「FM音源伝説」ガチャガチャよく見ると「MI 64 PRO-68K SPECIAL VERSION」と書かれており、芸が細かい。

残されたものたちの生存戦略~マイコン・インフィニット☆黄金週間PRO-68Kの展示から~FM音源編

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by [2015年5月29日]

前回は「マイコン・インフィニット☆黄金週間PRO-68K」の展示から、メモリ関連についてお届けしました。今回はFM音源の展示についてご紹介していきます。

FM音源の復活

NEC PC-9801-86国産独自規格パソコン用FM音源ボードの例。後期の機種であり、FM音源だけでなく音楽CD相当のサンプリングレートに対応するPCM音源も搭載する。右奥の横長で大きなチップがFM音源のヤマハYM2608B(OPNA)である。

(参考)NEC PC-9801-86
国産独自規格パソコン用FM音源ボードの例。後期の機種(1993年発売)であり、FM音源だけでなく音楽CD相当のサンプリングレートに対応するPCM音源も搭載する。右奥の横長で大きなチップがFM音源のヤマハYM2608B(OPNA)である。

1980年代から1990年代にかけての日本の国産ホビーパソコンでは、ほぼ例外なくFM音源チップが搭載されているか、さもなくばオプションとしてFM音源チップを搭載した拡張ボード類が提供されていました。

音楽CDと同等のPCM音源を実現するには、それ相応のメディア容量とメインメモリ容量、それにプロセッサ性能が必要で、この時代のホビーパソコンではADPCMと呼ばれる前後の波形信号との差分の形式で保存することでデータサイズを圧縮する技術を利用するのが精一杯(※注2)という状況でした。そのため楽曲演奏時にCPUに負荷をかけず必要メモリ量も最小限で済むFM音源がBGM再生手段として多用されたのは、ある意味当然の結果であったと言えます。

 ※注2:国産ホビーパソコンで音楽CD並のスペックのPCM音源を利用できる様になったのは、CD-ROMドライブとインテル80386以上の高速CPUを標準搭載する富士通FM TOWNSが登場した1989年以降の話です。

こうした事情から、この時代のゲームミュージックの多くはそれぞれの機種に搭載されたFM音源チップに最適化されて作成されており、そうした楽曲を今正しく再生しようと思うと、当時使われていたFM音源チップを入手し、それを現在のコンピュータ機器に接続・制御できる様にする手段を用意するのが望ましいということになります。

「RE:birth」フル拡張状態「RE:birth」の本体となるマザーボードは最下段の基板で、そこからデイジーチェイン接続されたエクステンションボードと称するスロット拡張ボードを介して音源モジュールを搭載する。

「RE:birth」フル拡張状態
「RE:birth」の本体となるマザーボードは最下段の基板で、そこからデイジーチェイン接続されたエクステンションボードと称するスロット拡張ボードを介して各種音源モジュールを搭載する。

つまるところFM音源チップというのはなりは小さいですが固有の楽器であり、YM2203C(OPN)に対するYM2608B(OPNA)のように在来機種に対する完全上位互換として設計された一部のチップを除くと、他のチップがある特定の型番のチップを肩代わりすることはできない性質のものなのです。

こうした様々なFM音源チップの音色を楽しみたい、というニーズに応えるのが、今回「Project RE:birth」さんの出展していた「RE:birth」という汎用音源IC制御用キットです。

このキットは国産ホビーパソコンおよび家庭用ゲーム機に搭載されていた主立ったFM音源チップやそれ以前に利用されていたPSG・SSG音源チップなどを搭載する音源モジュールを接続・USB変換することで現在のWindowsパソコンなどからそれらの音源モジュールを制御・演奏するためのハードウェアです。

こう言ってしまうと簡単なのですが、それぞれ形状やピンアサインなどがばらばらの音源チップを規格化されたモジュール上に搭載できる様にし、さらにそれを標準的にWindowsパソコンから「演奏」できるようにするとなると、並大抵の手間ではありません。

「RE:birth」のYM2608B搭載音源モジュールと、これをPC-8801FE2の「サウンドボードII」用コネクタに接続するための変換ケーブルこの組み合わせにより、専用「サウンドボードII」が入手難のPC-8801FE2でも対応ゲームでステレオFMサウンドが楽しめる。

