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YouTubeで良くない? バンドマンが考える定額制音楽配信サービスの幸せな使い方

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by [2015年8月04日]

sasie1 音楽ストリーミング配信サービス。サブスクリプション方式で利用する音楽サービス。月額一定の料金で聞き放題、入場料を払って「聞きにいく」といった感じの考え方ですね。
 今年6月LINEから『LINE MUSIC』、7月にはAppleから『Apple Music』。僕らに馴染みのあるAppleやLINEから、立て続けに音楽配信サービスがスタートして話題になりました。既存のものだと『AWA』や『レコチョク』、海外だと『Spotify』などは僕もちょいちょい名前を聞いていました。
 ネットニュースなどでは目にするのですが、実際友人や音楽関係の知り合い達との会話でこれらのサービスが話題に上ること、ほぼありませんでした。かく言う僕も、音楽系のサービスという事でチラ見するも概要だけ撫でたに過ぎない状況でした。音楽を聞く
のも作るのも好きな方なんですけどね僕も。
 でもさ。だってさ。「150万曲聞き放題」とか言われても僕の耳は二つだし! 好きな作品はCD買いに行くし! 無数の曲聞き放題より好きなあいつの新作10曲! 気になったバンドとかはYouTubeでチェックするし! といった感覚なのです。
 とはいえ、今後聞く方としても作る方としても、お付き合いの可能性があると思うので、これらの配信サービスについて考えてみようと思います。
 まずは使ってみようじゃあないかと。無料で使える試用期間が設定されているので『LINE MUSIC』『Apple Music』『AWA』を使ってみました。AWAは登録無し、LINE MUSICとApple Musicは既存のLINE IDとAppleIDが使えたので手間は全くと言っていいほどありませんでした。お手軽。
 問題はこの後です。それぞれ、音楽ファンが喜ぶような機能つけてまっせ感が前面にグイグイきていて、どこから手をつけたらいいのかよくわからないので、結局使い方に関して解説しているページをググりました。
 色々と触った結果「こんなシーンにはコレだよ」的なBGMチョイス機能に落ち着いて新しい音楽との出会いに期待しつつ、今キーボードを叩いています。

awa_recommend

AWAのオススメチョイス

apple_recommend

Apple Musicのオススメチョイス

LINE_recommend

LINE MUSICのオススメチョイス。Appleもそうですけどみんな元気になりたいんですね。僕もです

よくわからないけどYouTubeで良くない?

 まずはバンド繋がりの友人たちにメッセージを飛ばしてみました。

とあるバンドコンポーザーのギターボーカリストの場合

入間川 LINE MUSICとかApple Musicみたいな定額制音楽配信サービスって登録してる?
バンドマン してない。
入間川 ちなみに無料で使える期間があるのは知ってる?
バンドマン らしいね。でも登録めんどくさい! 登録する系は結局好きじゃないとしないよね。っていうか好きなら店頭で買うし。聞くだけならYouTubeでいいし。
入間川 だよね。ちなみに配信する側としては、ユー達のバンドではどんな感じ?
バンドマン もう少し様子見ですよね。

とあるライブハウス店長の場合

入間川 LINE MUSICとかApple Musicみたいな定額制の音楽配信サービスって登録してますか?
店長 なにも登録して無いよ。リバクリ(入間川のバンド)の曲もきけるの?
入間川 今検討中ですね。でも身近にユーザーがいなくて。笑
店長 あー登録してる人少なそう。笑
入間川 ちなみに無料のお試し期間があるのはご存知ですか?
店長 あ、知らない!試してみようかな。。でもYouTubeで満足かも!

 身近なバンドマン数人にきいても同じような結果でした。
 例外が一人、LINE MUSICを使うバンドマン。ネットサービスの感度、好奇心、リテラシー高めで、なおかつ普段から音楽を好んでたくさん聞く人じゃないと検討段階にも登らないのではなかろうかという印象です。
 データとして使えるアンケートではないのですが、「YouTubeでいい」という意見が共通なのが面白かったです。僕もYouTubeでいいと思いますし。

音楽を聞く時の「手に取る熱意の種類」

 僕らが聞く音楽を選ぶ時には、いくつか種類があります。それによって聞き方も違ったものになります。ざっくりと熱意の種類を、椅子に座った時の姿勢に見立てて勝手に名前を付けました。

  1. 自分の感動経験から、好きなミュージシャンの作品を選ぶ「前のめりチョイス型」
  2. 周囲の情報から、気になったミュージシャンの作品を選ぶ「垂直チョイス型」
  3. BGMとしてゆるく作品を選ぶ「背もたれチョイス型」
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「音楽を手に取る熱意の類型」

前のめりチョイス型
 ファンとしてのチョイスですね。熱意が一番高いパターンです。
 新作のリリースを心待ちにし、手にしたら丁寧にコーヒーを淹れ部屋にこもって聞いたりします。僕の場合はディスクを買います。パッケージとか丁寧に開けます。アーティストホームページとか見てYouTubeでMVもチェックします。
 パッケージとしての音楽ソフトをきくのもそうですが、ライブを見に行って生で音楽を聞いたりするのもこの『前のめりチョイス型』です。

