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アプリ開発、YouTube、LINEスタンプ……個人クリエイターは今後も稼ぎ続けられるのか?

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by [2015年6月25日]

GooglePlay、AppStore、YouTube、LINEスタンプなど、個人で登録して収益を得られるプラットフォームが多数登場してきた。これらのプラットフォームのおかげで、個人クリエイターが制作物をネット上で多くの人へ売ったり、見てもらったりできるようになった。もう企業という形式をとらなくても、個人がデジタルコンテンツで収益が出せる時代になってきている。しかし、この状態にも変化が出てきている。

数億円を稼ぐ個人クリエイターが続々出現

最近、個人クリエイターの存在が、多くの人たちの注目を集めるようになってきた。たとえば、スマホのアプリ開発者やYouTuber(YouTubeに動画を配信している人たち)だ。彼らの中には、個人で企業並みの売上を出している人も数多い。
T-SITEニュースによると、もっとも有名な日本人YouTuberのひとり、HIKAKIN氏の年間収入は、YouTubeでの活動だけで1億円を超えているとされる。
また、アプリ開発者、ドン・グエン氏がひとりで制作した無料アプリゲーム 『Flappy Bird』は、アプリに表示される広告でピーク時には1日500万円 (= 単純計算で月に約1億5,000万円) の収益を得ていたという。ヒットのきっかけは、世界有数のYouTuberと言われているPewDiePie氏が、このゲームを実況したことで、全世界で5,000万件以上もダウンロードされたためだ。
日本国内の個人デベロッパーに絞ってみても、ダウンロード数から推測すれば数千万円/月を稼いでいる人が多いと言われている。

flappy_bird_googleplay


横スクロールゲームの『Flappy Bird』は、タップするだけのシンプルなアクションゲームながら異常なまでの難しさで話題となった。現在はオリジナルアプリが作者によって削除され、大量のパクリアプリがリリースされている

個人クリエイターの活躍の場は今後も広がっていく

現在のように、個人クリエイターが活躍できるようになった大きな理由は、

  1. コンテンツ制作環境の進化・低価格化(Unity、Unreal Engine、ハンディビデオカメラなど)
  2. SNSの普及によるコンテンツ消費者の囲い込み(Twitter、FacebookなどのSNS)
  3. 個人も契約可能なコンテンツ投稿プラットフォームや広告事業者(LINE Creators Stamp、AppStore、Google Play、アドネットワーク各社など)

の3つと考えられる。
デジタルコンテンツの制作環境についても、ひと昔前のように開発・制作用に高額なハイスペックPCを買わずとも、一般向け安価なPCで十分制作ができるようになってきている。加えて、動画編集ソフトや音楽制作ソフト、ゲームエンジン、ミドルウェアなどの制作ツールも、昔と比べて、操作が簡単になり、低価格化してきている。また、制作ツールをフリー化・オープンソース化して、そのツールで制作したコンテンツの売上の数%をレベニューシェアするビジネスモデルも登場し、個人クリエイターは、ツールの利用料をさまざまな方法から選択できるようになった。


ゲーム開発エンジン『Unreal Engine 4』は2015年3月3日にフリー化を発表、話題になった

SNSが一般化した現在では、個人クリエイターがコンテンツ消費者との直接の接点を持つことは簡単だ。LINEスタンプで人気のイラストレーターはTwitterで多くのフォロワーがいるし、また人気アプリの個人開発者もTwitterで多くのフォロワーがいる。最近ではどのプラットフォームでもTwitterなどのSNSとの連携機能を備えているのが当たり前となってきているため、新しいスタンプやゲーム開発の進捗などもアピールすることができ、最初から多くのダウンロードが見込めるなどのメリットもある。
また、個人でも簡単に収益化できる仕組み (例えば LINE Creators StampやYouTubeパートナープログラムなど) も進化してきており、コンテンツ投稿プラットフォームの機能は今後もますます進んでいくだろうと予想される。

スケール不要&新興ジャンルは個人の独壇場

個人クリエイターの方が有利なジャンルもある。まず、機動力があり、個性を前面に出せる、個人クリエイターは「スケールが求められないコンテンツ」と相性がいい。つまり多くの人材と大きな予算を投入した分だけ売上が伸びるコンテンツではない、ということだ。例えば、スマホではLINEスタンプやカジュアルゲームが代表的なコンテンツと言える。
そのため、LINEスタンプのように工数をかけるメリットがない市場に関しては、小規模でも確実に収益が上げられて素早く動ける個人クリエイターの方が有利ということが言えそうだ。

