PlayStation VRを横がちに見る固定用ヘッドバンドの位置や形状など、長年人の頭に触れる機器を多数世に送り出してきたソニーならではのノウハウを感じさせる、一見シンプルながら普通にやっていたのではちょっと思いつかないような位置関係のパーツ構成が目を引く。

【TGS2015】来た、並んだ、遊んだ ~PlayStation VRが示すもう一つのVRの世界~前編

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by [2015年9月29日]


PlayStation VRロゴ製品名が正式決定となり、発売に向けていよいよ本格的な動きが始まった

PlayStation VRロゴ
製品名が正式決定となり、発売に向けていよいよ本格的な動きが始まった

今回のTGS2015では様々なVR系技術や機器が発表・展示されましたが、その中で最も熱い視線を集めたのは、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEI)が開催直前に発表した「PlayStation VR」ではなかったでしょうか。

ソニー・コンピュータエンタテインメント PlayStation VR ブース恐らくTGS2015の全会場を通じてもっとも熱い視線を集めたのはこのブースであろう。狭い面積でより多くの実動機展示を行うために2階建てフロア構成となっていた

ソニー・コンピュータエンタテインメント PlayStation VR ブース
恐らくTGS2015の全会場を通じてもっとも熱い視線を集めたのはこのブースであろう。狭い面積でより多くの実動機展示を行うために2階建てフロア構成となっていた

これまで「Project Morpheus」という開発プロジェクト名で機会を捉えてはその試作機の展示やデモが行われてきたのですが、それが遂にPlayStationシリーズの周辺機器としての製品名を与えられて正式発表されるに至ったのです。

同種技術による「Oculus Rift」と同様に、製品としての発売は2016年を予定していて発売まではしばらく時間があるのですが、製品名を与えられたということは事実上正式に製品化が決定したということで、今後PlayStation 4向けソフトウェアを開発している各社による対応ゲーム開発も本格化することと思われます。

今回、筆者はこの「PlayStation VR」の実動機による体験デモに参加してきましたので、この新しいVRヘッドセットがどのようなものであるのか、その対応ゲームでの挙動や「Oculus Rift」との比較を通じてお伝えしたいと思います。

人、人、人 とにかくたくさんの人が並んだ

PlayStation VRの試遊の待ち行列これは報道陣向けの列

PlayStation VRの試遊の待ち行列
これは報道陣向けの列

TGS 2015開催直前に「PlayStation VR」が正式発表されただけでなく、「PlayStation 4」本体や「DUALSHOCK 4」の新色が発表され、さらに「PlayStation 4」本体の定価値下げが発表されたばかりということもあって、SCEIのブースに用意された「PlayStation VR」の試遊(体験デモ)には、一般・報道向けの双方共に空恐ろしいほどの人が行列を作りました。

筆者はビジネスデイ初日の開幕直後にSCEIのブースに赴いて、報道向けの列に並んだのですが、それでも3時間近く並ぶ羽目に陥ってしまいました。

これは、機器の仕組みや提供されているソフトウェアの性質上、1回の試遊に筆者が体験したものでも約30分程度かかったためで、「PlayStation VR」の実動機はかなりたくさん持ち込まれていたにもかかわらず、なかなか行列が前に進まなくなっていました。

ちなみに一般向けでは正午過ぎにはその日の試遊の受付が終了してしまっているような状況で、この新しいデバイスに対する注目が一般・報道の双方共に並々ならぬものであることがひしひしと伝わってきます。

PlayStation VRの主な仕様

PlayStation VR試作機を前から見るこのあたりの筐体デザインの洗練はさすがソニーと唸らざるを得ない

PlayStation VR試作機を前から見る
このあたりの筐体デザインの洗練はさすがソニーと唸らざるを得ない

記事執筆時点で明らかになっている「PlayStation VR」の仕様は以下の通りです。

  • 構成:プロセッサーユニット、VRヘッドセット
  • ディスプレイ方式:
    • 種類:OLED(有機発光ダイオード)
    • 解像度:1,920×1,080 ピクセル
      (左右の目それぞれに960×1,080ピクセルの映像を表示)
    • 画面サイズ:5.7 インチ(対角線長)
    • リフレッシュレート:120Hz・90Hz
    • 視野角:約100度
  • 搭載センサー:加速度センサー・ジャイロセンサー
  • 接続インターフェイス:HDMI + USB
  • 機能:3Dオーディオ、ソーシャルスクリーン

この仕様で明らかなように、この「PlayStation VR」は「PlayStation 4」で生成・出力された解像度960×1,080ピクセルの3Dグラフィック画面2枚をヘッドセット本体に内蔵された5.7インチサイズのフルHD解像度有機発光ダイオードディスプレイに出力し、それを左右の目それぞれに個別に表示・視認させて脳内で立体視を生成させる、ごく一般的なステレオペアによるステレオグラムの仕組みを利用した、VRディスプレイです。

ちなみに同種のVRデバイスである「Oculus Rift」は製品版の前段階である 「Development Kit 2」(DK2)も画面解像度がこの「PlayStation VR」と同じフルHD解像度の画面を2分割した960×1,080ピクセルのステレオディスプレイとなっています。

