東プレ RGB LEDバックライト搭載キーボード(参考出品)東プレが欧米で展開している「TYPE HEAVEN」ブランドのロゴが印刷された筐体に収まった、RGB LEDバックライト搭載モデル。1,680万色のバックライトカラー表示機能を備え、キー入力位置(キーストロークにおけるオンオフの検出位置)を4段階に調整できる

【TGS2015】ハイエンドキーボードの先にあるもの~東プレブース「製品化が期待される出品の数々」

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by [2015年10月02日]

東プレ アナログ入力対応キーボード(参考出品)今回はご覧のとおりMIDIキーボードモードで動作し、MIDIシンセサイザーによる演奏デモが行われた

東プレ アナログ入力対応キーボード(参考出品)
今回はご覧のとおりMIDIキーボードモードで動作し、MIDIシンセサイザーによる演奏デモが行われた

前提となるお話が長くなってしまいましたが、今回の東プレさんの展示で筆者がもっとも注目したのが、静電容量無接点方式が各キーのコンデンサ回路の容量変動を検出することによって成り立っていることを利用した、アナログ入力対応キーボード(参考出品)です。

アナログ入力デバイス化するキーボード

通常のREALFORCEシリーズだと、キーの押し下げによる電荷容量の変化は、オンかオフの2値となるようにある値を閾値にして判定されているのですが、このキーボードではそれを容量そのものの検出に変更して、押し下げ量に応じて256段階で判別する動作モードを付与してあるのです。

つまり、キー入力の強弱を判別できるキーボードということで、ブースでは何とこのキーボードをMIDI規格の(楽器の)鍵盤として扱うことでMIDIシンセサイザーによる「演奏」をきちんと行うという、従来のキーボードでは夢にも思わなかったようなとんでもないデモが行われていました。

ただ鳴らすだけなら、普通のキーボードでもやればできないことはないのですが、楽器のピアノの鍵盤のように、押し下げ量によって音に強弱がつくのは本当に衝撃的です。

これはスイッチのオンオフによるデジタルな動作しかできない他の方式のキーボードではまず真似のしようのない、キーボードによる入力の歴史を変えるような革命的アイデアです。

分かりやすく言うと、これまでのキーボードでは例えば106キーだったら106種類(※注)の入力しかできなかったのですが、それぞれが256段階となる、つまり106×256=27136種類の入力ができるようになるということで、アナログなデバイスであるが故に正確に特定のコードを入力するのは難しく、またこのモードでの動作にはこれまでとは異なるデバイスドライバが必要となりますが、それゆえにこれまでにない操作体系を生み出せる可能性が提供されたことにもなります。

 ※注4:厳密にはSHIFTキーやAltキーなどのキーバインドによる入力があるのでコントローラで認識されるキースキャンコードの種類はもっと多くなります。

今回はMIDI鍵盤としてのデバイスドライバが提供されてピアノの鍵盤よろしく、押し込み量に応じてシンセの音の強弱が制御されつつ「演奏」が行われたのですが、これだけ自由度の高い仕組みならばもっと他の可能性も探ることができるでしょう。

筆者が思いついただけでも、例えばIMEのメーカーとの開発協力が必要となるものの、テキスト入力で文字の濃淡をこの打鍵時の強弱により操作できるようになれば、何というか書道的というかこれまでに無い、古くて新しい文書編集・テキスト記述ツールができそうです。

アナログ入力対応キーボードの主要キー部分ご覧のとおりキー前面に通常キーボードモード以外での動作時の機能が色を変えて表示してある

アナログ入力対応キーボードの主要キー部分
ご覧のとおりキー前面に通常キーボードモード以外での動作時の機能が色を変えて表示してある

なお、このキーボード本体のF1キーからF4キーのキートップ前面にはそれぞれ「MOUSE」「MIDI」「game D」「game X」と記され、さらには「I」「J」「K」「L」の4つのキーにはそれぞれ「△・Y」「□・X、」「×・A」「○・B」が印刷されるなど、家庭用ゲーム機用パッドに搭載されているボタン群に独特の特徴的な表記が並んでおり、マウスやMIDIキーボードとしてだけでなく、PlayStation系やXbox系の家庭用ゲーム機のゲームパッド互換として利用可能なようにもなっていることがわかります。

