PlayStation VRを前から見るこのあたりの筐体デザインの洗練はさすがソニーと唸らざるを得ない。

【TGS2015】来た、並んだ、遊んだ ~PlayStation VRが示すもう一つのVRの世界~後編

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by [2015年9月30日]

前編では「PlayStation VR」の仕様について見てきました。ここからは、いよいよ実際に試遊してからのレポートをお届けします。

実際に装着してみる

PlayStation VRの試遊タイトルご覧のとおり都合10タイトルが試遊に供されたが、事実上あてがい扶持の状態で、選択の余地はほぼ皆無であった。

PlayStation VRの試遊タイトル
ご覧のとおり都合10タイトルが試遊に供されたが、事実上あてがい扶持の状態で、選択の余地はほぼ皆無であった

さて、ようやく筆者の順番がやってきました。

案内してくださったスタッフの方によれば、試遊できるのはスクウェア・エニックスが「Final Fantasy XIV ONLINE」から特に「タイタン討伐戦」だけを抽出してVRMMO RPG化し、さらに難易度設定などを変更した特別バージョンとのことで、4人を2組に分けて1組の1人が「PlayStation VR」装着、もう一人が通常のディスプレイ利用で15分プレイし、その後役割を交代してさらに15分プレイする、と説明されました。

同じコンテンツについて「PlayStation VR」利用時と通常ディスプレイ利用時を比較して体験できるのですから、これは願ってもないことです。

美人コンパニオンのお姉さんに「PlayStation VR」とヘッドセットを装着していただき、PlayStation 4のコントロールパッドを握るとプレイ開始です。

今既にあるDirectX 9.0c世代(※注3)の3Dグラフィック技術を基礎としたゲームのグラフィックデータやキャラクタデータを流用して構築されているためでしょうか、例えば部屋の壁に近づいた時にクローズアップで表示されるテクスチャが結構荒くまるで張りぼてみたいで、なまじリアルな空間表示ができているだけに若干気になったのですが、首を回し、あるいは上下に動かした時の視線移動は至ってスムーズで、視界が変化する際のグラフィック的な破綻も特に見られず、掴みはなかなかグッドです。

 注3:「Final Fantasy XIV」の各バージョンは開発当時のWindowsパソコンのGPU普及状況や対応機種に古い固定シェーダによるGPUを搭載するPlayStation 3があったことなどから、DirectX 9.0c相当の3Dグラフィック技術を基礎として開発されています。

PlayStation VR試作機を実際に装着した状態さすがに自撮りはできなかったため、コンパニオンのお姉さんにご協力いただいた。結構サイバーパンクな感じというか、チバシティでクローム襲撃な感じのデザインである

PlayStation VR試作機を実際に装着した状態
さすがに自撮りはできなかったため、コンパニオンのお姉さんにご協力いただいた。結構サイバーパンクな感じというか、チバシティでクローム襲撃な感じのデザインである

ちなみに、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)としてみた場合の「PlayStation VR」の装着感は、筆者個人としてはDK2版の「Oculus Rift」よりも重さを感じずバランスがよい、というのが正直なところで、装着に使用するヘッドバンドの圧迫感の少なさなども含めて、この種のHMDを市販してきたソニーならではの筐体設計の巧さが光る部分です。

筆者自身、このタイトルのゲームをプレイしたことがなかったので、操作系に慣れるまで時間がかかった(※注4)のですが、ジャンプしたり部屋の階段を降りたりといった操作をするとごく自然に視線が移動しており、なかなかの没入感です。

 ※注4:初見でパッドのボタン配置もよくわからない状態でプレイする場合、この「PlayStation VR」や「Oculus Rift」のように視界を完全にディスプレイで塞いでしまうタイプの機器はどうしても不利です。特に今回は試作品を若干カスタマイズして展示していたらしく、「このボタンでこの操作はしないように」などと注意事項を幾つか伝えられていたこともあって、結構びくびくものの操作でした。また筆者が近年ずっと(パソコンを含めて)「Xbox 360」用純正ジョイパッドを愛用していて、「PlayStation」系のいわゆる「○△□×」ボタン配置が脳内で正しく「Xbox」系のパッドの「ABXY」ボタン相当にアサインされなかったこともあって、操作系への慣熟には若干時間がかかりました。色々経緯があるのでしょうが、特にABと○×の順序が逆になっているのはとっさの際の操作などで結構トラブルのもとになる気がします。

違和感なく視界が移動するが……

ただ、1つ気になったのが、パラメータやゲージなどの表示が視界の外にややはみ出して表示されてしまっていることで、何度か「PlayStation VR」本体を動かして調整を試みてみたのですが。結局それらの表示が視界に全て収まる様にはなりませんでした。

