『スバラシティ』をプレイする桑木氏

「長く遊んでもらいたい」建築パズルゲーム『スバラシティ』 開発者TmagoLoopインタビュー

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by [2015年6月12日]

『スバラシティ』をプレイする桑木氏

『スバラシティ』をプレイする桑木氏

大ヒット中のパズルゲーム『スバラシティ』。シンプルな操作感のパズルは中毒性が高く、Twitterにはたくさんの「市長」による街がシェアされています。本日は開発者の「TamagoLoop」桑木氏をお招きして、『スバラシティ』について語っていただきました。

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コンソールゲーム開発を経てフリーランスへ

──まずは自己紹介をお願いいたします。
 桑木と申します。大学を卒業後某大手ゲーム会社に就職しました。そこは2年ほどで辞めてしまったのですが、その後も様々な会社でコンソール機(家庭用ゲーム機)のソフト開発に携わり、今から9年ほど前にフリーランスに転向しました。

──2006年くらいですね。フリーになってから長いんですね。
 辞めた当時は個人でゲーム業界に関わりたいなと思っていたんですけど、なかなか難しくて……ちょうどそのころiPhoneがリリースされて、「よし、これで自分1人でも作れる」と飛びつきました。

──初代のiPhoneも持っていらっしゃるんですか?
 いえ、もうちょっと後の機種で、日本でも発売されるようになった「iPhone 3GS」からです。

──サイトを拝見したところ、イラストもご自分で描かれているそうですが……?
 一応、イラスト素材はIllustratorを用いて自前で用意しています。「絵が描ける」というわけではなく、「ツールを使える」ということだと思っています。キャラクターイラストを描け、と言われると描けません。アプリ制作を始めてからIllustratorを使い始めたので、イラスト歴は5年くらいです。

──5年でこのクオリティとは恐れ入ります。個人開発のブランド名を「TamagoLoop」と名付けられた理由を教えていただけますか?
 実はあまり意味はないんです。アプリをリリースするときに、起動画面のロゴが(自分の)名前じゃなんですし、言いやすくて覚えやすいものを……と考えました。検索に引っ掛からないもの、という条件で最終的に「TamagoLoop」に落ち着きました。

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『スバラシティ』は息の長いアプリになってほしい

──どのようなきっかけで『スバラシティ』というゲームが生まれたのですか?
 元々パズルが好きで、以前からちょくちょく作っていました。『スバラシティ』に関しては、『Threes!』をいうパズルゲームが好きで、ああいうものを作りたいと思って、ルールなどを最初からごちゃごちゃ考えつつ作っていった……という感じですね。
 『ぷよぷよ』や『テトリス』のような「落ち物」系とは違うパズルゲームが出てきたことに衝撃を受けました。『Threes!』はスマートフォンに特化していて、時間の制約がないということは重要だと思います。そういった部分に憧れて『スバラシティ』を作りました。

──急かされないというのは良いですね。
 『ネコアップ』シリーズは熱中して遊べるんですけど、受けが悪いということを感じていました。昔の家庭用ゲーム機みたいにただ熱中させることが結果に繋がるわけではないと反省しました。途中でゲームを辞めてもすぐに再開できる、という点も『Threes!』を参考にしています。遊びやすいんですよね。慌てて汗をかきながらプレイしなくても大丈夫だっていうところに惹かれて、参考にしました。ゲーマーの人は時間制限がキツくてもプレイできるし、ついてきてくれるのですが、あまりゲームをされない一般の方には、急かされすぎるゲームは敬遠されてしまいます。

──Twitterのシェア画像の力が大きかったと思うのですが、いかがでしょうか?
 今回はすごく大きいと感じましたね。でも狙ってたわけではないんです。「やって損はないよ」という感じで入れただけなので、結果的にとてもよかったと思います。
 すごく大勢の方に遊んでいただけて、しかも皆さんすごく頑張ってらして(笑)「あ、そのビル、ネタバレされちゃったのか!」と思ったり(笑)僕としては「もう少しだけ見せないでいてほしかったなぁ」とは思ったのですが、でも楽しんで下さっているようでなによりです。

──自分で大きいビルが建てられない人は、他の人のプレイに憧れるので、そんなにネタバレを気にされなくてもいいと思いますよ。
 結構気合いを入れて作り込んだので、息の長いアプリになってほしいと願っています(笑)

──その気持ちはわかるのですが、私はまだ最高がLV20のビルで、普通にプレイしてるとお城や凱旋門ばかりで……
良い感じに普通ですね! 僕が想定したターゲットど真ん中、という感じです(笑)