欧米市場向け「TYPE HEAVEN」のロゴ入りで展示されていたLEDバックライト付きキーボード

東プレ RGB LEDバックライト搭載キーボード(参考出品)東プレが欧米で展開している「TYPE HEAVEN」ブランドのロゴが印刷された筐体に収まった、RGB LEDバックライト搭載モデル。1,680万色のバックライトカラー表示機能を備え、キー入力位置(キーストロークにおけるオンオフの検出位置)を4段階に調整できる

東プレ RGB LEDバックライト搭載キーボード(参考出品)
東プレが欧米で展開している「TYPE HEAVEN」ブランドのロゴが印刷された筐体に収まった、RGB LEDバックライト搭載モデル。1,680万色のバックライトカラー表示機能を備え、キー入力位置(キーストロークにおけるオンオフの検出位置)を4段階に調整できる

次に目を引いたのが、東プレが欧米で展開している「TYPE HEAVEN」ブランドのロゴの入ったフルサイズキーボードです。

このキーボード、筐体デザインそのものは現行のREALFORCEシリーズと特に変わりないのですが、やけに派手に見えます。

近寄って確認してみると、最近の他社製ゲーミングキーボードで静かに流行中のRGB LEDによるバックライトを搭載して1680万色のバックライト点灯に対応し、これによりキートップの文字表記まで光るようにされたバージョンなのでした。

キーの構造を考えると、東プレのREALFORCEシリーズの場合、中央に中空のシリンダー状の軸部品が来るため、この中空部を通せば容易にキートップの文字へ基板上の光を導ける訳で、中身の詰まった軸が中央に位置するCherry MXキースイッチを搭載したキーボードでこの手の電飾をやるよりもよほど容易ということになるでしょう。

ロジクールはこの問題を解決するために思いあまって日本のオムロンに中央部にLEDからの導光を行えるような構造のキースイッチを新規開発させるという力業に出ましたが、REALFORCEシリーズはそんなことをせずとも無理なく導光できる構造になっているわけです。

正直、これはゲームプレイ中の姿をパフォーマンスとして「見せる」必要のあるユーザーでもなければほとんど用のないキーボードだと言ってしまえばそれまでなのですが、各キー個別にバックライト色を変えられるのであれば、CAPSロックなどのステータスランプ代わりにもできるはずで、また暗所でキーボード入力を行う場合にも有用であることから、これは単にゲーム用として見るのではなく、他にもさまざまな応用の効く入力デバイスであるとみた方がよろしいでしょう。

ちなみに、キートップ本体の樹脂成形色が黒で、しかも文字部分だけLEDによる発光できるようになっていることから、このキートップは恐らくは文字部分(透明)と周囲(黒)の2色の樹脂を多層射出成形した、恐ろしく贅沢な構造を採用していることが見て取れます。

この方式、「コンパックショック」(1992年)で低コスト化に踏み切る以前のPC-9800シリーズなどでは当たり前に採用されていた構造なのですが、当然ながらほとんどのキートップが表記ごとに別の金型とする必要があるために大変に高コストで、かつて某社が新型機の新設計キーボードにこの方式を採用した際には、キー数が多かったこともあって「キーボードの金型代だけで1億円かかった」と言われたほど高くついたと伝えられています。

当時の金型成形がほぼ全て手作業で、現在とは全く状況が違ったことは考慮する必要がありますが、いずれにせよREALFORCEシリーズで標準となっている昇華印刷による文字表記(※注5)と比較して高コストになるのは明らかです。

 ※注5:色素を昇華させ、キートップ表面に浸透させるようにして印刷する技法で、他の印刷処理による方式と比較して表記の摩耗に対する耐久性が格段に高いという特徴があります。

もっとも、会場で伺った限りではこのキーボード、2万円程度の売価を想定しているとのことで、この種の電飾ゲーミングキーボードとしては高価な部類に入るものの、通常仕様のREALFORCEシリーズとの価格差やそのキートップ構造などを考慮すると、むしろ安い部類に入るでしょう。

なお、気になるブランドですが、このまま「TYPE HEAVEN」ブランドで出すことになるのではないか、とのことでした。

PS/2は死なず

東プレ REALFORCE 108P-S東プレが久々に発売する、PS/2端子接続対応のREALFORCEシリーズ。PS/2端子接続対応の機種が減っている昨今、貴重な選択肢となろう

東プレ REALFORCE 108P-S
東プレが久々に発売する、PS/2端子接続対応のREALFORCEシリーズ。PS/2端子接続対応の機種が減っている昨今、貴重な選択肢となろう

