ヤフー株式会社 代表取締役社長 宮坂学

IT業界を驚かせた無料化の舞台裏~新生ヤフー3年でしたこと・3年ですること【B Dash Camp】

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by [2015年4月14日]

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ヒルトン福岡シーホークで開催された「B Dash Camp 2015 Spring in Fukuoka」から「新生ヤフー3年でしたこと・3年ですること」の模様をお伝えします。

ヤフー株式会社 代表取締役社長 宮坂学

ヤフー株式会社 代表取締役社長 宮坂学

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Yahoo!Japanは来年で20周年

渡辺 宮坂さんがこういう場に出られるのは珍しいですね。業界の皆さんに「宮坂さんってどんな人ですか?」とよく訊かれます。体育会系で勢いのあるちょっと怖い人だっていうイメージはあるんですけども、その辺りも伺いつつ、30分と時間も短いので、ある程度焦点を絞って話して頂ければと思っております。さて、ヤフー株式会社が来年、創業20周年を迎えるんですよね。

宮坂 ええ。会社設立が1996年1月31日で「Yahoo! JAPAN」のサービスインが4月1日なので、2016年の4月1日で20周年になります。

渡辺 宮坂さんは97年6月にヤフーに入社されたので、ほぼヤフーと同じ道を歩んできたという感じですね。そもそもどうしてヤフーに入社されたんですか?

宮坂 一言でいうと「食いつめた」というのが一番大きいですね(笑)同志社(京都)を卒業して大阪で働いていたんですけど、食えなくなってしまった。

渡辺 それはお給料がもらえなくなって、ですか?

宮坂 ちょうどバブルが崩壊した時期だったんです。僕は91年就職組なので、入ったときが絶頂で、その後みるみる崩壊していきました。コンピュータを扱う仕事がしたかったので最初はDTPの会社に入ったのですが、どんどん景気が悪くなっていって。もうこれはどうしたらいいのかな、というときに、たまたま「インターネット」に出会いました。ある種の「蜘蛛の糸」ですよね。これにしがみついて上っていけば何か良いことがあるかもしれない。そういう一心でしがみついていました。最初はよくわかってなかったんですけど、インターネットは面白そうでしたし、必死でした。

渡辺 空前の不況の中、東京出てきて、ヤフーの門を叩いた。そういう感じなんですね。

宮坂 そうです。当時はまだインターネットの仕事をしたいと思っても、専門にやってる会社が世の中に無かったんです。選択肢がほとんどない状態でした。ヤフーができると聞いたときに「あ、ここだったらインターネットの仕事ができるな」と思って東京に出てきました。

渡辺 その後、「Yahoo!ファイナンス」や「Yahoo!ニュース」を立ち上げたのは宮坂さんですよね。

宮坂 正確にいうと、僕の前の人が基礎となるようなものをちゃんと確立してくれて、引き渡してもらっただけなんですけど(笑)

渡辺 引き継いでぐっと大きくされたのが、宮坂さんだと聞いております。

宮坂 まあ(笑)長く携わっていました。

渡辺 そんな感じで「Yahoo!ニュース」などの重鎮としてずっとやってこられて、3年前、井上前社長からバトンタッチを受けて社長になった、と。社長就任は青天の霹靂だったと伺ったのですが、実際、どのような流れで社長に就任されたんですか? 孫正義氏が突然現れたとか、色々面白い話も伺っているのですが……。

宮坂 もう本当に突然呼ばれて「次はお前(社長を)やれよ」と言われまして……全然そんなこと考えたこともなかったので「一晩考えさせて下さい」と答えました。一晩じっくり考えて「じゃあ頑張ります」と。

渡辺 本当はもうやめようと考えていた、という話も聞いたのですが。

宮坂 そうですねぇ、今まで3回ぐらい辞表出したことあるので(笑)それでも会社に残ったのは、インターネットが好きだからというのが一番大きいんですけど、やはりヤフーという会社がとっても好きなんですよ。社長としてヤフーをより良くするために何かできることがあるのではないかなと考えて、辞めませんでした。

渡辺 なぜ体制が変わる時に辞めようと思ったんですか?

