Apple watchOS 2アプリのネイティブ化によりスタンドアローン化が進んだがiOS 9との連携はむしろ強化されている。

順当な正常進化 ~WWDC15で発表されたAppleの新OSを見る~iOS&watch OS編

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by [2015年6月23日]

前回はOS X編について見てきました。今回はiOSとwatch OSについて見てゆきたいと思います。

iOS

Apple iOS 9

Apple iOS 9

次期iOSは「iOS 9」と発表されたのですが、今回のバージョンアップではiPad(の最新世代各モデル)での使い勝手向上につながる新機能や改良が目立っています。

もっともその一方で対応機種はiPhoneがiPhone 4s以降、iPadがiPad2以降、それにiPod touchの第五世代モデル、と昨年の「iOS 8」の対応機種にiPad Air 2が追加された程度で、CPUやGPUの性能からそろそろサポートが切られそうな雰囲気の漂っていたiPhone 4sが今回も無事サポートされています。

これはiPad系での改良点を別にすると、OSの基本的な部分で要求されるハードウェアの性能や機能がほとんど変わっていないことを暗示していると言えるでしょう。

iOSでも重点的に強化された検索機能

Apple iOS 9SiriとMapsの改良・連携により経路検索機能が実装された。

Apple iOS 9
SiriとMapsの改良・連携により経路検索機能が実装された。

全機種共通での強化点としては、まずパーソナルアシスタント機能である「Siri」の改良が挙げられます。

これも自然言語処理の強化改良ということになるのでしょうが、「Siri」に対する指示でこれまでだと目的の仕事をかなり細分化して、一つ一つ噛み砕いて指示を行わねば「Siri」に理解させるのが難しかったのが、改良されて一文でかなり長く込み入った指示を行ってもそれを正しく解釈し処理を行えるようになったとしています。

もっとも、iOSの母語である英語やそれと同様の文法規則や構造を備える、屈折語に属する各言語であれば、ただちに同様の機能向上を期待できそうですが、これが果たして独立語に属する中国語や膠着語に属する日本語といった、自然言語処理を行う上で基礎となる部分の前提条件からして異なる言語でも同様に期待できるのかどうかは定かではありません(※注1)。

 ※注1:もちろんAppleとしては当然にそれらの各言語でもこの機能を有効活用できるよう、研究開発を行っているものとは思いますが。

筆者の見る限り、現行のiOS 8の日本語IMEでさえかなりお馬鹿なところがあって、「Siri」が毎回色々斬新過ぎる提案をおこなってくれていることを考えると、この「Siri」の改良については大きく期待せず状況を注視、といったところでしょうか。

ようやく経路検索ができるようになるMaps

これまで「Maps」は、初登場以来あの機能が足りない、この機能が正常に動作しない、とさんざんな評価であったわけですが、今回のバージョンアップでようやく「Siri」との連携による経路検索機能の搭載がアナウンスされました。

ただし、キーノートスピーチ中でのデモを見る限り、鉄道の路線網が複雑怪奇に入り組んでいる日本の東京や大阪でこの機能がOSリリース後すぐに使えるかというと、これもまた期待薄といった印象です。

もっとも、この機能については競合相手であるGoogleマップでも市販の経路検索アプリやサービスには全く遠く及ばない状況ですから、稠密な鉄道網が全国に張り巡らされ、さらに常に時刻表が正しい=秒刻みで時刻表通りに列車がやってくることを期待できることを前提とする、つまり経路検索機能に対する要求レベルが他国よりも遙かに高く厳しい日本の特殊状況への対応は色々と難しいようです。

新規搭載されたNewsアプリ

iOS 9での新規搭載アプリの1つに、ニュース表示アプリである「News」があります。

これはその名の通り、各種ニュースソースからのニュースを表示するアプリですが、これまた最近の流行に従い、ユーザーの閲覧状況に応じて表示される内容がパーソナライズされるようになっています。