「RE:birth」のYM2608B搭載音源モジュールと、これをPC-8801FE2の「サウンドボードII」用コネクタに接続するための変換ケーブル
この組み合わせにより、専用「サウンドボードII」が入手難のPC-8801FE2でも対応ゲームでステレオFMサウンドが楽しめる。

ちなみに今回はこの内YM2608B搭載のOPNAモジュールに専用変換ケーブルをつないでPC-8801FE2という機種に純正の「サウンドボードII」代替品として接続し演奏させるというデモが行われていて、このモジュールの汎用性の高さがアッピールされていました。

こう書いても「ふ~ん、それで?」という方も多いと思います。実はこのPC-8801FE2、シリーズ最終期の廉価モデルなのですがCPUやメモリ周りが高速で、ことによると中期の上位モデルよりも快適だったりします。もっとも廉価モデルの悲しさか、実機の現存台数がそれなりに多い割にこの機種専用の「サウンドボードII」の現存数が非常に少ない=誰も高価な「サウンドボードII」を買っていなかった、という状況になってしまっています。

つまり、このOPNAモジュール+専用変換ケーブルは「サウンドボードII」が手に入らず困っているPC-8801FE2ユーザーの救いの手となる可能性があるということなのです。

8ビットホビーパソコンだとX1シリーズでもPC-8800シリーズでも、FM音源ボードは総じて入手難気味ですから、このモジュール+変換ケーブルという形態での代替は今後流行するかも知れません。

「FM音源伝説」ガチャガチャよく見ると「MI 64 PRO-68K SPECIAL VERSION」と書かれており、芸が細かい。

「FM音源伝説」ガチャガチャ
よく見ると「MI 64 PRO-68K SPECIAL VERSION」と書かれており、芸が細かい。

なお、この種の音源モジュールで困るのは、肝心の音源チップそのものの入手が難しいことですが、今回はいわゆる「ガチャガチャ」で1回500円にて音源チップのブラインド販売が行われていました。

実はこのガチャガチャ、秋葉原の「東京ラジオデパート」1階にある「家電のケンちゃん 秋葉原 東京ラジオデパート店」に常設されているもので、種類を問わなければ、またジャンク扱いということを承知できるのであれば、非常に低コストで往年の音源チップが手に入ります。

「家電のケンちゃん」の通販ページで販売されている「RE:birth」の音源モジュールでは中古品(ものによっては新品)の音源チップやその動作に必要となるDAコンバータチップがセット販売可能となっているので、そちらを選んだ方が最終的には安くつく様な気もしますが、こうした遊び心に満ちた販売方法に頼ってみるのも悪くないでしょう。

昔のパソコンを生かす道の厳しさ

「UGO-UGO Amiga」さんのコモドールAmiga 500の動態展示よく見ると液晶右下に電波新聞社製XRGB-3が置かれている。ちなみにディスプレイ右のパッケージのゲーム(「DRAGON'S LAIR」)が動作していたのだが、一部のフロッピーディスクが読めなくなっていて遊べないとのことであった。

「UGO-UGO Amiga」さんのコモドールAmiga 500の動態展示
よく見ると液晶右下に電波新聞社製XRGB-3が置かれている。ちなみにディスプレイ右のパッケージのゲーム(「DRAGON’S LAIR」)が動作していたのだが、一部のフロッピーディスクが読めなくなっていて遊べないとのことであった。

今回のイベント会場を見ていて筆者が痛感したのは、製造から20年以上を経過したパソコンを可動状態で維持することの困難さでした。

半導体素子であるメモリであれば、メモリ編でご紹介した「えくしみえむ」さんの増設メモリのように代替品を工夫して用意することも不可能ではないのですが、接触型の磁気メディアであるフロッピーディスクとそのドライブの扱いにはどこも苦労しておられるようで、ある出展者さんは今後フロッピーディスクの内容を全て吸い出してSDカードなどに保存し、あたかもフロッピーディスクドライブが接続されているように振る舞うタイプのエミュレーション機器に頼らざるを得なくなるのではないか、その際プロテクト解除を禁止する現在の著作権法がこうした古いパソコンのソフトウェア資産継承にあたって深刻な障害になるのではないか、との見方を示しておられました。