このあたりは、初動のフォーカス調整でうまく合わせてやれば全て見える様になるのかも知れませんが、後で通常のディスプレイでプレイしたときの状況からすると、単にこのソフトで表示が最適化できていないだけであった可能性もあり、製品版でどうなるのかを見ないことには評価が難しい気がします。

今回の体験デモでは4人が同時にログインしてタイタン討伐がスタートする様になっているのですが、実はここでこの視界にかかわる問題がありました。

というのは、ログインに必要な情報が先に記した視界から外れるエリアに表示されてしまい、きちんとその内容が把握できないままに操作を強いられる状況となってしまったのです。

このため何度も入力操作に失敗し、タイムアウトになってしまいました。視界の中央を広く確保して情報を極力隅に寄せて表示しよう、というソフトウェアの画面表示の設計方針そのものは正しいと思うのですが、さすがにこれはちょっといただけません。

何というか、一眼レフカメラでいえば視野率100パーセントではなく、94パーセントとかそんな感じのやや表示領域の狭い光学ファインダーを搭載した機種で、その視野の端にかかるようにして重要な情報が表示されてしまっているような感じで、視線を動かしてもその隠れた領域が完全に表示されないためにストレスがたまるのです。

結局、悪戦苦闘の末に係員の方に操作を手伝ってもらってログインを完了したのですが、この辺の通常ディスプレイを前提としたユーザーインターフェイスをそのままVR機での操作に適用するのは再度検討した方が良いのでは無いかと思います。

あと、筆者個人の感想として、方向ボタンによるメニュー画面のカーソル移動は特にこの種のVR機の場合、どうも体感的にすっきりフィットしないというか、これも操作でストレスがたまる要因になっている気がします。

「Oculus」が「Oculus Touch」として手の位置関係を検出してマウスのように相対的な移動量を決定する新しいコントローラを発表していましたが、ああいったVR環境に合わせた新しいコントローラの提案はこの「PlayStation VR」でも必要でしょう。

乱暴な言い方になりますが、例えばシューティングゲームなどならばともかく今回のようなMMORPGの場合、なまじ没入感が高いが故に、画面上に表示されるパネルをジェスチャーでタッチ操作できるような入力デバイスを用意しない限り操作にまつわる違和感を無くすことはできないのではないでしょうか。

タイタン討伐戦

ログイン操作を完了すると、舞台が切り替わってテーブル状の台地に移動し、上から巨人(タイタン)が降ってくると討伐戦スタートです。

今回の特別な仕様として、その台地の端から落ちても、まるでトランポリンのように底から元の場所の高さまで戻ってくるようになっていて、それでユーザーの操作するキャラクターが死ぬことはないと説明されていたのですが、わざと落ちてみると、何というか独特の浮遊感です。

あまりに面白かったので討伐そっちのけでつい何度も落ちては戻るを繰り返してしまったのですが、そうすると独特の酔いというか、三半規管の加速度情報と視界の移動情報が齟齬を来すのか、脳がその不一致をうまく処理して帳尻を合わせることができない感じの違和感を覚えてしまいました。

そこで改めてタイタンに向き合ってみたのですが、何とも言えない重量感というか威圧感というか、彼我のサイズ差がひしひしと伝わってきます。

通常のディスプレイで同じような巨大キャラクターが迫ってくるのを見ても、恐らくここまでそのスケール感を感じることはなく、これこそがVRディスプレイを導入するメリットの1つなのでしょう。

確かに、この迫力は他で得がたいものがあります。

ちなみに、筆者もパソコンマニアの嗜みとして、Windows向けにスクウェア・エニックスが提供している「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」および「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド」のベンチマークソフトを自分のメインマシン上で走らせたことがありますが、WQHD解像度(2,560×1,440ピクセル)設定で実行するそれらのベンチマークソフト上で登場する巨大キャラクターを見ても、こんな迫力を感じたことはありませんでした。

冒頭でテクスチャが荒いと記しましたが、こうなるともう、そんな些事は全く気にならなくなります。静止状態ならば細部のディティールに目をやるような余裕もありますが、いざ相手がガンガン動いて迫って攻撃してくる状況ではそんな細かいことなど、全くと言って良いほど気にしている余裕はなくなります。

むしろ、この動きの切れの良さを維持する必要があるからこそ、あえてテクスチャを荒くして処理を軽くしているのではないかと思えるほど、重量感のある物体が軽快に切れの良い動きで迫ってくるという、ある意味矛盾した光景が眼前で展開し続けます。

ああ、なるほどこれを実現したくてVR対応するのか。

そう思わせるだけの迫力が、このタイタン討伐戦でのタイタンの動きには確かにありました。

今回、何故スクウェア・エニックスがこの討伐戦だけを抜き出して体験デモに提供したのかプレイ開始前は少々疑問に思っていた(※単純な技術デモの域を出ないのではないか、と思っていた)のですが、このタイタンの動きをみてしまうと、そんな疑念は一発で吹き飛んでしまいます。