一方、相方となる現行の「PlayStation 4」に搭載されているHDMIディスプレイ出力端子の対応規格は(ハードウェア設計時期の関係もあって)現行最新のHDMI v2.0から1つ前のHDMI v1.4aで、この規格では3D映像の送受信だけではなく、3,840×2,160ピクセルや4,096×2,160ピクセルの超高解像度映像出力にも対応します。

こうした出力機器側の仕様を考慮すると、「PlayStation VR」もさらなる高解像度映像出力に対応しても良さそうなものですが、そうはなっていません。

これは「PlayStation 4」の内蔵GPU性能の実効性能がパソコン向けGPUで言えばこの機種が設計された時点でミドルレンジのやや上、といったクラスであったRADEON HD7850とRADEON HD7870の中間程度で、フルHD解像度の映像を扱うので精一杯といったレベルでしかないためです。

無論、家庭用据え置き型ゲーム機の歴史の上でみると、この「PlayStation 4」(および同世代の「Xbox One」)のGPU性能は疑う余地もなく、これまでにない破格の高性能なのですが、それでもフルHDを超える解像度の3Dグラフィックを扱うのは荷が重い(※注1)のです。

 ※注1:ただし、PlayStation 4はハードウェア仕様としては先に触れたように3,840×2,160ピクセルや4,096×2,160ピクセルでの表示をサポートしており、例えば写真などの静止画表示ではこの解像度での利用が可能となっています。3Dグラフィック描画を利用するゲームでこの解像度がサポートされていないのは、ひとえにGPU性能や搭載メモリ容量の制約などから実用的なフレームレートを維持できない(≒動作させてもコマ落ちが頻発する可能性が非常に高い)ためです。これは最近の4K2K解像度での出力に対応するハイエンドパソコン向けGPUカードではビデオメモリについて4GB~8GB搭載が当たり前になってきているのに対し、「PlayStation 4」がいかに高速なGDDR5メモリを採用しているとは言え、バス幅の狭いメモリコントローラとビデオメモリとメインメモリの共用で8GBのメモリしか搭載していないのですから、当然といえば当然の結果と言えるでしょう。

後述しますが、その影響でこの「PlayStation VR」で扱える3Dグラフィック画面はそれなりに画質を落として負荷を軽減することで実効速度を確保されており、現行の「PlayStation 4」では描画性能的に十分でないことを示しています。

なお、「Oculus Rift」は製品版でこのRADEON HD78xxクラスよりも1世代新しく性能的に2ランク上のRADEON R9 290(※注2)クラスのGPUを対応最下限としており、フルHD解像度相当のディスプレイパネルを使用していたDK2版よりも高解像度のディスプレイを搭載するか、さもなくばフルHDで十分高速なGPUと組み合わせることでフレームレート確保などに余裕を持たせるかのいずれかの方針で設計されていることを示しています。

 ※注2:2560基のシェーダプロセッサと帯域幅320GB/sの512ビットGDDR5メモリインターフェイスとこれに接続された4GBのビデオメモリを搭載する、開発時点でのAMDのRADEONシリーズ中で上から2番目に位置したハイエンドGPUカード。「PlayStation 4」の統合プロセッサに内蔵されたGPUのシェーダプロセッサ数が1,152基、メモリインターフェイスの帯域幅がメインメモリと共用で176GB/sでしかないのと比較すると、こうしたハイエンドGPUが「PlayStation 4」の内蔵GPUに対して倍以上の圧倒的な性能差を備えていることがわかります。ちなみに「Oculus Rift」の製品版ではこのRADEON R9 290が動作対象の最下限で、「PlayStation 4」開発時点でのRADEONシリーズの最上位モデルであったRADEON HD7970(シェーダー数2,048基、メモリ帯域幅288GB/s、搭載メモリ量3GB)の系列に属するGPUはビデオメモリ容量を6GBに増量した改良モデルも含めことごとく対象外の扱いとなっています。DK2版と同様のフルHD解像度表示ならばいかにフレームレートを高くする必要があるにしてもここまで極端な性能は必要ないはずで、製品版「Oculus Rift」がフルHDを超える解像度のディスプレイパネルを搭載している可能性を強く示唆するものであります。

いずれにせよ、この「PlayStation VR」のハードウェアは相方である「PlayStation 4」の性能に制限される形でその仕様や性能が決定されているといえ、今後製品版発売までの間にさらに市場で販売されているGPUカードの性能が向上するであろうことを念頭に置いて、ほとんど無茶振りに近い、非常にハイエンドな極端に尖ったパソコン側要求性能を決定している「Oculus Rift」よりも若干不利な条件にあることは否めません。

もっとも、要求性能が極端に高くないということは、それだけ搭載するパーツの単価が低く抑えられるということでもあって、悪いことばかりではありません。

現状では「PlayStation VR」の販売価格は発表されていませんが、家庭用ゲーム機の周辺機器という立ち位置であることや、ソニーの販売網で大量に販売されるであろうことも勘案すると、恐らく「Oculus Rift」の製品版で予想されている価格ほどは高額にはならずに済みそうに見えます。

次回は、いよいよ試遊した様子をお届けします。

▼参考リンク
「プレイステーション 4」の世界をさらに拡げるバーチャルリアリティシステム
名称を「プレイステーション VR(ヴィーアール)」に決定
~ハードウェアのブラッシュアップを継続し、ソフトウェア開発体制を充実~

「プレイステーション 4」価格改定
日本国内にて希望小売価格34,980円(税抜)

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