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アプリビジネス最前線:グロース方法と儲け方教えます【B Dash Camp】

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by [2015年4月15日]

 B Dash Venturesの主催する「B Dash Camp 2015 Spring in Fukuoka」が4月9日から10日まで、ヒルトン福岡シーホークで開催されました。10日に行われたセッション『アプリビジネス最前線:グロース方法と儲け方教えます』では、気鋭の若手ベンチャー経営者たちが登壇し、アプリビジネスをめぐり激論が交わされました。モデレーターは、株式会社モブキャスト取締役CCOゲーム本部長の福元健之氏です。

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左から、モデレーターの福元氏、VASILY・金山氏、アカツキ・塩田氏、Nagisa・横山氏

他社のアプリをどう見るか

株式会社Nagisa代表取締役社長・横山佳幸氏 1983年生まれ。法政大学経営学部卒業。KDDI、ネットエイジ(現ユナイテッド)を経て、2010年に株式会社Nagisaを設立。幅広い分野でヒットアプリを創出し、単月で100万DL以上、累計で1,300万DLの実績を持つ。

株式会社Nagisa代表取締役社長・横山佳幸氏 1983年生まれ。法政大学経営学部卒業。KDDI、ネットエイジ(現ユナイテッド)を経て、2010年に株式会社Nagisaを設立。幅広い分野でヒットアプリを創出し、単月で100万DL以上、累計で1,300万DLの実績を持つ

──(アプリ製作をする上で)他社のアプリは参考にしますか?

横山 LINEさんのアプリは、ユーザーのコンテクストにあった文言の出し方などに、こだわりが見られるので、新しいアプリが出るたびに社内の数十名でレビューするというようなことはありますね。

──レビューというのは、実際に触ってみて、いいところや悪いところを見るという感じですよね?

横山 最近出た、自分の顔でスタンプを作れるようなアプリがあるのですが、ユーザーが直感的にこう作ればいいというところはかけているかなと。ただ、LINEさんはチームがすごく優秀で、最初出したものに対してUI・UXを変えていくので、たぶん三ヶ月後くらいにはすごいクリエイトなアプリケーションになっていますね。

株式会社アカツキ共同創業者兼代表取締役CEO・塩田元規氏 1983年島根県生まれ。横浜国立大学電子情報工学科を経て、一橋大学大学院MBAコース卒業。株式会社DeNAで広告事業本部ディレクターなどを務めたのち株式会社アカツキを創業。

株式会社アカツキ共同創業者兼代表取締役CEO・塩田元規氏 1983年島根県生まれ。横浜国立大学電子情報工学科を経て、一橋大学大学院MBAコース卒業。株式会社DeNAで広告事業本部ディレクターなどを務めたのち株式会社アカツキを創業


──塩田さんは、チェックしているアプリなどはありますか?

塩田 もちろん参考にはしますが、自分たちがどういう体験を生めばいいかというところからスタートするので、あまり見ないですね。

──アカツキさんの場合「感情を報酬に発展する社会」という理念を持っているわけですが、どういうものづくりの姿勢をお持ちなんですか?

塩田 僕たちは、理念に準ずる感じで仕事をしています。会社でも自分たちの存在意義を常にディスカッションするような感じです。ものづくりというのも、特に今、儲かっている分野なので、どうすれば儲かるというような話になりがちですが、僕は最高の「感情の報酬」だと思っていて、自分の人生の時間を投資して、この中でワクワクする体験をしてもらって、少しでも幸せを感じてもらうという哲学を大事にしています。ものづくりの仕方としては、基本的にはまず何を届けたいのかとか、どういう体験があるのかということからスタートしたいと思っている会社です。それは一人の天才から生まれるというよりも、ぼくたちはディスカッションから生まれるものを信じるので、夜中までディスカッションします。アイディアは人と人の間にあるという感じでやっていますね。

──深いですね。
塩田 その中で、会社も当然、価値を届けた上で、最高の売り上げを作るという考え方でものづくりをしていますね。

株式会社VASILY代表取締役CEO・金山裕樹氏 フジロックフェスティバルに最年少で出場するなどミュージシャンとして活躍後、Yahoo!JAPANでライフスタイルメディアの立ち上げに従事。2008年に株式会社VASILYを設立し、代表に就任。同社が運営するファッションアプリ『IQON』はAppleとGoogleのベストアプリの双方を世界で初めて受賞し、200万人以上の女性ユーザーが利用している。

株式会社VASILY代表取締役CEO・金山裕樹氏 フジロックフェスティバルに最年少で出場するなどミュージシャンとして活躍後、Yahoo!JAPANでライフスタイルメディアの立ち上げに従事。2008年に株式会社VASILYを設立し、代表に就任。同社が運営するファッションアプリ『IQON』はAppleとGoogleのベストアプリの双方を世界で初めて受賞し、200万人以上の女性ユーザーが利用している

──金山さんは?