今回の紹介内容を見る限りはこの「News」には致命的な弱点は見当たらず、恐らくこのまま標準ニュースリーダーの地位を得ることになるでしょう。

強化されたマルチタスク機能

Apple iOS 9現時点ではiPad Air 2でのみサポートされる「SplitView」により画面を2分割し2つのアプリを同時起動・利用している状態。

Apple iOS 9
現時点ではiPad Air 2でのみサポートされる「SplitView」により画面を2分割し2つのアプリを同時起動・利用している状態。

今回の「iOS 9」で最大の改良点、それはマルチタスク機能の強化です。

マルチタスク機能、それはつまり複数のアプリを並列動作させる機能で、フルスクリーン画面に没入して操作させるのが基本であったiOSでは、これまでこの機能への対応は段階的に進められてきましたが、積極的にこの機能をアッピールするような状況ではありませんでした。

しかし今回、OS Xと同様に「SplitView」が実装され、2つのアプリで画面を1:1あるいは7:3の割合で分割して両方ともアクティブに並列動作させることができるようになりました。

もっともこの機能、現状ではCPUコアが3コア化されたA8Xプロセッサを搭載していてスレッド分散処理に余裕があり、しかも画面サイズが大きく解像度も高い(そしてGPU性能も高い)iPad Air 2限定での対応となっており(※注2)、それなりにハードウェア性能に対する要求が高いことがわかります。

 ※注2:一方、他のアプリを画面端に表示する「SlideOver」機能と小画面表示する「PiP」機能はiPad Air以降およびiPad Mini 2以降で対応しています。

言い換えれば、この機能を前提とする限り、少なくとも今後登場するiOS対応端末では昨今のAndroid対応端末と同様にCPUコアの多コア化やディスプレイパネルの高解像度化といった今まで以上の高性能化が避けられないということです。

その意味で、今回のこの「SplitView」の搭載は今後のiPad(およびiPhone)の進む道を予告するものであると言えるでしょう。

改良された入力系

先に触れたマルチタスク機能とも関わるのですが、今回の「iOS 9」ではキー入力操作周りが改良され、特に仮想キーボードに大幅な手が入っていることがアナウンスされています。

これまでだと例えばWordなどでカットアンドペースト操作を行いたい場合、選択領域を長押ししてサブメニューを表示させ、そこで必要な操作を選んで行うようになっていたのですが、「iOS 9」では仮想キーボードの変換候補領域の両端のエリアにそれらの操作のためのアイコンが表示されるようになり、こうした文書編集操作の際の使い勝手が飛躍的に向上します。

また、「iOS 9」の仮想キーボードでは画面上で2本の指をタップすると仮想的にトラックパッドとして利用できる機能がサポートされており、これによる範囲指定と先のカットアンドペースト用アイコンを組み合わせて利用することで、文書編集作業などがこれまでよりも格段に容易に行えるようになります。

また、この「iOS 9」ではBluetoothキーボードのサポートが強化され、CommandキーやOptionキーとのキーバインドによるショートカット動作がサポートされるようになっています。

これもまたテキスト入力・編集にiOSを利用しているユーザーにフォーカスした改良点であると言え、マイクロソフトの「Surface」・「Surface Pro」シリーズをはじめ競合各機種でBluetoothキーボードを付属させたり純正オプションとして提供したりして、タブレットをノートパソコン代わりに利用できるようにするのを重視した製品展開が行われているのに対抗するためのものと考えられます。

watch OS

Apple watchOS 2フェイス背景にアルバムの写真を表示できるようになった。

Apple watchOS 2
フェイス背景にアルバムの写真を表示できるようになった。

次は先日発売が開始されたばかりのApple Watchシリーズ用OSであるwatchOSの最新版、「watchOS 2」です。

対応端末が発売されたばかりでもう次期OSの発表なのか、と意外に思ったのですが、現行のwatchOSがそれなりの水準には達しているもののお世辞にも完成度が高いとは言えない、「とりあえず発売に間に合わせました」的な部分を多々含んでいたことを考えると、妥当なバージョンアップであると言えます。

