守安功氏

iemoやペロリの買収に見る~DeNAが仕掛けるゲーム・メディアの次のビジネス【B Dash Camp】

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by [2015年4月13日]

左から、モデレーターの株式会社スポットライト 代表取締役 柴田陽氏、株式会社ディー・エヌ・エー 代表取締役社長兼CEO 守安功氏、iemo株式会社 代表取締役CEO 村田マリ氏、株式会社ペロリ 代表取締役 中川綾太郎氏

 2015年4月8日から10日にかけて、ヒルトン福岡シーホークで開催された「B Dash Camp 2015 Spring in Fukuoka」から、10日のセッション「DeNAが仕掛けるゲーム・メディアの次のビジネス」の模様をお伝えします。

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反響の大きかった任天堂との提携

柴田陽氏───最後のセッションということで、たくさんの皆様にご来場いただいております。DeNAの今後の戦略・方針というテーマで50分間よろしくお付き合いください。では最近のDeNAのトピックス、特に3月17日に発表された任天堂さんとの提携ですね、おめでとうございます。スタートアップ全体として喜ぶべきことだと思いますので、その辺の話を含め、最近のトピックスのアップデートを皆さんにして頂ければ。

守安功氏守安 我々は主力事業でゲームビジネスをやっております。この2~3年ブラウザゲームの規模が縮小し、業績も右肩下がりで会社的につらい状況が続いていたんですけれども、昨年度の後半くらいに『FINAL FANTASY Record Keeper』のヒットがありまして、なんとか業績が横ばいになってきました。また、中国で『ONE PIECE』のIPを使ったゲームがヒットするなど明るい話題が出てきています。そんな中、任天堂さんの提携があって、ゲーム事業の先が見えてきたと思っています。任天堂さんの件で嬉しかったのは、海外に住んでいる友人知人から「おめでとう」「すごいことだね」と非常に反響が大きかったことです。我々はコーポレートスローガンに「Delight and Impact the World」というのを掲げてますので、世界に対して大きなインパクトを与えられたかなということで、非常に嬉しいですね。

───任天堂さんとは他のゲーム会社さんも提携したかったと思うんですが、どうしてDeNAが選ばれたのか、ご自身ではどうお考えでしょうか。

守安 パッケージゲームは発売するときには仕事が終わっているのですけれども、オンラインのゲームはリリースしてからが勝負というところがあります。(任天堂さんは)そういったところに足を踏み出すためにパートナーシップを考えられていて、我々の運営ノウハウやエンジニアリングパワー、提携スキームの柔軟さを高く評価して頂けたと思っています。

大企業、ベンチャー問わず
強みを掛け合わせる協業を

守安 我々の主力事業はゲームなんですけれども、何の会社ですかと聞かれたらインターネット、特にモバイルインターネットを得意にしている会社です。ゲーム事業に次ぐ柱を作っていかなければならないということで、ヘルスケア事業や、『マンガボックス』のようなIPを作るプラットフォーム事業を進めています。
 我々は、例えば任天堂さんのIPという強みと、我々のインターネットサービスを作り運営するノウハウを掛け合わせて、新しい価値を作り出すというようなことを得意としております。『マンガボックス』ですと講談社さんの持つコンテンツパワーや編集力、『ペイジェント』ですと金融機関の決済・営業力のノウハウといったものを、我々のノウハウと掛け合わせてサービスを立ち上げております。こうした考え方で、大企業だけでなくスタートアップとも協業していこうと2社を買収しまして、キュレーションメディア事業を始めたという流れになっています。

リアルな産業の構造に影響を与える
プロジェクト「DeNAパレット」

───では、最近DeNAグループにジョインされた村田さん、自己紹介をお願いします。

村田マリ氏村田 iemo株式会社代表取締役CEOとDeNA執行役員を務めさせて頂いております。スタートアップとDeNAの両方に籍を置きながら、DeNAの強みをキュレーション事業という今伸びているサービスに掛け合わせるとどんなことが起こせるのかというところをさせて頂いております。(ジョインから)半年経ちまして、DeNA社内に6つのキュレーションサービスが出来ました。2015年4月6日に発表させて頂いたのが、3社目のスタートアップ買収で、『Find Travel』という旅行系のキュレーションメディアがチームに加わりました。こうした一連の動きはDeNAパレットというプロジェクト名で呼んでおりまして、現在6つの媒体を2015年12月末までに10まで増やすというところを試みてまいります。
 初めにジョインした2社の知見を元に、横展開でジャンルを増やしていこうというのが第一の試みです。次に広告にてマネタイズを図り、最後にオフラインでユーザーさんに物事が解決できるような仕組みを提供したいなと。例えば『MERY』であればお洋服を買うことができるとか、『iemo』であれば家を買うとか家の中を変える力を持つ人とのマッチングが出来るといったところを目指して参ります。
 なぜこうした試みをDeNAで行うかに関しては、DeNAがこれまでのビジネスでスマホファーストを掲げている点がまず一つです。これから立ち上げていく10媒体は全てスマホを中心に展開していこうと思っておりますので、ここの知見を大いに活用させて頂きたいと思っております。もう一つ、DeNAはスキマ時間の使い方に関して、ゲームという形でけん引してきた会社だと思っています。こうしたところのユーザーさんの動き、データの分析、または運用方法や経営手法などをお手伝い頂くことによって、キュレーション事業をもっとドライブして成長していけたらいいなと。その暁にユーザーさんの生活が変わるような事業を展開していけたらいいなと考えて、トライしています。

