USB SuperSpeed対応USB Type-A(右)・Type-B(左)コネクタ一見変化のないType-Aコネクタと異なり、Type-Bコネクタは上部に新設信号ピンのための突き出しがあり、従来のType-Bソケットには差し込めない。

すべてがUSBになる【その3】USB 3.0/3.1

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by [2015年6月18日]

前回はUSB 2.0について見てきました。今回はUSB 3.0およびUSB 3.1について見てゆきたいと思います。

USB 3.0

さて、USBはUSB 2.0で速度的に一定の実用性を確保できたわけですが、2007年頃になると、USBメモリやハードディスクなどを中心にUSB 2.0の転送速度では十分な性能が得られなくなってきました。

そのため、より高速でUSB 2.0との間で上位互換性を備える新しいインターフェイスの規格化が行われました。

もっとも、これまでのUSB 1.0からUSB 2.0までのようにD-・D+の2本の信号線で差動合成してデータを送受信する仕組みではこれ以上の高速化が難しい状況でした。

そのためこの新しいUSB規格では、当時普及が始まっていたPCI Expressの通信の仕組みが流用され、通信そのものの転送速度は最大640MB/s(5Gbps)ですがいわゆる8b-10b変換(※注1)を行っていることから実効最大転送速度は512MB/s(4Gbps)となり、USB2.0の理論上限値の約8.5倍の転送速度を実現しました。

 ※注1:シリアル通信の場合、そのままデータを送受信すると0か1が多数連続する場合があり、状況によっては一体何個0あるいは1を送受信したのか判別が付かなくなる恐れがあります。そのため、特別な変換表を用いて8ビット分のデータを10ビットのコードに変換してやりとりすることで、0か1が4つ以上連続する=クロックの判別ができなくなるのを防ぐ仕組みが採用されています。

これがUSB 3.0のUSB Super Speedモードです。

もっともPCI Expressの場合、仕様上1レーンあたりデータ信号線が上下それぞれの方向に1組ずつ存在する必要があり、しかもそれらを±2本の信号により差動合成する仕組みですから、従来のUSB 2.0までと同じ2本の信号線だけでデータをやりとりすることはできず、最低でも4本の信号線追加が必要です。

USB SuperSpeed対応USB Type-A(右)・Type-B(左)コネクタ一見変化のないType-Aコネクタと異なり、Type-Bコネクタは上部に新設信号ピンのための突き出しがあり、従来のType-Bソケットには差し込めない。

USB SuperSpeed対応USB Type-A(右)・Type-B(左)コネクタ
一見変化のないType-Aコネクタと異なり、Type-Bコネクタは上部に新設信号ピンのための突き出しがあり、従来のType-Bソケットには物理的に差し込めないようになっている。

そのため、この方式を利用するに当たってはUSB端子についてこれまでのものとの互換性を確保しつつ別途新信号線の追加が実施されました。

こうして、USB 3.0ではUSB SuperSpeedモードに対応するType-A・B、それにmicroーBの各端子について信号ピンをグラウンド(GND)1本を含めて5本追加し、従来のデバイスやホストコントローラと接続する場合には既存の4ピンあるいは5ピンを用いてUSB 2.0の規格の枠内で通信、高速なUSB SuperSpeedモードでは追加されたこれら5本の信号ピンを用いてPCI Expressと同様の方法で通信する、つまり1つのコネクタに全く性質の異なる2つのインターフェイスの信号線を併存させ、排他的にどちらか一方を使用するという複雑な仕組みの端子(※注2)が規格化されました。

 ※注2:こうした仕様から、各デバイスがUSB SuperSpeedモードでホストコントローラと通信を行うためには、通信経路上に存在するハブコントローラとケーブルの全てがUSB SuperSpeedモードに対応している必要があり、そうでない場合はUSB HighSpeedモード以下の各モードで動作することになります。

USB micro-Bコネクタ2種USB SuperSpeedモード対応のもの(左)は従来のもの(右)と比較して新設信号線5本のためのコネクタが追加されており、幅広になっている。

