東プレ RGB LEDバックライト搭載キーボード(参考出品)東プレが欧米で展開している「TYPE HEAVEN」ブランドのロゴが印刷された筐体に収まった、RGB LEDバックライト搭載モデル。1,680万色のバックライトカラー表示機能を備え、キー入力位置(キーストロークにおけるオンオフの検出位置)を4段階に調整できる

【TGS2015】ハイエンドキーボードの先にあるもの~東プレブース「静電容量無接点方式とは?」

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by [2015年9月30日]

東プレブース小さなブースであったが、この手のキーボードをこよなく愛する筆者には見所満載であった

東プレブース
小さなブースであったが、この手のキーボードをこよなく愛する筆者には見所満載であった

今回の東京ゲームショウ2015(TGS2015)では様々なデバイスメーカーから周辺機器としてのキーボードが出展・展示されていたのですが、その中で会場をうろついていた筆者の目にとまったものの1つに、REALFORCEシリーズという静電容量無接点方式キーボードを開発製造販売している東プレさんのブースがありました。

その昔、パソコン向けキーボード好きが高じすぎて今は亡き某周辺機器メーカーに就職し、そこでキーボード製品のキー配列設計を担当するようになってしまったほどに、筆者はキーボードに対する業の深い人間なのですが、そんな筆者にとっても、この東プレさんのREALFORCEシリーズは特別です。

NEC N8606-04 A-VXキーボード(参考)東プレがNECの依頼で開発し同社にOEM供給した、REALFORCEシリーズと同じ静電容量無接点方式を採用するオフコン端末互換配列でUSB接続の業務用キーボード。筆者長年愛顧の一品で、予備の新品まで確保してあるほどの惚れ込みようであったりする。テンキーに「000」キーがあったり、ファンクションキーに相当するPFキーが22個上にずらりと並んでいたり、オフコン端末で使用する「実行/送信」キーがあったりと普通じゃ無い感が満載だが、実はキースキャンコード割り当ての工夫により普通のWindows用キーボードとしても使えるようになっていたりする

NEC N8606-04 A-VXキーボード(参考)
東プレがNECの依頼で開発し同社にOEM供給した、REALFORCEシリーズと同じ静電容量無接点方式を採用するオフコン端末互換配列でUSB接続の業務用キーボード。筆者長年愛顧の一品で、予備の新品まで確保してあるほどの惚れ込みようであったりする。テンキーに「000」キーがあったり、ファンクションキーに相当するPFキーが22個上にずらりと並んでいたり、オフコン端末で使用する「実行/送信」キーがあったりと普通じゃ無い感が満載だが、実はキースキャンコード割り当ての工夫により普通のWindows用キーボードとしても使えるようになっていたりする

実は筆者は、現在もREALFORCEシリーズや東プレさんが日本電気(NEC)向けにOEMで供給した、REALFORCEシリーズと同じ仕組みの業務用特殊配列キーボード(N8606-04 A-VXキーボード)を日常的に愛用していて、またかつて某周辺機器メーカーでゲーミングデバイスの開発に関わっていた時代に東プレさんからのOEM供給でREALFORCEシリーズベースのカスタマイズされたゲーミングキーボードを扱ったこともあって、ことキーボードに関しては(少なくとも現行市販製品では)耐久性や打ちやすさ、打ったときの疲れにくさなどの点でこれ以上のものはほぼ存在しないと確信している一人なのですが、それだけに今回、同社が「ゲームショウ」に出展してきた、「これまでにない」新製品には目を見張るものがありました。

そこで今回は、東プレブースで展示されていた幾つかのキーボードと、REALFORCEシリーズで用いられている技術についてご紹介したいと思います。

キースイッチを巡る情勢

東プレ公式サイトに掲載の、一般的キーボードの(右)とREALFORCEシリーズ(左)の違いを解説するページ

東プレ公式サイトに掲載の、一般的キーボードの(右)とREALFORCEシリーズ(左)の違いを解説するページ

さて、そもそも「静電容量無接点方式」と言われても一体なんじゃそりゃ? という方も少なくないと思います。

現在の一般的なキーボードでは、大別して低価格帯を中心に利用されているメンブレンゴムシートスイッチによるものと、ハイエンド機を中心に使用されている、ドイツのZF Electronics社によるCherry MXキースイッチに代表される機械式キースイッチによるものの、2種類のキースイッチ方式が主流となっています。