3番目にご紹介するのは、一見通常の日本語108キー配列のREALFORCEシリーズキーボードながら、接続端子を現在一般的なUSBではなくレガシーなPS/2端子に変更したREALFORCE 108P-S(SI0100)です。

2016年2月の発売が予告されているこのキーボード、接続端子以外は押し下げ特性が通常の変荷重仕様の標準的なREALFORCEシリーズそのもので、特にこれと言って大きな特徴は無いのですが、接続端子がPS/2である、この一点だけでこのキーボードを欲するユーザーも恐らく少なくないことでしょう。

というのは、REALFORCEシリーズの現行製品にはもうフルキー配列のPS/2端子接続モデルが存在しなくなっていて、同時キー入力数(※注6)にこだわるユーザーにとって選択肢が無くなってしまっているからです。

 ※注6:PS/2端子接続のキーボードの場合、内蔵コントローラがいわゆるnキーロールオーバー入力に対応している場合、事実上無制限にキーの同時押しが検出されます。一方、通常のUSB接続キーボードの場合はUSBの仕様的な制約により、同時に6キーまでしか認識できないようになっています。このため、同時押しするキーの多いFPSゲームなどをプレイしている場合、後から入力認識されたキーがあるとその分、先に入力認識されていたキーが解放されてしまって誤動作したりするため、結構深刻な問題であったりします。このため、近年ではコントローラ側の仕様を変えてUSB接続でも同時認識できるキー数を両手の指の数より多くすることで、この問題に対処したゲーミングキーボードが販売されるようになってきています。

実際、筆者が気づいたときにはいつの間にかPS/2接続の英語101キー配列モデルが無くなっていて、購入予定が狂って愕然としたことがあったのですが、どうやら同じようなことを考えていた人間が結構いたらしく、まずは需要の多い日本語108キー配列モデルとして再度PS/2端子接続の製品を出すことにした由です。

ちなみに、筆者個人の欲しい英語101キー配列PS/2端子接続モデルの復刻について係員の方におたずねしたところ、「101は無理だが104なら」とのことで、Windowsキーのついた104キー配列のモデルなら可能性があるとのことでした。

WindowsキーはFPSに限らずゲームプレイ中に誤爆の原因になることがやたらあって、コアなゲーマーの中にはキーを引き抜いたり、キートップと本体の間にスペーサーを挿入して押し下げができなくしてしまったり、といった加工を施してこのキーが物理的に使用できないようにしてしまう人も少なくないのですが、一般的にはこれがついてないと売れない、これがあるのが当たり前という認識(※注7)で、このキーの無い英語101あるいは日本語106キー配列の利点を「今」理解してもらうのは本当に大変であったりします。

 ※注7:実際、かつて筆者が某社でキー配列の設計を担当したゲーミングキーボードでは、省スペース化のために工夫を凝らしたキー配列を決定してゆく過程で必然としてこのキーを省くという決断が行われたのですが、社内での理解を得るどころか生産委託先の実設計チームにすらその意図を理解して貰えず、そればかりか試作の度に(このキーの搭載をうっかり忘れたに違いない、という相手側の勝手な親切心あるいは思い込みで)Windowsキーが追加されてきて、こちらの指示通りの配列とするよう何度も要求せねばならないという始末で、製品として無事市販されるまでにはあちこちに様々な障害がありました。

…どうやら、Windowsキーがあまり好きで無い、というか文書入力中でも誤爆で毎度迷惑している筆者は、ネットオークションなどでかつての英語101キー配列かつPS/2端子接続のREALFORCEシリーズを探して落札しないとだめなようです。

等荷重30g、テンキーレス配列の省スペースキーボード

東プレ REALFORCE NG310S省スペース性を重視したテンキーレスで、しかも押し下げ特性を等荷重30gとしたゲーミングモデルのキートップをグレーカラーとしたモデル。小型だが本体重量1.2kgとずしりと重く、激しい操作でも本体が容易に動いたりしないように配慮されている。

東プレ REALFORCE NG310S
省スペース性を重視したテンキーレスで、しかも押し下げ特性を等荷重30gとしたゲーミングモデルのキートップをグレーカラーとしたモデル。小型だが本体重量1.2kgとずしりと重く、激しい操作でも本体が容易に動いたりしないように配慮されている。

最後にご紹介するのが、各キーの押し下げ特性を全て同じ30gに統一(※注8)して応答性を良くし、テンキーを省略することで省スペース化を図った、日本向けゲーミング仕様のモデルのキートップグレーカラーバージョン(NG310S)です。

