを牽引する第三者的な存在の必要を感じました。今まで日本にはそうした会社が無かったので、AZAPAがその役割を担って生きたいと思い創業しました。

───自動車産業は保守的な一面を持っていると言われていますが、こうした環境下でイノベーターは難しくないですか?
 自動車産業に限定した話ではないですが、日本はステークホルダー(企業の活動によって影響を受ける人々・団体)が多い一方で、投資下手。突飛な発想を持ったイノベーターが生まれづらい状況にあります。海外ではひとりの資本家がイノベーションに必要な全ての環境を投資し、新しい市場価値を作る文化と言えるまでの牽引役となっています。
 自動車産業に関していえば、自動車OEMメーカーは、量産効果の最大化を考えると、Tier1(1次請け)以降との帰属関係の強化と技術の内包化による品質向上とコスト低減を優先するので、ベンチャーとの接点は全くありません。また、よく言われるのは、日本企業の危機感の希薄さです。これは自動車産業にも当てはまります。同時に規制の厳しさもイノベーションを阻む大きな壁となっています。AZAPAも海外に子会社を作らないと、自由な研究開発ができないのです。
 そうした理由で、自動車産業でのイノベーターが登場することは、なかなか難しいことで、AZAPAの存在価値であると自負しています。

───部品メーカーの革新性という点で弱いのは、産業構造の問題ですか?
 自動車OEMメーカーと部品メーカーは、先ほど述べた強い帰属関係に安寧としていて、相互でイノベーションを起こす関係がないと言っていいでしょう。必要としていても行動ができない。よほど大きなインパクトがなければ、今の関係は変わらないと思います。現在、自動車産業においては、グローバリゼーションによる世界競争の激化、リコールなどのリスク対応、世界的規模での組織再編における生き残りなど、難しい局面がこうした部品メーカーの意識を変えつつあります。部品メーカーも自動車OEMメーカーに依存した自動車の価値創造でなく、ともにイノベーションを起こす存在として、変わらなければいけないのです。

───御社の主力事業のイメージは?
 AZAPAの事業領域は、自動車のパワートレイン領域における価値創造とコスト低減です。プロダクトイノベーションである価値創造では、意味的価値と機能的価値を考えます。日本のイノベーションと言えば、既存製品や成功体験によるプラス・マイナスを言いますが、これでは、真の消費者の要求を捉えることはできません。そのため、意味的価値として消費者の要求をベクトルとした機能システムを研究と製品化を提案します。これを「共創ソリューション」と呼んでいます。また、同時にプロセスイノベーションであるコスト低減と品質向上を独自のモデルベースド・テクノロジーを基盤としたソリューションで提供しています。これは「研究ソリューション」と言います。まとめれば、これがAZAPAの「Tier0.5」戦略です。自動車でのコア技術を持つAZAPAは、OEMメーカーと新たなイノベーションを牽引する存在として、部品メーカーとは自動車メーカーとのリレーションをツナグ存在として、ポジショニングしています。

───具体的な実績をお聞きしてもよいでしょうか?
 例えばですが、共創ソリューションに関しては、ある大手光学機器メーカーとの実績があります。このメーカーは自動車業界への参入を目指すも、高い障壁に阻まれ10年近く足踏み状態が続いていました。私たちは、同社の光学技術にAZAPAのペルソナ技術を融合し、進行方向の危険度と、ドライバーの運転特性を解析する「人、街とツナガルクルマ」を開発しました。産業クラスタを介さず、直接的に新たな価値を創造した例として高い評価を頂いています。

