株式会社ゲームリパブリック 岡本吉起氏

KPI?まったく見ません。「モンスト」クリエイターが語るヒットの裏側【B Dash Camp】

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by [2015年4月13日]

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ヒルトン福岡シーホークで4月9日~10日に開催された「B Dash Camp 2015 Spring IN Fukuoka」。初日最後のセッションは『「モンスト」クリエイターが語るヒットの裏側』です。登壇したのは『ストリートファイター』シリーズや『バイオハザード』シリーズなど、コンシューマ・アーケードゲームで数々のヒットを生み出した怪傑・岡本吉起氏と、モデレータの藪考樹氏です。岡本氏の辛口でテンポの良いトークが冴えわたる1時間でした(本文中敬称略)。

株式会社ゲームリパブリック 岡本吉起氏

株式会社ゲームリパブリック 代表取締役社長 岡本吉起氏

<モデレータ>株式会社モブキャスト 藪 考樹氏

<モデレータ>株式会社モブキャスト 代表取締役社長CEO 藪考樹氏

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ゲーム内でユーザーにストレスをかけるのは当然! Twitter炎上事件

ss001 「モンストクリエイターが語るヒットの裏側」は【B Dash Camp】初日最後のセッションなのですが、ちょっと人が少ないですね。『モンスト』を知らない方はここにはいないですよね? 

岡本 『モンスト』知ってる人、手をあげてもらっていいですか? (会場スタッフ含めて)全員じゃないですね……次に実際に遊んでいる人は? だいぶ減りましたね。ありがとうございます。それでは課金してる人は?

会場 (笑)

岡本 ……おお、ありがとうございます! いやぁ助かりますね。これ課金者がゼロだとやる気にならないですからね!(笑)

 本題に入ります。今日は僕がガンガン質問するので答えられないときは言って下さい。無理は2回までです。

岡本 少ない!(笑)

 まず、なぜこの対話が実現したのか。実は岡本さんは弊社設立発起人でもあり、5年間は社外取締役を務めていただいたというご縁があります。

岡本 その節はお世話になりました。当時は藪さん、僕のことを知らなくてですね。「お前誰やねん」みたいな顔してましたね(笑)その頃の藪さんは全然ゲームのことは知らなかったんですよね。

 そうですね。(岡本さんを)紹介してくれた方に「さすがに岡本のゲームやったことないというのはちょっと……」と言われました。それまでゲームをプレイしたことが無かったので、生まれて初めて遊んだゲームが『バイオハザード』になりました。その場でグルグル回ってしまったり……。

岡本 ゾンビに襲われて死ぬんですよね。今日『バイオハザード』の話でいいですか?(笑)

 ダメです。次に行きましょう。岡本さんといえばTwitterで炎上した「名言」がありますね。

岡本 確かに『一定のストレスをかけてる』と言ったんですけど、当たり前のことなんです。ゲームというのはストレスとそこからの解放で成り立っています。かかったストレスよりも大きな開放感が得られるように……だからちょっとしたことで(ゲームは)褒めてくれますよ。ソロプレイには一定のストレスがあるのは本当に当たり前で、そもそも最初からマルチプレイ重視なんです、という趣旨で発言したら炎上しました(笑)

 僕を批判した方たちが言いたかったのは、自分のフレンドの中で(自分の)希望するキャラ使いが出てこないってことなんです。たくさんのフレンドから一緒にクエストに挑戦する人をチョイスしますが、そのときに有利キャラがフレンドにいなくて選べないと。

 ゲームにはリスクとリターンのバランスが必要です。リスクといっても色々で、『モンスト』の場合だと際どい場面で敢えてダメージを空に飛ばすとか。課金をするのも、当然、課金をしないのもリスクです。色んなリスクがあって、それに応じたリターンがある。
 コンシューマやアーケードのバランス、つまりいわゆるゲーム性っていうのと、後からどんどん課金できるアプリにおけるゲームバランスは別物です。『モンスト』はアプリなので、ストレスのかけかたは当然従来のゲームとは違います。

