YoutubeのiOSおよびAndroid版アプリでのHD/FHD 60fps再生対応をアナウンスするGoogle+の投稿

フルHD 60fpsの壁は厚い~YouTubeアプリが高解像度高フレームレート再生に対応~

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by [2015年7月13日]

YoutubeのiOSおよびAndroid版アプリでのHD/FHD 60fps再生対応をアナウンスするGoogle+の投稿

YoutubeのiOSおよびAndroid版アプリでのHD/FHD 60fps再生対応をアナウンスするGoogle+の投稿

現状の地上波デジタルテレビ放送やBS/CS衛星デジタルテレビ放送、あるいはブルーレイディスクでは、最大解像度が1,920×1,080ピクセル(フルHD解像度)となっています。

厳密に言うと、地上波デジタルテレビの場合は通信に利用できる周波数帯域の制約から、一般に画像の横幅を圧縮して1,440×1,080ピクセルの状態で放送されていて、これを受像器側で再度1,920×1,080ピクセルに伸張して表示している(※注1)のですが、ともあれ現在のテレビあるいはビデオの世界ではフルHDが解像度の標準の1つとして定まっているわけです。

 ※注1:この縦横比はアナログ時代(4:3)と同じで、後述するBlu-rayディスクでも縦横比4:3の古いコンテンツの収録の際に利用されています。

しかし、そうして画面のサイズは定まっている一方で、1秒間に何枚の画像を表示するのか、あるいはその画像をどうやって表示するのか、という規格については、様々な方式が混在しています。

例えば、地上波デジタルテレビ放送とBS/CS衛星デジタルテレビ放送の場合は、1秒間に60フレームの表示(※注2)を行い、水平方向のピクセルを奇数行と偶数行で交互にフレーム表示(インターレース表示)する、1080i 60fpsという規格を採用しています。

 ※注2:1080i 60fpsあるいは1080p 30fpsの場合、パソコンはともかくアナログ放送の仕様を継承するテレビ系では厳密には29.97フレーム/秒相当の表示速度となります。また、同じ理由で1080p 24fpsも23.976フレーム/秒となります。なお、規格上デジタルテレビ放送では720p、つまり1,280×720ピクセルでの全画面同時表示(プログレッシブ表示)にも対応していますが、この解像度によるコンテンツはほぼ皆無です。

これは、地上波デジタルテレビ放送が画面の横方向の解像度を圧縮したのと同様、限られた通信帯域で十分なめらかな動画再生を行うための工夫で、元々は日本で使用されていたNTSC方式のアナログテレビ放送で利用されていた手法です。

これにより1秒間を30に分割し全てのフレームで全画面表示を行う1080p 30fpsのプログレッシブ表示と比較して1秒あたり通信されるデータ量が同じであるものの、よりなめらかな再生が得られるとされています。

また、Blu-rayビデオディスクでは、元々フィルムで撮影・記録されていた映画を中心に、1080p 24fpsで記録されたものがあったり、高画質を謳い1080p 60fpsで記録されたものがあったりしており、さらにデジタルビデオカメラでは1080p 30fps記録を選択できるものがあったりと、ことフレームレートについては混沌とした状況です。

もっとも、単純に画質だけを議論するのであれば、解像度が同じであるならよりフレームレートの高いプログレッシブ方式の方が有利であるのは自明のことで、またそもそも同じフルHD解像度表示を行うパソコンや家庭用ゲーム機では1080p 60fps表示が選択できるのが事実上当然となっていること、それに1080i 60fpsも1080p 24/30fpsも、いずれも比較的単純な倍率で補間を行えば1080p 60fpsに変換できること(※注3)から、昨今のディスプレイやテレビでは1080p 60fps表示に対応するのが当たり前になってきています。

 ※注3:30fpsからだと2倍、24fpsからだと1.5倍となります。変換の際に端数の出るような倍率だと、画面の切り替わりのフレームなどで処理が面倒なことになりがちで、最悪の場合2つの異なったフレームが合成されたおかしな表示になってしまいますから、そうしたフレーム補間のためのハードウェアを簡素化しつつ自然な再生を得られるようにする意味でも、単純な倍率で補間できる60fpsというフレームレートは有用です。

しかしこの解像度とフレームレートは、実を言うとそれほど簡単に実用化できるものではありませんでした。

地上波デジタルテレビ放送が画面をインターレース表示とした上に画面の横幅を詰めて、つまり画面の横方向の情報を劣化させて1秒あたり送信される動画データ量を引き下げることでようやく実用的な放送を実現した、という事実が示すとおり、また昨今パソコンショップで販売されているビデオキャプチャ機器やキャプチャカードの多くがフルHD解像度で1080i、あるいは1080p 60fps「入力」への対応を謳う機種でも実は記録時にはフレームレートを半分に間引いて1080p 30fpsでしか記録できなかったりしている、という厳しい状況が示すとおり、1080p 60fpsでの動画記録・編集やその配信は、その扱われるべきデータ量の過大さゆえにおいそれと実用化できない状況にありました。

