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配送、警備、医療、ネット広告~人工知能のアプリケーションと市場【CEATEC JAPAN 2015】

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by [2015年10月15日]

 アジア最大級の最先端IT・エレクトロニクス総合展「CEATEC JAPAN 2015」が、10月7日から幕張メッセで開かれました。株式会社野村総合研究所ICT・メディア産業コンサルティング部上級コンサルタントの廣戸健一郎氏は、「人工知能のアプリケーションと市場」と題した講演の中で、人工知能のビジネス的な可能性と限界を分かりやすく解説しました。

人工知能のいま

 人工知能の研究をやりたいというと、二言目には「これいくらになるの?」と聞かれると思います。これだけ話題になっていますが、市場というかたちでお金に換算したときに、どれくらいの額が期待されているのか? この点をお話していきたいと思います。いま人工知能は第3次ブームなどと言われています。火をつけたのはディープラーニングです。Googleが猫を見つけた※というニュースは話題になりました。
※スーパーコンピュータが猫を認識する能力を獲得したとするGoogleの研究成果

 ディープラーニングを使ったアプリケーションの応用上の限界はまだ見えていません。いろいろな論文が出ていて、一時期は読むスピードより早く新しい論文が出ると言われたくらいです。インターネットやiモードもそうで、最初の2~3年は何ができるんだ、どこまでできるんだということで、あらゆる人が飛びついていました。ディープラーニングも同じような状況です。この会場にも、人工知能とは何か、と疑問をもって来ている方もいると思います。非常に簡単に言ってしまうと、膨大なデータセットから学習させてパラメータの重み付けをします。それによって、アウトプットとインプットの関係を見ます。そのくらいの理解でいいと思います。

 ビルの空調管理というアプリケーションを考えた場合、日射量、外気温、在室人数などの情報を0から1の数字に変換してパラメータにします。空調の出力はコントロール変数にします。過去の気温、出力などの関係を見ていきます。これをデータセットとして学習させれば、それぞれの重み付けというのが決まってくる。特定の状況を与えれば、出力を自動で判断してくれます。

 エムニストという言葉を耳にしたことがあるかもしれません。数字の手書き認識ですね。ニューラルネットワークにデータセットをどのように学習させれば「4」という数字を認識するのか? 画像のサイズは、28ピクセル×28ピクセルになっているので、28×28の変数として与えて、答えが4になるようにする。これを6万セットくらい学習させれば、雑な手書き文字でも「4」と認識するようになります。パラメータの重み付けというところに、物事の課題を置き換えるところが人工知能の研究の面白さであり、難しさではないでしょうか。

 人工知能が普及すると、人間の仕事が奪われると言われます。当分の間は、人工知能によって、人間の雇用が失われ、街に失業者があふれるということは考えにくいのですが、モビリティの分野で自動運転のアプリケーションなどが出てくると、話が変わってくると思います。 タクシードライバーやバスドライバーの仕事が無くなっていくわけですから。現在の日本でタクシーは登録されているだけで25万台ということなので、50万人くらいの雇用が失われる事態もありえます。様々な分野でアプリケーションが開発されるにつれ、少しずつ人の仕事が、良く言えば効率化され、悪く言えば無くなっていくと予想されます。

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市場規模はどうか

 各分野でどのようなアプリケーションがあるのか? そして、どのくらいの市場規模があるのか? まずは金融です。いま成長しているのは、フラウドディテクションです。人口知能を使い、出金と入金の不正な流れをチェックし、マネーロンダリングなどを見つけ出すようなサービスです。現在の市場規模は40~50億円程度ですが、地方銀行などにも広がりつつあるようです。

 コールセンター部門ですが、現状では数十億円の下のほうまであるかもしれない。5年後には100億円を超えてきます。自動走行のアプリケーションについてですが、2050年ころには国内のほとんどの自動車が対応すると予想されます。これに伴い、市場規模も、4~5兆円規模に成長すると見ています。

 アメリカでは、文章を生成するアプリケーションも注目されています。企業の決算やスポーツの記事を自動生成するサービスです。Automated Insightsという会社の人工知能サービスですが、財務諸表など大量のデータを含んだ資料から、強調されるべき情報を理解し、記事のフォーマットにそれを流し込むという仕組みです。

 セキュリティ分野における自律警備のロボットの市場規模は、10数億円程度に過ぎないです。とはいえ、警備業の全体で見れば、3.3兆円もの巨大市場であり、54万人の雇用につながっています。一部はロボットに置き換わっていくと考えられます。監視カメラも大きなマーケットです。たとえば、8,000台の監視カメラを設置しても、すべてを同時に監視することはできません。そんな時に、人工知能が見るべきカメラを選んでくれるのです。

 医療分野でいえば、人工知能的なファンクションにより、レントゲンなどの読影を行なうことも想定されています。また、過去のカルテが蓄積されている厚生労働省のナショナルデータべースが公開されれば、このデータを使い、病名診断エキスパート機能も作れるかもしれません。

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 市場規模が最大なのは、スマートフォンです。これは人工知能の塊なのです。ここで使われているものを市場規模としてカウントすれば、国内だけで2.5兆円規模です。iPhoneにはSiriというエンジンが使われていますが、音声認識の分野が大きいです。もう一つは、ネット広告の分野です。検索連動型広告市場は5600億円です。

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 荷物配送はドローンに置き換わってくる可能性があるので、少なく見積もっても1500億~2000億円くらいになるのではないでしょうか。旅行分野では、ホテルのコンシェルジュを人工知能で、という考え方があります。国内の宿泊施設は5万箇所あります。

 人工知能の市場は、スマホが約1兆円、ネット広告が5000億~6000億円。それ以外はまだ数十億円~百数十億円程度です。今後、極端に大きくなるのは自動車で、ネット広告も1兆円の大台は越してくるでしょう。

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▼参考リンク
NRI 野村総合研究所
CEATEC JAPAN 2015

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