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漫画の世界観をVRで再現! 2Dと3Dの融合でVR動画の未来を開く『VR蟲姫』

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by [2015年9月09日]

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G-Tune : Garage
東京都千代田区外神田3-13-2 JR 秋葉原駅から徒歩5分 ベルサール秋葉原近く 営業時間11:00~19:30 年末年始を除き無休

 皆さんこんにちは。マウスコンピューターの杉澤です。
 ここでは、弊社のハイエンドPCショップ『G-Tune:Garage 秋葉原店&名古屋ダイレクトショップ』に新しく常設されたVRコンテンツ『VR蟲姫』をご紹介します。VR蟲姫は、傑作漫画『蟲姫』の世界をフル3DCGで再現した、戦慄の新世代ホラー体験が可能なOculus Rift向けコンテンツです。
 注目は、前方固定の平面動画と、視点同期の全天球動画を重ねて表示させることで、実際の漫画のカットイン(平面動画)を3D世界(全天球動画)に融合させ、作中における心理描写を体験者に追従させているところです。このカットインは前方固定であるため、体験者がどの方向を向いていても目の前に描写されます。VRコンテンツに有りがちな、キョロキョロしていたら大事な部分を見逃してしまって、よく判らないうちにコンテンツ終了……といったことも絶対に発生しません。
 VR蟲姫が示した手法は、VR動画コンテンツに対して画期的な進化を促すと共に、漫画のプロモーション手法への新しい切り口を提案できるものになっているのではないでしょうか。原作のファンはもちろん、是非VRコンテンツ開発者の方々にも体験して頂きたいオススメコンテンツです。
 それでは、実際にコンテンツを開発された株式会社ファンタジスタの高野寛嗣氏に、VR蟲姫にまつわるお話を語って頂きます。

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VRとの出会い

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株式会社ファンタジスタ 高野寛嗣氏

 株式会社ファンタジスタの高野と申します。弊社は新潟に本社をおくCGプロダクションとして、遊技機やテレビアニメ、劇場アニメなどの3DCGを制作しています。
 そんな会社がなぜVRコンテンツを作ったのか。きっかけは2014年6月25日、あるセミナーでOcufesの桜花一門さんがスピーカーとして登壇され、そこで『VR Ski Jump』を体験したこと、そして翌26日にGoogleがCardboardを発表したことでした。

 もちろん以前よりOculus Riftの存在、HashilusやMiku Miku Akushuといったタイトルは把握していましたが、一部のエンジニアだけが騒いでいるものだと勘違いしていました。しかし実際に体験し、さらにスマホ向けのVR技術が発表されると話は変わってきます。早速VRコンテンツの制作に向けて必要なリソースを確保することになりました。まずはエンジニアですが、Delphi(Pascal)経験者が在籍していたので、Unity(C#)の修得を指示しコンバートを行うことにしました。続いてデザイナーですが、CGプロダクションですので社員として多数在籍おり問題ありません。ただし、弊社の売り上げは彼らの受託業務で成り立っているので、社内案件となると、それに相当する収入を別に確保する必要があります。幸いなことに大日本印刷に共同研究のテーマとして採択して頂き、研究開発費として資金を調達できたことで問題は解決しました。

CGプロダクションが作るVRコンテンツ

 体制を整えるのと並行して制作内容の方向性を検討することになり、調査としていくつかのVRコンテンツを試しているうちに気付いたことがありました。それはVRコンテンツを開発している方の多くがプログラマであり、絵的なクオリティがイマイチであるという点です。もちろん、ハードウェアの性能により皆さんが苦労していることは承知していましたが、CGプロダクションとして挑戦する意義がある課題だと思いました。それと同時にゲーム性の高いコンテンツが多く、弊社ではそういったものの制作は難しいという問題に直面しました。
 弊社の強みを最大限に発揮でき、絵的に魅力があり、ゲーム以外のコンテンツ……残されたのは「全天球フル3DCG動画」となり、ネットで配信されているVR向け動画コンテンツを次々と視聴することにしました。不思議なもので何タイトルも視聴していると、ちょっとした問題が大きな不満として残ることに気付きました。それはエンドロールなどの情報が、仮想空間上の正面に表示されるということ。全天球動画の良さは全方向に景色が広がっており、周囲を見渡せるという点です。それにも関わらずユーザに見せたいはずの情報を見落とす可能性があるのです。例えば後方を眺めているあいだに実は正面ではエンドロールが流れており、それに気付かず……といったようなことです。
 実はこういった問題、ゲームでは当たり前に解決しています。例えば格闘ゲームではキャラクターのステータスは画面に固定的に表示されており、ノベルゲームでは背景とキャラクタを重ねて表示しています。つまり情報を意味に応じて階層化し、それを重ねて表示することで解決しているのです。また、これだけであれば弊社のエンジニアでも実装できます。さらに単なる動画コンテンツではなくプログラミングが必要になるので、VR開発のコミュニティに参加しやすくなるのではという打算もありました(プログラマはコードを書く人に親近感をもってくれるので……、実際Ocufes 2015 夏への出展という効果がありました)。
 またリアルタイムレンダリングではなく、プリレンダリングの動画を再生するという方向性は、プレイステーションやセガサターンが登場したころのポリゴンゲームが「ゲームパート」と「ムービーパート」に別れていたことに影響されています。インタラクティブ要素のある「ゲームパート」は他のVR開発者に任せ、我々は高品質な映像を実現できる「ムービーパート」を受け持つのだと、VR界隈でのポジショニングを決めました。現時点では他のVR開発者と組んでコンテンツを制作する予定はありませんが、いつか実現できればと考えています。

