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SmartNews、MERY、Travel.jp[たびねす]『メディアビジネスの成功パターンと現状の課題』

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by [2015年10月13日]

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 2015年9月17日から18日にかけて開催された『B Dash Camp 2015 Fall in Kyoto』より、「メディアビジネスの成功パターンと現状の課題」をお届けします。

岩本氏

AOLオンライン・ジャパン TechCrunch Japan 岩本有平氏

───私は、月刊誌『インターネットマガジン』の編集に携わった後、『CNET Japan』に9年間、今は『TechCrunch Japan』に1年半います。『TechCrunch』のビジネスはインプレッションベースの広告とイベントが主流で、今年で丸10年を迎えた媒体です。この数年、こちらに登壇されている皆さんが行っているような、キュレーション・アグリゲーションといった新しいメディアが出てきました。今までとはビジネスモデルが違いますし、コンテンツの作り方にも新たな課題が出てきます。本日はその辺りを皆さんに伺えればと思います。

柴田氏

ベンチャーリパブリック 代表取締役社長 CEO 柴田啓氏

柴田 ベンチャーリパブリックは、旅行比較サイト『Travel.jp』を運営しています。その延長で3年前から『Travel.jp[たびねす]』というオンライン上の観光ガイドサービスを提供しています。

中川氏

ペロリ 代表取締役 中川綾太郎氏

中川 3年前にペロリを立ち上げ、2年半前にMERYのサービスを開始しました。昨年のB Dash Campで機会をいただき、2014年10月1日からDeNAの子会社としてやっています。

藤村氏

スマートニュース 執行役員 メディア事業開発担当 藤村厚夫氏

藤村 SmartNewsは2012年6月に創業し、2014年12月から広告ビジネスにも真剣に取り組んできました。日本で一定の基盤を得たと感じているため、世界展開も加速させたいと思っています。

───皆さん同じ「新興メディア」とはいえ、属性が全く異なりますよね。『SmartNews』は様々なメディアからコンテンツを集め、最適化して見せる「アグリゲーター」。『MERY』は自分たちでコンテンツ作りを行うと同時に、投稿プラットフォームの性質もある「プラティッシャー」。『Travel.jp[たびねす]』は比較サイト『Travel.jp』の「オウンドメディア」という形でスタートしています。

安いものしか売れない価格比較サイトを脱するために
『Travel.jp[たびねす]』の例

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柴田 私たちは、独自の取材を行うことで充実させた記事を、1万ほど持っています。記事の執筆にはブロガー・ジャーナリストなど旅の専門家を採用しており、その数は日本と世界各国(ほとんどが日本人)を合わせて400名強です。毎週100以上、独自性が高く奥深い記事が増えています。これが私たちの作ってきたエコシステムです。

───『Travel.jp[たびねす]』から『Travel.jp』に流入するユーザーはどれくらいいるのでしょうか。
柴田 旅行価格比較サイトを運営していて感じる最大の問題は、安いものしか売れないことです。この状況を打破するために、コンテンツを利用して良いもの・高いものを売れるように出来ないかと考え、『Travel.jp[たびねす]』を作りました。記事を書いてみてわかったことは、必ず新しい予約が増えるわけではないということです。以前、CNET JapanさんやITmediaさんと共に『coneco.net』という価格比較サイトで、ガジェット記事に価格比較サイトへの導線をつけた時も、思ったより成約が生まれないというのが現実でした。しかし、ネットワーク広告をつけるよりはコンバージョンレートが高く出るため、集客をすればまずまずの成果が得られることは分かりました。

───ブロガー運用はどのように行っているのですか。
柴田 私たちの会社にはブロガー探し専用のリクルートチームがあります。社員を採用する時と同じくらい労力を使い、面接・教育等を行います。思ったよりも時間とマンパワーがかかる作業です。

───ブロガー運用はある程度システム化されているのでしょうか。
柴田 社内に多数エンジニアがいるため、出来るところはシステム化をしています。例えば、ブロガーさんがブロガーネットを通していつでも新しい情報が閲覧出来るようにしたり、PV数を見られるようにして、自分が今ブロガーさんの中でどの順番に在るかわかるようにしたりしています。

───ビジネスモデルはメディア自体で稼ぐということですか。
柴田 メインは、『Travel.jp[たびねす]』から『Travel.jp』に送客してマネタイズすることです。しかし、メディアだけでどれくらい賄えているかも見られるようにしています。

───この執筆を職として食べていける人はいるのですか。
柴田 最近やっと出てきて、数十万円稼げる人が数人います。とても嬉しいです。

海外展開と動画広告で新たな挑戦 『SmartNews』

藤村 『SmartNews』のダウンロード数は1,300万、MAU(会員制のサービスにおいて登録だけでなく、実際に利用している人を月ごとに調査した数値)は480万~490万です。ダウンロード数は重要な指標にならないと考えているため、MAUや、月間の一人当たりの総訪問時間を追求しています。一人当たりの月間総訪問時間をアプリ間で比較した調査によると、日本の非ニュースアプリの中ではLINEが強力で、その後をFacebookが追っています。しかしこれにニュースアプリを加えると、SmartNewsはFacebookを抜き、LINEを追いかけている状況です。