売上上位の LINE クリエイターズスタンプの平均の販売額が公表されている。売上 TOP のスタンプの販売額は推して知るべし

さらに、市場が成熟する前の段階であれば個人クリエイターにとって有利な状況である、ということもある。
AndroidアプリマーケットのGoogle Playでは、初期の頃は個人開発のアプリの方がむしろ多く、初心者の開発した無料アプリでも広告収益で大きく稼げた時代があった。今でこそ、スマホアプリは広告ブーストができる企業と、ごく一部のスーパー個人開発者が稼いでいる、というイメージだが、市場が成熟する前はむしろ個人の方が強かったのだ。

大規模開発や広告出稿は企業が有利

以前は個人クリエイターが主導権を握って、マーケットを動かしてきたが、最近は個人クリエイター優位に変化が出てきている。
例えば、以前は個人アプリ開発者の独断場だったGoogle PlayやAppStoreでは、今は登録されるアプリの数が多すぎるために、多くのユーザーに認知されるランキング上位に入るためには広告費を投じなくてはならなくなってきた。ランキング下位のアプリはユーザーから見つけてもらえないからだ。
また、ソーシャルゲームのように、リリース後もアプリ内イベントなどで運営力が必要なアプリ、開発工数の多いアプリは、課金ノウハウや人材リソース、サーバー保守力を持っている企業でなくてはビジネスとして成功させるのが難しい。
一般的に、大規模な工数が必要な開発、大きな広告予算、定常的な運営など、お金や人員が必要な部分に関しては個人の方が不利である、ということだ。
スマホアプリ市場においては、スマホユーザーが増え、大きな収益を得られる市場になったと見越した瞬間に、大手ゲーム会社などが大規模な開発と広告予算を持って乗り込んできている。開発工数の多いビッグタイトルのアプリが増えた上に、広告をしないとユーザーから見つけてもらえなくなった結果、個人開発アプリは以前と比べて徐々に優位性を失ってきている。
大手企業は、今まで培った王道のジャンルのゲームなどをスマホアプリに最適化し、クオリティを高め、そうして完成したアプリを膨大な広告予算と共にリリースして、費用を確実に回収していく。一方、個人開発者は、大手企業のように判断などに時間がかからないため、素早く、そして実験的な試みを数多く試すことができることを活かし、新しいジャンルや仕様のアプリで闘うのが基本的な戦略だ。
また、小規模な開発を繰り返してきた個人の方が、動きの遅い企業よりもノウハウを積んでいることも多いため、市場が成熟し始めると一部のスーパー個人開発者に開発を委託する企業も多くなってくる。
成熟した市場においては、王道パワープレイの大手企業、ゲリラ戦の個人開発者、そして企業から発注を受ける個人開発者、が三大勢力となるだろう。これは恐らくスマホアプリ以外の市場においても、市場ごとにパワーバランスは異なってくるものの、ほぼ近い構図になるはずだ。ただ、スマホアプリ市場は個人向けの環境が特に整備されている市場でもあり、他の市場では未だに企業の方が圧倒的優位にあるのが現状ではある。

覚悟を持って「好きなことで、生きていく」

IT技術の進化によって、企業しかできなかったコンテンツ領域が徐々に個人に開放されてきているのは事実である。この流れがこのまま進むと、自身のスケールメリットについて深く考えていない企業が個人クリエイターに足をすくわれる、ということも増えてくるだろう。企業にとっては「企業でなくては出せない価値とはなんなのか」を追求すること、プラットフォームを自前で持つ or 味方に付ける、といったことが今後ますます重要になるだろう。時流に適した組織の規模を考えることも、もちろん重要だろう。
個人クリエイターは、大成功を収めた個人を見て盲目的に「あの人みたいになろう」と思っていると、すでに旬が過ぎていたり、市場が成熟した頃に大手企業のパワープレイに押し潰される可能性がある。常に最先端のものにキャッチアップし、企業が未開拓の市場に乗り込めるだけの力を持つこと、もしくは企業よりも有利な立場に立てるスケールメリットのない市場でカリスマになるだけの実力のどちらかが求められるだろう。
厳しい言い方をすれば、クリエイティブ業界は企業も個人も生き抜くために覚悟が必要な時代になった。逆に、既得権益がどんどん取り除かれていて誰にでもチャンスが開かれている、とも言える。覚悟のある人は「好きなことで、生きていく」のを目指すのも悪くないだろう。

▼参考リンク
HikakinTV(YouTube)
「HIKAKIN」「橋本環奈」「りぶ」…“ネットブレイク”なタレントたち(T-SITEニュース)
[LINE] ユーザーが制作したスタンプを販売できるプラットフォーム「LINE Creators Market」、販売・購入開始後3ヶ月の販売・利用実績を公開

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