───では続いて、ペロリの中川さん、どうぞ。

中川綾太郎氏中川 MERYという女性向けのサービスをやっている会社です。4月8日に27歳になってしまったのが最近のメイントピックスです。MERYは4月末にリリースしてから2周年になるんですけど、会社としては創業した2年7~8か月くらい前ですかね、それで去年の10月にDeNAグループ入りしたっていうのが僕のプロフィール全部っていう感じです。

買収のきっかけは昨年の「B Dash Camp」だった

───(2社の買収があった)半年前、スタートアップ界に衝撃が走ったんですけれども、どうして『iemo』『MERY』をM&Aしようと思ったのかというところ、守安さんにお伺いできればと思います。

守安 元々ムラマリ(村田マリ氏)のことは知っていましたが、買収のきっかけは昨年7月のB Dash Campだったんですね。パーティー会場で「iemoぐんぐん伸びてます、ヤバいです、是非買ってください」という率直なオファーを頂いて、それまで全くキュレーションについては考えてなかったんですが、その場で検討を始めました。B Dash Campの次の日からの三連休では、サービスの数字を全部出してくれと言ってFacebook Messengerでヒアリングしました。数字の伸びを見て、こういうビジネスあるんだな、面白いなということで、まず『iemo』の買収を決めました。
 そしてキュレーションビジネスの横展開について、「大きいジャンルをやっていきたいがファッションはどうだ」と聞いたところ、ムラマリが「ファッションは『MERY』には勝てない」と言うので、あやたん(中川綾太郎氏)の話になって。(B Dash Venturesの)西田さんと渡辺さんには本当にお世話になりっぱなしなんですけれども、あやたんと初めて会ったのもB Dash Campです。あやたんにも「広告で儲けるだけでは面白くない、リアルの産業構造を変えるようなところまでぶっこんで行かないと大きなビジネスにならないじゃないか、我々と一緒にやろう」と構想を話して、(MERYの買収も)決まりました。

───元々この領域をやりたかったという訳ではなく、村田さんの目の付けどころから始まったんですね。DeNAさんは自社で優秀なタレントを抱えていらっしゃいますし、エンジニアリングパワーもありますが、(買収をせずに)自社でパクろうとはならなかったんですか?

守安 我々上品な会社ですから(笑)。

───皆さん聞きました? 「DeNAパレット」はメディアを10まで増やすのがKPIで、現在は6。つまり、空き枠があと4つある。もちろん自社でやる可能性があるとはいえ、エンカレッジな話ですね。

大企業の中に入るメリット

───逆に村田さん、自社でやり続けるという道もあったと思うんですが、どういう思いがあってDeNAに売却されたんですか。

村田 1年前の段階だと株主がB Dash Venturesさん一社で、ちょうど自社で次の資金調達をするか、もしくは大きな企業と一緒になって戦うか、検討しているタイミングでした。せっかくB Dash Campに参加する機会を頂きましたし(DeNAは)投資の部門も持っていらっしゃるので、両面ご興味があるか聞いてみようかなというところで、守安さんにお会いしました。お話の中で、DeNAの強みをそのまま掛け合わせることができるんじゃないかというのを感じ、中に入るというのもアリかなという風に思ったのが一点です。
 もう一つは、我々は当時6人くらいだったんですね。サービスの開発に注力していますとバックオフィスの部分がスカスカで、採用・ファイナンス・総務・広報、全てやりたいけれども手が回らないという状態でした。それがDeNAのサポートがあれば、一気に解決できると。また、守安さんが我々が挑戦しているビジネスに対して「ピンと来た」「それ伸びるような気がする」と納得して頂いた感触があったので、心はその場で決まりました。

───ちなみに2社個別のバリュエーション(株式価値や事業評価)は出ていないと思いますけど、その時からなんとなくバリュエーション感は頭の中にあったんですか?