金山 具体的にどこかのアプリケーションというより、全部見るという感じですね。

──たとえば『WEAR』などはどうですか?

金山 確かに提供している価値は似たようなところがありますが『WEAR』さんをよく見てるかというと、そうではないですね。

横山 (控え室でiPhoneを見せてもらったが)ホーム画面の4枚目くらいにあったので、たぶん本当に見てないですね。

金山 ただ、参考にしてるというか、これからこうなるだろうなというのは一社あります。『GoPro』ですね。現段階で『GoPro』が技術的に他が真似のできないレベルまで行っているかというと、そうではない。ソニーさんなど他の家電メーカーも、同じようなアクションカメラを出している。だけど、みんなGoProを選ぶというところに強さがある。
 『GoPro』を使う人はイメージができていて、自然が好きで、スポーツ、そしてエクストリーム。『GoPro』を使うことがイケているエクストリームなコミュニティに入る証みたいな。あのプロダクトがそのコミュニティの象徴になっているというか。そんな世界観ができている。僕も女性のファッションアプリをやっているので、そういう次元まで持って行きたいなと。もちろん便利であり、テクノロジーとして優れている、デザインとして素晴らしいというのは重要だが、「IQONを使っている私がイケている」というようにしたい。 
 技術で突き抜けられるスタートアップはあまり多くない。そこでいくことがベストですが、その前の段階で、もちろん技術を尖らせながら、コミュニティだったりブランドをやっていくというのが、大事な成長戦略になっていくと思っています。僕らのビジネスは基本的に模倣可能なので、スペックだとか、数値に現れないような感情、コミュニティに価値を出していくということをやらないと残っていかないのでは、と思います。

—Nagisaさんはたくさんのプロダクトがある中で(その一つ一つに)想いを込めていくことは難しいようにも思えますが、どうですか?

横山 金山さんの会社の場合『IQON』にすべての従業員と経営者が一丸となって愛しているようなイメージですが、うちの会社の場合は1プロダクト3人くらいで10チームあります。その3人が(1つのプロダクトを)死ぬほど愛しているし、その3人の上にいる僕と執行役員がそのプロダクトを全部見て愛しているという。金山さんの話を聞いてすごく納得したのは、確かに模倣が可能で、こないだApp Storeで二週間くらい一位になったプロダクトが、先週くらいに丸パクリされて出ているというようなこともある。そこでしかできない価値や体験を提供するか、技術的なもので突き抜けるしかないというのは、すごく大事(な論点)だと思います。

新規事業の考え方

──イグニスさんは意識していますか?

横山 イグニスさんとも仲がすごくいいです。確かに、投資家さんや業界の方からはイグニス、イグニスといわれます。ただ、LINEさんってやはりすごい会社だと思っていて、僕らも一つのプラットフォームを作ろうと思って3年くらい前からチャットアプリをやっていたのが、失敗したんですね。そこから、基本的にアプリをやっているのですけど、もう一度再チャレンジしたいなという思いがあって、一つの大きなプラットフォームを作って、そこから新たな価値とか体験を生み出していくという。僕らが目指していくのは、LINEとかTwitterとか、Facebookのような会社に今後変えていきたいなと思っています。

──大きい事業を準備中ということですか。具体的には?

横山 動画をやります。動画撮影に450万ダウンロードくらいされているツールがあります。実際に素人のユーザーが、僕らのカメラアプリを使って動画を作って、そのうちの15パーセントくらいがどんどん世の中に出て行っている。今の時代って、作られたものがFacebookやTwitter、Instagramに出て行って当たり前。そうしたものをさらに高クオリティにしつつ、自社のプラットフォームを作れればとやっています。

塩田 リリースはいつ頃ですか?

横山 7月に出す予定です。想定しているのは、スマホ版のYouTubeを作ろうと思っています。

──新しいビジネスをはじめてグロースするというところでいうと、アカツキさんは次はどんな予定ですか?