実際、有線の高速回線が普及し、また再生環境となるパソコンのCPUやGPUの高性能化で高圧縮率の新しいビデオ圧縮CODECが利用できるようになったことを受けてパソコン環境では1080p 60fps動画のアップロードや再生が可能となったYouTube(※注4)でも、CPU・GPU、それに回線の全てにおいてパソコンよりも厳しい条件下にあるスマートフォンなどのモバイル機器用OS環境での1080p 60fpsあるいはそれより一段ランクの落ちる720p 60fps動画再生は実現のハードルが高かったのです。

 ※注4:ちなみにパソコンのYouTubeでは現在8K解像度、つまり7,680×4,320ピクセル(4320p)の高解像度動画の再生表示まで対応していますが、現状で8Kディスプレイは業務用の非常に高価かつ大型のものしか存在しないため、またそもそも8K対応のカメラも編集システムもほぼ実用段階にないため、実験的かつ限定的な対応にとどまっています。

そのためこれまでiOSおよびAndroid版のYouTube視聴アプリでは30fpsまでの対応となってきたのですが、このほど6月末のバージョンアップでiOSおよびAndroid版のYouTubeアプリでも720p 60fps・1080p 60fpsの動画再生・視聴が選択できるようになりました。

そこで今回はこうした高解像度高フレームレート動画をめぐる状況について考えてみたいと思います。

60fpsの壁

60fps再生がこれまで実現してこなかった最大の理由、それは単純に30fpsから60fpsへのフレームレート引き上げが、通信帯域を圧迫しCPUやGPUに大きな負荷をかけるものだからです。

もちろん、ある程度の枚数のフレームをひとまとまりにして扱い、ある1枚のフレームの画(Iピクチャ)を基準にしてその前後のフレームについてはその基準フレームとの差分情報の形(PピクチャあるいはBピクチャ)で記録することで時間軸方向の動画データ量を圧縮するGOP(Group of Pictures)という概念を利用するMPEG2やH.264などの最近のMPEG技術を基礎とする動画圧縮技術では、よほど激しい動きのある場面でも無い限りはフレームレートが倍になったからといってやりとりされる動画データ量が単純に2倍に増えるわけではありません。

H.264やH.265などのより新しい動画圧縮技術ほど、GOPのひとまとまりに含まれるフレーム数を増やすことで、つまり単位時間あたり含まれるIピクチャの枚数を減らすことで圧縮率を引き上げる方向性にあることを考えると、少なくともネットワーク経由で動画再生時に転送される動画データ量という観点では、フレームレートの倍増はそこまで深刻な問題ではないのです。

むしろ、720p解像度の動画を1080pに変更する方が、減ったと言っても相応に枚数のあるIピクチャの情報量を増大させるため、帯域負荷の点では厳しいと言えます。

ならば1080pは無理でも720pでの60fps対応をさっさと行えば良かったのに、という話になるのですが、ことはそう単純ではありません。

というのは、データ通信の観点ではなるほどH.264やH.265といった新しい動画圧縮コーデックは有益かつ有効なものであるのですが、既存の端末からすれば、これほど「重い」コーデックもないからです。

単純化して言えば、H.264にせよH.265にせよ、送り出し側と再生側の双方のハードウェアに大きな負担(演算処理)を強いて動画データの圧縮と伸張を行うことでその2者間の通信経路上での負荷を低減しているわけで、GOPの構成フレーム数が増えてPピクチャやBピクチャといった差分データが増えるということは、Iピクチャの画像を基準にしてPピクチャやBピクチャの差分情報との間で計算を行って圧縮前の全フレームを再現するための莫大な計算処理を、スマホやタブレットの内蔵CPU・GPUで行わねばならない、ということです。

そして、ここでは通信帯域の場合とは異なり、fpsが倍増するというのはイコールCPUやGPUが単位時間あたり処理せねばならないデータ量がそのまま倍増することを意味するのです。

つまり、同じ処理プログラムで同じ解像度で処理する限り、動画再生時のfpsを倍増すれば、ほぼそのままその単位時間あたりの動画再生処理にかかる消費電力も倍増することになります。

無論、音声処理やバックグラウンドで行われている他の様々な処理もあるため、見かけ上完全に動画再生可能時間が半減、といった事態にはならないでしょうが、少なくとも半減に近い状況になる可能性はあるわけです。