垂直チョイス型
 前のめりチョイス型の前段階として、周囲の情報から「前のめり」を感じつつ自ら行動を起こして聞く場合です。
 例えばスタジオで流れていたBGMがカッコ良くて「高木正勝いいなぁ」ってつぶやいたら、「そうしたらこういうのも聞けば?」とかの周囲の情報から、そこでYouTubeをチェックしたりするパターン。
 あとは「ああ、そうしたらアンビエントとかエレクトロニカとかで検索すると幸せになれるやつか」なんていう学習からの検索もそうですね。
 それから楽曲制作において、メンバー間でのオススメやイメージ共有のための「コレちょっと聞いておいて!」というきっかけで聞くのものこのパターンです。

背もたれチョイス型
 特にこだわりもなくゆるっと流す時。僕は文章を書く時にこのパターンが多いです。
 食事をとる時にも音楽が欲しいなと思って音楽を聞くことが多いのですが、うるさくなければなんでもいいなという感じでラジオをつけることが多いです。たまに『当たり』にヒットして手が止まり『垂直チョイス』が始まることもあります。

 だいたいこれらの音楽選択パターンで僕のリスナーライフは形成されています。そしてそれぞれ、

  • 自分の感動経験から、好きなミュージシャンの作品を選ぶ『前のめりチョイス型』
     →CD、ライブ、YouTube
  • 周囲の情報から、気になったミュージシャンの作品を選ぶ『垂直チョイス型』
     →YouTube
  • BGMとしてゆるく作品を選ぶ『背もたれチョイス型』
     →YouTube、ラジオ、まれにニコニコ動画
  • といったツールでそれぞれ音楽にアクセスしています。全てのパターンにおいて、YouTubeが幅を利かせています。音楽プレイヤー化しているYouTubeです。

    sasie2

    『各パターンで使われるツール』

     生活の中で、これ以上音楽を聞く時間が増えることは考えづらいので、僕が音楽にアクセスする主要な間口であるCD、ライブ、YouTube、ラジオ、ニコニコ動画が担っている役割に、定額制の音楽配信サービスが食い込んでいく事が、LINE MUSICやApple Musicを利用する動機になるかと思います。

    可能性があるとすればLINEのような「即時性」

    apple_connect

    ジミー・イート・ワールドをフォローしたら図らずも今月の新曲が聞けたので結構嬉しかったです

     現状、そんなに定額制の音楽配信サービスの利用モチベーションが高くない僕ですが、「即時性」が高ければ頻繁に使う未来も見えなくはないです。ぼんやりしていますけども。
     我々の欲求は絶えず湧いては消えていくので、「聞きたいな」に応えてくれるサービスのうち、最速のものが常に選択されます。それが今はYouTubeなので、例えばLINE MUSICやApple Musicで気になるアーティストの新作リリースがすぐに全部聞けるとか。
     あとはアーティストとファンがつながっていくようなフォローの機能やApple MusicのConnect機能において、新作のスケッチやメイキング映像にすぐアクセスできる、というような前のめりチョイス型のパターンにあるファンの熱意をくすぐる仕組みはありがたいです。

    1. 楽曲イメージの伝達などのバンドメンバー間の会話
    2. コンペなどで提示される制作イメージ資料
    3. ゲーム音楽制作のイメージ共有

     他には、こういった垂直チョイス型的な用途は、現在YouTubeが全て担っている状態なので、「これちょっと聞いて!」とその場で共有ができるコミュニケーションツールとして、もしも仮にYouTubeよりも早く、的確にその役割を果たすとしたら僕はさらに嬉しいです。登録など必要無くネットにさえつながれば誰でもなんとかなるYouTubeの利便性を超えた上で。
     LINE MUSICは、LINEでのトーク画面に「ちょっとコレ聞いてみて!」っていうユーザー間のシェア機能があるので、その点において期待を抱いています。音楽を聴きながらメッセージのやりとりができればインスタントな垂直チョイス型の聞き方パターンを加速するので、ひとまずバンドメンバーのLINEグループに投下してみました。シェアはしやすいです。

    LINE_share1LINE_share2

     実際、伝聞による未知の音楽へのタッチは即時性が肝です。
     スタジオでの会話で「このアーティスト知ってる? この間知り合いの○○さんがサポートしてたよ。結構イイ感じ」みたいな時には、すぐ検索しないとだいたい忘れてしまうんですよね。その後ライブハウスでポスターを見たりして「あ、この間話してた人か」って思い出して「自分の体験」となった結果、やっと音を聞くことができたりします。ですが大概の伝聞情報はスルッと流れて忘れられていきます。
     自分がオススメする時も対面で話して「へえ、それ面白そう!」って言ってもらった瞬間すぐに聞いてもらえる状況だと、新しい音楽との出会い確率はもっと上がるはずです。
     だからオススメの曲を伝える時は、メールやLINEにYouTubeのリンクを貼り付けて送るのがいいのですが、それがLINEで完結すれば垂直チョイス型の聞き方の即時性が上がります。このLINEのシェア機能に関しては、今YouTubeが担っている位置付けを少し奪っていけそうな予感がしています。