守安 あんまり無かったんですけれども、バリュエーションが高かったか安かったかというのは、もうちょっと経って「DeNA安い買い物したね」となるのかなと思っています。

村田 私次第というプレッシャーを頂いたんだと思って頑張ります(笑)。

───逆に、地ならし部分が無かった中川さんに関しては、どういうお声掛けがあったんでしょうか。

中川 僕は「万潮」っていう居酒屋で、ムラマリさんが守安さんに猛烈プッシュしてるのを、前の席で「こんな面白い人が居るんだな」と思って見ていたんですよね。その席が初めて守安さんにお会いしたタイミングです。(ペロリは)一昨年に3億増資していましたが、キャッシュ以上に採用のスピード感に課題を感じていたりとか、メディアとしてトラフィックを成長させるだけではなく結構泥臭い部分が必要になってくるような事業の進め方をしたいと思っていたので、(DeNAと)一緒にやっていくというところでサポートしてもらえるイメージがすごく湧いたんですね。

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───もしバイアウトじゃなかったら、どういう風に収益化していこうと考えていたんですか?

中川 元々IPOを目指してやっていたので、メディアとして広告収益だけというよりは、新しい形のコマースができる事業体にしていきたいと思っていました。そこで採用しなきゃいけない人のカテゴリが変わるのが当時の課題でした。2014年10月1日、買収の発表時点で社員数は12名。直前に3~4名採用したので、買収まで事実上8名でやっていたことになります。苦労してましたね。

買収後、出向社員とのマージは上手く行ったのか

───ここから買収後の話に移りたいと思います。買収されたらたくさん人員が送り込まれてきたとあやたんから聞いたんですけれども、その後はどうなったんでしょうか?

中川 元々1年間ぐらいの採用計画をひいているわけなんですけれども、本来であれば(求職者が)受けに来て採用するというフローを、こういう人が必要ですっていうのを(DeNAに)ピシッて出す感じになりましたね。初期はDeNAから10名近く来て、20名近くになりました。今は色んな採用ルートがあって、自社でも採用させて頂いているんですけど。

───出向社員のモチベーションってどうですか? ドラマ『半沢直樹』だと出向はクビスレスレの感じですよね。

中川 トップの守安さんが「やるんだ」って言っても、ヒカリエから出てよくわからないオフィスに来たくないじゃないですか。やる気がクニャッてなってるような人が来るんじゃないかって、元々不安でした。今一緒に働いている中では、DeNAのカルチャーとして「コトに向かう」っていうのが徹底してる人が多くて、サービスの成功に向かって同じものが見られている感じがすごくあります。人的なマージは上手くいっているのかなと。

───逆に買収する側の守安さんは、どういうことを気をつけられていますか。

守安 事業戦略の方向は一致しておかないといけないので、さっきムラマリが言ったフォーカスは最初に作っていました。他にはオフィスをどうするのか。あやたんだったらカルチャーのことがあるので、オフィスは別に持ちたいと。ムラマリの方は複数の媒体を立ち上げるので、ヒカリエに入って一緒にやりたいと。その辺りの要望を、叶えられるところはなるべく叶えてやっていくというのが大事かなと思います。

───アーンアウト※は付いてるんですか。

守安 アーンアウトは無いですね。海外系のところで買収してきたときに、戦略が決まって進んでいても、変わり得るんす。そこに対してKPIが設定されていると、変えられないんですね。なので、アーンアウトというのは難しいなと。特にシナジーを求めて新しいものを作っていこうとなると難しい。完全に独立して本体と何も関わらずに、ということでならあり得ると思うんですが、産業自体も変わりうるし、経営戦略の足かせになるケースがあるんじゃないかなと。

───なるほど。アーンアウトで揉めているケースも多いですしね。

※買収時の対価を一括ではなく、条件付きの分割払いとする契約のこと。

日本のM&Aの「良い先行事例」になりたい

───DeNAさんは過去にもいろいろな買収されてると思うんですけれども、例えばアメリカのngmocoとの違いにはどういうのがあるんですか。

守安 まず言語が通じるっていうのが重要で、海外の買収が上手く行ったかというとそうではないと思っています。英語を勉強してTOEIC900点超えてきたんですけれども、なかなか細かいニュアンスまで伝わるかとかって分からないじゃないですか。
 あやたんと最近飯食いに行ったら「僕は頑張ってます」「ここで失敗したとなったらスタートアップ業界全体に申し訳が立たない」と言っていました。これぐらいの金額のものってあまりないので、これが上手くいったとなると、我々もそうですし、他のメガベンチャーも事例が増えるだろうから「成功事例を作るのが僕の使命だ」と格好いいことを言ってもらって。

中川 あんまりなかったので、ちゃんとやんなきゃなと思って。

───その歳でその金額はレコードかもしれないですよね。村田さんはDeNAの中でパレットの旗振り役になっていますが、自分の役割をどのように整理しているんですか。

村田 同じ二社同時買収といっても、綾太郎は別のオフィスで隔離型で進めていて、私たちはヒカリエに居てマージ型。ABテストみたいな感じで、全く違うアプローチをしているんですね。上手くいくかどうかテストしながら同じ事業に取り組んでいるという感じです。

───村田さんは以前コントロールプラスっていう会社をgumiに譲渡してますけれども、そのときの反省・教訓みたいなものが下敷きにあってマージ型をチョイスしたんですか?

