NECが開発した「IoT(Internet of Things)で利用する大量かつ多様なセンサや機器をモバイルネットワークで利用する際、機器の特性や状況にあわせて制御信号を削減し、ネットワーク負荷を低減する通信技術」による効果のイメージ図各種機器の通信中に含まれる制御信号の削減・最適化が要諦となる。

IoT普及のために~NEC、デバイスの特性や状況に合わせてネットワーク負荷を低減する技術を開発

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

by [2015年4月23日]

混雑している場所で携帯電話やWi-Fiを使用している方には今更な気もしますが、こうした無線通信技術によるモバイルネットワークで一番の問題は、同時に複数の機器が通信を行った結果生じる、モバイルネットワークの負荷増大とそれによる通信そのものの信頼性低下です。

これはわかりやすく言えば、つながりにくい、つながっても速度が出ない、ということなのですが、国内の大手キャリアが揃って混雑エリアの基地局担当エリアを分割して1基地局あたりの負荷を一定水準以下に抑制することに血道を上げていることや、さらには要所にWi-Fiスポットを設置して3G/4G回線から可能な限り通信をオフロードさせるような施策をとっていることが示すように、ネットワークに接続し通信する端末台数の増大は結構深刻な問題となっています。

何しろ、同じ2.4GHz帯を利用するIEEE802.11 b/g/n対応機器とBluetooth対応機器が同時に同じエリアで利用されただけでも結構な頻度で通信速度の低下や通信そのものの途絶などが起きるのですから、仕組み的にどこかと無線通信するのが前提となるIoT(Internet of Things)デバイスの台数が今以上に増え、社会一般に広く普及するようになると、この問題が深刻な状況を引き起こす可能性が高まってくるわけです。

一応、Wi-Fiについては屋内であればこうした干渉の問題の少ない5GHz帯を利用するIEEE802.11nなどに切り替えて干渉を回避するという手が使えますが、これは端末とWi-Fiルーターの双方が共にこういった通信規格に対応していることが前提で、しかも屋外では様々な機器との干渉を避ける必要から5GHz帯は実質的に利用できませんから、その場合はただでさえ通信が輻輳気味な2.4GHz帯で何とか都合をつけて上手く通信できるようにしてやる必要があります。

このほど、NECが開発した「IoTで利用する大量かつ多様なセンサや機器をモバイルネットワークで利用する際、IoTデバイスの特性や状況にあわせて制御信号を削減し、ネットワーク負荷を低減する通信技術」(※やたら長いですが現時点では適当な名称あるいは略称はありません)は、そんなIoTデバイスの増加に伴う通信の輻輳・飽和問題に一定の解決をもたらすものです。

今回はこの技術と、IoTデバイスの通信輻輳問題について考えてみたいと思います。

3G/4G回線の輻輳

低出力で電波の到達距離が比較的短い(それ故に法的な規制も比較的緩い)BluetoothやWi-Fi接続の場合だと、その電波の到達範囲の短さが通信の輻輳問題を小規模なものに留めている側面があります。

しかし、携帯電話で用いられる3G/4G回線を利用する場合にはそうはいきません。

単純に携帯電話を利用する場合ですら、混雑度の高いエリアでデータ通信を行うとてきめんに通信速度が低下したり、あるいは通信が途絶したりするのですから、そこに更に自動車などの車載機器やその他のIoTデバイスの通信が加われば、飽和状態に陥って通信に問題が生じるのは自明であるとさえ言えます。

携帯電話のシステムでは、単純に音声データを他の端末とやりとりするだけでなく、各端末の通信接続状況やその端末の所在位置などを基地局に知らせ、管理に役立てるために必要となる様々な制御信号を合わせてやりとりする仕組みが与えられています。

