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アメリカに遅れること2年、日本のビットコイン受け入れ態勢は整ったのか?【B Dash Camp】

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by [2015年4月14日]

「ビットコイン」と聞いて、皆さんは何を想像しますか? 欧米では、大企業がビットコインを支払い方法に受け入れたり、福利厚生でビットコインが付与されるなか、日本は Mt. Gox のマイナスイメージが植え付けられその導入も消極的のようです。本パネルでは、Shift Financial の共同創立者で CEO の Meg Nakamura氏がモデレーターを務め、ゲストスピーカーがアメリカと日本のビットコインの状況について語りました。※本文中敬称略

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ビットコインの歴史~

Shift Financial CEO、Meg Nakamura氏

Shift Financial CEO Meg Nakamura氏

ビットコインはサトシ(・ナカモト氏=ビットコインの生みの親)が論文を投稿した2008年に始まり、勢いが出るまで数年かかりました。2012年頃は、まだ知られていない技術でしたが、その後1年でビットコインを通貨として受け入れるウェブサイトが増えていきました。そして2013年、シルクロードによるマイナスなニュースが流れたのにも関わらず、アメリカの上院委員会はビットコインに対して前向きな意見を市場に発信しました。2013年11月に、ビットコインに対して世間からポジティブな印象が持たれ、そのレートもピーク時で1,200ドルに達しました。しかし、おそらく多くの皆さまが初めてビットコインに対面したのは、Mt. Gox の事件です。

それでも、ビットコインはたちまち元気を取り戻し、そして Overstock.com、Dell Computers、Microsoft などのFortune 500企業にビットコインが受け入れられるようになりました。そして2014年、ビットコインに対する投資、加盟店もどんどん増えていきました。ご覧の通り、ビットコインの値打ちが下がるもビットコインの取引量は増え続けています。2015年は、ビットコインがどこへ進んでいるか、どんな節目を迎えるかについて興味深い話をパネリストたちとできると思います。

日本とアメリカで異なるビットコインのイメージ

――最初のトピックは、アメリカと日本のビットコイン環境の違いについてお願いします。

Coinbase Inc.、Sam Rosenblum氏

Coinbase Inc. Sam Rosenblum氏

Sam ビットコインが主流になるには、やるべき仕事がたくさんあります。アメリカでは、2014年から大手企業が顧客の支払い手段としてビットコインを受け付けるようになりました。これは、一般ユーザが持つビットコインのイメージを大きく変えていき、ビットコインが信頼できる安全な仮想通貨だと発信することに繋がりました。シルクロードや Mt. Gox といった個々の企業や個人による悪質な行為が、ビットコインと紐づいているような誤解をさせたのは残念です。そのため、Fortune 500 に登録されている大企業がビットコインを採用することは、私たちにとっては大きなステップでした。また、 Coinbase(オンラインウォレット)は、2015年からニューヨーク証券取引所を含む複数の金融機関からファンディングをされました。これは昔にはなかった、ビットコインがポジティブに捉えられ次のフェーズに入ったからだと思います。

 bitFlyer Inc.  CEO、加納 裕三氏

bitFlyer Inc. CEO
一般社団法人「JADA」代表
加納 裕三氏

加納 ビットコインが日本で有名なのは、Mt. Gox の事件があるからです。多くの人は、クライアントの資産を失った Mt. Gox とビットコインが繋がっているというイメージを持っていて、ビットコインを「ネガティブなもの」と意識しています。私が伝えたいことは、ビットコインは Mt. Gox ではないということ。日本は約2年ほどアメリカより遅れを取っていると感じます。私は、ビットコインのイメージを変えたいと思い、日本の大手企業もアメリカに続いてビットコインの受け入れを願います。

――シリコンバレーではビットコインについて関心を持ったり、銀行が人にお金を費やしてビットコインについて学ぼうとしていますが、日本ではどうでしょう?