 ですので、ガチャを回して(自分の都合にあう)「いいキャラ」を揃えてください、と。それを言ったら炎上しちゃいました(笑)

ヒットメーカー岡本の足跡

ss002 次に岡本さんが生まれてから今にいたるまでを振りかえりたいと思います。実家は愛媛県なんですね。

岡本 最寄のJRの駅から車で1時間くらいかかる、ものすごい田舎に住んでいました。建築家になりたくて大阪に出て絵の勉強をしていました。絵の成績が悪くて、悔しくて本気で勉強してたら建築家じゃなくてデザイナーになっちゃった(笑)負けず嫌いなんですよね。それでコナミに入社しました。

 コナミ自体は、そんなに長くないんですよね。2年ぐらいですか?

岡本 そうですね。ヒット作をちょっと作っただけです(笑)腰かけぐらいの期間で、ちょちょいと大ヒットをポンポンと作りました。

 いやらしい感じで次に行きましょう(笑)で、その後はカプコン。

岡本 コナミを辞めるという話になって、色々な会社がオファーしてくれたんですよ。本当にいやらしい話なんですけど「真心」の大きさでみんな勝負してくれるわけじゃないですか(笑)

 「真心」ね(笑)

岡本 そんな中でカプコンだけが違ってて「お前に開発を任せるから来いや」と。たった1年半しか働いていない若造にそんなことなかなか言えないですよ! で、行ったら、開発じゃなかったんです(笑)俺が甘かった。そこから紆余曲折を経てカプコンの開発部に行きました。

 そこで一発目に出来上がったのが『ストリートファイター2』なんですか?

岡本 そんなわけねーだろ(笑)『ソンソン』『エグゼドエグゼス』『1942』『ファイナルファイト』……色々作りながらですね。27歳くらいで『ストリートファイター2』作った後は、ヒットの連発でした。

 皆さんご存知『バイオハザード』も映画化され、世界的な大ヒットとなりました。100万本は売れたんですよね。

岡本 100万程度なら売れるのは当然だと思っていました。もっともっと売れてます。まあ今とは時代が違いますからね。その後は僕もちゃんと酷いゲームクリエイター人生、オチがありますから(笑)800本しか売れなかったゲーム(ゲームリパブリックで開発した『エブリパーティ』)もあります。

 カプコンが上場(1996年)している状態で取締役になったんですよね。

岡本 「岡本でも取締役なれるんやったら、俺らも専務くらいなれるって開発者に夢見せたい」(ドヤ顔)……なんてことも言いましたけど、社長にもなれずに見事退任ですよね。でも生きてますから、まだわかんない。実際、専務やCEOはやったんですけど、それで十分じゃないですかね? 出世するっていうことは責任も多くなるけど権限も大きくなるので、色々なこともやりやすくなる。なので自分の部下には出世してもらいたいなと思っていました。

b_dash_9402 で、2003年にゲームリパブリックを設立した。

岡本 これは最初から僕の人生設計の中にあったんです。10年社員して、10年取締役して、10年社長やって、人より10年早く引退する。ずっとうまくいってたんですけど、8年でゲームリパブリックがつぶれたんですよ……いや、ギリギリ残して取締役の僕1人でやってます(笑)

 1人しかいないってことですね(笑)次に行きます。モブキャスト設立のときは第1回コンテンツ会をやりましたが、今思うとそうそうたるメンバーだなぁと。水口さんに桜井さん、岡本さん……。

岡本 いや、あの当時も十分凄かったの。せっかく連れてったのに、君が知らなかっただけなんですよ(笑)

 その節はどうも……本当にゲームを全然知らなかったんです。このときの桜井さんはまだ『大乱闘スマッシュブラザーズ』を出す前だったんですよね。皆さん『スマブラ』はご存知ですよね? 桜井さんはだいぶ偏っている人で、7年間スマブラシリーズを作り続ける間休んでいないと。この間、休みがあれば何をやりたいかって訊くと「家でスマブラ以外のゲームやりたい」と言っていました。今、水口さんと一緒にゲーム作っていますし、桜井さんともやりたいなと思っています。岡本さんとも今度ね、是非、お願いします(笑)