村田 コントロールプラスでは、SAPをSAPにマージさせたので問題は無かったかなと思っています。國光さんの会社(gumi)だったので、カルチャーが合っていたというのもありますね。今回もカルチャーが似ているという点は重視しました。
 『iemo』の買収直後、似ているとは言いつつカルチャーを言語化するのが重要かなと思ったので、ミッションステートメント・ビジョン・行動指針といったものを、5つのDeNAクオリティという信条に則ったうえで作るというのをやりました。半年経った今、良かったなと思う機会が度々あります。日本の買収は失敗事例が多いと言われるのが悔しいので、いい先行事例になるよう心がけています。

───中川さんはモチベーションレベルで1~10だと、今どのくらいですか。

中川 いま結構、10なんですよね僕。

守安 満点の答えですね(笑)。

───ポジショントークじゃなく?(笑)

中川 ポジショントークじゃなく。M&Aって「モチベーション続くのか問題」というのが語られてるなあって思うんですけど、やり方に対してめちゃくちゃ細かい制限があったりとかが続くと、今まで起業家としてやってきたような人たちは難しくなる側面ってあると思うんですね。ただそこが現状だと、権限を委譲して頂いてるので。
 資金の集め方は変わって、初めて予算申請っていうのを3月にやったんですけど、なんですかね、モチベーション下がる理由っていうのは、現状だと無いかなと思いますね。

───中川さんは27歳になったばかりじゃないですか。今後10年スパンでは、DeNAの社長になるのかなど、どういうイメージで居るんですか?

中川 DeNAの社長って、目指したいんですけど前提として無理だと思っていて。「この先何になろうと思ってるんですか」ってすごい聞かれるんですけど、いろいろ考えすぎると足元のこと出来なくなるんで、あんまり何も考えてなくて、一旦事業を伸ばしきりたいなって思ってます。
 僕、夢があってですね、10年スパンで言うと起業ストーリーがマンガに描かれて、それがすごい面白くてバカウケして、マンガボックスで僕のマンガ超売れるみたいになればいいなって思ってます。

───守安さんからお二人に対して、それから会場にいる皆さんに対して、コメントを是非お願いしたいです。

守安 定性的には、スタートアップのカルチャー・スピード感をDeNAに持ち込んでもらいたい。定量的には、ファッション業界やリフォーム業界には何兆円という市場があるので、1サービスだけでも影響を与えられるんじゃないかと思っています。1サービスが時価総額で1000億円ぐらいになると、10個足すと1兆円じゃないですか。「1兆円が見えた!」なんて言うと変な感じに書かれそうで困りますが、そういう規模感で貢献して頂けると嬉しいですね。

───1サービス1,000億円というのが二人の肩に乗せられましたが、最後に抱負を一言ずつお願いして締めにしたいと思います。

村田 元々買収がなく単独でも『iemo』の事業は絶対にやり遂げるつもりでいましたので、頑張ります。もう一つはこのパレットというプロジェクト、非常に面白い試みだと思っておりまして、中に入っても伸び伸びと楽しくやらせてもらっています。ここに居るスタートアップの方、もしくは企画の持ち込みなど、もっと大きな価値に変えていける可能性があるので、一緒にやれる方がいらっしゃったら是非本日お声掛け頂けると嬉しいなと思っています。大きく伸ばします。

中川 そうですね、さっき1サービス1000億円ぐらいはやってもらわないとって言われたんで、それを目指して頑張りますっていう……えー……抱負ですよね。

───モチベーション10だったはずじゃないですか(笑)

村田 10に見えないけど大丈夫?(笑)

中川 もうめっちゃ頑張ってますよ! さっきも守安さんの話の中で、とにかく僕は変な感じにならない、その、なんですかね、ならない、あの……頑張ってます! 頑張ります!

───パレットのサービスが始まって、戦々恐々としているスタートアップもいる半面、チャンスでもあるわけです。日本全体として買収するされるという成功事例を作っていこう、頑張っていこうということで、このセッションを終わらせて頂ければと思います。本日はありがとうございます。

DeNA Palette(パレット)|DeNAのキュレーションメディアプラットフォーム
B Dash Camp 2015 Spring in Fukuoka

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