塩田 僕たちも金山くんが言ってくれたのとほぼ同じような考え方でものづくりをしています。目に見えないものを大切にしているので、自分たちの会社のあり方だったり、そういうものにメッセージを伝えていくことを重視しています。
 ゲームでいうと、今年5周年を記念して、メッセージ性だけにフォーカスした、シンプルに世の中が良くなるというゲームを一本出したいと思っている。端的にはゲーミフィケーションみたいな領域なんですが、ゲームの力とヘルスケアの領域なんですが。
 ものを作るというのは、絶対に魂込めなきゃ成功しないという哲学があるので、やれるメンバーがどれだけ本気でやれるか、というのを考えて、僕らはだれが何を言うのかを非常に重視しています。

──金山さんは新規事業を考えたりするんですか?

金山 僕らは『IQON』ばかりやっているようにも見えるんですが『IQON』はプラットホームなので、あの中にいろいろな新規事業が入っています。最近だとネイティブアドが入っている。これまで雑誌にしか出稿しなかったような、たとえばDiorさんやDIESELさんといった広告主に、きちんと安心して高い品質の広告が出せるようにしたり、あとはアドネットワークのようなものも始めていて、サイバーエージェントさんなどが僕らの広告を受け入れてくれているという。
 これからO2Oにもすごく将来性があると思っていて、実際僕らのユーザーのデータでも出ているのですが、80パーセントのユーザーが、インターネットで服を買ったことがないというんですよ。IQONで見て、そこでインスピレーションを得て、ルミネに行くんですね。ここをしっかりとトラッキングできれば、相当ビジネスチャンスはあるだろうなと思っていて、そこでトップ店員さんによるインターネットのエンパワーメントというのを頑張っていきたい。
 今って、消費者の方が情報を持っているんですね。一方で、店員さんは誰が何を買ったのかや、そのユーザーの趣向とかもわからない。僕らはおそらく日本で一番ファッションのデータを持っているので、それをショップ店員さんに使ってもらうことで、効率的な接客ができ、世の中変わると思うんですよ。
 カリスマ店員は、めっちゃ記憶がいいんです。服は丸ごと買うことがなくて、たとえば靴を買えば、それに合うような服を買うんです。それをしっかりデータとしてもたせて、接客に生かしてほしい。そうなれば、よりお買い物も楽しくなるし、結果的に服も買うようになると思うんですね。

企画のチェックリスト

──手前味噌ですが、モブキャストの場合だと、ゲームを新しく作るときに「三つのD」という基準を持ってゲームの企画審査をしている。審査項目をきちんと設けて、ジャンルやレベルデザイン、課金、ターゲットなどを勘案して意思決定するという感じです。みなさんの会社のチェックリストのようなものはありますか?

横山 うちはないですね。ただ、二週間に一度くらいアプリの企画会議をやっていて、そのときに3枚くらいのパワポにユーザーが何を求めていて、なぜこのアプリが流行るのかというところをまとめて、そこからコンセプトを決めたりというのはあります。
 ディレクターが10人くらいいるのですが、一人2~3くらい企画を持ち寄り、僕と執行役員がその場で20~30個の企画に可能性があるのかを判断していくというかたちですね。しかし、そこで通ってもやらないということもあるので、チェックシートというかたちではやってないです。

──金山さんの場合はどうですか?

金山 そこは結構フラットに、やりたいやつがやればいいという感じですが、徹底的に問うのは「なぜ」という点ですね。なぜ君はそれをやるのかという部分に、全員が納得できないとやりたくはないです。どんな理由でもいいです。儲かるからとか、すごいデザインだから、とか。でも、ものづくりなので、魂が入っていることが大事だなと思います。
──アカツキさんはどうですか?

塩田 今まではあまり明文化されたものはなかったので、現在まとめはじめているところです。ただ、チームとしてのあり方と、プロダクトとしてのジャッジの部分は、ひも付く部分があると思っています。各チームごとに、なぜやっているのかとか、チームの存在意義を明文化して、かつ目標設定もするようにしています。長くやると、中途半端になるので、三ヶ月を一年と見立てて、まわすというのを取り組み始めています。
 ゲーム作りのところでいうといくつかあって、新規の企画書を書くとき、必ずそのコンセプトと、三本の矢というか3つの強みを必ず作るという。5点3点理論というのがあるのですが、5点の項目を3つ以上作り、その他の項目は3点以上にするというような。あとは、運用のタイトルであれば、KPIに依存しない、先ほどの見えない投資に一定のリソースを割くというのは意識してやりはじめています。

──グロース方法まである程度設計してからやるのですか?