岡本 僕は全然声かけてもらえないんですよね。いつも「やりたいな~」って言ってるんですけどね(笑)ほら、みなさんもなかなか拍手しないしね!(笑)

ウルトラヒットではなく、すべては計画通り

 で、飛ばして、ちょっとお手伝いしてもらった『モンスターストライク』がウルトラヒットした。

岡本 ありがとうございまーす!

b_dash_9403 いま、2300万ダウンロードを突破して月商で100億円超すぐらいですね。これもリリース前に岡本さんご自身が立てた計画通りなんですよね。

岡本 そうなんですよ。リリース前に自分の遊んでいる感触で、この数字にほぼ近いものを予想していました。手書きでノートを作っているのですが、残ってる記述と売上がずれている月は、2014年2月、10月と12月でした。2月が10%下で、10月が10%強上、12月が15%上ですね。ウルトラヒットではなくて、おおむね僕の想定通りのところに着地しています。

 会場の皆さんも聞きたいところだと思うのですが、初めの3ヶ月間くらいの売上の推移はいかがでしたか?

岡本 具体的な数字はちょっと……。僕は見ないのですが、ミクシィの人たちはある程度のKPIを見ているので「イケるね」という判断は皆していたと思います。ブーストや広告も打ってないのにドーンと上がったんですよ。最初の数字が非公開だからわからないと思いますが、毎月4倍ずつ増えているのでこのままじゃ11月には国家予算追いつくよ、と心配していました(笑)もちろん冗談です! ただサービス開始当初はまだ継続できるかも分からないし、ボーナスも出てないし、皆を酷使しなくてはいけない状況でした。

 やっぱり『パズドラ』がずっとライバルとしてあったということですか?

岡本 ライバルじゃないですよ。2013年末には「ポストパズドラ」なんてネットで騒がれていましたが、全然「ポスト」どころではありません。

 ちょうど去年の今くらいの時期に「1日だけでもパズドラを抜くのが本当大変だ」というお話をしたんですよね。

岡本 本当に大変でしたね。元々2014年の5~6月に1回パズドラを抜く、という予定をたててたんです。それが予定より1ヶ月はやく抜けたんですよね。正直その時思いました。「思ったよりパズドラ高くないな」と。そこからが地獄の毎日ですよ。「手が届くんじゃないか」と思ったんですが、勘違いだったんですね。追いついて初めて分かった『パズドラ』の凄さというやつです。

 ミクシィの売上のライフイベントやメディア部門、すごいことになっていますね。ものすごい勢いで売上が伸びて、今やほぼ売上の9割ぐらいを『モンスト』が占めている。ゲームリパブリックとクレジットされていますが、ミクシィの従業員ではないということですね。

岡本 違いますよ。

 外注なんですよね。なので、ロイヤリティがあると思うんですが……消費税よりは高いですか?

岡本 消費税、今、8%ですよね……う~ん、うふふふ(笑)

 はい、ここまでにしておきましょうか(笑)

岡本 (しみじみと)100億円ってすごいですよね……。

 開発の最初期からミクシィの渋谷本社の中に岡本さんチームがいたということですか?

岡本 そうですそうです。ミクシィさんからの条件が、丸ごと内部に入ってやってくれ、それ以外の仕事はするなということでした。僕は「わかりましたァ!」と(笑)(ゲームリパブリックの)家賃払えない状況だったのでほんと助かりました。家賃もいらない、PCも買ってくれるんですよ! おかげさまで全員連れていけました。嬉しかったですね。

過去のヒット作の規模と、今のアプリの規模は同じくらい

b_dash_9404 さて、岡本さんの人生を軽く振りかえったところで、僕からいくつか質問させていただきます。まずは『モンスト』がどうやって生まれたか、岡本さん自身にお話してもらいたいと思います。『スト2』からずっと「岡本らしさ」を貫いてきたと思うので、当然『モンスト』にもこだわりがあって作ってると思うのですが。

