東京メトロ10周年記念サイト

その発想はなかった~東京メトロ、オープンデータ活用コンテスト結果発表~

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by [2015年3月03日]

東京メトロ10周年スペシャルサイト

東京メトロ10周年スペシャルサイト

帝都高速度交通営団といういかにも厳めしい、そして戦時統制の名残というべき組織が民営化されて東京地下鉄、通称東京メトロに改組されてから早いもので10年の歳月が経過しました。

鉄道ファンな筆者は、あのメトロ(Metro)の頭文字であるMの字をデフォルメした今の東京メトロのロゴよりもサブウェイ(Subway)の頭文字であるSの字を図案化した営団時代のシンボルマークの方が格好よかったのになぁ、などと今も思ってしまうのですが、この10周年を記念したスペシャルサイトが開設され、そこで東京メトロのオープンデータを活用したアプリケーション開発コンテストが行われました。

オープンデータと言ってもピンとこない方もおられるかも知れませんが、要するに東京メトロのリアルタイムの列車運行情報や列車位置といった情報をデータ化したものが公開され、それを利用したアプリの開発コンテストが行われた訳です。

このコンテストは開催から応募締め切りまでわずか2ヶ月とやけに短期間で開催されたのですが、その間にアプリの応募数は何と281点、しかも海外からの応募まであったとのことで、首都東京の大動脈である東京メトロに対する関心の高さを見せつける結果となりました。

選考委員をつとめた東京地下鉄の常務取締役である村尾公一氏のコメントによれば「鉄道事業者自らでは思いもつかないようなアプリの応募を期待していた」とのことで、地下鉄におけるサービス向上について自社だけのアイデアでは限界があることと、その限界を突き破ることがこのコンテストに期待されていたことが同時に示されていたのですが、それら281点の参加アプリ、特に上位入賞となった作品を見ると、なるほど鉄道事業者の論理というか行動パターンからはまず考えつかないような切り口の思考によるアプリが含まれており、東京メトロ側のそうした期待は見事にかなえられたと言って良さそうです。

今回はそのコンテスト上位入賞作についてご紹介いたしましょう。

路線案内+時刻表=ココメトロ?

「ココメトロ」

「ココメトロ」

グランプリ受賞作となったのが、池間健仁 氏の「ココメトロ」(iOS 6.0以降用)です。

これは現在位置情報を取得して最寄り駅での次の電車の発車時刻、到着予定時刻、乗り換え路線の発車予定時刻、それに路線運行情報や前後の列車の停車位置などを表示するアプリです。

それは単なる乗り換え案内なのではないか、と思う方も恐らくおられるかと思いますが、このアプリは乗り換え案内アプリと違い、(運賃を含めた)経路情報を表示しません。

基本はあくまで、各路線をどう乗り換えてどの駅で乗り降りするのかを決めているユーザーにとって便利の良い(乗り換え先路線を含めた)時刻案内に徹しているのです。

言われてみれば、確かに一般的な乗り換え案内はこの観点が欠落している節があって、意思決定の材料として乗り換え先各線の次の電車の発車時刻を知りたい場合に延々と各経路のチェックをしなければならなかったりします。

それが一目で確認できるのですから、自分の乗りたい路線・乗り降りしたい駅を決めて行動している人には大変わかりやすく有用で、これまでにない「駅時刻表」のスタイルを構築できていると言え、筆者の経験に照らしてもなるほどこれがグランプリとなったのは納得が行きます。

選考委員のコメントでも触れられていましたが、これは(現時点では実現が難しいでしょうが)東京メトロ以外の鉄道事業者、具体的にはJRや東京都営地下鉄などからのデータ提供があればさらに利便性が高まること請け合いで、現状東京メトロのデータ内で閉じてしまっているのが惜しいアプリです。

目覚まし時計に東京メトロの運行状況を反映させる

「もしもアラーム」

「もしもアラーム」

優秀賞として筆頭に挙げられていたのが、Ahiru Factroyの「もしもアラーム」(iOS 8.1以降用)です。

これもグランプリの「ココメトロ」と同様に現在位置情報と列車運行情報の組み合わせで機能するアプリですが、こちらは一ひねりしてそれらのデータを「目覚まし時計」に組み合わせることで、新しい機能を創出しています。

具体的に言うと、目覚ましをある時間にセットするにあたって、「早起きの限界」つまり電車の遅延などがあったとしてどのくらい早く起きるのを許容できるか、という設定や、その電車の運行状況を監視したい路線、それに雨が降った場合に降雨量(位置情報とYahoo!の気象情報を利用して検出します)の度合いに合わせてどの程度早く起きるかを予め設定しておくことで、電車のダイヤ乱れや雨の降り方に合わせて目覚ましの鳴る時間を前倒するというものです。

つまり、かんかん照りでダイヤの乱れなく東京メトロの電車が運転されている場合にはただの目覚ましでしかないということです。

これもまた目の付け所の素晴らしいアプリで、電車の運行状況と降雨量を組み合わせて前倒しの度合いが決定されるあたり、よほどこれらで苦労している方が開発したのではないかと思ってしまいます。

電車の遅延を「予報」する

「遅延予報 東京メトロ版」

「遅延予報 東京メトロ版」

優秀賞の2番手は株式会社エムティーアイの「遅延予報 東京メトロ版」(Android 4.2以降用)です。

その名のとおり、現在いる駅での先行あるいは次の電車の現在位置、定時運行が出来ているか否か、列車種別、行き先駅、それに発車予定時間などの要素から、ダイヤが乱れた場合に先行列車がどの程度の所要時間で運転されているのか、次発列車が今どの駅にいるのか、あるいは5分以下の「数分の遅れが具体的にどの程度なのか」など、そのままその駅で次の電車を待つか、それとも振り替え輸送などの代替手段に切り替えるかの意思決定を助けるツールとなっています。