藤井達人

三菱東京UFJ銀行 IT事業部 藤井達人氏

藤井 最近はビットコインだけではなく、FinTechと呼ばれる金融ベンチャーが、既存の金融サービスの領域に食い込んできているという危機感があり、銀行自身もどんどん変わらないといけないという意識がここ1~2年に強くなってきています。

三菱東京UFJ銀行に関しては、ロボットを支店に置いて、どうお客様にサービスしていくかみたいなことを始めたり、私たちの部署では FinTech チャレンジというコンテストを使ってオープンイノベーションをやっています。

銀行としての立場で言えることは少ないんですけど、ビットコインに関して海外では、例えばスイスのUBSが先々週にロンドンの Fin-Tech Accelerator Level 39 で、金融の専門家を配置して、ビットコインのブロックチェーン(後述)を使って透明性の高い金融サービスができないかとリサーチを始めたりしました。また、イギリスの Barclays の Barclays Accelerator がやはりビットコイン関連のスタートアップをプログラムのなかに入れたりとか、動きとしては出てきていると思います。それから、アメリカのメガバンクが徐々に研究を始めているという話も聞きます。

日本に限っていいますと、 2つの考え方があって、1つは、ビットコインを取り扱う会社さんとどう付き合っていくかに関してはまだまだ答えが出ていません。おそらく、業者さんがビットコインを扱うときに身元判断出来ているかどうかであったり、あるいは消費者部門の観点できちんと手当がなされているかを非常に強く見ると思います。その部分に関しては、まだまだ判断材料が足りていないのかなと思います。とくに、日本の業者さんだけじゃなく、Sam のような Coinbase とか、海外の業者さんの KYC※とか消費者報告の実態を調べていくのはかなり労力が伴うので、難しいのが現状です。

また、もう1つはビットコインのようなテクノロジーを銀行がどう活かしていくかと言う観点。これに関しては、例えば国際送金等で、ビットコインだけじゃなくて、FinTech系の会社が銀行の国際送金に代わるサービスを出していこうとしていますから。銀行は、新しい人たちとどういう風に組んでいくかを考える時期に来ていると感じています。

※KYC:Know Your Customer。銀行に新規口座を開く際、銀行から要求される書類手続き等。

ビットコインが一般に受けいられるための3つの注目点

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――会場にいる皆さまは、ビットコインとは別に「ブロックチェーン※」についてご存じですか? Sam さん、ブロックチェーンの解説と、ビットコインが今後一般に受け入れられる期待についてよろしくお願い致します。

Sam 多くの方は「仮想通貨」という意味合いでビットコインという言葉を使いますが、実際はビットコインのネットワークと呼ばれる「ブロックチェーン」を指します。送金する以外に面白いことがたくさんできます。サンフランシスコでは、ビットコインは主に仮想通貨として国際送金やマイクロペイメントに役立っていることが注目されています。しかし実際は、ビットコインのネットワーク(ブロックチェーン)はお金以外のものを送るのにも使えると考えています。例えば会社の株を発行したり、家、車などの様々な資産の所有権を送信したりなど、ブロックチェーンで安全にIDを配布できるのです。そういった便利なことができるようになることで、ビットコインという技術=誰でも見ることができる永続的な公開記録が、現実に大きい影響を与え、単なる通貨以上のものになっていくのです。

※ビットコインの取引が記録されるデータベース。ここでは、その取引記録を元にした、二重払い防止や分散処理などの信頼性を担保する仕組みを指す。

――Coinbase にとっての大切な節目とは何でしょう? またその経験から何を得ましたか?

Sam アメリカでは、ビットコインがポジティブなテクノロジーであることを伝えるため、有名な投資家が自身のキャリアやレピュテーションを懸けています。私たち Coinbase が成功しているのは、ビットコインにプラスなイメージを与えているこの様な人たちのおかげです。

また、Overstock.com のようなビットコインを支払い方法の1つとして実験し、ビットコインで事業を効率化させるような企業がいます。この様な企業がいると、他の企業にも「ビットコインを使っても安心」というメッセージを示してくれます。それに似て、アメリカや欧州の規制当局も最近、ビットコインに対してより理解を深め、正しく規制するために投資が必要ということが言われています。イギリスでは最近、ビットコインへの研究に1000万ポンドを投資するという発表もあり、ビットコインが重要なテクノロジーとしてどのような扱いを受ければ良いのかを考える、大きな節目を迎えています。

規制当局がビットコインに対して理解や研究をしたいという積極的な取り組み。そして Coinbase や bitFlyer といった企業がビットコインを安全に利用していく良い手本となることが大事だと思います。

――注目点は3つあるということですね。1つ、適当な投資家がいること。2つ、Fortune 500 の企業に支援してもらい、ビットコインの信頼性を強化すること。3つ、規制当局にビットコインが何なのかを理解してもらい、規制する方法を理解してもらうこと。では、加納さん、一日だけ王様になれるとすれば、近い将来に日本に何をしたいですか?