岡本 最初にミクシィさんから「皆が集まってワイワイ楽しめるもの」を作っていきたいというお話をいただきました。皆でワイワイ楽しく遊ぶアプリは今まで無かったので作りたいと。「mixi」(SNS)の延長、ミクシィらしさの追求です。
 ミクシィは他の企業にも同じ条件で開発を依頼してたのですが、契約する中で企画書提案しますよね。うち(ゲームリパブリック)だけ2週間でモックを作って直接持っていったんです。提案したときには完全に今のモンストとほぼ同じように動いていました。それを遊んでもらったら「これです、僕ら(ミクシィ)が求めていたのは」って言っていただけて、開発がスタートしました。
 ただ、絵とか音楽などの素材は(2週間で)作れないので、モックには他社さんのものをちょっとお借りしました。

 それはちなみに……?

岡本 上場企業なので言えないです。『ドラク…ピー!』みたいな(笑)

 言っちゃいましたね(笑)

岡本 言ってないです(笑)で、まぁ誰でもその『ドラク…ピー!』のキャラクターで、『モンスト』のシステムを使って遊んだら楽しいんですよ。「コレだ!」と気合をいれて持っていったら、僕の友人の木村というプロデューサーがなんと『ドラク…ピー!』を遊んだことがなかったんです……。知らなかったら意味がわからないですよね。狙って「ドヤ!」と持っていったのに滑ったのが一番ショックでした(笑)

 それはそれは(笑)その後正式にミクシィと契約したんですね。

岡本 はい。正式に契約が決まる瞬間に! 開発費を4割ほど削られてしまいました。たぶんですけどその当時のミクシィは今のようにリッチじゃなかったんだと思います……。

 なるほど。皆でワイワイ遊ぶというミクシィからの依頼があったにせよ、『モンスト』という形にいたるにあたって、岡本さんがこだわってきたことはなんですか?

岡本 炎上事件の項目でもお話しましたが、ゲームというのはリスクとリターンのバランスによって成り立っていると思うんです。そこに一番気を使いました。

 元々「課金ゲームなんて作らなくていい」「アーケードやコンシューマでヒットを出せ」とずっと言われてて、それがほんっとに悔しかったんです。これもネットで炎上してるんですけど(笑)「これからはコンシューマの時代じゃなくてケータイアプリの時代だ」と俺は言ってる。それに対して「お前(岡本)がコンシューマで活躍できなくなっただけだろ」と。僕がミクシィと一緒に一本作りますと発表したら「岡本吉起とミクシィが組むらしいけど、ヤな予感しかしない」と書かれました。で、いざヒットしたら「モンストはゲーム業界の天才が作っていた」と同じヤツが書いてるんですよ(笑)ふざけるな、と(笑)でもそんなものですよね……(苦笑)

 『モンスト』はまぐれによるヒットではなく、本当に皆で全力を出して作っていったんです。遠慮も何もない物凄い喧嘩もしました。「俺の思ってるゲームはそうじゃねぇ!」なんてぶつけるだけぶつけて……期限も予算も限られてる中で、プロデューサのわがままもあって、ほとんど関ヶ原の戦いのような状態でした。ここで負けたらゲームにならないというところ以外は飲んで、絶対譲れないところは全部ねじ込みました。

 木村くんがプロデューサに「どうしていうことを聞いてくれないんだ」と言ったときに「大概きいてますよ」と言われてしまったんですけど、僕的には100%きいてもらいたいんです(笑)僕が喧嘩するときは絶対引けないところなので。ただ向こうにも言い分があるので……「2度とお前と組むか!」というところまで喧嘩しましたね。