宮坂 まず外部の方から誘われたことが何度かあります。それに、自分の思うとおりにできないとか……会社と自分の距離感で「会社がすごく大好き!」っていう気分のときもあれば、「ちょっとやってらんねぇな」っていうときもあります。ビジネスマンならだれでもあると思うんですが(笑)波のどん底の時はやっぱり辞めようかなと思うこともありましたね。

渡辺 井上前社長の確固たる体制がある状態で社長を引き継がれましたが、皆さんの印象に強く残っているのはやはり人事の大幅な刷新と無料化の嵐だと思います。まず人事に関してお伺いしますが、大幅な刷新をしたあの背景にはなにがあったのでしょうか。

宮坂 やはり人事が一番のメッセージだと思うんです。結局新しい何かを発表しても、部下に色々言っても、人事が変わらないと部下からすると「本当にやる気があるの?」と思われてしまいます。ですので今でも人事は一番大切だと思っていますね。

渡辺 (社長就任当時の)人事の一番のキモはどこだと考えられていましたか?

宮坂 直前にリーマンショックがありましたよね。会社も世の中全体も、底が見えないしわからない。ですのでどうやって卒なくまわしていけるのかということを考えて人材を配置していました。
 しかしそろそろ違う局面に差しかかったので、その局面にあわせた配役といいましょうか……僕はよく「役職は配役」という言い方をします。映画の俳優さんだってずっと同じ人ばかりが出ているわけではありませんよね。あくまで作品にあわせて配役を決めるべきだと思います。守りの局面から攻めの局面に変わるときなので、攻めていきたいなら、それに向いている人を起用しないといけない、と考えて人事を行いました。

eコマース事業を伸ばしたい

渡辺 それでは次に無料化についてお伺いします。業界的には一番激震が走ったニュースだと思います。一体どこまで無料化するんだという話もありましたが……無料化を進めた背景というのはどこにあるんでしょうか。

宮坂 まだ完璧に結果ができっているわけじゃないので、「大成功」とか「大失敗」とかいうにはちょっと早いかなと思っております。前提としてヤフーはeコマースが非常に弱いんですよね。この15年くらい、eコマースに関してはいつも3番みたいな感じだったんです。その時その時で一生懸命やってはいたんですが、なかなか良い感じにならない。やるんだったら思い切ったやり方をしないとダメだろうということで、無料化に踏み切りました(笑)

渡辺 「201x年に利益2倍」という目標のキモはやっぱりそういったところなんですね。

宮坂 我々の売上のうち、広告がだいたい7割ちょっと、eコマースが2割ちょっとぐらいで、残りが決済や金融なんですね。広告は、伸びている雰囲気も出てるなぁって気はしてるんですね。ただ、やはりeコマース部門は、売り上げの比率の中でもう少し上げておいたほうがバランスがいいなと思います。ですので、eコマースは気合いをいれてやらないといけないと考えています。

渡辺 そのあたり、eコマースを伸ばしていくということについて具体的に教えていただけますか。

宮坂 最初にやるべきことは売り手や、商品の数を増やすことだと思います。それまでは「物を買いたくても商品が無いじゃん」とよく言われてたんですよ。社員に買ってと言っても同じことを言われてしまって(笑)ですのでまずは商品を増やすということをやっています。おかげさまで売り主も20~25万くらいに増えましたし、オークションも合わせれば毎月100万アカウントくらい出品されるようになりました。品数という意味ではだいぶ良い雰囲気になったかなと思っております。今後も引き続き伸びていくようにします。次に今後は買う人を増やす、という点に重きを置きたいです。

渡辺 そういった理由でドンドン無料化していくと。すべて無料化されると思っていいんですか?(笑)

宮坂 すべて無料化するかどうかはちょっと(笑)僕は地方出身なんですね。山口県です。地元に帰ると、eコマースや運用型広告をもっとやればいいのにというアドバイスをしても、ちょっとよくわからないと言われてしまうわけです。色んな人がいて、中にはうまいことやってる人もいるんですけどね。それでもまだインターネットにビジネスチャンスがあっても使いこなせていない人もいます。そういう中で、アプローチの1つとしてね、無料でやりませんか、というのがあります。

既存コンテンツを大切にしながら、新しいものへシフトしたい

渡辺 その辺りは後で詳しく聞かせていただきますね。ヤフーというか宮坂さんの哲学としては、(インターネットに関して)あまねく広げていくという思想がベースにあるのかなと感じます。ヤフーはスマホ弱いよねっていうのが世間一般の評価だと思うのですが、スマホ事業に関して、現在どういう形に進めていて、今後どういう風に展開されていくのか、ざっくり教えてください。