塩田 正確に言うと、リリースする前までには設計はしていますが、最初に作るときはしていません。まずいいものを作るというのと、そのあとの早い段階でのマーケティングを強めにしているので、まさにグロースハックのような感じで、プロダクト作りにマーケティングの人が入ってくるんですよね。そこでディスカッションして、このゲームの面白さってなんだろうということから、キャッチコピーやターゲットを広げていく。そのあとにユーザーさんを呼んで、本当にそれでいいのかを話し合います。
 ディスカッションをたくさんしていますね。キャッチコピーはほとんど社内でやっています。どういう崩しをすれば人が反応するのかを徹底的に話し合っている。僕もどちらかというと、細かいゲーム設計よりは、どういうふうに見せるかというプロデュースが得意になってきましたね。

横山 うちは先ほど話したように、App Storeでユーザーを獲得するところに力点を置いていて、かつ企画の段階でユーザーがユーザーを生む仕組みをかならず入れています。最近App Storeで1位になったアプリがあって、それは1秒間に2ツイートくらいされていて、Twitterのタイムラインを検索するとすごいことになっていた。
 ソーシャルゲームは別として、とくにカジュアルゲームは、ユーザーがユーザーを生む仕組みが大事で、友達がやっているからやってみたというような、とにかく見せ方をどうするのかを考えている。ツール系も、ユーザーが使っていく中でどこでハマっていくのか。ハマったことをいかにユーザーに紹介するのか。そういうコンテクストを意識したグロースを重視している。

──ユーザーが一番気持ちいいと思う瞬間に、これを紹介してくださいとやる。

横山 そうです。そうすることで、全然コンバージョンとかも変わってくるので。

塩田 アイコンやタイトル名は誰がどうやって決めてます? 良い意味で崩してて、並んでいるときに違和感があるので、コンバージョンがいいんだろうなと思う。

横山 『今日、彼女が死んだ』は、アイコンが遺影になっているんですよ。実は、ディスクリプションも2行しかないんですよ。全アプリを見ているので、どんなアプリが出てきていて、どんなアイコンで、どんなディスクリプションなのかを常にチェックしている。全ディレクターが毎日見ている。その中で、自社のプロダクトに、どういうキャッチコピーやアイコンをつければ差別化できるのかはすごく考えて、意識している。ちょっと違和感を覚えるくらいのほうが、今はいいんじゃないかというのもある。

塩田 3人一組でプロダクトを作ると、1人のすごい人が全部横断的に見てるのか、各チームのディレクターが自分で決めているのかという点なんですが、こんなに数を出している中でどうやってクオリティを維持しているか聞きたいですね。

横山 もともとは僕が全部見てたんですけど、執行役の井上がいるので、社長室とメディア事業ということで分けて、全部見ているんですね。なので、僕と井上が月に10本、20本と、アイコンからスクリーンショットまで全部確認してやっているので、今後会社としてのものづくり+キーマン+チームというところで、キーマンが増えて行くとプロダクトの精度はもっと上がっていくと思うし、出したアプリが全部ヒットというようなことも可能だと思う。それを担保しているのが、僕自身と執行役員。全プロダクトのディレクターを全部見ていて、まだキーマンになりきれていないものは全部見るという感じです。

経営者は、ネット第一世代の「喝」にどう反応?

──最近、ネット上でサイバーエージェントの藤田社長が若手ベンチャー経営者に喝を入れてましたが、今の人はネット第一世代の藤田社長の言葉をどう受け止めているんですかね?

金山 読んでないですね。自分は本を読むことが多いので、ブログはほぼ読まないです。

塩田 記事を細かくは読んでないんですが、フィードバックしてくれるのはもちろんありがたいと思う。ただ、僕は長く経営したいと思っていて、100年やるという目標がある。なので、周りに流されず自分たちがあるべき姿のままいけばいいと思います。

横山 僕はめっちゃ読んでて、藤田さんとは面識がないが、あれだけ多岐にわたるビジネスをやられてて、尊敬している。ただ、自社は自社なので、僕らは僕らのビジネスをやって、上場するなら上場するというところを見ていけばいいし、とにかく自分たちのビジネスを作っていけばいいと思う。

株式会社VASILY ヴァシリー
株式会社アカツキ
株式会社Nagisa
株式会社モブキャスト
B Dash Camp 2015 Spring in Fukuoka

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