 スマホアプリの前、ブラウザ(ゲーム)が来てたころ、なんとなく外部から見ていて「ブラウザで岡本さんのやりたいことはやりきれるのかな」と疑問に思っていました。実際アプリ開発に行った瞬間、一発目で『モンスト』をスマッシュヒットさせましたよね。その辺、アプリのボリューム感と岡本さんはちょうど合っているんでしょうか。

岡本 それは本当ただの偶然です。敢えて言うなら、僕がヒット作を作ってた頃のゲーム容量や処理能力を僕は「手のひらサイズ」と呼んでるんですけど、その時代と今のスマホの表現能力が近いんですよ。PS4のような高性能据え置き機は巨大なフィールドを考えて、ゲームを作っていますよね。アプリにはそこまでの能力は必要ない。小ぢんまりとしたところで作れます。その規模感が僕の培ってきたノウハウと近かったんです。

 コンシューマやアーケードで当てて、ブラウザゲームに入って……あてる感覚を掴むまで辞めないっていうのはすごいですね。

岡本 負けん気が強いですし、しつこいですから。

 バッターボックスに立ったらホームランしか狙っていませんよね。

岡本 そりゃあそうです。ミクシィはホームランしか打ってない、ホームラン以外はコケている会社なので(笑)そういう意味ではすごく組みやすいです。

 「なんで『モンスト』はモブキャストで出さなかったんだ」「なぜミクシィなんだ」と投資家(株主)に訊かれるんですよ……。

岡本 ミクシィのサーバーチームが凄いからですね(笑)『モンスト』は全然落ちないでしょう。落ちそうになったらメンテを入れるんですけど、ごく短時間で終わらせますし。やはり2000万人のユーザが毎日mixiにログインしていたとき、それに耐えられるサーバを運営する能力をミクシィは持っていますから。負荷分散が本当に上手なんですよ……だから次もミクシィさんと組みます。モブキャストは残念だけど……。

わかりきったチュートリアルはいらない

 そうですか……。それでは次の質問です。ミクシィさんは一部上場していますし、中期計画やそこから逆算したことをIRで代表者がお話をされてるとは思います。それとは別に岡本さんが「ちょっぴり関わったオジサン」として、また、過去に『バイオハザード』などで日本のコンシューマゲームを背負ってきた存在として、『モンスト』を世界展開するとしたらどのようにするのか教えてください。あくまで個人的に(笑)

岡本 汚い質問だなあ(笑)
 ちょっと話がずれてしまうんですけど、当然僕は『モンスト』を世界に展開してもらいたいと思ってるし、世界に通用するように最初から作っているつもりでいます。グラフィック的な話をすると、国内が主戦場なので多少無理がある絵柄もありますが、基本的には誰でもわかるよう直観的に作ってあるんですね。

 以前グリーさんと仕事させてもらった何年かで、勉強した部分と反面教師にした部分があります。たぶんIT業界なら皆さんも同じ経験されてると思うんですが、チュートリアル作ってますよね? 『モンスト』にはチュートリアルがありません。言葉での説明なしに遊べる。だから、世界で通用するはずです。

 全世界共通で一番ストレスが貯まるのは、わかりきってるチュートリアルをやらされることだと思うんです。でもグリーの担当者が僕に言い続けていたのは「チュートリアルのどこで脱落しているかみてください」ということだったんです。それはKPIっていうのをとても馬鹿にしていると思います。KPIの、自分たちの都合のいいところだけを見ているからそういう発言になるんです。目標数値も都合がいいんです。

 アプリ業界にはチュートリアル突破率が良ければ成功するというような神話があるんですね。今時カードゲームで「このキーを押してね」「カードを並べてみてね」なんていらないですよね、本当は。スマホゲームのルールがわからない人は、いまさらカードゲームをやらないので。
 
 チュートリアルを無くすと決めたとき、ミクシィさんとも喧嘩しました。皆「必要だ」というんです。逆です。チュートリアルがなくてもわかる直観的なゲームを作るべきなんです。アーケードやコンシューマのゲームだって、現状のスマホアプリのような懇切丁寧なチュートリアルないでしょう。