前者は導電性のメンブレンゴムシートを、穴の開いた絶縁シートを挟んで基板上の接点の上に載せ、その上からキーを押し下げることでシートと接点を接触させてキースイッチの回路的なオンオフを成立させるという仕組みです。

この方式は乱暴に言えば制御用コントローラの載ったスイッチ基板シートと絶縁シート、それにメンブレンゴムシートの3枚よりなるシート群と、キーの押し下げを案内するガイド機構とキー本体、そしてキーの位置を復元するためのラバードームがあればそれでキーボードとして成立するため構造が大変単純で安く造れるというメリットがあって、そのためミツミ電機やミネベアなどといったメーカーによって本格的な量産が始まった1990年代前半頃から低価格パソコンを中心に爆発的に普及し、それまで標準的に用いられていた機械式キースイッチによるいわゆるメカニカルキーボードをあっという間に駆逐してしまったことが知られています。

端的に言えば、500円とか1000円とかで新品が売られている様な格安キーボードは、ほぼ確実にこのタイプのキースイッチを搭載しているということになります。

もっともこの方式の場合、そのスイッチの原理からキーをそのストロークの下端まで押し下げきらないとスイッチが入りにくい、という難点があって、かつて大学生時代にこの種のキースイッチを備えた安物キーボードを使っていた筆者は、ゼミで膨大な量の統計データの入力を行う際にキーの底突きの負担が原因で指を痛めたことがあります。

一方機械式キースイッチによる後者は、そのスイッチ名が示すように、各キー1つ1つに板バネを利用したマイクロスイッチなどによる機械式のスイッチ機構を組み込んで、それのオンオフを利用する仕組みです。

つまり、キーの数だけスイッチ機構を用意する必要があるため、キーの数が増えれば増える程、その数に比例してコストが増大する仕組みで、例えばAppleのMacintosh用純正キーボードの名作、「拡張キーボードII」(ADB接続、アルプス電気製キースイッチ搭載)などの1980年代~1990年代初頭頃までのパソコンメーカー製純正オプションキーボードが定価2万円~3万円クラスの非常に高価なものとなっていたのも、実はこのキースイッチの仕組みが原因の1つでした。

そうした事情から、この機械式キースイッチによるメカニカルキーボードは、パソコンの本体価格引き下げが強く要求される市場の情勢下で急速にメンブレンゴムシートスイッチによるキーボードに置き換えられて駆逐され、一時は高耐久性を要求される業務用キーボードに既存製品が細々と残るのみというところまで追い詰められていました。

もっとも、ハードな使われ方をする業務用キーボードには特にこの方式の採用が続けられたという事情からも明らかなように、機械式キースイッチによるメカニカルキーボードには、メンブレンゴムシートスイッチによるキーボードを遙かに上回るキーの耐久性(※注1)があり、またキーを押し下げきらない内にスイッチが入るようにでき、さらには押し下げた際の「クリック感」の有無や強弱を板バネによって演出できるなど、スイッチ機構の挙動を細かく調整できるため、指への負担が少なく打ちやすいというメリットもあります。

 ※注1;メンブレンゴムシートスイッチによるキーボードの各キーごとの耐久性は、メンブレンゴムシートが断裂して回路を構成できなくなるまでのメーカー公称値で一般に200万回~1000万回前後、機械式キースイッチによるものは一般に公称2000万回~5000万回程度とされています。つまりこれら2方式の間では各キースイッチの耐久性に10倍程度の差があります。

Logicool G910(参考)ロジクールが満を持して送り出したオムロン製キースイッチ搭載メカニカルキーボード。このオムロン製キースイッチは国産キースイッチとしては恐らく何十年ぶりかの完全新規設計品で、LEDによるバックライト点灯に最適化されたスイッチ機構を採用するなど、最近のゲーミングキーボードのトレンドに即した形で設計されている

Logicool G910(参考)
ロジクールが満を持して送り出したオムロン製キースイッチ搭載メカニカルキーボード。このオムロン製キースイッチは国産キースイッチとしては恐らく何十年ぶりかの完全新規設計品で、LEDによるバックライト点灯に最適化されたスイッチ機構を採用するなど、最近のゲーミングキーボードのトレンドに即した形で設計されている

そのため、近年ではハードな打鍵を行うプロゲーマーを中心にメカニカルキーボードの再評価が進み、各社から機械式キースイッチを採用したゲーミングキーボードがハイエンド機種を中心に多数発売されるようになったばかりか、ここ20年来ご無沙汰だった新設計キースイッチの開発投入(※注2)まで行われるようになってきています。

