USBのmicro-Aコネクタ(右)とminiーBコネクタ(左)micro-Aの方が若干幅が広いが、厚さは格段に薄くなっている。なお、どちらも5ピン接続で電気的な機能は同等である。

すべてがUSBになる【その2】USB 2.0

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by [2015年6月17日]

前回はUSBの誕生からUSB 1.1までを見てきました。今回はUSB 2.0について見てゆきたいと思います。

USB2.0

露呈したUSB 1.0/1.1の転送速度不足

初代iMacの発売後、この機種が事実上USB端子以外の外部インターフェイスを搭載していなかった(※注1)ことから、またPC/AT互換機でもWindows 98でUSBが標準サポートされ、対応OSが普通に入手できるようになったことから、iMacの爆発的なヒットと歩調を合わせるようにして、1999年にはUSB対応機器が怒濤の勢いで普及を始めました。

 ※注1:ハードウェア的にはADBインターフェイスや拡張スロットが存在していたのですが、公式には非サポートでした。

普及が進むということはつまり用途も増えるということで、当初は想定されなかったような高速デバイス、つまりハードディスクや高速書き込み対応のCD-RドライブをUSBに接続して利用したい、という声が出るようになってきました。

ところが前回の記事でも触れたとおり、USB 1.0/1.1の転送速度は高速なFull Speedモードでも最大1.5MB/sでしかなく、しかもその枠内で各デバイスの制御を行うためのコントロール転送やキーボードやマウスなど常時通信を必要とするデバイスのためのインタラプト転送に転送帯域が常時占有され、さらに残りの帯域も1デバイスによる独占が保証できない仕組みとなっています。

この当時のハードディスクはSCSI対応で回転数が15,000rpmに達する一部の先鋭的なモデルでもドライブ単体で最大40MB/s程度(※注2)、低速なATA対応のモデルでも最大20MB/s程度は出ていましたし、CD-Rドライブでもこの時期一般的であった8倍速ではおおむね1.2MB/s程度、この時点で登場が始まっていたDVD-Rドライブでは等倍速でおよそ1.35MB/sの転送速度が常時必要でした。

 ※注2:世界初の量産15,000rpm級ハードディスクドライブとなったSeagate ST318451LW Cheetah X15(2000年)でのUltra 160 SCSIインターフェイスカード(最大転送速度160MB/s)であるASC-39160との接続による当時の実測値。

つまり、これらの内でも低速なCD-RですらUSB 1.1接続で8倍速読み書きを行うのは「危ない」(※注3)ということで、ハードディスクドライブを接続しても恐ろしく低速でしか読み書きができないわけです。

 ※注3:実際にもCD-Rで連続的な書き込みが途切れた場合に書き継ぎを可能にする「BurnProof」と呼ばれるバッファアンダーラン対策技術を三洋電機が開発・製品化するまでは、バルク転送によるUSB接続でのCD-RやDVD-Rの書き込みは書き込み中断による焼き損じが頻発して、とても実用になりませんでした。こうした光学書き込みドライブの外付けUSB接続化が一般化するのは、CD-RドライブやDVD-Rドライブなどでバッファアンダーラン対策技術の搭載が一般化し、パソコンへのUSB 2.0 High Speedモード対応ホストコントローラの搭載が一般化した2002年頃以降の話となります。

そのため、こうしたストレージ系のデバイスを実用的に利用するには、将来的な発達余裕を見込むと最大転送帯域を当時ハードディスクの外付けに多用されていたIEEE-1394aインターフェイスの50MB/sを超えるレベルで確保しないと厳しいことになります。

理論値は理論値

幸いなことに、当時のパソコンでCPUを取り巻くチップセットとUSBホストコントローラの内部接続に利用されていたPCIバスの転送帯域は一般的な32ビット33MHzのものでも最大133MB/sに達したためまだ余裕があり、2000年に規格化されたUSB 2.0では接続されるケーブルの最大長が5mに制限される一方で、USB HighSpeedモードとして最大60MB/s(480Mbps)という従来比何と40倍の高速転送モードが追加されました。

もっとも、実際の所この60MB/sという「最大」転送速度は規格上電気的にここまでは可能だ、という理論上限値でしかなく、実際に接続する場合にはケーブルの外乱ノイズや各コントローラの性能その他の要因からどんなに頑張ってもストレージのデータ転送(バルク転送モード)では33MB/s程度が精一杯(※注4)です。

 ※注4:しかも、それすら接続されるケーブルの最大長を3m以下に制限するなどの対策を講じなければおぼつかないという有様でした。

筆者の体験でもUSB HighSpeedモード対応製品が発売された初期には転送速度は最大で10MB/sも出れば良い方で、「思ったほど速度が出ない」という苦情が結構出たものでした。

後で考えれば、このUSB HighSpeedモードでもバルク転送やアイソクロナス転送に割り当てられる転送帯域が制限されていて、バルク転送での上限値が理論上52MB/s、これにエラー訂正のための再送やコントローラのスルーレートなどを勘案すると、特に各メーカーの設計製造技術が未熟だった初期には、むしろ10MB/sも出たことを喜ばねばならないような状況であったと言えます。