 なるほど。ちなみにミクシィ会長の笠原健治氏は……

岡本 『モンスト』やっていました。無課金でした。

 そうなんですか!?(笑)

岡本 経営者がずっとゲームやっているわけにはいかないですからね(笑)そもそもミクシィはゲーム会社ではありませんし。
 僕はゲームクリエイターだからやりますよ。いつも言ってるんですが、ゲーム、好きじゃないです。仕事だからやってるんです。そのうえで、僕みたいなゲーム好きじゃない人間でさえやりたい、面白いと思うゲームを作っています。
 ゲームをしない人がハマるゲームって物凄く単純なものなんですよ。(ゲームに慣れ親しんでしまうと)普段ゲームをしない人のことを考えるのが難しくなります。逆に、ゲームをあまりしない人間をコアなゲームに取り入れるのも難しい。ニッチなゲーム好き相手ばかりしていると、おのずと難しいゲームばかりになって、売り上げに限界がみえます。なのでできるだけ幅広くプレイヤーをとりこめるよう心がけています。

 とてもためになるお話でしたね。ミクシィのサイトをみると森田仁基社長は『モンスト』の室長、事業拡大統括とあったのですが。

岡本 「モンストスタジオ」という『モンスト』を開発・運用している人たちが集まっているスタジオがあって、そこに森田社長もいますよ。今年39歳かな? とても若い方です。38歳でミクシィの社長になるというのはすごいですね。僕なんて「カプコンの社長になるよ」って豪語して今54歳ですよ。まだなってない、おかしいなぁ(笑)俺も社長目指そうかな。軒先借りて母屋乗っ取る、みたいな感じで(笑)

KPIに頼らない、TTPなんてもってのほか!

 それ言っちゃいけないやつですね(笑)僕も含めてこのセッションには同業のゲーム関連会社の方が多数参加されてると思うんですけど、是非、岡本さんから「アカンで!」みたいな、辛口のメッセージをいただけますか?

岡本 チュートリアルの話もそうなんですけど、過去に成功したことを信じすぎているように感じます。株とかと同じで誰のことも信じちゃダメです。僕のいうことも信じちゃだめです。自分が信じるように、作るべきなんです。

 皆さんKPIありきで考えてると思うんですが、僕はまったく見ません。元々コンシューマやアーケードを作っていたので、数値を見てそれから何かを調整するなんてやってないですからね。僕がこう考えてこう作るから、プレイヤーはこうなるんだ、というストーリーを全部作ります。それくらいのことは最初から組み込んでリリースする。そうして間違っていたときに初めて数字を見てほしいんです。今はもう皆さんKPIありきじゃないですか。数字ばかり追いかけてますよね。数字というのは自分に都合よく解釈できるし、下請けに対しても好きなように言い訳でちゃうのでダメです。結果だけを見ましょう。

 「TTP」=「徹底的にパクれ」。聞いたのはつい最近なんですが腰ぬけそうになりましたよ(笑)そこになにもクリエイティブなものは存在しません。僕の中ではTTPなんて必要ない。こんな言葉が独り歩きしてるのが間違ってます。真似は絶対だめです。新しいユーザーつかないので。「○○みたいなゲーム」を作るために自分の大切な人生の時間を費やすのは良くないですね。楽しく遊べてストレス解消できるものといったら、やはり今までなかったサービスだと思うんですよ。それをTTPとかほんとやめてほしいです。

 TTPなんてしていると、この業界長くないと思います。でも、そういう時期でもあると思っています。
 僕が入ったばかりのころのゲーム業界も、ちょうど今と同じで『インベーダー』というゲームが大ヒットして、皆がそれをコピーしてたんです。そのコピーしてたゲーム屋が今のゲーム業界を担っています。元々『インベーダー』はTAITOのものだったのに、全部のメーカーがインベーダーを出した。その次はインベーダーもどきをだした。今で言うと『怪盗ロワイヤル』もどきだったり『ドラゴンコレクション』もどきだったり……。『インベーダー』をコピーしただけだったメーカーは今、声高に著作権を主張しています。「おめぇが言える立場か」と思うんですけど、でもそういう時代だったんです。
 だからアプリ業界にもすぐに「コピーゲームを作るのは恥ずかしいことなんだよ」という時代がきます。僕らが思ってるよりずっと早くね。
 既存のヒットゲームを真似するんだったら僕じゃなくてもいいし、皆さんじゃなくてもいい。誰でもいいんです。そういうのは業界をダメにします。