 ※注8:東プレの静電容量無接点方式の場合、円錐バネのばね定数を変えることで、押し下げ特性を任意に変更可能となっています。これにより、通常製品ではキーの列ごとに押し下げ特性を変えて打ちやすくしてあるのですが、ゲーミング仕様では押し下げ特性はなるべく軽く押し下げのストロークの浅い内に反応が返ることが求められるため、この製品では東プレが設定している中でもっとも軽い30gで統一してあります。

実は等荷重30gでテンキーレス配列としたゲーミング用途向けREALFORCEシリーズは、筆者がかつて在籍した某社が東プレさんからOEM供給を受けて販売したモデルが本邦初登場であった(※注9)ため、何というか懐かしい感じがしたのですが、ここでちょうど良いのでこれをワイヤレス化したモデルは造れないのかと係員氏におたずねしてみたところ、静電容量無接点方式はその仕組み的にどうしても待機中の消費電力が他の方式よりも大きく、省電力性が重要なワイヤレスモデルには適さない、とのご返答でした。

 ※注9:ちなみにこのモデル、発売当初の店頭想定価格が22,800円と恐ろしく高価であったためか、あるいは基本のしっかりした良い製品であったためか現在でも愛用者が少なくないそうで、係員氏に伺ったところでは、発売した某社が廃業し既にこの世に無い現在も時折修理依頼が東プレさんの修理センターにやってくる由です。

考えてみれば、全キーについて一定の電荷がチャージされた回路が必要で、しかもその電荷容量を一定周期でずっと検出・監視し続けねばならないのですから、ただ回路が接続されて通電したことを検出させればそれで済むメンブレンゴムシートスイッチや機械式スイッチによるキーボードよりもずっと大きな消費電力となっているわけです。

そのため、この方式では(東プレがPFUにOEM供給している)「Happy Hacking Keyboard Professional 2」のように極限までサイズを切り詰めた小型モデルもあるにもかかわらず、Bluetoothなどによる無線接続対応の機種は提供されていません。係員氏に伺ったところでは、やはりこの種の機種に対する要望は非常に多いものの、技術的に難しいとのことでした。

お堅い東プレが遂に…

以上、東プレブースの出品物をご紹介してきましたが、これまで銀行やら証券会社やらお堅い法人向けの、それこそキーボードと呼ぶよりは「鍵盤」という古めかしい用語を使った方が良いような業務用製品を主力としてきた同社が、これまで各社にゲーミングキーボード製品をOEM供給してきたとはいえ、自身はあくまでビジネス向け製品のラインナップにとどめてきた同社が、RGB LEDバックライトという最近流行の機能をフィーチャーしつつゲーミングキーボード市場へ乗り込んできたのは、1つのトピックであると言って良いでしょう。

また、アナログ入力対応キーボードは、キーボード市場において唯一静電容量無接点方式を採用し続ける東プレだからこそ実現しえた、本当に画期的な製品です。

現状では参考出品の域にとどまっていますが、この方式にはこれまでにない、キー入力に全く新しい可能性を提示するものであり、筆者としては是非製品化にこぎ着けて欲しいと祈らずにはいられません。

アナログ入力には、AppleがiPhone 6s・6s Plusで示したように、OSをはじめとするソフトウェア全体に新しい操作体系をもたらす可能性があり、ここからこれまで考えもしなかったようなアプリケーションソフトウェアが誕生することも期待できます。

元々キーボード市場でも孤高のハイエンドとでも呼ぶべき位置づけであり続けてきた東プレのREALFORCEシリーズだけに、今回参考出品されていた各製品が本格的に量産製品化されたとしても、おいそれと手の出せないような価格となると考えられるのですが、これまでに無い新しい可能性を提示できるのであれば、それを体験できるのであれば、その価格は十分納得がゆくことでしょう。

こうして新しい市場への進出と全く新しい提案を行う一方で古いPS/2接続のモデルを新発表したあたり、一筋縄でいかないところがあるのですが、今後もこの会社の動向には要注目です。

▼参考リンク
ボード(REALFORCE) | 電子機器関連製品 | 製品情報 | 東プレ株式会社
特長 | キーボード(REALFORCE) | 電子機器関連製品 | 製品情報 | 東プレ株式会社
Orion Spark G910-Mechanical-Keyboard-Logicool
チェリー Cherry メカニカル押しボタンスイッチ MXキースイッチ Aタイプシリーズ

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