有りものの古いモデルとテクスチャで組み立てられたとおぼしきキャラクターを、やはり決して解像度感が高いとはいいがたい舞台の上で動かしただけでさえこれほどの迫力が得られるのですから、きちんとこの環境に最適化して設計されたゲームであれば、より迫力のあるプレイが体験できることでしょう。

そんな風に期待させるだけのものが、この討伐戦シーンには確かにありました。

一人称視点と三人称視点の落差

こうして「PlayStation VR」を装着してのデモプレイ終了後、席を交代して今度は大画面テレビに表示される画面を見ながらのプレイとなりました。

ここで驚いたのは、全く同じ舞台、同じキャラクターなのに「PlayStation VR」で見たときとはまるでその印象が異なっていたことです。

ただ視点が一人称から三人称に変わっただけで、その内実は全く変わりが無いのに、ひどく他人事のように現実感のない状態でのプレイとなってしまうのです。

あれほど生々しく迫ってきたタイタンが、まるで舞台の書き割りのように、現実味のない空虚な人形のように見えてしまうのです。

VR版の実現する圧倒的な生々しさを知ってしまうと、恐らくもう元の通常版に戻ることはできないでしょう。

色々乗り越えるべき問題はあるが…

PlayStation VR試作機を横がちに見る固定用ヘッドバンドの位置や形状など、長年人の頭に触れる機器を多数世に送り出してきたソニーならではのノウハウを感じさせる、一見シンプルながら普通にやっていたのではちょっと思いつかないようなパーツ構成が目を引く

PlayStation VR試作機を横がちに見る
固定用ヘッドバンドの位置や形状など、長年人の頭に触れる機器を多数世に送り出してきたソニーならではのノウハウを感じさせる、一見シンプルながら普通にやっていたのではちょっと思いつかないようなパーツ構成が目を引く

以上、TGS 2015のソニー・コンピュータエンタテインメントブースで展示されていた「PlayStation VR」とその体験デモについてご紹介しました。

現状では正式な製品名が発表されたものの、まだ実際の量産製品になる前の段階のいわば量産先行試作の段階にある機器を用いたデモであり、製品化された際に今回と同様の状態になるという保証はありません。

特に、今回の体験で動作していたソフトウェアは暫定的に組まれたものであることが素人目にも明らかなレベルの、完成からはほど遠い状態(※注5)であり、これをもって「PlayStation VR」の全貌が明らかにされたと考えるのは早計に過ぎるでしょう。

 ※注5:実は今回のデモプレイでは、組になった2人のプレイヤーが席を交代して2回目のプレイを開始し、タイタン討伐戦へのログインを行う際に接続される4台の内1台でトラブルが出て、その対策作業が完了するまでしばらく待たされました。つまり、その程度には不安定かつ未完成な状態でのデモであったわけです。

ただし、これまで記してきたとおり、ハードウェア的にはペアを組むべきPlayStation 4の仕様・性能が確定していて、またこちらの機器で対応しきれないような解像度での出力はナンセンスであるため、今後現状で発表されているものから大きく外れたハードウェア仕様に変更される可能性は低いと言えます。

こうした状況を勘案し、あくまで「ハードウェア」としての「PlayStation VR」を見ると、多少「酔い」に関する問題はあるものの、それ以外の点では許されるハードウェア性能・仕様の枠内で極限に近い性能を実現しています。

外観デザイン的にも、いかにもこの種のハードウェアらしい近未来的なSFアニメに出てきそうなデザインとして綺麗にまとまっており、その装着時の前後方向のバランスの良さやヘッドセット装着時の違和感の少なさを含め、「フルHD解像度ディスプレイパネルを搭載したVRディスプレイデバイス」としてはかなりの完成度を実現していると言って良いでしょう。

これに重要な問題あるいは不安要素があるとすれば、それは先にも触れた入力デバイスの整備・改良と販売価格、それに発売時に対応ソフトのラインナップを果たしてどこまで用意・提供できるのかの3点で、それらさえクリアできるのならば、恐らくこの「PlayStation VR」は十分な成功を収めることができるでしょう。

この「PlayStation VR」にとって動作の前提となる「PlayStation 4」の本体価格も今回の発表で値下げされて本格普及へ動き始めましたし、来年の発売がいよいよ楽しみになってきました。

▼参考リンク
「プレイステーション 4」の世界をさらに拡げるバーチャルリアリティシステム
名称を「プレイステーション VR(ヴィーアール)」に決定
~ハードウェアのブラッシュアップを継続し、ソフトウェア開発体制を充実~

「プレイステーション 4」価格改定
日本国内にて希望小売価格34,980円(税抜)

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