USB micro-Bコネクタ2種
USB SuperSpeedモード対応のもの(左)は従来のもの(右)と比較して新設信号線5本のためのコネクタが追加されており、幅広になっている。

この方式の採用で一番被害(?)を受けたのはmicroーB端子で、これまでの5ピンと平行して5ピン分の信号線が増設される、つまりこれまでよりも幅広の大きな端子サイズとなってしまいました。

実のところスマートフォンでUSB 3.0対応を謳う機種が現れないのはこのmicro-B端子の仕様に原因があると言え、これは続くUSB 3.1でよりコンパクトで同等以上の接点数を実現するUSB Type-Cコネクタが制定される一因となりました。

一方、Type-Bコネクタも増設ピンの分だけ一部が膨らんだような構造になったのですが、こちらは元々のコネクタサイズの枠内にほぼ収まるため実用上の害は特にありません。

破損したUSB SuperSpeedモード対応メモリの中身を取り出したものType-Aコネクタに10本の信号線が接続されているのが見て取れる。

破損したUSB SuperSpeedモード対応メモリの中身を取り出したもの
Type-Aコネクタに10本の信号線が接続されているのが見て取れる。

これらに対しType-A端子の場合は、元々コネクタサイズに余裕があったことから、コネクタ抜き差し時の奥行き方向で2分割し、従来通りの4ピンと新設の5ピンを千鳥配置とすることで互換性を保ちコネクタサイズを維持しつつ接点の増設に対応できました。

こうした事情から、Type-B端子とmicro-B端子ではUSB 3.0対応に伴って外見に大きな変化があったのに対しType-A端子は外見からの対応規格の判別が難しく、そのためUSB 3.0規格ではUSB SuperSpeedモード対応ケーブルについては端子内部の従来通りであれば黒い樹脂板の部分を水色に変更して区別することが推奨されています。

USB 3.1

以上のように抜本的な構造の変更が行われ高速化を実現したUSB 3.0ですが、2012年頃になるとUSBフラッシュメモリの高速化競争が激化し、さらにパソコンの内蔵ハードディスク用インターフェイスであるシリアルATA(SATA)がSATA 3.0(2009年制定)で6Gbps転送を実現して以降、特に1台で500GB/sを超える転送速度を実現するSSDが製品化されるようになると、公称最大値では512MB/sを最大実効転送速度とするものの、実際には最大でも400MB/sを若干超える程度の速度しか出ないUSB SuperSpeedモードでは転送速度が十分ではないと見なされるようになってきました。

そこでUSB 3.0の物理的な信号線の構成などの基本的な仕様を踏襲しつつ、信号伝送速度をUSB SuperSpeedモードの5GHzから10GHzに倍速化し、さらに通信時の8b-10b変換を128b-132b変換に置き換えることで約1241MB/sの最大転送速度を実現するUSB SuperSpeed+モードが新設され、規格名もUSB 3.1となりました。

信号伝送速度が倍速化し通信時の変換が8b-10b変換が128b-132b変換になったということは、つまりホストコントローラなどの各種対応コントローラは物理的にも論理的にも異なる挙動を示すということで、当然そのままでは既存のUSB SuperSpeedモード対応デバイスとの互換性が確保できません。

そのため、USB SuperSpeed+モードで動作するUSB 3.1対応デバイスでは、USB SuperSpeedモードとの互換モードで動作するようにハード的にもソフト的にも二重化されており、実際にUSB 3.0のUSB Super Speedモードに対応するデバイスをUSB 3.1のUSB SuperSpeed+モード対応ホストコントローラに接続すると、ホストコントローラ側の通信モードをUSB SuperSpeedモードに切り替えてデバイスとの通信を行うようになっています。

USB Type-C端子の制定

このようにこれまでの規格と互換性を保ちつつ飛躍的に高速化を実現したUSB 3.1ですが、この規格では新型端子の制定も行われました。

Apple Lightningコネクタ表裏リバーシブルで実は表裏で信号が同じではない、高耐久性であるなど、USB Type-Cコネクタの設計に強い影響を与えた。

Apple Lightningコネクタ
表裏リバーシブルに使えるが実は表裏で信号が同じではない、高耐久性であるなど、その設計コンセプトはUSB Type-Cコネクタに大きな影響を与えた。