 ありがたい言葉でした。モブキャストのメンバー含め、会場の皆さんの心に響いたと思います。

岡本 耳が痛い人もいるかもしれませんね。是非TTPはやめていただきたいです。

2本目のホームラン、パチンコとエロゲーで当てて5冠王

 最後の質問です。これは僕が個人的に聞きたいことです。これから先の、ゲームクリエイターとしての岡本吉起について語ってください。

岡本 これは明確に考えを持っています。いくつか夢があります。まずは、ミクシィさんが『モンスト』というヒット作を作りましたと。今のところ2打席連続ホームランを打った会社ないのでミクシィさんに打たせたい。『モンスト』が1位とか2位にいるあいだに、もう1個のタイトルが1位か2位になるようにしたい。

 すごい(笑)株価上がっちゃうかも(笑)

岡本 俺の個人的な夢だから。こんなので上がったら怖いよ(笑)というわけでミクシィさんと次のホームランを打ちたいです。

 モブキャストで軽く出すのはダメですか?

岡本 モブキャスト、んん~、聞いたことないなぁ(笑)

 社外取締役でしょ(笑) 2つ目は?

岡本 2つ目は、ミクシィさんにゲームのノウハウを置いていくことです。これは元々口約束してあるんです。ミクシィの中にはミクシィ風のみんなでワイワイするゲームを作る開発部隊がほとんどないんです。『モンスト』はうちのメンバーでほとんど作り始めて作っちゃったので。運営ノウハウはあるので、ゼロから1を作りだすノウハウをできるだけミクシィさんに伝授してから抜けます、と口約束しています。これを口約束で終わらせずにきちんと残していきたいなと思っています。

 で、次が個人的な野望です。アーケードでトップとりました。コンシューマでトップとったやつもあります。アプリでも『モンスト』でとりました。現在3冠王なんですね。僕は5冠とりたいんです。パチンコでもトップとりたい。ネタはあるので、もしパチンコ屋さんが聞いてたら、僕にオファーしてください!

 岡本さん、パチンコやったことないですよね?

岡本 それ言わないで(笑)理論上、理論値です(笑)で、最後がエロゲー!

 エロゲーですか。それ本気のやつじゃないですか(笑)

岡本 実はエロゲーで遊んだことは1回もないんですけど、皆で相談しながらエロゲーでもトップをとって5冠王になりたい。クリエイター人生の最後はエロゲーを作って、圧倒的なエロじじいになりたいです。極めたいです。誰でも遊びたくなるエロゲーにします。エロは当然誰よりもエロくしたいです。絵もキレイなのがいいし、声もすごくしたいし。でも、なにより、エロにいたるまでのゲームの部分を、俺が全力入れて作りたいって思ってるんです。

 ちょっと危ない話になってしまいましたが、遊んでみたいですね(笑)さて僕が用意した質問は以上になります。参加されている皆さんも、岡本吉起に訊いてみたいことがあれば是非どうぞ。

質問タイム

──面白いお話ありがとうございました。2つお訊きします。まず、かなり明確に今後の予想を描いているということですが、世界展開についてどの程度の成長・売り上げ曲線を予想されていますか?
岡本 正直に申し上げますと、海外マーケティングに関しては一切口出ししていません。ミクシィさんが自分たちの判断でされています。