基本的にCPUへの電源供給がコンセントから電源ユニットを介して行われるパソコンであれば、動画再生中の消費電力倍増もそれほど致命的な影響は(電力会社からの請求書を別にすれば)ありませんし、むしろ高解像度高フレームレート化することによる画質面でのメリットの方が大きいと考えられるのですが、電源をバッテリーに依存し、CPUもGPUもパソコンより性能が貧弱で、しかも2015年の今でさえフルHDに満たない解像度のディスプレイパネルを搭載した機種が珍しくない(※注5)スマートフォンやタブレットの状況を考えると、iOSおよびAndroid版のYouTubeアプリが720p 60fpsおよび1080p 60fpsの動画再生に対応していなかったというのはある意味当然の結果であったと言えます。

 ※注5:ことにiOSの場合、主力であるiPhoneが昨年秋のiPhone 6・6 plusまでフルHDどころかHD解像度ディスプレイ搭載機すらなかったのですから、なおさらです。

しかし、最近になってAndroidでもようやくOSの64ビット化が本格化し、スマートフォンでもHD・フルHD以上の解像度のディスプレイを搭載した機種が珍しくなくなってくると、ことさらにiOSおよびAndroid版アプリで高解像度高フレームレート再生を非対応とする理由はなくなったと言えます。

だからといって全機種で対応するわけではない

もっとも、アプリが対応したからと言って、全てのフルHD解像度ディスプレイ搭載機種で1080p 60fps動画再生がサポートされる訳ではないようです。

iPhone 6 plusでYouTubeアプリを用いて1080p 60fpsの動画を再生する場合、解像度設定でこのように1080p60(fps)の選択項目が表示される。

iPhone 6 plusでYouTubeアプリを用いて1080p 60fpsの動画を再生する場合、解像度設定でこのように1080p60(fps)の選択項目が表示される。

筆者が手持ちのNexus 7(2013:Android 4.4搭載)とiPhone 6 Plus(iOS 8.4搭載)、HP Z800 Workstation(Windows 7 Professional SP1搭載)、ThinkPad X200(Windows 8.1 Pro搭載)、それにMac Pro(early 2009:OS X 10.10 Yosemite搭載)の各機種・各OS環境でYouTube上の同じ1080p 60fpsで記録された動画を複数再生して確認してみたところ、Nexus 7以外の全環境で1080p 60fpsが解像度の選択肢として表示されたのに対し、Nexus 7だけは720p 60fpsが上限となってしまいました。

Nexus 7(2013)でYouTubeアプリを用いて1080p 60fpsの動画を再生しようとすると、筆者の環境ではこのように720p60(fps)が上限となって1080p60は選択肢に現れなかった。

Nexus 7(2013)でYouTubeアプリを用いて1080p 60fpsの動画を再生しようとすると、筆者の環境ではこのように720p60(fps)が上限となって1080p60は選択肢に現れなかった。

OSのバージョンで再生できる解像度が変わるというようなことは特にアナウンスされなかったことと、Nexus 7のCPU・GPUが現行より一世代古くまたWi-Fi接続もIEEE 802.11n(2.4GHz/5GHz)止まりであることから、恐らくは(ネットワークを含めた)マシンの性能が十分足りていないためにそのような判定が自動で行われたものと推測されます。

ちなみに問題なく1080p60が選択できたiPhone 6 plusはデュアルCPUコアですが64bit化されていてしかもWi-Fi接続がIEEE 802.11ac対応ですから、プロセッサもWi-Fiもより有利な状態であったと言え、少なくともこれら2機種の結果を見るだけではこのどちらが主因であったのか断言しづらい状況です。

HTC J butterfly HTL212012年12月に発売された、日本市場向けでは史上初のフルHD解像度液晶搭載スマートフォン。統合プロセッサとしてQualcomm Snapdragon S4 Proを搭載する。

HTC J butterfly HTL21
2012年12月に発売された、日本市場向けでは史上初のフルHD解像度液晶搭載スマートフォン。統合プロセッサとしてQualcomm Snapdragon S4 Proを搭載する。

そもそもフルHD解像度あるいはそれ以上の高解像度ディスプレイパネルがAndroid搭載スマートフォンやタブレットに本格的に搭載されるようになったのはSnapdragon S4 Proが搭載されたauのHTC J Butterfly HTL21が登場した2012年冬以降の話ですから、このあたりの機種はNexus 7(2013)と同様に1080p 60fps再生はできなそうですが、逆に言うと720p 60fps再生についてはほぼ対応していることが期待できそうな感じです。

このあたりの対応可否は一律で線引きできるものでもないようなのですが、YouTubeアプリが一体どういうルールで対応可否を判定しているのか、気になるところです。

▼参考リンク
HFR FTW! High frame rate playback is available on the YouTube App for both…

  • 悠斗

    私はAndroid5.0のXperiaTabletZを使っているのですが、試しに1080p 60fpsのmp4ファイルをローカル領域に保存し再生させるとコマ落ちでまともに再生されませんでした。

    この機種はAPQ8064を搭載しています。
    同じく搭載されているnexus7などが対応できない理由はこのCPUの帯域不足などの理由により制限されているのではないでしょうか?

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