──コツを教えてください!
 大きい建物を1つ建てると全然違うので、頑張ってください。難しいとは思いますが、はじめから計画的に、一番下にLV10のビルを5つ並べるというのを心がけるとよいでしょう。
 特別にこれといった攻略法はないんです。ただ、30年目(30タップ目)までは土地の色が3色なんです。灰色が加わるまでの30年間に、できるだけ効率よくササッとLV10のビルを作るのがコツです。5つ並べるのは難しいですが、できるだけたくさん並べられるように……。

──Twitterのフォロワーさんにこういう方がいるのですが…

 ここまで揃えるためには「市長マーク」を貯める必要がありますね。途中で凄いビル(LVの高いビル)を適当に作って壊す。そういう循環をさせないと貯まらないと思います。金色のビルでもどんどん消していきます。ただビルを消すと、それで一手使ってしまいます。市長マークが2個以上貰えるのはLV22のビル以降ですね。

「行ける」とふんで、クオリティアップに時間をかけました

──100年に1度「市長マーク」が貰えるのも助かります。だいたいゲームオーバーしてしまうのですが(笑)気づいたら何時間もプレイしてるんですよね……
 中毒性はあると自負しています。

──音楽も素敵ですよね。
 そうですか? もちろん自分ではいいと思ってつけてるんですけど、なかなか……。「怖い」とか「雰囲気があってない」と言われてしまうことが多いんです。
 はじめのうちはプレイヤーが市長で都市を作っていくんですけど、「レベルの高いビル」を考えてたら「バベルの塔」とかになってしまって、それはもう市長じゃないなって(笑)「バベルの塔」が出てきたころに合う曲と思ってつけたので、合わないと感じられたプレイヤーが多かったのかもしれません。曲は有料のものを購入しました。結構時間をかけて選びました。

──『ネコアップDX』の楽曲も素敵でしたね。声優の田村ゆかりさんがコンサートで言及された聞きました。拡散力の強い方なので、ダウンロード数が伸びて驚かれたのではないでしょうか。
 田村ゆかりさん、初代『ネコアップ』もプレイして呟いて下さってたみたいなんです。とても良かったです。『ネコアップDX』は評判が悪かったので……音楽も褒めてくださって、嬉しかったです。ネコアップの音楽は外部に依頼して作っていただいたものです。

──ちょっと『塊魂』っぽいな、と思いました。
 そうかもしれませんね(笑)

──イラストもご自身で描かれたとのことですが、とても「ツールが使えるだけ」とは思えません!
ss022 今回は開発中に「行ける」と手ごたえを感じたので、クオリティアップにかなりの時間をかけました。
 開発を始めたのが2015年の1月半ばごろで、制作期間は3ヶ月ちょっとなのですが、ゲームそのものの開発は2週間弱で終わって、残りの2ヶ月半はすべてイラストに充てました。
 はじめは今まで通りにかいてたんです。でも、レベルが上がると凄いビルを描かなきゃいけなくなった。マス目の範囲は決まっているので、なかなか「これだ」というものが描けなくて……。最終的に、かなり細かくディテールを描くしかないなということになりました。ドットに合わせて線がずれないようにパスを引いていきました。
 モデルは、ある物とない物が混ざっています。モスクワのクレムリン宮殿ですとか、ドイツのノイシュヴァンシュタイン城ですとか……あと日本のお城は大阪城を意識しています。でもどの建物もいろんな資料を見て簡略化しています。あまりに写真通りだと、肖像権の問題が出ますので、あくまで参考にとどめています。スカイツリーは出したら怒られるかな、東京タワーはOKかな、みたいなことも考えつつ(笑)

──事務所はスカイツリーのすぐ近くですよね。毎日見ているうちにビルを建てるパズル、というものを思いついたのかな、と思っていたのですが……
 全然関係ないです(笑)スカイツリーはもう見飽きてます!

──なんという贅沢(笑)お話を戻して、開発環境を教えていただけますか?
 iMac、ディスプレイは27インチです。開発はXcodeにアップル純性のスプライトキットを使ってます。イラスト用にIllustrator。ペンタブではなくマウスでカチカチとパスをひいています。

──ゲームが軽くて、動きを見ていると爽快感にあふれています。処理上で気を付けている点などありますか?
 昔から家庭用ゲーム機の開発に携わっている人は、なめらかに、気持ち良く動かすことにこだわる人が多いと思うんですよ(笑)
 特に変なサービスも入れてませんし。ゲーム以外の要素で入れているのは広告くらいですね。できたら広告も本当は入れたくないんですよね。

Android版も検討中!? 10日間で14万DL達成

──動画広告はみなさん見てらっしゃいますか?
ss017 今回「試し」で入れてみたのですが、広告の収益の比率としては動画1割、バナー9割といった感じです。ゲームとしても完全に「おまけ」の部分にいれたので、気づいてくれた方は皆さん見てくれてるのか……。