二層同時再生までの道のり

 我々の考えたアイデアは「コロンブスの卵」的なもので、気づいてしまえば仕組みは単純です。前方固定のαチャンネル付き平面動画と、視点同期の全天球動画を重ねて同時再生するだけです。
 しかし、そんな単純な仕組みでもVRコンテンツとなると意外に負荷が大きく、期待するクオリティとパフォーマンスを実現できるライブラリを見つけるまでに試行錯誤を繰り返しました。一ヶ月ほどプログラマとともにUnity Asset Store‎で配布されているものを中心に、様々なムービーテクスチャのライブラリを試し、最終的にCRI・ミドルウェアの『CRI Sofdec2』を選択しました。ただし開発元は、VR用途は(2014年末の時点では)想定しておらず動作は保証できないとの回答でしたが……。
 とはいえ他に選択肢が無いので、今度は同製品の限界を調査することになりました。その際「エンコ厨」(エンコードばかりしてその動画を見なかったりする人)でもあるスタッフに専用形式への変換過程を調査してもらい、動画フォーマットの特性を把握したうえで最終的に仕様を決定しました。なお『VR蟲姫』における彼の功績は非常に大きく、「画質が良い」という評価に繋がっています。

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G-Tune:Garage 秋葉原店で展示されている『VR蟲姫』

VRに向いているテーマ

 これまでの試行錯誤の過程でベース機能が完成していたこともあり、再生プレイヤーのβ版はすぐに完成し、最後にコンテンツとして何を作るかという話になりました。その際、共同研究として採択してくれた大日本印刷からの条件は、ホーム社の無料漫画サイト『画楽ノ杜』に掲載されている作品から選ぶということでした。画楽ノ杜には、ベテランから新人まで多様なマンガが掲載されているので結構悩みましたが、スタッフと相談しSF作品とホラー作品『蟲姫』の2つに絞り込みました。
 最終的には「SF作品の演出は足し算」であるため、リッチコンテンツとして仕上げるためには作り込みが必要であり、予算、納期に制限がある本案件では難しい。それに対し「ホラー作品の演出は引き算」であるため、究極的には何も無い状態が一番怖い。したがって作業量を抑えることができ、演出的にも試行錯誤できるということで『蟲姫』を採用しました。
 また、3D酔いを防ぐという観点でも、カメラの動きが比較的少ないホラー系を選択したことは間違いではなかったと思います。ちなみにVR蟲姫の裏テーマは「3D酔いしないVRコンテンツ」ですが、これは私が極端に酔いやすいことが理由で、自分が楽しめないコンテンツは作らないという個人的なポリシーに基づいています。

CG屋としての矜持

 VR蟲姫を体験された方には「実写みたい」「作り込みがすごい」といった評価を頂くことが多く、嬉しいと同時にムズ痒い思いをしています。担当したディレクターは、原作の外薗昌也先生、作画の里見有先生と相談しながらマンガでは描かれていない部分を入念に確認しながら蟲姫の世界を設計し、デザイナーは毎日遅くまで残って映像のクオリティをあげる。CGプロダクションとしていつもと同じように制作しているにすぎないからです。また、システム的にも演出的にも改善の余地が多く残っており、時間と予算が許すなら手を入れたいところがいくつかあります。
 ただしディレクター、デザイナーに伝えた「VRコンテンツとして楽しめること」「二層同時再生という仕様を活かした演出をすること」「蟲姫の魅力を最大限に伝えること」という3つの課題は全てクリアできたと思いますし、それによりVRコンテンツの新たな可能性を提示できたと自負しています。またVR蟲姫は、弊社創業10年にして、初めてデザイナーチームとエンジニアチームが共同で取り組んだ案件で(大げさではありますが)記念事業的な意味合いもあります。そのコンテンツが評価されるということは、これまでの積み重ねが評価してもらえたのだと大きな自信に繋がっています。

今後の展開

 当初VR蟲姫は、Windows版、iOS版、Android版を同時リリースする予定でした。CRI Sofdec2を採用した理由も、3プラットフォームに対応しているという点が大きく、iOS版、Android版もα版は完成しています。ただし現状のスマホではスペック的に動画の二層同時再生が難しく、我々の目指す高品質の映像を実現することができませんでした。これはハードウェアとライブラリの性能が上がれば解決され、半年から一年後には期待するスペックに恐らく到達すると思うので、その際には是非リリースしたいと考えています。
 また、VRコンテンツを活用したプロモーションは集客力もあり、今後期待できる手法ですので、二層同時再生という演出方法についてもブラッシュアップしたいと考えています。すでにアイデアがいくつかあるので興味があるクライアントがいれば挑戦したいと思います。

▼参考リンク
ゲームパソコン・ハイエンドPCブランド G-Tune
VR蟲姫 | Oculus Rift対応コンテンツ

VR蟲姫
制作:株式会社ファンタジスタ / 大日本印刷株式会社
原作:外薗昌也 作画:里見有
連載:ホーム社「画楽ノ杜」「画楽.mag」
CV協力:i-MEDIA 国際映像メディア専門学校

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