宮坂 現状ではだいたい、アクセスの半分ちょっとくらいがスマホからです。ちょうど3年前が10%ぐらいだったのでそこから40%くらい比率があがってきた。しかし、そのスマホからアクセスしているユーザのかなりの部分がブラウザを利用しています。やはりヤフーのお客様は日本のマスみたいな方が非常に多いです。あまりアプリを落として使うということが得意じゃない人がかなり多い。どうしてもブラウザのお客様の比率が高いので、それはそれで大事にしなくてはいけません。既存のお客様を大事にしながら次の3年間はアプリからの利用者を増やしたいと考えています。3年間でスマホへのシフトができたので、次はアプリでも使えるサービスをもうちょっと増やさないといけないな、という感じですね。

渡辺 ゲームなども新しくやっていますが、特にスマホ向けで、具体的にどういうコンテンツやサービスを展開していく予定ですか?

宮坂 やはり一番大事なのは毎日アクセスしてもらえるようなコンテンツだと思います。ヤフーでいうと、検索やニュース、天気予報やプロ野球ですね。とても地味なんですけど(笑)すごく大事だと思っております。これらのコンテンツは50年前から存在していたので、50年後も存在すると思うんですよ。せっかくヤフーの強みがこれらのコンテンツにあるわけですから、そこはもっと頑張んないといけないなと思っております。

今年こそ、動画がくる!

渡辺 そこは結局広告に落としていって広告で回収するというモデルだと思っているのですが、そうするとやはりうまく広告がさしこめるサービスやコンテンツをきっちり作る、特に動画広告に力をいれていくという風になるのでしょうか。

宮坂 最終的には先ほど話した通り、広告、eコマース、そして決済・金融系が収益の3本柱となっているので、それらのサービスへのアクセスをうまく売上に変えていきたいと考えています。

渡辺 今回の「B Dash Camp 2015 Spring in Fukuoka」自体も「動画に注目しよう」ということで色々なセッションを組んでいて、動画広告に注力しますという話を現場の方から聞いていますが、その辺りはいかがですか。

宮坂 僕は結構動画の仕事長いんです。99年ぐらいからちょっと手伝っているんですね。毎年、今年は動画だって言い続けてきたんですけど(笑)

渡辺 僕もずっと(動画が来ると)言ってるんですけど全然こねぇな、と(笑)

宮坂 そうなんですね(笑)でも最近、いよいよきたかなという雰囲気を感じますよね。

渡辺 たぶん今年はきますよね(笑)

宮坂 やっと、今度こそ、みたいな感じですね。弊社も動画のサービスをやっていますが、アクセスもすごく伸びていますし、動画広告もすごく軽くなってきたのでいよいよかなって感じはしていますね。

渡辺 動画広告は入れられてるんですか?

宮坂 はい、おかげさまで(動画広告の)在庫が足りないくらいです。

次の20年も生き残るために、進化していく

渡辺 そんなわけで、今後3年間で一番注力する点としては無料化もそうなんですが、他には……。

宮坂 来年で20周年を迎えるので、20年間でできたこととできなかったことの店卸しを一度きちんとやりたいです。また、インターネットの会社で20年続くっていうのはなかなかない中で続いたということを考えると、やはり次の20年もちゃんと残っていかなきゃいけないと思います。今のまま残るんじゃなくてちゃんと成長・変化しながら20年後も残っていたいです。(ヤフーが)40歳になったときに、僕68歳になってるんですけど(笑)その20年後にどういう会社になるべきなのかというのをそろそろ考えなくてはいけないなと思っております。今グループ含めて約7,000人ぐらいの方が働いているのですが、現在はだいたい同世代の人間でかたまっているので、20年後には外国の方も含めて、新卒の人から高齢の人まで多様性にとんだ組織にしないといけない。ヤフーも会社ですので、年齢的な大革新をどのうように受け入れつつ進化し続けられるのかっていうのは、実は結構大きなチャレンジになるかなと思っていますね。

渡辺 20年、もっといえば100年以上になると思うんですけど、その前に「店卸し」についてお聞かせください。色んな可能性があると思うのですが、宮坂さんにとって20周年を迎えるにあたって、特に重要視している店卸しとはどのようなものでしょうか。