これは、USB 3.0でmicro USB端子がピン数増大に伴ってモバイル機器での利用に適さなくなっていたことへの反省から、おおむねmicro USB端子のサイズのままでピン数の増大を実現し、ケーブル両端のコネクタの区別をなくし、AppleがiPhone 5で初採用したLightning端子の影響からか表裏どちらの向きでもソケットにコネクタを差すことができるようにし、さらに従来のスマートフォンで行われていたmicro USB端子によるMHL(Mobile High-definition Link)接続をUSB SuperSpeed/USB SuperSpeed+用データ通信線経由でのDisplay Port接続に置き換えようという野心的な設計の端子です。

USB Type-Cコネクタケーブルと各種ソケット様々な用途が想定されて複数のソケットが提供されている。

USB Type-Cコネクタケーブルと各種ソケット
様々な用途が想定されて複数のソケットが提供されている。

ケーブル両端のコネクタの区別をなくして同じコネクタ形状とすることでも明らかなように、これはUSB On-the-Go相当の機能のサポートが事実上必須で、しかも表裏の区別なくソケットに挿入できるリバーシブル設計とすることから、そのピン配置はコネクタ中央を中心とする回転対称の配置となっています。

具体的にいうとこのコネクタでは表裏に12ピンずつ接点が設けられていて、どちらの面も順に

 1:GND:グラウンド
 2:TX+:USB SuperSpeed/USB SuperSpeed+用データ通信線(+)
 3:TX-:USB SuperSpeed/USB SuperSpeed+用データ通信線(-)
 4:V bus:5V給電
 5:CC:USB パワーデリバリーモード設定・Alternateモード設定用
 6:D+:USB 2.0までのデータ通信線(+)
 7:D-:USB 2.0までのデータ通信線(-)
 8:SBU:セカンダリバス
 9:V bus:5V給電
 10:RX-:USB SuperSpeed/USB SuperSpeed+用データ通信線(-)
 11:RX+:USB SuperSpeed/USB SuperSpeed+用データ通信線(+)
 12:GND:グラウンド

となっていて、表面の1番ピンと裏面の12番ピン、表面の12番ピンと裏面の1番ピンが向き合うような配置になっています。

VESAが公表したUSB Type-C端子のピンアサインこれまでのUSB端子とは一線を画する複雑な構成である。

VESAが公表したUSB Type-C端子のピンアサイン
これまでのUSB端子とは一線を画する複雑な構成である。

実はこれらの接点の内、表裏のデータ通信線はUSB 1.1/2.0互換での通信を行うための6・7番ピン(※注3)以外はそれぞれ区別があって、TX1+・TX1-、TX2+・TX2-といった具合に表裏で別のピンとして定義されています。

 ※注3:これらのピンはいずれの場合も一方のペアのみがUSB 1.1/2.0互換での通信に利用されます。

つまり、表裏の同番ピン同士が結線されていてどちらにつないでもかまわないのではなく、同等機能のピンが表裏で2組用意されていて、コントローラ側でクロスバースイッチを用いて上手く切り替えることで、表裏どちらの面を上にして接続してもそれぞれ独立して利用できるような仕組みになっている(つまりUSB3.0での全部で10ピンから24ピンに拡張されている)わけです。

このことから、理屈上はこのType-C端子を用いればUSB SuperSpeed+モードの信号線2組で最大20Gbpsでのデータ転送も可能(※注4)ということになります。

 ※注4:この速度での通信を実現するには、各デバイスにUSB SuperSpeed+モードでの通信を行うための回路を2組ずつ搭載する必要があります。

このあたりの表裏のピン割り当てやその扱い方などは、先行するLightning端子の影響が色濃い部分であると言えます。

ちなみに5番ピンがUSBパワーデリバリー機能のモード設定に割り当てられていますが、これは各デバイスに対する給電可能な電圧と電流量を決定するためのもので、これにより対応機器同士であれば最大で何と100Wもの電力を給電可能となっています。