OSそのものの改良はApple Watchのフェイス(トップ画面)で背景にアルバムに保存した写真を利用できるようになり、「Time Travel」機能として時間指定を行うとその時間帯での天気予報や飛行機の出発時刻が表示されるなど、OS XやiOSにも増して細かい部分の改良が目立ち、強いていえばApple Watch上でメールの返信が書けるようになったのが大きな改良といえます。

実を言うと、今回のwatch OS 2で最大の改良点はOSそのもののバージョンアップではなく、このOS上で動作するスタンドアローンなネイティブアプリを開発するのに必要な開発環境がWatch Kitとして正式に提供されることであったりします。

Apple watchOS 2アプリのネイティブ化によりスタンドアローン化が進んだがiOS 9との連携はむしろ強化されている。

Apple watchOS 2
アプリのネイティブ化によりスタンドアローン化が進んだがiOS 9との連携はむしろ強化されている。

これまで、Apple Watchでは母艦となるiPhoneを併用し、そこから読み込んでアプリを起動するようになっていたのですが、それがApple Watch単独でアプリを起動できるようになるわけです。

また、これらのアプリでの各種センサー類の利用も可能となっており、アプリ開発の自由度が飛躍的に高まることになります。

正直、このあたりの対応はApple Watch発売の時点でできていなくてはならなかった/できていて当然のことであった気もするのですが、ともあれこれでApple Watchの弱点とされていた部分が大幅に強化・改良されるわけで、その意味でこの「watchOS 2」には大きな価値があるといえます。

いずれもマイナーチェンジレベルだが重要な改良を含む

以上、WWDC 2015のキーノートスピーチで発表された情報およびその後公開された情報を元にOS X・iOS・watchOSの最新バージョンでの改良点を見てきましたが、総じてマイナーチェンジレベルにとどまるものの、使い勝手の改善という観点では大きなメリットのある改良が施されているといえ、対応機種をお持ちの方は導入を検討する価値は十分にあると言って良さそうです。

ことに、OS Xでは現行バージョンの「OS X 10.10 Yosemite」がApple公式サイトのMac Storeのレビュー欄でこれ以上無いほどひどい批判にさらされていたことから、導入をためらっていた方も多いと思いますが、今回の改良点は結構重要なものが多いため、ハードウェア必要条件を十分満たすMacをお使いの方は、本格的に導入するかどうか判断するためにも、一度インストールしてその動作を確認しておくのが良いのではないでしょうか。

筆者の経験から言うと漢字Talk7.5の昔からMacではメモリさえ十分に積んでいれば不具合を回避できるケースが結構あるため、特に「OS X 10.11 El Capitan」の導入を検討なさっている方には余裕を持たせた容量のメモリ搭載をおすすめしておきたいと思います。

「iOS 9」についても、本文中でも触れましたが対応機種が現行のiOS 8と変化しておらず、「OSをバージョンアップしたら極端に重くなった」といったトラブルの発生はどうやら回避できそうな印象です。

正直なところ、iPhoneではあまりメリットのないバージョンアップが多いのですが、それでもこれまで使いづらかった仮想キーボードの改良をはじめ入力系の改良は非常に喜ばしく、少なくとも筆者にとってはこれだけでもバージョンアップする理由になります。

「watchOS 2」については、なんと言ってもアプリのネイティブ対応が可能な環境が整備されたことが全てで、バージョンアップに十分すぎるほど値するでしょう。

いずれにせよ、いずれのOSでも、地味ながらアプリ開発者にも影響を及ぼす重要な改良が行われており、開発者向けイベントであるWWDCで発表されるにふさわしい新バージョンであると言って良いのではないでしょうか。

▼参考リンク
Apple Special Event(WWDC 2015)
Apple (日本) – Apple Press Info – Apple iOS 9をプレビュー
Apple (日本) – Apple Press Info – Apple、iPhoneとiPad用のNewsアプリケーションを発表
Apple – OS X El Capitan

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