──注目されてるゲームやコンテンツがあれば、教えてください。
岡本 個人的に遊んでるのはGREEのシミュレーションゲーム『キングダム』です。秦の始皇帝の話で、原作はヤングジャンプで連載されています。ランキング上位には入ってこないんだけど、個人的にその時代の中国が好きなので(笑)
 それ以外だと……正直なところ、どこのメーカーのゲームというのも気にせず、研究を兼ねて一通り遊びます。時短させてもらうために課金します。だいたい毎月、全部のゲームを合計して50万円程度課金に使っています。
『クラッシュ・オブ・クラン』がやはり相当いいなと思っています。日本国内に限定すると、スクエニさんがなんかちょっと「掴み始めている」ように感じます。

──『モンスト』に関しての質問です。オリジナリティがあるということはわかるのですが、モンスターの育成や進化などの部分でこだわった点はありますか?
岡本 ありません。僕はゲームを作るとき、既存にあるもので、気にいってるものを95%くらい使う。そのかわりゲーム性の部分はオリジナルでいこうと思っています。お気づきだと思うんですけど、ユーザインタフェースや数値調整は、パズドラさんをかなりトレス(模倣)しています。チュートリアルを作らないと決めた時点で、一番「受けて」いるシステムをトレスすべきだと思ったからです。なので進化とか融合に関してはネットにあるパズドラのデータをかなり参考にしています。

──ミクシィにゲームをゼロから作るノウハウを遺すとのことですが、「岡本塾」のようなものを開催するご予定はないんですか? 本だとか。自分も参加したいです。
岡本 ないっすね(笑)実際に、ずーっと一緒にいないと伝わらないものがたくさんあると思うんです。例えば赤ん坊を育てるとき「熱いよ」って言っても火傷するまでわからないじゃないですか。それと同じで、傍について「失敗するよ?」と教えたうえで失敗させて、「次は同じ失敗したらダメだよ」と言わないと。理論値だけの説明会は、オファーいただいたらやりますし藪さんのところでやったことありますけど、たぶん成長もしないしタメにならないと思います。

 そんなことありませんよ。

岡本 理屈だけ聞いてもね。僕のしゃべりがチャラいので皆さん軽く流すんですけど、真面目にしゃべってるんですよ。そういうものは一緒に仕事している人には伝わるかなって思うんですけど、塾では難しいかなと思っています。

 是非(岡本さんの下に)就職してください(笑)

──『モンスト』の弾いて遊ぶというシステムは、大量の案から選んで持っていたのか、それとも、「これだ」という確信があったものを持っていかれたのでしょうか?
岡本 完全に「いける」というものを持っていきました。ほぼほぼ1週間で、現行の『モンスト』と変わらないモックを作りまして……ビジュアルは『ドラク…ピー!』をお借りしましたけど(笑)

──では、元々あたためていた企画を持っていた、という感じですか?

岡本 答えにくいです。ノーコメントで(笑)

──ゲーム会社を運営しています。岡本さんのようなクリエイターがほしいですが、なかなかいません。岡本さんが若いクリエイターを見て「コイツはいけるな」と思うような子は、どんな特徴がありますか?
 良い質問ですねぇ。

岡本 明文化できないんですけど、面接の時点でわかります。人に迎合しないというか、やはり目が違います。自信に満ち満ちている。「ゲーム業界を変えたい」と言う。「こんなものを作りたい」とは言わない。「御社の作品が好きで受けました」とは絶対言いません。
 面接は最初から上の者がしたほうがいいですよ。若い子に任せると、自分に都合の良い手足になる子をいれるので。将来こいつは会社を背負って立つっていう子を拾ってくると、とんがってて、社内がギスギスしてなかなかまとまらないんですけど、圧倒的にいい人材になると思います。

──勉強になります。ありがとうございました。

モンスターストライク(モンスト)公式サイト
株式会社モブキャスト
B Dash Camp 2015 Spring in Fukuoka

  • http://laugh-raku.com/ rahuraku

    名言。
    ”過去に成功したことを信じすぎているように感じます。株とかと同じで誰のことも信じちゃダメです。僕のいうことも信じちゃだめです。自分が信じるように、作るべき”

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