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【CEDEC 2015】VR酔いとの戦い~すべては快適な体験のために:Oculusによる実践的VR開発技法

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by [2015年8月31日]

先日パシフィコ横浜でゲーム開発者向けのイベント「CEDEC 2015」が開催されました。ここでは、Oculusによるセッション「すべては快適な体験のために:Oculusによる実践的VR開発技法」をご紹介します。

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左:井口健治氏 Oculus VR Partner Engineering Specialist
右:近藤 “GOROman” 義仁氏 Oculus VR Partner Engineering Specialist

仮想世界での「快適な体験」を目指しているというOculus。デベロッパーのみならず、Oculus向けにVRコンテンツを作りたいという開発者はもちろん、Oculusに興味のあるみなさん必見の内容です。

Oculusの可能性

Oculusの目的はVR(Virtual Reality =仮想世界)を通じて、あらゆる体験をあらゆる場所でできるようにすることです。そしてゲーム、エンターテイメントを変えていくことです。そのための最初のフォーカスが最高のVRゲーム体験を提供することです。ゆくゆくはゲーム以外の生活の様々な場面でVRを浸透させることを目的としています。

cedec01353PC用のヘッドセットであるOculus Riftは、いよいよ2016年初頭に一般向け製品版を発売します。製品版では非常にスムーズなVR体験が得られます。ポジショントラッキングも強化してあり、前を向いても後ろを向いても、頭を動かしたらそれに追随し、トラッキングされる範囲も広くなっています。ヘッドフォンとマイクを搭載しており、立体音響に対応しているので臨場感も出ています。

 
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Oculus Touchという手持ちコントローラーも用意されます。Oculus Touchは、より直感的な操作が必要となるコンテンツのために開発されており、手の位置をトラッキングして、VR空間内でそのまま動かすことができます。
Oculusのモバイル版はGear VRです。スマートフォンのGalaxy S6をセットして動作し、高性能のセンサーを搭載していて、スマホの中の遅延処理もGear VR側がやってくれます。

一般向けということで、簡単に扱えるようにするソフトおよびプラットフォームも重要になってきます。それが、Oculus Platformです。その中にあるストアでは開発者とユーザーを結びつけ、コンテンツ配信とマネタイズが可能なプラットフォームになっています。プラットフォームとストアはOculusの中で最も重要視している部分で、一足先にGear VRで稼動開始しています。 
Platformは、ヘッドセットをかぶった状態で利用可能で、Home UIがあり、遊んで、課金して、またHOMEに戻ってくるという一連の流れができています。
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ゲームデザインとVR酔い

 
Oculusでは、「快適な体験を作ること」を第一の目的に据えています。VRは正しく作ることによって、酔う原因を減らし、多くの人にVRの世界で快適な体験をして頂けます。
ゲームを作るにあたっては、題材やゲームシステムの選定を慎重にしましょう。スピード感や高低差があるものは酔いやすいのです。ターゲットフレームレートを落とさないことも重要です。

視覚から誘導されて、自分が動いているかのような感覚(視覚誘導性自己運動感覚=ベクション)が引き起こされているのにも関わらず、頭の中の三半規管が何も感じていないことが、VR酔いの原因の一つとされています。対策としては、ロード中や、タイトル画面、カットシーンなどのいかなる場所でも、カメラの主導権をプレイヤーから奪わないのが非常に重要です。酔いをできる限りなくすためにはカメラの動きが重要になってきます。前方に低速移動しながら、等速で直線運動すると快適なVR体験を実現しているといえます。
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ベクションをできるだけ引き起こさないためには「視点」を考えることも必要です。「主観」か「第三者」か……意外にも「第三者視点」もアリです。「第三者視点」は例えば“神の視点”で見下ろしたりするようなものが面白く、この場合は固定カメラや、鈍い動きの追随カメラがあるとしても、酔いにくいので効果的です。
「主観視点」は、プレイヤーキャラ自身が移動して動き回るものですが、酔い対策の難易度は高くなります。プレイヤーではなく、周りの環境を変化させたり、ポイントとポイント間を酔いにくい等速移動にするといった少しの工夫を加えることで、ベクションの発生を抑えることができます。