───Gunosyと比較されることが多いですが、競合と考えているのでしょうか。
藤村 我々は、月に何回訪れていただけるか・どれだけ時間を使っていただけるかという点を重要視しています。ですからライバルはどちらかと言えば、非常にたくさん使われるソーシャルメディアやメッセンジャーです。

───FacebookやLINE、Twitter等がニュースを始める方が気になっているということですか。
藤村 そうですね。海外はまだこれから考えていく段階ですが、日本ではそこにいかに食い込んでいけるかが大きなテーマです。

───『SmartNews』はどういったビジネスモデルですか。
藤村 2014年12月にサービスを発表して以来、広告事業を進めてきました。今後も広告だけでやっていくわけではありませんが、基盤作りという面では力を入れています。

───『Travel.jp[たびねす]』と『MERY』がコンテンツを作るのに対し、『SmartNews』は集めてきますよね。コンテンツ集めの基準は何でしょうか。
藤村 弊社には編集部が存在しておらず、記事の構成はアルゴリズムが調整しています。インターネット上で話題になっているコンテンツを、リアルタイム性高く表示させるシステム構成を積み重ねています。

───動画広告をやられていますが、『SmartNews』は網羅性が高く滞在時間が短いイメージがあります。動画広告と滞在時間の親和性はあるのでしょうか。
藤村 私たちの動画広告は日本初の自動再生、かつ画面中で適正なポジションを持ったものです。広告が流れても記事を読みたければスクロールによって消すことが出来ます。内容は映画・テレビ宣伝が中心ですが、突然クオリティの高い動画が流れてくるということで、ユーザーに注目して見ていただいています。この広告が邪魔ではないか不安でしたがクレームはなく、むしろ高い評価をしていただいているので、自分たちでも驚いています。相性はいいと思います。

───国内でパートナーを獲得する際に、既存メディアからの反発があったと記憶しています。海外でも100チャンネルを越えるパートナー獲得をされたようですが、アメリカでそのような反発はありましたか。
藤村 国内の媒体社・報道機関さんに対しては、2年ほどかけてビジネス上のメリット、これからメディアがどのような事象・トレンドに立ち向かわなければならないのか、『SmartNews』がそれに対してどうお手伝いできるのかといった点をお話して、100チャンネル強まで近づきました。

アメリカの場合は、日本よりも『SmartNews』を受け入れてくれる環境が揃っていました。コンテンツを必要な読者に届けるために、ソーシャルメディアや検索エンジンを使い倒すこと、つまり届ける役割を様々なものに求めることが常識になっていたからです。日本では2年かかってしまった反省もこめて、アメリカでは大手の新聞社・報道機関さんともきちっとお話が出来る、ベテランジャーナリストを立ち上げ期から採用しています。2014年10月に立ち上げたアメリカ版は現在、ニュースアプリジャンルで上位にいます。

───今後、一緒にやりたいコンテンツプロバイダーはいらっしゃいますか。
藤村 メディアの仕事は大変だと言われつつも、どんどん新しいメディアやコンテンツが生まれています。しかしユーザーはその全てを見ることが出来ません。私たちは良いコンテンツを作り続けている人たちとエンゲージして、作り手論理ではなく、ユーザー自身が面白いと感じるものを見つけ出すことに、徹したいと考えています。そのためには、価値の高いコンテンツを収集する仕組みの研ぎ澄ましが必要になってきます。ですから社内では、相当な人数を自然言語解析チームに置いて取り組んでいます。

女性ファッション誌のような体験をスマホ上で『MERY』

中川 『MERY』は女性ファッション誌のような体験をスマホ上で実現したいと思って作ったサービスです。ファッションを中心にコスメ美容などのコンテンツが、ユーザー投稿を中心に作られています。月間ユニークユーザー(Webサイトを訪れた人の正味)は2,000万人です。

───Webと比べて、アプリの反響はいかがですか。

中川 正式リリースは2ヶ月前の2015年7月ですが、ダウンロード数は数十万に来ています。アプリにするとかなりポジティブになり、訪問時間はWebと比べて4倍になりました。『MERY』のサービスを初めて使っていただいている方にも、長い間使ってもらえています。

アプリには、「記事の閲覧・検索・購入・お知らせ」に関した4つのバーがあります。『MERY』はもともと、暇な時間にダラダラと見て、欲しいものを見つけるというスタンスでサービスを開始しました。しかし『MERY』の中で似ている商品や同じブランドの服を探したいという声が多かったため、アプリでは検索機能を展開することにしました。購入については、女の子が欲しいものをスクリーンショットで保存することが多いことから応用して、ブックマーク出来るようにしました。また、そのデータから人気アイテムをタイムラインでランキング化することで、ユーザー体験を読み物化することにも挑戦しています。そしてお知らせ機能ではブックマークから、そのユーザーの好きなブランドの商品についてのお知らせや値段が下がった情報などを知らせています。