実は筆者も個人的に幾つかの古いパソコンを所有しているのですが、フロッピーディスクの読み取りエラーと各種ドライブの故障は結構深刻でありまして、ディスク内容はとれる範囲でバックアップをとり、ドライブについては故障が発覚する度に過去に買いためておいた条件の合う交換用ドライブに順次入れ替えることで対処しているような状況であったりします。こうした対処も交換用ドライブの在庫が尽きればおしまいですから、最終的には好むと好まざるとに関わらず、先に触れたエミュレーション機器やインターフェイスの変換アダプタなどを用いて現在の汎用品に置き換える他ないでしょう。

「ホビーパソコン友の会」さんのシャープX1 turbo IIIの展示この機種では純正ディスプレイテレビでないと利用できない連動機能(スーパーインポーズ機能など)があり、本格的に「動態保存」を目指すとなるとこの純正ディスプレイテレビも可動状態を維持する必要がある。

「ホビーパソコン友の会」さんのシャープX1 turbo IIIの展示
この機種では純正ディスプレイテレビでないと利用できない連動機能(スーパーインポーズ機能など)があり、「動態保存」を目指すとなるとこの純正ディスプレイテレビも可動状態を維持する必要がある。

また、かつての国産独自規格ホビーパソコンの中には、「パソコンテレビ」を標榜したシャープX1シリーズやX680x0シリーズのように専用ディスプレイテレビとの間で専用コントロールケーブルを接続し、チャンネル切り替えやスーパーインポーズなどのAV機能をサポートしていた機種がありましたが、そうした機種ではできれば純正の専用ディスプレイテレビと組み合わせて使用したいところです。

しかし、今のパソコンとは異なり水平同期周波数で15KHz台から24KHz台前後の低い周波数帯を利用するこうした専用ディスプレイ/ディスプレイテレビの経年劣化問題も深刻で、今回の出展者さんの多くは電波新聞社製の「FRAMEMEISTER」や「XRGBー3」のようなアップスキャンコンバータを利用して一般的な液晶ディスプレイに接続したり、次善の策として24KHz以上に対応するナナオ製の液晶ディスプレイを使用したりして15KHzを使用しないようにしたりしていました。

またある出展者さんではちょっと変わった古めの三菱製液晶ディスプレイを使用していて、おたずねしたところ「隠し機能で15KHz信号の入力に対応していたので複数台を購入し確保している」とのことでした。

このあたりもアナログRGB入出力そのものがHDMIやDisplayPortなどのデジタルインターフェイスに置き換えられてディスプレイの接続端子から駆逐されつつある現状を考えると、今後は何か別の手立てが必要になるかも知れません。

こうして各部の置き換えを繰り返してゆくと、やがて元のままの部分が無くなって哲学で言う「テセウスの船」状態になりそうな気がしなくもないのですが、動態保存ではこの問題は避けて通れない(※注3)ため、痛し痒しといったところです。

 ※注3:動態保存では先達の蒸気機関車の保存運転においては、JR九州の8620形58654号のように走行可能状態を維持するために老朽化し破損した台枠やボイラーなどを順次オリジナルに忠実な設計の新造品(これら自体、メーカーなどの倉庫を探索してようやく当時の原図面を探し出しているのですが)に交換していった結果、中枢部に元のままの部分がほとんどなくなってしまい、動態を維持するためにはやむを得ないとはいえ一体どこが「保存」なんだとファンから突っ込まれる車両があったりします。

ともあれ、今回のイベントは現役レトロPCユーザーである筆者にとっては今後を考える上で大変に有益なサジェスチョンを得られるものでした。

次回は11月により大きな会場に移して開催とのことですが、期待して続報を待ちたいと思います。

▼参考リンク
マイコン・インフィニット☆PRO-68K
えくしみえむ(@Xymiem)さん | Twitter
FM音源伝説 Project RE:birth | FM音源を愛するすべての人へ 〜 Project RE:birth (プロジェクト・リバース) 〜 FM音源ICを使ったキット等の紹介ダウンロード・サポートサイトです。
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