──課金要素も全くありませんし、結構な時間遊ばせてくれるので、出来る限り還元したいと思って1日1個ずつ動画広告を見ています。やっぱり開発者にきちんとお金が入るのが一番いいと思います。
 ね(笑)それがいいですね(笑)
 本当はゲーム中に……例えば100年経過するたびにインターステシャル広告を出すと儲かるんだろうな、と思ったんですけどやめました。

──その心は?
 文句言われると思ったから。遊びやすさを重視しています。
 なにより、自分でプレイしていて(インターステシャル広告が出ると)かなり嫌だったんです。集中しているときにズバッと出てくるのが邪魔で邪魔で。
 もちろん(広告収入が欲しいという現実と)せめぎ合ってるんですけどね。今回はインターステシャル広告は入れられませんでした。あまりにも気持ちがシャットダウンされてしまう。プレイに集中してるのに萎えちゃう。

──広告を入れたくないとのことですが、有料にするなど、他のマネタイズ方法は検討されましたか?
 いえ、『ネコアップ』シリーズを有料で頑張ってた時期があるんですけど、そのときの経験上「有料は無理だ」というのはわかっているので……。ただ、アプリ内課金で広告解除を入れてほしいという要望はあります。数としては少ないので、そのために労力を割けるか、検討中です。

──2015年6月10日現在の総DL数を教えていただけますか?
 リリースから10日で、約14万DLです。

──凄いですね! でももう少し伸びているイメージはありました。Android版のご予定は?
 今のところは……作ってくれそうな方にコンタクトはとっているのですが、自分では作れないんです。

──Androidに対応したらDL数が激増すると思います。編集部のAndroidユーザーも、自宅のiPadでプレイして、「電車の中でもプレイしたい」と言ってますよ。Twitterのシェア画像を見た方も「Android版はまだー?」っておっしゃってますし。
 そうですよね。今から作って夏休み前には出したいです(笑)頑張ります(笑)

──是非! お待ちしています! ちなみに10日で約14万DLというペースで、利益の方は……?
 久しぶりにちょっと潤っています(笑)ここ2~3年こけたアプリが多くて……『ネコアップDX』もイマイチだったんですよね。『ネコアップDX』が3万DL弱、その前の『モフーを増やそう』は1万DL到達していないくらいです。

──今回の伸びは予測されていたのですか?
 App Storeの新着オススメアプリに載せていただいて、一安心しました。それがなければもう少し苦しい状況だったと思います。
 最終的には『スバラシティ』で2~3年食えたらいいなと思ってるんですけど、プレイヤーの方からの評価や反応は現時点で大満足です。ハマる、中毒性があるゲームだと皆さんが認識してくださって、とても嬉しいです。
 外国の方のレビューも拝見したのですが、「dope game」って書いてあるんです。「dope」には「麻薬」という意味があって、中毒性が高いゲーム、という意味だと思います。

──最近、iOSアプリはリジェクトされることが多いようですが、何かありましたか?
 「動画広告のボタンが見つからない」と言われた程度で、場所を答えたらさほど待たされることはありませんでした。
 最初のタイトルが「SubaraCity」(英語表記)になっていたのは完全にミスなんです(笑)Appleに申請するとき、日本語の説明をいれたのにタイトルを入れ忘れてしまって(笑)
 今後しばらくは軽微なバグを直していく、くらいしかアップデートはないと思います。あ、でも、キャラクターは増やしたいです!

「○○シティ」は口に出しやすいようにダジャレでまとめた

──ゲームセンターと連携していますが、上位がMAX値を叩きだしていますね。
 あれはチートです。
 大阪城をたくさん作りましょうというカテゴリでもMAX値を出していたので……どうしたものかと思っているのですが、こちらからはどうしようもありませんからねぇ。今は静観しています。
 とりあえずあまりネタバレは広めないでほしいなぁ、と。本当に長く遊んでいただきたいので。

──でも、チートを使わずに頑張ってる方の画像を見て、すごく憧れましたよ。そういえばアイコンが建物ではなく「市長マーク」なのはどうしてですか? ゲームの内容を連想しづらいと思うのですが……
 市長マークの方がいいと思ったんですけど、アイコンが良くない、とちらほら言われます。市長のイラストはモノポリーから着想を得ました。ビルだけのアイコンだとそっけなくて、なんだか親しみが感じられなかったんですよね。
 みなさん、タイトルから『シムシティ』のようなゲームをイメージしてらしたみたいなのですが、すごく単純なパズルだとわかれば、ライトユーザーさんもプレイしてくれると思っています。ただ緻密な街を作れるのが、気持ちいいというゲームでもあるので、コアなユーザーさんを追うのか、ライトユーザーさんを取り入れるか、どっちを取るか……という話ですね。