加納 お金がほしいです(笑)日本におけるビットコインの投資規模はアメリカと比べると、非常に小さいです。アメリカでは、100人以上の投資家がビットコインの領域で投資しているのに、日本ではもしかしたら10人にも満たないかもしれません。その総額は、1000万ドルに留まるでしょう。ビットコインは、FinTech エリアではここ10年にはない非常に良いテクノロジー革新であるにも関わらず、私がお会いした投資家たちは保守的な印象でした。

私はここ1~2年で日本がアメリカに追いついてほしいです。なので、もし私が王様であれば、保守的な投資額を変えたいということ、また、Mt. Gox でネガティブなイメージを持ってしまった日本人の意識を変えたいです。

――では KYC について話して頂きたいのですが、銀行が非常に懸念していることですね。KYC は常に進化していると思いますが、銀行は何を求めているのでしょうか?

藤井 KYC は基本中の基本です。そこが担保されないと、マネーロンダリング等、色々な懸念が出てきます。先ほど言ったように消費者をどのようにフォローしていくか、トータルで判断していくと思います。ただ、日本でビットコインが離陸するために、銀行は大きな役割を果たすと思います。私自身が銀行で新しいサービスを開発をすることに携わっていますが、銀行自体が新しいことを評価するときに、セキュリティとか KYC をやっていくのは当然なんですが、そのサービスがどれだけ一般に受け入れられるのかが重視されると思います。とくにメガバンクの場合は、数1000万人の顧客口座がありますから、そういう方々がどれだけのベネフィットを受けられるかが評価されますし、あと、使う人がどこで使えるかが課題になっていくと思います。

ビットコインを事業にどのように活用するか

――では、私が B Dash Camp の参加者であり、日本のインターネット企業で働き、ビットコインやブロックチェーンということについて学んだとします。ビジネスとして、ビットコインを活用するにはどうすればいいですか?

Sam 企業が明らかにできることは、ビットコインをマイクロペイメントとして社内と社外で使用することです。いま人気になっていることは、これまで小さすぎた課金をビットコインを使ってビデオゲームでナノペイメントをすることです。例えば、ビデオゲームでシールドやライフといったバーチャルなアイテムを購入するときに、25セントかかるとします。これまで、デビットカードやクレジットカードの手数料が25セント以上かかるため、アカウントに20ドルをプリペイドする必要がありました。

また面白いアイディアとして、バンク・オブ・ニューヨーク・メロンがボーナスとは別に、報酬として従業員にビットコインを付与しているそうです。ビットコインを使って、従業員がホテルやフライト、パソコンやテレビなどを購入できるそうです。

加納 企業がビットコインを活用する場は、色々とありますが、まずは海外に送金するために手数料を支払いたくないとき等に利用できますね。

藤井 ビットコインは投機目的で買われる人が多いと思います。先ほど言われたように、福利厚生の一部としてビットコインをもらえるとかですね。そんな形で直接ビットコインを入手して、それでビットコインを直接消費してサービスを得るというエコノミーができてくると、徐々に使う人が出てくると思います。日本で言うと、スマートフォンのモバイルウォレットはまだデファクトスタンダードではないわけですよね。例えば、アメリカでいう Apple Pay とか Google Wallet は広まりつつあるんですが、日本だとまだ普及していない。例えばモバイルウォレットと組み合わせて、ビットコインがフリックションレスで上手く手に入って使えるところが増えていくと、特に私はネットで買い物する時は、2つか3つしかウェブサイトは使わないんですよね。例えば、そういうところで使えるようになると、しかもビットコインで使うことで明らかに何か得があれば、ポイント、履歴、リワードがあるとか、そう言った状況が少しでも作れれば、使おうと思う人が増えていくと思います。入手性と、使う画面の部分が、日本でのビットコイン離陸に重要かと感じます。

ビットコインのテクノロジーが、どのように「支払い」の概念を変えていくかが楽しみですね。ありがとうございました。

Shift – It’s Your Money
Coinbase: Bitcoin Wallet
仮想通貨ビットコインの購入/販売所【bitFlyer】
一般社団法人 日本価値記録事業者協会: JADA
三菱東京UFJ銀行
B Dash Camp 2015 Spring in Fukuoka

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