まぁ、通話にせよデータ通信にせよ、何の制御信号もなしに送受信するというのは考えにくいですから、当然と言えば当然の仕組みです。

しかし実際の通信を考えてみると、この制御信号は例えば同じ位置で定期的にネットワークに接続し計測データの送信を行ういわゆるスマートメーターや該当エリアを高速で移動する自動車の車載機器、それに携帯電話の3つを比較してみた場合、同じように3G/4Gの通信通話ネットワークへ接続しデータを送受信する状況を考えると、一律に同じ手順を採用するのは合理的でないことがわかります。

そもそも、一つところに取り付けられるのが前提のスマートメーターであれば、移動することがないのに所在位置情報を制御信号の一部として毎回送受信するのは、単純に効率の点で見たとしてもおよそ賢い方式とは言い難いわけです。

塵も積もれば山となる、といいますが、例えば同じマンションの各部屋にスマートメーターが標準で設置されている状況を考えれば、同じ時間帯に同時にそれらのスマートメーターが同時に通信を行う可能性があるわけです。そうすると、全てのスマートメーターがほぼ同時に同じように変化のない位置情報を送信するのは、通信の輻輳回避という観点でも、非常に有害な動作であるということになります。

ただでさえ、通話が実質的に飽和状態でつながりにくくなっているところに、多数の機器が無駄に必要のない制御信号のやりとりを、ただ漫然と自動的に繰り返すのであれば、さらに通話がつながりにくくなったとしても何ら不思議はありません。

通信を最適化する

NECが開発した「IoT(Internet of Things)で利用する大量かつ多様なセンサや機器をモバイルネットワークで利用する際、機器の特性や状況にあわせて制御信号を削減し、ネットワーク負荷を低減する通信技術」による効果のイメージ図各種機器の通信中に含まれる制御信号の削減・最適化が基本となる。

NECが開発した「IoT(Internet of Things)で利用する大量かつ多様なセンサや機器をモバイルネットワークで利用する際、機器の特性や状況にあわせて制御信号を削減し、ネットワーク負荷を低減する通信技術」による効果のイメージ図
各種機器の通信中に含まれる制御信号の削減・最適化が基本となる。

今回、NECが開発したのはまさにそうした人間のための携帯電話ネットワークの通信プロトコルをそのままIoTデバイスの通信にも援用した結果生じるロスを減らすべく、通信プロトコルをおのおののデバイスの利用形態・利用実態に合わせて最適化し、ネットワーク上を流れる制御信号の量を最小限に抑制するためのものです。

もちろん、これはこうした技術の常として、各端末と基地局の双方で新しい(最適化された)通信プロトコルをサポートせねば意味が無いのですが、今回のこの技術は3G/4Gネットワークをはじめとするモバイルネットワークの規格標準化団体である3GPPにおいて、現行最新のLTE-Advancedの拡張機能を規定する「3GPPリリース12」に標準で採用されていることが発表されています。

つまり「3GPPリリース12」に準拠して今後開発・製造販売されるLTE-Advancedの拡張機能をサポートする端末・基地局機器では、否応なくこの最適化技術が導入されることになります。

そのため、NECのこの新しい技術は、こうした新技術にありがちな問題を最初からスルーして採用が始まるということになります。

もっとも、NEC自身は(子会社であるNECモバイルコミュニケーションズによる)スマートフォンの開発製造販売事業から既に撤退しているため、基地局側の機器はともかく携帯電話では、この新しい技術が生かせる製品を作れなくなってしまっています。

また、それ以外でもいわゆる「事業の選択と集中」ということで現在のNEC自身が手がける事業や製品の範囲はPC-9800シリーズ全盛期と比較すると格段に狭くなっているため、この技術開発によって果たしてどの程度NECが先行者利益を得られるものなのか、正直よくわかりません。

無論、NECがネットワーク系の機器では有力メーカーの一つであることからすると、こうした規格制定へのコミットは立場的に避けて通れない部分ではあるのですが、もう少し自社の商売に結びつくような形での応用はできないものなんだろうか、と筆者は考えてしまいます。

▼参考リンク
NEC、世界初 IoTデバイスの通信制御技術を開発 (2015年04月07日):プレスリリース | NEC
Release 12

タグ:
PageTopへ