宮坂 良い質問ですね。どうしてもできなかったことの方が目につきますよね。「あーこれやりそこなったなぁ」という風に。例えばECですとか。もうちょっとやりようがあったんだろうなと思います。もし15年前の自分に電話ができるなら、ECについて話すでしょうね(笑)ソーシャルサービスもやりそこねちゃいましたし。勿論できたこともたくさんあって、そこはすごくよかったなと思いつつ、両方とも、きちんと店卸しして見直したいと思います。

渡辺 宮坂さんが「これ絶対やりたいな」というものをちょっとだけ教えてもらえませんか。

宮坂 やはりeコマースをヤフーらしいやりかたで大きくしていきたいっていう思いがあります。特に地方に行くと、実務をする人材がやっぱりちょっと足りてない、東京に人材が集まっている。そんな印象があるので、実務の人材を増やしたいです。実務ができる人が増えると結果的に色んな企業に広告やeコマースができる人も増えますよね。そうすると僕らが営業で「インターネット広告やりましょう」と提案するより、それぞれの企業の中にインターネットの広告を分かる人がいて、予算をとってくれる方が話が早くなります。
 具体的にどうやるかというイメージはまだ決まっていないのですが、どこかの学校と組んで一緒にやるとかでしょうか。そのとき僕らのサービスだけ使い方を教えてもしょうがないですよね。ヤフオクとアマゾンさんと楽天さんとeBayさんと……全部のサービスを使えるような人材を増やしたい。それは僕らだけではできないのでそういうのは業界横断でやってみたいなと考えていますね。

渡辺 物凄い大きな目玉をやるというよりも今あるベースのものを着々と上げていくっていうところが、やっぱりヤフーの強みなんでしょうね。そんな中で無料化や人事は当然ありますけども、目新しいことを結局全部やってるので、1個1個全部前に進めるというのがヤフーなんですかね。

宮坂 メディアと広告のビジネスもまだまだ、動画も凄い可能性がありますしね。eコマースももちろん凄い可能性がありますし。決済とか金融とかも相当ありますので今のところ第4の大きな柱っていうのは……去年ちょっと「Y!mobile」をやりかけてやめちゃったんですけど(笑)簡単には無いかなと思います。1000億円規模の事業サイズがあるものはなかなか転がってなくて、今この3つというのはいずれも大きなマーケットがあって成長市場でインターネットは非常に貢献できる点が多いので。ちゃんと伸ばしていくというのが大事かなと考えています。

渡辺 最後になりますが、宮坂さんとして、Yahoo!JAPANをどのように大きくしていくのか、それを聞きたいなと思っています。現場の方は100年後200年後のことを考えてヤフーというものを作っていきたいと常々おっしゃってるのを聞きます。例えば我々世代は50年前に父親が何をやっていたか、実はインターネット上に残っていないんですね。そういったことをを支えていくインフラになりたいと現場の方は常々おっしゃってると思うんですけども、宮坂さんとしての思いを教えてください。

宮坂 インターネットは新しい技術やサービスがどんどん出てきます。新しいものは伸びやすいものが多いですよね。雇用を奪われる可能性も最近はよく言及されます。データやプライバシーをどうするのかという問題もあります。そういったことを考えて、あまり強引に押しつけるのではなく、世の中に受け入れられる形で進めていかないと、僕らの後に仕事していく人がものすごくやりにくくなるんじゃないかなと思います。次の世代の人が僕らの作ったバトンを気持ちよく受け取れるように考えます。後から「あいつらは自分のときだけよかった」と言われないように(笑)地ならしというか、人材育成とかそういう問題も含めてやっていきたいと考えています。

渡辺 100年後もヤフーは日本のインターネットのインフラとして君臨する、と。

宮坂 君臨するというと変な感じですが(笑)経営者の皆さんは同じことを考えてると思うんですけど、変化・進化をしながら100年200年続く会社が作れたらいいなと思います。特に僕は2代目社長なので、できるだけ創業者がカリスマで作った(やっていた)ものをある程度継続性・反復性のあるものにして、3代目4代目につないでいくっていうのが重要な仕事だと思っています。

渡辺 201x年、利益2倍期待しております。

宮坂 がんばります!

渡辺 本日はありがとうございました。

ヤフー株式会社
B Dash Camp 2015 Spring in Fukuoka

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