──桑木さんは最高でLVいくつのビルを建てられましたか?
 LV28、バベルの塔ですね。

──ゲーム終了時の「○○シティ」という評価名はどのように考えたのですか?
 単純に、ゲームで遊んでくれたユーザーさんたちが会話しやすいようにしたかったんです。評価は☆3つとかでもいいんですけど、呼びやすい名前があったほうが会話が弾むと思って、意図的にダジャレを考えました。先に評価名を考えてから、最後に『スバラシティ』というタイトルに決めました。
 タイトル決めはなかなか難航しました。パズルや、街をつくるゲームはもうたくさんあるので、なかなかインパクトのある名前がつけられなかったんですね。「パズルシティ」とかでは印象に残らないので。最終的に『スバラシティ』で良かったと思うんですが、外国の方には通じないでしょうね(苦笑)日本国内で通じてくれたらいいか、と考えています。

──『スバラシティ』ありきかと思ったら逆でした。最初にできた街が「ウイウイシティ」(初々しい+シティ)というのも、初心者らしくてセンスがいいなぁと感じました。
 その辺りは我ながらうまくいったと思っています。ちなみに「ウイウイシティ」→「タノシティ」→「ウツクシティ」→「リリシティ」と続いていきます。

──お好きなゲームはありますか?
 発売日が同じだった『スプラトゥーン』が気になっています。昔の知人が作っているので、対抗心もありますし、遊んでみたいです。
 あとアプリですと、PUMOさんの『みどりのほし』がいいなと思って、ああいう不思議な雰囲気のゲームはこれまでなかったんですよね。枠にはまっていない。作り手として、自分なりに分析したいです。

──ちょっと曲の雰囲気や空気感が近しいですよね。人工物とか、育っていく感じとか。あと、どちらのアプリもSEがとても気持ちいいです
 ありがとうございます。SEは自分で作ってるんです。

中毒性のロジックにこだわりました

──「中毒性」にこだわられたとのことですが、それはどういったことなのか是非お聞かせください。
 今回は「中毒性の強いゲーム」がうまく調合出来たと思っています。個人的にはそこが自慢です。
 ゲームを作る上で、中毒性を出すというのを自分の中でテーマにしています。それをどうやったら出せるのかいつも考えているんです。すごくマニアックなお話になってしまうのですが……。
 中毒性を出すために、「ロジック」を大切にしています。「ロジック」というのはゲームの細かいルールの話なんです。「ここをこうすればこういう結果が出ます」というようなことです。

ss026 例えば、左図のような状態だと、下のブロックを先に寄せてしまうと、上のブロックが分断されてしまいますよね。このようにユーザーさんがミスをしたときに「あー、あそこをミスったんだ」とわかるように設計しています。「あのときああしていれば、コンボが繋がったんだ」とわかっていれば、つまり、ミスの原因(ロジック)がわかっていれば、もう一度挑戦しよう! と思っていただけますので。
 たぶんゲームの中にはたくさんのロジックがあるのですが、1つ1つを、ユーザーさんにわかりやすくするよう心がけています。よくわかんないロジックは消していく。逆に必要なロジックはそれぞれ目立つようにして作っています。
 そういうわけで、『スバラシティ』は運も絡みますが、ある程度はユーザーの操作でコントロールできるんです。

──長時間プレイしていると、ふと集中が切れた瞬間にミスしちゃうんですよね。
 ありますね。とりあえず上からまとめて、下の方に手を付けるっていうの定石なんですけど、たまに上の方がまだ残っているのに、下を弄ってしまう、という。

──すばらしいゲームバランスだな、と。人の集中力が切れるタイミングをよくわかってらっしゃる。
 『スバラシティ』は自分でもびっくりするくらい長時間プレイ出来るゲームになりました。僕、こんなに集中力あるんだ、って。ゲームしてて思いました(笑)
 開発中は作ってはテストして作ってはテストして、という感じで、ちょっと休憩を取ろうというときに、普通に自分でプレイしていることがあって(笑)1日中やってましたね。だから自分で自分に禁止令をだしました。製作中以外はやっちゃだめって(笑)
 ネコアプリをたくさん作っていますが、ネコを飼っているわけではないので、餌をねだられることもないんですよね。そうすると中断させられる要素がないので、疲れきるまでプレイしてしまう。廃人になってしまいます。

──次回作は?
 もちろん作っていきますけど、しばらくは休みたいです(笑)

──本日はありがとうございました!

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