もっとも、転送速度が10MB/s~33MB/sも出ればそれはそれで十分実用になるわけで、2002年頃以降、USB HighSpeedモード接続に対応する製品の普及が本格的に始まりました。

USB On-the-Goとmini USBコネクタ

さて、ここまではデスクトップパソコンを中心として普及してきたUSBですが、2001年頃から、モバイル機器やデジタルカメラなどでの利用を想定した、デバイス同士での接続・通信のための規格の策定が行われる様になりました。

USB mini-Bソケット内側にある接点がType-A・Bと比較して1つ増えて5つとなっている。増えたピンでホスト-デバイス切り替えの制御を行う。

USB mini-Bソケット
内側にある接点がType-A・Bと比較して1つ増えて5つとなっている。増えたピンでホスト-デバイス切り替えの制御を行う。

その中でも特に注目されるのが2001年に発表されたUSB On-the-Goと呼ばれる規格です。

これは2つの(通常はUSBホストコントローラとして機能しない)デバイスの間で接続を行い、パソコンなどのホストコントローラ搭載機器の接続なしにデバイス間で相互にデータのやりとりを可能とするものです。

既に触れてきたように、USBケーブルでは上下の関係が明確になっていて、2つのデバイスが対等にデータをやりとりするような使い方は想定されていません。

そのため、このUSB On-the-Goではそれぞれのデバイスにホストコントローラとしての機能を付与し、必要に応じて一方がホストコントローラとなることでUSBの規格の基本的なルールから大きく外れることなく問題を解決しています。

もっとも、この技術においては1つ重大な問題があります。

それは、これまで用いられてきたUSB Type-A・Bコネクタでは電源線2本(V busおよびGND)とデータ信号線2本(-Data(D-)および+Data(D+))の4線しかなく、2つのデバイスのどちらがホストコントローラになっているのかを設定あるいは判定する手段がないことです。

そのため、このUSB On-the-Goではこのコントローラのステータスを設定するための信号線(ID)が1本追加された新しいコネクタが規格化され、モバイル機器やデジタルカメラなどでの利用も考慮して従来より小型化されたmini-A・Bコネクタが制定され、5ピン構成となりました。

USBホストケーブルUSB On-the-Goの機能を利用したもので、micro USBコネクタのIDピンがGNDピンに結線され、これにより本来デバイス側の機器がホストコントローラとして機能することを許可する。

USBホストケーブル
USB On-the-Goの機能を利用したもので、micro USBコネクタのIDピンがGNDピンに結線され、これにより本来デバイス側の機器がホストコントローラとして機能することを許可する。

つまり、このUSB On-the-Goの下でmini-A・Bコネクタおよびこれら両方のコネクタが接続できる、つまりコネクタの上下の向きに依存しないminiーABソケットが規格化された段階で、ホストコントローラとデバイスコントローラの関係をケーブルのコネクタ形状が決定するというこれまでのUSBの仕組みは(部分的にとはいえ)崩れたことになります。

また、USB On-the-Goの機能を利用するにはデバイス間でこのID信号線が結線されている必要があるということで、片方がmini-AあるいはminiーBでもう一方が4ピンしかないType-BあるいはType-Aコネクタのケーブルなどで接続する場合にはこの機能は完全には利用できないことになります。

このmini USB端子は一頃のデジカメや携帯電話などに幅広く利用されました。

micro USB端子の出現

一時は広く普及したmini USB端子でしたが、実はこの端子には1つ致命的な弱点がありました。

それは、コネクタやソケットの耐久性が非常に低く、最悪の場合1,000回程度抜き差ししただけで壊れてしまう危険性があることです。

これはmini USB端子の主な搭載デバイスの1つであったデジタルカメラ、中でもデジタル一眼レフカメラのヘビーユーザーであるプロカメラマンから厳しく批判されました。それは極限に近い環境で高価なカメラを酷使するプロカメラマンからすればとうてい許せることではなかったのです。

この問題については、耐久性を向上したminiーBソケットが開発され、特に問題の多かったデジタル一眼レフカメラを中心に搭載されましたが、それでも焼け石に水といったレベルでしか耐久性が向上しませんでした。

また、従来のType-A・Bコネクタよりも薄く小さくなったmini USBコネクタですが、それでもなおスマートフォンで利用するには分厚すぎました。

USBのmicro-Bコネクタ(右)とminiーBコネクタ(左)micro-Bの方が若干幅が広いが、厚さは格段に薄くなっている。なお、どちらも5ピン接続で電気的な機能は同等である。

USBのmicro-Bコネクタ(右)とminiーBコネクタ(左)
micro-Aの方が若干幅が広いが、厚さは格段に薄くなっている。なお、どちらも5ピン接続で電気的な機能は同等である。

こうした事情から、mini USB端子より高耐久性でしかもより薄い端子の規格化が求められ、これは2007年にmicro USB端子として規格化されました。

このmicro USBコネクタでは当然にID信号線を含む5ピン構成になっていて、USB On-the-Goに対応します。また問題の耐久性は1万回の抜き差しに耐えるレベルにまで向上しており、当初のmini USB端子の10倍の耐久性が確保されています。

こうした事情からmicro USB端子はスマートフォンへの搭載を皮切りにmini USB端子を駆逐する勢いで普及しました。

次回はUSB 3.0について見てゆきます。

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