Apple OS X 10.11 El Capitan

順当な正常進化 ~WWDC15で発表されたAppleの新OSを見る~OS X編

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by [2015年6月19日]

WWDC 2015 公式情報公開ページ

WWDC 2015 公式情報公開ページ

Appleの開発者向けイベントとして毎年開催されているWWDC(Worldwide Developers Conference)では通例、次期OSや新機種、それに新サービスの発表が行われています。

中でも新OSと新サービスは開発者に強く影響するため、WWDCの初日キーノートスピーチでお披露目されるのが慣例となっているのですが、このほど開かれたWWDC 2015でも、OS X、iOS、それにWatch OSと各OSの最新バージョンの概要が紹介され、さらに新サービスである「Apple Music」が披露されました。

そこで今回から2回に分けて、これらの内各OSの新バージョンについて考えてみたいと思います。

OS X

まずはMac用のOS Xから。

Split Viewの搭載とフルスクリーン表示の改善

今回発表された「OS X 10.11 El Capitan」‎では、新機能としてまず「Split View」と呼ばれる、画面を2つのアプリに割り当て、それぞれがフルスクリーンモードで動作するという画面分割機能が搭載されることが発表されました。

これは何というか、その挙動がWindows Vistaで初採用されたAeroスナップ(※注1)に酷似しているのですが、筆者自身、Windows 7でそのAeroスナップを大変便利に利用しているので、こうした他のOSの便利な機能を操作体系に矛盾が生じない範囲で取り込んでユーザーエクスペリエンスを改善しよう、という方針は大歓迎です。

 ※注1:デスクトップ画面の左右いずれかの端に任意のアプリのタスクバーをドラッグすると、ドラッグした側の画面半分に自動でサイズ変更されて表示される機能。ちなみにマルチディスプレイ環境では配置にもよるものの各ディスプレイの画面の半分にアプリが表示されることになる。

Apple OS X 10.11 El CapitanのSplit Viewで画面を二分割表示した状態

Apple OS X 10.11 El CapitanのSplit Viewで画面を二分割表示した状態

また、これと関連してフルスクリーン表示機能そのものにも手が入れられ、これまでのOS Xでは結構使いづらかった複数ウィンドウを表示するタイプのアプリのフルスクリーン表示、特に受信メールの表示と操作が改良されました。

これによりフルスクリーン時でも複数メールのタブ化や受信ボックスへのアクセス容易化などが実現しています。

Spotlightの改良

次は、検索機能である「Spotlight」の改良です。単純な検索にとどまらず、天気、スポーツの結果、株価、インターネット上の動画、さらには交通機関の情報などを網羅しての検索が可能となり、さらに検索エンジンの改良により自然言語処理がサポートされました。

自然言語処理というのは、検索キーワードに話し言葉口調などを用いて曖昧な指示を行っても、それを検索エンジン側で解析の上で適切な検索結果を導き出すというものです。

この種の自然言語処理は、IMEのATOKなどではかなり前から行われていたもので、例えば「おととい」と入力するとそれに該当する日の日付が表示される、といった形で変換のための入力を簡単にするように採用されていたものですが、それを検索キーワードに対して行えるようになったわけです。

この自然言語処理の検索エンジンへの援用はGoogleでも結構前から研究が行われていて、先日ご紹介したAndroidの最新版「M」でも「Now on tap」としてこの「Spotlight」に近いか、それ以上に先鋭的な形での利用が行われることが発表されています。

つまりこの機能は検索機能の最新トレンドに忠実に従ったものと考えるのが妥当でしょう。

全ウィンドウの俯瞰表示を実現するMicssion Control

Apple OS X 10.11 El Capitanの「Micssion Control」機能で現在動作中の全ウィンドウを一覧表示した状態

Apple OS X 10.11 El Capitanの「Micssion Control」機能で現在動作中の全ウィンドウを一覧表示した状態

次は「Micssion Control」です。

これはデスクトップで表示されている全ウィンドウを一旦同一平面上に縮小整理表示する機能です。

これにより、多数のウィンドウを開いている状況である特定のウィンドウを素早く探し出して再配置することが可能になると期待できます。

「埋もれてしまったウィンドウの再発見」についてはWindowsでもWindows VistaでのWindowsフリップおよびWindowsフリップ3D機能のサポートという形で一定の解決が図られていたのですが、それらのように逐次的に候補を切り替え表示するのではなく、全ウィンドウを一画面に並べて俯瞰表示させることで探し出しやすくするというのは非常に良い着眼点であると言えます。

Metalのサポート

今回の「OS X 10.11 El Capitan」‎で地味ながら重要なのが、iOS 8で既に先行採用されていた新グラフィックAPIであるMetalがサポートされたことです。

これはAMDの提唱するMantleやマイクロソフトのDirect X12といった最新のWindows向けグラフィックAPIのトレンドに従い、機能の足並みがおおむね揃った現行の各社製GPUに最適化することでAPIそのもの、特にCPUのオーバーヘッドが大きかった描画命令を簡素化・高速化し、可能な限りGPUそのものにダイレクトにアプリがアクセスできるようにするものです。

先行したAMDのMantleが対応GPUと対応ゲームの組み合わせにおいて従来比で劇的と言って良い性能を叩き出したことが示すように、このコンセプトはこれまでグラフィックAPIが際限なく肥大化しレイヤーが分厚くなってしまっていたことに歯止めをかけ、最新GPUの性能を引き出せるのですが、それだけに在来機種での足並みを揃えての性能発揮が難しい一面があります。

実際、元々対応すべき機種数が絞られていてそれらに搭載されるGPUの種類も少ないiOSでは、昨年の「iOS 8」でA7以降のプロセッサを搭載する端末のみ対応とすることで早期にサポートできたのですが、同様の機能を備えているとは言え、本体標準搭載や純正オプションだけでもAMDのRADEONやFireProにIntelのHD Graphics、それにNVIDIAのGeForceと機種によってメーカーもアーキテクチャも異なるGPUが併存するOS Xでは対応GPUを最新世代化それに近い世代のモデルに限定するにしても実装が色々大変であったようで、結果としてiOSでの対応から1年遅れでの対応ということになりました。

こうした最新GPUの性能を最大化するAPIの採用は、当然ながら3Dグラフィックを扱う先鋭的なゲームやGPGPU機能を利用するフォトレタッチソフト、ドローイングソフト、それに動画編集ソフトなどに特に大きな恩恵があります。

今回のキーノートスピーチでも具体的なベンチマーク結果やどの部分での話かなどは示されませんでしたが、その種のアプリで従来比最大8倍のパフォーマンス向上が得られるとアナウンスされています。

Apple OS X 10.11 El Capitan

Apple OS X 10.11 El Capitan
背景写真に表示されているのがヨセミテ(Yosemite)国立公園にある巨岩「El Capitan」(左)。

以上の通り各種既存機能の改良や新機能の搭載が行われた「OS X 10.11 El Capitan」ですが、そもそも「El Capitan」というコード名自体がアメリカのヨセミテ国立公園の中にある花崗岩の一枚岩よりなる巨岩の名であることが暗示するとおり、現行の「OS X 10.10 Yosemite」のマイナーチェンジの域を出るものではありません。ただ、逆に言えば「OS X 10.10 Yosemite」の細かな問題点を拾って潰してブラッシュアップされていることが期待できるといえます。

次回は、iOSとwatch OSについて見てゆきます。

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