このように、メディアとしてだけでなくサービス・ツールとしても動いています。メディアの会社と思われていますが、チームの半分は開発者ですので、こういったアプリやコマース周りの開発は頑張っています。

───Instagramでは何を展開していらっしゃるのでしょうか。
中川 最近『MERY』に対してコンテンツを提供してくれる個人や美容師、ショップ店員さん等が増えて、自分が投稿する際に「#MERY」とつけてくれます。女の子はInstagram上で#を使ってブランドや商品を探すので、#をつけてくれることでユーザーに向けて企画展開をすることが出来ます。身近にいるおしゃれな人を集めるモデルコンテストを行った時は、数日で1,300投稿が来ました。このように、コンテンツ集めだけでなく、ユーザーのコミュニティとしての機能にも注力しています。

───このプラットフォームでのビジネスモデルは何でしょう。
中川 アドセンスやネットワーク広告が中心です。ファッションや化粧品などナショナルブランドを中心にタイアップして展開しています。

───タイアップする際、ブランド重視はしていますか。
中川 『MERY』の世界観を出すためにモデルさんをキャスティングすることも多いので、厳選はしています。タイアップは、月々数十本単位で売れています。

───全体の売り上げのうち、ネットワーク広告以外の比率はどれくらいでしょう。
中川 ネットワーク広告の4~5倍くらいですかね。

───キュレーションから独自コンテンツにシフトしているのは、コンテンツの質やオリジナリティを高めたいからでしょうか。
中川 そうですね。モデルさんを採用すると、スタジオやスタイリストさんなどで結構なコストがかかります。しかし、それでもやる意味があると思っています。ユーザーが求めるコンテンツを作ることが大切ですから、そのためならコストも時間もかけてやるべきだと考えます。

───キュレーション記事を作る際に、女の子から画像を使わないでと言われたことはないのですか?
中川 今のところはないですね。インスタで#を使って気軽に書くように、一部を情報として提供してくれる過程で「『MERY』に載った!」と喜んでくださる方が多いです。『MERY』のレイヤーとしては、素材提供をしてくれている人と、そこからデリバリーするキュレーターという良い循環が生まれつつあるのではないかと感じています。

セッションテーマ:成功パターンについて

───皆さんに、広告ポリシーを伺いたいです。

柴田 他と違うことをやっているわけではないと思いますが、ネイティブアドをメインにはしていません。私たちのビジネスモデルが自社のオウンドメディアでどう送客し、そこからどうツアーやチケット、ホテルを予約してもらうのかがメインだからです。でも依頼がくるため、最近は少しやっています。

中川 PR表記をつけることで読まれないコンテンツになってはいけないという大前提があります。広告でも通常コンテンツだと思ってもらえる体制作りをしたいです。あとは、PRマークはつけると決まってるのでつけるとか、やってはいけないことをしないという、シンプルなことだけだと思います。

───それでは最後に、成功パターンにハマるために重要視していることや、今後についてをお聞かせください。

柴田 旅行に行きたい思考回路は大体「行きたい場所が浮かぶ→企画する→予約をする→旅をして経験する→シェアする」といった流れになっていると思います。『Travel.jp』ではこの回路のうち、予約だけをやっていたため、ユーザーと接することがほとんど出来ませんでした。ところが『Travel.jp[たびねす]』でコンテンツをやりはじめて、ユーザーとすべての段階で接することが出来るようになり、ブランドを知ってもらえる機会も増えました。この先にあるものが何か考えてみると行き着くのが、テクノロジーを使ったコンシェルジュサービスでした。それを確立させることがゴールだと感じています。ベンチャーである以上は、どこかの分野をひっくり返さないと意味がないと思います。

中川 我々は外部から資金調達をしてやっているため、そういう前提で成り立つビジネスは何かと考えました。ファッション領域の今までの課題は、Web上で見てもらう場所を担保できていなかったところです。高いコストがかかるのでコンテンツを作るのも難しい。でも、見られるプラットフォームを先に担保したり撮影を工夫したりすれば、作っていけると感じました。メディアビジネス自体は、情報を求めている人にどう情報を伝えるかです。最終的にはニーズに応えられたり、それぞれにあった形や変化を目指せる会社が残るのではないかと思います。

藤村 テクノロジーのおかげでようやく、メディアビジネスが日本から世界に出ていくことが可能な時代になりました。私たちの会社に編集部がいないのは、単に人間の仕事を省略化しているからではありません。人間の関与する余地を適正に少なくすることで、リアルタイム性を生み出すことが出来ると考えているからです。これは強力な武器となります。この武器を上手く使いながら世界に出て行き、各場所それぞれのニーズをつかまえられる仕組みとして実現したいです。アプリの時代である今、No.1にならないといつでも使ってもらえる存在にはなれません。同業他社をどうするかでなく、多くの人がよく使っているアプリを押しのけ、上位でいられる存在でありたいです。そのために、どうしたら情報価値の高いものが提供でき、愛してもらえるかといった点を繰り返し追求する必要があると考えています。

▼参考リンク
SmartNews
MERY [メリー]
Travel.jp[たびねす]
TechCrunch Japan
B Dash Camp 2015 Fall in Kyoto

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