    自分たちの曲を配信するのか

     これらサブスクリプション系配信サービスとの、リスナーとしての付き合い方は、

    1. 様子を見つつ、LINE MUSICのシェアは状況によっては使うかも
    2. 無料期間のうちにApple MusicのConnect機能にハマれば使い続けるかも

    といった感じです。
     作る側として、例えば僕の所属するRiverside Creatureの楽曲を配信するかという点に関しては、LINEやAppleなどの各種配信サービスに曲を並べておくのは無駄ではないと考えています。興味を持ってリサーチを開始してくれた人に、そのタイミングで曲が届くようにはしておきたいのが理由です。「是非とも今すぐ配信すべき!」というよりは、物理的に制約が無いだけに配置しておかない理由が特にない、といったイメージです。
     小規模なライブハウスを活動場所としているインディーズバンドとしては、良いライブの時間を作って、音源やグッズを会場で対面販売する方が金銭的な面も含め活動のモチベーションが上がりやすいと思います。近距離の生演奏ならではの体験が、音楽の魅力を増してくれる効果こそが、演者側にとってもお客さん側にとってもわかりやすく嬉しいモノですから。
     ですので、LINEのシェア機能などで伝播速度が上がった音楽サービスの流れに自分の作品を乗せて「垂直チョイス型」「背もたれチョイス型」の聞き方パターンで耳に入れてもらい、曲を聞いた瞬間から「前のめりチョイス型」への移行をしてもらうというのがこのサービスを利用しての僕の望むところであり、それは多くのミュージシャンや業界関係者の望むところでもあるかと思います。「LINE MUSICやApple Musicでも聞けますよ」と言える事はその手段のひとつ、という位置付けですね。実際これらで儲けようという気はあまりありません。1再生あたり数十銭の還元なので割と泣けてくる数字が滲んで見えてきそうです。
     「あ、このバンドはヤバい」というカッコイイのを見つけたら、僕はYouTubeから再生した音楽を流しながらGoogle検索で当たるだけの主要な情報を面倒じゃない範囲でWikipedia、公式HPやツイッター、ブログなどから漁っていきます。それで好きになったらアルバムを買ってまるっとフルで聞いて楽しみます。ですので発見からリサーチ、購入まで全てひとところで完結するようになる場所があると嬉しいのですが、その掘り下げていく過程のアクセス先のひとつに、LINE MUSICやApple Musicが入るのかも、というのが現状の僕の認識です。
     聞く側としては「MVとして推し曲になってるやつ以外の販売曲が聞きたいな」という時に販売されているアルバム全てにまるまるアクセスできるサブスクリプション系の配信サービスがあると嬉しいですよね。
     しかし逆に販売する側としては、リスナーが「うわ、これイイわ!アルバム一枚買っちゃお!」ってなった瞬間に「あ、定額の方で聞けるじゃん」とそちらに流さなくてもいいかなとも思います。既存の買い切りの配信でアルバム一枚ダウンロード購入に進んでもらう、という方がアーティストに入るお金は多いですからね。即時性はそのままに。
     そんなわけで、前のめりチョイス型に導く入り口としての露出を増やすために、サブスクリプション系の配信サービスを利用するのはオッケーですが、僕は「この作品は手元に残して欲しいです!」っていう別な作品は用意しておきたいです。収益的に自らの首を絞めないという意味ももちろんですが、自分の作品に対して前のめり型のリスナーに「コレ、特別なんすよ」って裏の方の棚からゆっくり取り出してくる感じの作品を作りたいっていう作り手側のエゴもあります。「いいなコレ!」と、それに応えるオンラインのサービスとのやりとりで過ぎていくハイスピードな音楽体験から、何度も通って次回作を待っていてくれる人の手に届くような、少し時間のかかる音楽体験というか、そういうのです。
     すぐに手に入るものが、時間のかかるものに取って代わるというよりは、両方あって欲しいです。これは僕の希望ですね。リスナーとしては好きなクリエイターの「裏の方の棚」にまで導かれたいし、クリエイターとしてはリスナーをそこまで導けるように力を発揮したいみたいなところがあったりもしまして。
     作る側としても利用はするけど、一部にとどめる、といった付き合い方になるかと思います。既に一部作品の配信申請をしてみました。そのうち「冷やし中華 はじめました」くらいのノリでアナウンスするかもしれません。
     この記事の作成中、結構な数の曲を堪能できました。さすがの聞き放題サービスです。耳が幸せ。

    ▼参考リンク
    AWA – 音楽配信アプリ
    LINE MUSIC(ラインミュージック)
    YouTube
    Riverside Creature

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