また、2・3・10・11番ピンでUSB SuperSpeed/USB SuperSpeed+モードのデータ転送に対応するわけですが、これは柔軟な利用が可能な作りになっていて、5番ピンでAlternateモードに設定すれば、8番のセカンダリバスを加え、さらに表裏の2・3・10・11番ピンをそれぞれ束ねて利用することで、これらのピン経由でPCI Expressのデータ通信を行ったり、あるいはMHLの代わりにDisplay Portによるディスプレイ出力を行ったり、といった別用途での利用が可能(※注5)となっています。

 ※注5:先日発表された次期ThunderboltインターフェイスであるThunderbolt 3でのUSB Type-C端子の採用は、この機能を利用するものです。

これらの機能拡張により、例えば表面のTX1+・TX1-信号線でDisplay Port出力を行いながら裏面のTX2+・TX2-信号線でUSB SuperSpeed+モードでの10Gbpsデータ転送を行い、さらにディスプレイ出力を行っているこのデバイスに対して外部から給電を行うといった柔軟な使い分けができるようになっているのです。

従来のMHLでのディスプレイ出力の場合、ディスプレイ出力を行っている間は一切USBでの通信が外部デバイスとの間で行えず、またこのデバイスに対して給電を行うことはできませんでしたから、USB Type-C端子を用いればモバイルデバイスの使い勝手が大幅に向上することになります。

USB Type-Cソケット(左)とType-Aソケット(右)Type-Cソケットは上下左右対称の形状でコネクタがリバーシブルに差せるようになっている。

USB Type-Cソケット(左)とType-Aソケット(右)
Type-Cソケットは上下左右対称の形状でコネクタがリバーシブルに差せるようになっている。

もっとも、さすがにこれだけ複雑な機能を小さな端子に詰め込むのは大変なようで、コネクタ/ソケット共に生産コストが跳ね上がるらしく、現在市販されているパソコン用のUSB 3.1対応ホストアダプタを見ると、Type-Aソケット2基搭載のものとType-Cソケット1基とType-Aソケット1基を混載したものの価格差がおおむね三千円以上となっています。

つまり、この差額がType-Cソケット1基とType-Aソケット1基の価格差ということで、コネクタはともかくソケットについてはType-Cのものは現状では恐ろしく高価ということがわかります。

スマートフォンでの採用を考えると、特に日本向けの場合はキャップレス防水への対応も必要となるため、さらにコストがかかることが予想されます。

またモバイル機器の場合、USB SuperSpeedあるいはUSB SuperSpeed+モードでの通信が必要になるケースがそれほど多いとは考えられないため、通信速度の向上よりはむしろ先に記したAlternateモードでのDisplay Port出力機能への対応が目玉となるのではないでしょうか。

USBは一体どこを目指すのか

以上、3回に分けてUSBの発達とそれぞれの端子や規格の特徴を見てきました。

筆者は第1回で触れたWindows 95 OSR 2.1の入手とその動作に苦労した世代なので、ここまでの変遷を一通り見て自分でも色々体験してきたのですが、正直なところキーボードやマウスを接続するための低速なインターフェイスでしかなかったはずのUSBが、よもやここまで高速かつ多機能に進化するとは20年前には夢にも思いませんでした。

特にUSB Type-C端子でのリバーシブル化や上下でのコネクタ区別廃止、それに多機能化には驚くばかりです。

第1回の冒頭でも触れましたがこのUSB Type-C端子についてはIntelなどが策定しているThunderbolt 3インターフェイスへの応用が決定しており、ことモバイル機器向けについては、ディスプレイもキーボードもスピーカーもハードディスクもヘッドマウントディスプレイも皆、これ1つで接続できることになりそうな勢いです。

実際、Appleのノートパソコンでは大胆なことにこれ以外のインターフェイスを全て撤廃してしまった機種が現れており、他社でも今後そうした方向性へ向かうことが示唆されています。

それは真の意味で「Universal」なシリアルバスの誕生を意味すると言えるではないでしょうか。

▼参考リンク
USB.org – Welcome
DP Alt Mode on USB Type-C(PDF)

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