ゲームでは点数や体力などの情報を3D空間上にかぶせて表示したりしますが、例えばヘッドアップディスプレイ(HUD)の右下の周辺視野の端に配置したりするとほとんど読めません。このような場合は、区間内に実態を持ったオブジェクトを表示し、ワンテンポ遅れて追随すると読みやすさがあがります。VRの中に登場する「物」やアバターの「持ち物」にHUDの表示を埋め込んでしまうというのも有効です。

HUDはゲーム側からユーザーに情報を提示するものですが、逆にユーザーから入力を行う必要もあります。そのときに使用するのが「注視カーソル」です。これは視界の中央に頭の動きに追随するカーソルを表示し、対象物に合わせてボタンまたはタップで決定するもの。「注視カーソル」は第三者視点でのゲームでも有効で、キャラクターはアナログスティックで動かし、銃の狙う先は注視カーソルで指定などができます。
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「快適な体験」を目指すために様々な工夫がありますが、まだまだVRは発展途上です。開発者は自分のコンテンツの酔いに慣れてしまうので、様々なテスターを見つけて実装テストを行いましょう。

Oculusの技術と改善

VR体験は、快適であれば多くの人が長時間楽しんでくれます。ここからは、ハードウェア、SDK(Software Development Kit=ソフトウェア開発者キット)、オーディオについてのお話です。

まずはオーディオ部分の改善として、マイクとヘッドフォンを搭載します。ヘッドフォンはお気に入りのものを使いたいという場合もありますので内蔵のものは取り外しすることができます。
トラッキングも改良して、ポジショントラッキングの範囲を頭の後ろ側にも広げました。後ろや下を向いたときにもきちんとトラッキングするようになっています。

ディスプレイも、1枚だったものが、1080×1200の解像度のものを2枚搭載し、リフレッシュレートも75Hzから90Hzに上げて秒間90回の書き換えをしています。人間の目の位置には個人差があるので、物理的な調整ができる瞳孔間距離調整機能をつけました。Low Persistenceという残像を消す技術も入っています。Oculus Touchでは直感的な手のタッチ認識が可能になりました。

Oculus SDKは、無料でダウンロードができます。個人開発者でも開発キットを購入したり、SDKのダウンロードや使用が可能となっています。フォーラムでは、開発者同士の意見交換が活発に行なわれており、問題に直面したときはフォーラムに行けば解決策を見つけることもできます。

「快適なVR体験」には「遅延」が天敵です。遅延が発生すると多くの人は不快に感じます。さらには遅延によって気持ち悪さを感じることもあるかと思います。Oculusでは、頭を動かしてから、その情報が目に届くまでの時間を20msとして推奨しています。手っ取り早く遅延をなくすためにはフレームレートを上げる手法があります。Direct Modeという技術では、OculusのディスプレイをOSからモニタ扱いせずに直接駆動することで遅延を減らしています。
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この他、歪み補正、レイヤー機能なども改善しています。VRでは頭が動きに合わせて音も一緒に動かないと違和感を覚えてしまうので、サウンドの定位の変化もさせます。こちらもOculus Audio SDKで無償提供していますので、ダウンロードしてアプリに組み込むことができます。

Oculusは、主要なゲームエンジン『Unity』『Unreal Engine 4』『CryEngine』『Stingray』も対応済みです。もちろん独自エンジンにも組み込みができます。

講演中、特に印象に残ったのは、ユーザーが初めに触れるVRコンテンツの重要性だ。VRはこれまでのゲームには無かった「VR酔い」の問題が存在する。ユーザーが、VRに対して大きな期待を持って臨んだコンテンツで酔ってしまったときの喪失感の大きさは想像に難くない。

両氏は「快適な体験」のために日々Oculusの改良を重ねているとして、同時に開発者に「ぜひ日本から世界に発信できる快適な、VR対応ゲームやコンテンツを作っていきましょう」と呼びかけ、講演を締めくくった。

▼参考リンク
Oculus – Oculus VR
CEDEC 2015

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