 ※注2:メカニカルキーボード用キースイッチ、特に国産のものはアルプス電気製を筆頭にその大半が1980年代末頃までの開発で、以後は現在も生産されているCherry MXシリーズがドイツで新規開発された程度でしかありませんでした。しかしここ数年の再評価と復権で、オムロンによるロジクール向け新設計キースイッチの供給開始を皮切りに、徐々に目的に合わせた新型キースイッチの開発が行われるようになってきています。

しかし、幾ら高耐久性と言っても機械式キースイッチにも故障や寿命はあって、使用頻度の少ないキーで接点酸化による接触不良や、高頻度で使用されたキースイッチの摩耗による接触不良が起きたりすることが少なからずあります。

こうした問題に対する1つの解決策となるのが、東プレがREALFORCEシリーズに採用している静電容量無接点方式なのです。

スイッチではないスイッチ

東プレ REALFORCEシリーズの静電容量無接点方式キースイッチ周辺厳密には「スイッチ」ではない。中央のシリンダー状の軸部品が下から円錐バネで支えられて浮いており、これを押し下げることで軸部品の底に取り付けられた誘電体が基板上のコンデンサ回路に接近、これによる回路の電荷の容量変動を検出し、閾値と比較することで回路が実現する仮想的なスイッチのオンオフ状態を判定する

東プレ REALFORCEシリーズの静電容量無接点方式キースイッチ周辺(参考)
厳密には「スイッチ」ではない。中央のシリンダー状の軸部品が下から円錐バネで支えられて浮いており、これを押し下げることで軸部品の底に取り付けられた誘電体が基板上のコンデンサ回路に接近、これによる回路の電荷の容量変動を検出し、閾値と比較することで回路が実現する仮想的なスイッチのオンオフ状態を判定する

実はこの方式、「無接点」という名称からも明らかなように、厳密にはスイッチ機構ではありません。

この方式は各キーに備わった、円錐バネで弾性支持されたシリンダー状の軸部品を押し下げることで、そのシリンダー状部品の底についた誘電体の接近・離脱によって各キーの部分に用意されたコンデンサ回路の電荷容量(静電容量)を変化させ、それを電気回路で検出することでオンオフを判定する仕組みです。

つまり、オンオフを判定するスイッチ相当の部分は一切機械的な機構を必要とせず純粋に電気回路だけで構成されているため、理論上この部分は(コンデンサなどの搭載部品の寿命の許す限り)無限に近い耐久性を備えていることになります。

もっとも、キーの押し下げ・案内を行う軸部品や円錐バネには摩耗や金属疲労による寿命が存在する(※注3)ため、公称耐久性はそれらによる値をとって5000万回程度とされているのですが、接点接触不良が原理的にあり得ない方式であるため、使用頻度が低いキー(例えばローマ字入力や英語入力ではほとんど使われない「Q」など)が気がつくと打てなくなっていたといったトラブルが起きる可能性が皆無に近いという他では得がたいメリットがあります。

 ※注3:例えば円錐バネがへたって押し下げられた状態のままになってしまう、といったトラブルが生じる可能性があります。もっとも、これもへたった円錐バネを良品に交換すれば元の性能が得られるわけで、修理によるメンテナンスも考慮すると、さらなる長寿命が期待できます。

こうした土壇場でトラブルの出る可能性の少なさが評価され、東プレの静電容量無接点方式キーボードは銀行やデータセンターなどのトラブルが許されないミッションクリティカルなデータ入力を行う業種を中心に業務用で圧倒的な支持を得ているのですが、一見隙の無いこの方式にも弱点が幾つかあって、例えば各キーごとに可変容量電荷のコンデンサ回路を形成する必要があるため、電気回路の部品コストが高くつき、また常時電界を維持し続けねばならないため他の方式よりも消費電力がどうしても大きくなるという問題もあります。

次回へ続きます。

▼参考リンク
ボード(REALFORCE) | 電子機器関連製品 | 製品情報 | 東プレ株式会社
特長 | キーボード(REALFORCE) | 電子機器関連製品 | 製品情報 | 東プレ株式会社
Orion Spark G910-Mechanical-Keyboard-Logicool
チェリー Cherry メカニカル押しボタンスイッチ MXキースイッチ Aタイプシリーズ

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