実際、乗り継ぎや移動スケジュールがタイトな場合、列車遅延が発生した場合に「数分の遅れ」などといい加減なことを案内され、挙げ句の果てに先行列車が詰まっているため駅間で停車されたりして大幅な遅れになると洒落になりませんから、ある程度の予測を立てやすくする/実際に予測結果を表示するこのアプリは非常に有用です。

ちなみにGoogle Playストアで「遅延 東京メトロ」で探してみると似たような名前のアプリが多数登録されています。

それだけ駅でのあいまいな遅延情報案内に煮え湯を飲まされた方が多いということなのだと思いますが、なかなか予測の域にまで踏み込んだこのアプリレベル並の完成度に達しているものはないようです。

東京を可視化する

「TOKYOTOKYO]

「TOKYOTOKYO]

goodデザイン賞の筆頭が博報堂アイ・スタジオの「TOKYOTOKYO」(Android 4.4用)です。

列車ロケーション情報、つまり現在運行中の東京メトロの全電車の総車両数を可視化して表示したり、各駅単位の混雑状況をヒートパップの形で可視化したり、あるいはオープンデータと独自データの組み合わせによる「レコメンドディープスポット」機能でディープな観光スポット情報を提供したり、と高度なビジュアル機能を利用して東京を「見せる」事に特化したアプリです。

もっとも、眺めている分には確かに見た目に美しく楽しいソフトなのですが、実用性があるかと言われれば少々首をかしげざるをえないのも確かです。

実際には見えない光景を見せる

「東京動脈 Flow-in」

「東京動脈 Flow-in」

goodデザイン賞の2点目が栗山 貴嗣 氏の「東京動脈 Flow-in」(Android 2.2以降用)です。

路線を選び、運転方向を選ぶことで現在運転中の電車を表示し、そのいずれかを選択することで、その列車から見た他の東京メトロの電車所在位置や路線の位置関係を3Dグラフィック表示するこのソフトは、「TOKYOTOKYO」以上に実用性とは無縁の眺めて楽しむアプリです。

もっとも、ぼんやりと眺めていると、夕方の半蔵門線が渋谷駅前後で列車渋滞を引き起こして遅延を頻発したり、各線が思いも寄らぬような位置関係で他の線区と地下で立体交差しているのが見て取れたり、とただ運行情報や路線図を眺めているだけではわからないことに一杯気づけ、路線ごとのラインカラーをユーザーが(当然のこととして)知っていることを前提とした路線選択方法をはじめユーザーインターフェイス部分には難がありますが、なかなか興味深いアプリです。

ちなみに東京メトロ9路線に対応とされているのですが、方南町支線や北綾瀬支線といったともすれば「カウント外」にされがちな支線の列車運行もきちんとサポートされていて、この手の路線が大好きな筆者はそれだけでこのアプリに好感を抱いてしまいました。

タイトルを眺めているだけでも色々考えさせられる

その他、「10thメトロ賞」として@mima_ita 氏の「地下鉄多言語化MOD」(Webアプリ)、gherz(吉岡 猛) 氏の「ママのお出かけサポート」(Webアプリ)、トムソーヤ 氏の「うちカエル」(Android 2.2以降用)、Nobuhito Ibaraki 氏の「Metronavi」(Android 2.3.3以降用)、日向 慧 氏の「いまどこ?」(iOS 8.1以降用)、hassaku 氏の「Metro Toilet Finder」(Webアプリ)、MetaPGRS 氏の「東京メトロエレベーター案内」(Android 4.0以降用)、yukiono 氏の「TrainNow」(iOS 8.1以降用)。株式会社ビッツ の「ねえ、東京メトロさん これ見てよ!」(Webアプリ)、それにおこい 氏の「四季電車」(Webアプリ)の10作品が受賞しています。

どれもアプリのタイトルを見るだけで概ねそのアプリの作者が東京メトロ利用に当たって何を問題と考えているのかが示されていてなかなか面白いのですが、例えば駅のエレベーターやトイレの位置は必要で探すときに限って見つからなくて大変に困った実体験が筆者にはあるので、有用でしょう。

少なくとも、東京メトロは多くの応募者がこうしたアプリを応募してきたことの意味を過たず理解し、適切な案内が出来るよう努力すべきでありましょう。

短期間で作ったとはとても思えない完成度

さて、今回東京メトロが10周年記念で開催したオープンデータアプリ開発コンテストの上位作品をみてきたわけですが、筆者の正直な感想としては「これだけの短期間でよくこれだけのアプリが作れて応募してきたな」ということに尽きます。

しかもそれぞれ様々なアイデアを投じ工夫を凝らしており、各アプリの説明を眺めているだけでも「そうかこの手の情報はこう使うのか」と感心することしきりでありました。

なお、東京メトロでは今回オープンデータとして公開された各種情報についてどのように取り扱うのか未定とのことですが、これだけ有用なアプリが出てきた状況を考えると、今後も引き続き公開を続けて欲しいと筆者は思います。

これだけのアイデアの産物を、ただ10周年記念のコンテストの選考だけで終わらせるのはあまりにもったいなすぎます。

選考委員に含まれる東京メトロ幹部お二人のコメントを見る限り、今後の公開継続が期待できそうな感じではありますが、東京メトロさんには特に今回公開したオープンデータの継続公開を強く希望しておきたいと思います。

▼参考リンク
東京メトロ 10th anniversary
オープンデータ活用コンテスト | 未来とメトロ | 東京メトロ 10th anniversary
東京メトロ オープンデータサイト 開発者サイト

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