近藤氏の描く自動車産業のこれから

───近藤氏が考える自動車の現状や展望はいかがでしょうか?
 自動車産業は日本経済に切り離せない関係です。現時点でいえば、唯一の期待となる存在です。半導体・家電で世界の敗者となった日本経済を救う存在であり、日本で生まれる新たなイノベーションを自動車に搭載し、巻き込み、新たな産業までも牽引する魅力のある産業です。Googleの自動運転車は、自動車での新しい価値の提案するものですが、エネルギー問題や環境破壊に対して、なんら消費者へ提供するものはありません。自動運転ひとつを取っても短期的な利益投資で、消費者任せのベネフィトだけで産業破壊を起こすことは、するべきではないと思います。自動車は、エネルギーや環境を前提に自動運転を考えなければならないのです。ただ、こうしたイノベーターの存在を否定するわけでもなく、自動車産業が閉鎖的な状態から解放的な組織を持ち、イノベーションを早く起こし、他の産業の牽引となるべきでしょう。
 例にあげた自動運転分野ですが、これはAZAPAで言えば、ドライバーが自動車を運転するという本質に迫る技術です。ドライバーは、認知、判断、行動として定義され、その判断は感度とも呼べるものです。
この感度はひとそれぞれで、新しいドライビングとは何か?を考える材料となるでしょう。たとえば、これまでビックデータに集積させるデータは、行動にあたる車両データと運転データからなります。GPSと場所とを紐づけることで運転特性が紐解けるようにも思えます。しかし、それは不可能です。場所だけではドライバーの判断にあたる脳での判断パスが多過ぎて特定できません。これを極小にする仕組みをAZAPAは持っています。たとえば、自動運転で利用されるステレオカメラからシーン・シチュエーションを特定するとGPSだけの場所でなく、交差点で赤に変わった時点から止まるまでの距離とブレーキ行動によるより具体的な判断に至る紐付けを可能とします。その感度は、制御システム上でうまく利用することで新しい機能システムを構築することにつながるのです。ブレーキする時に車両があるかないかも判断してシチューエーション認識するので、その場合のブレーキ判断が遅れないようにするなど、よりドライバーを理解した動きになるでしょう。更に判断の領域も研究を進めています。脳解析パターンによりドライバーの情動を把握して、情動状況によりドライバーの認識や行動への影響を考えます。そう「考えるクルマ」こそが未来だと信じて、今はその研究開発を自社、自動車OEMメーカーと共同開発しています。こういう領域は自動車分野では不得意な領域ですから、AZAPAが他分野をツナゲル、価値を創造する橋渡し役となるわけです。

───日本では若い世代の車離れという話題がよくでます。若い人へのクルマの価値の作り方についてのアイデアはお持ちですか?
 若い人のクルマへのベネフィットを考えると、やはり経済変化が影響していると考えます。ひとりひとりの多様性はいくつか纏まって社会現象のひとつとなり、他市場に影響を及ぼします。なので、必要とされる製品価値を維持し続けなければなりません。ひとりの要求を無視できないのです。日本の若者にとっては、低価格化が前提となるでしょうが、そのコスト意識を変えるには、その他の背景を考慮して、いつでもベネフィットを与える存在となるしかありません。いわゆる移動体としてだけでなく、走る×自分×発見のプラットフォームを提供することが重要だと思います。

───ところでスマホと自動車の連携やOSの搭載についてはどうお考えですか?
 スマホとの提携に関しては、通信キャリアの課金の制約が日本にはあります。携帯とカーナビでそれぞれ別々に課金される仕組みなので利用者には高いサービスとなります。なので、現実的にキャリアの課金が引き下がらないのであれば、携帯の通信インターフェースは、クルマとインターネットをツナグ役割として期待させるでしょう。とはいえ、ドライバーとクルマとのインターフェースは、カーナビから携帯に変わってきていますからアイデアレベルでドライバーのニーズに合ったサービスであれば、広く受け入れられるでしょう。米国ではこういうサービス構築が上手です。

───目標としている会社はありますか
 新しい考え方に挑戦できるGoogleのような会社になりたいと思っています。彼らは市場での要求を顕在化させる商品開発に長けており、多くのイノベーションを生み出しています。日本の企業のほとんどは長期的な視野で消費者のベネフィットを考えられず、短期的な利益に縛られた狭義な要求を定義してしまいます。AZAPAは、Googleでいえば長期的な視野で消費者の変化を捉え、予測した仮説に対して挑戦しつ続ける会社になりたいと思っています。

───街では電気自動車も見かけます。これからはモーターとエンジンどちらが主流になるのでしょうか
 よく言われることですが、電気自動車の普及にはトータルエネルギーコストを考えなければなりません。個人的にはTOYOTA FCVミライのような超クリーンとの中間期間に属するものと見ています。当面はエンジンの需要は、バイオ燃料も含めてずっと続く見込みです。最先端の自動車は、経済成長が成熟した先進国や新興国でしか需要はありませんし、世界の7割のBOP市場などの経済のアーリーステージでは、やはりエンジンの需要のほうが大きいでしょう。今、自動車の成長を支えるのは、こうしたグローバルゼーションによる背景が大きいでしょう。

───近藤さんは世界で開発、ビジネスをしたいと考えているんですか?
 AZAPAは、日本のものづくりの精神に加え、素晴らしい技術を世界に提供する為にもオープンイノベーションを起こす起爆剤となり、日本の自動車産業だけでなく、製品開発におけるアイデアとテクノロジーを組み合わせ、AZAPAがインテグレートするビジネスを提供したいと考えています。

▼関連リンク
AZAPA株式会社(アザパ株式会社)

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