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人工知能がスマホ業界に与える影響を考える

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by [2015年3月03日]

人工知能という言葉が世間に知られてからもう何年も経つが、最近は人工知能がプロ棋士を打ち負かしたり、Pepper のようなロボットが登場したりで注目度が再び高まってきているように感じる。
そこで、本記事では人工知能の研究・導入がこのまま進むとスマホ市場がどうなっていくのか、について考えてみたいと思う。


最終的に プロ棋士1勝 コンピュータ4勝 という結果となった第三回電王戦。

人工知能は、人間の知能を模倣したものではない

人工知能と聞くと、人間のような知能・知性・感情を持っていて、しかも人間以上に正確で素早い演算能力を持つものをなんとなく想像する人が多いのではないだろうか。
もちろん、そこを目標としている研究者もいるだろうし、人工知能の細かな定義も文脈によって違うのだが、少なくとも、最近よく耳にする「人工知能」とはそこまで高尚なものではない。

最近よく見る人工知能とは、人間の知能そのものを目指したものではなく、人間の知能が必要不可欠だった知的労働を肩代わりできるものを目指して研究されたものなのである。

つまり、人工知能が人間のような知能を持って思考しているのではなく、情報をたくさん集め、その情報に基づいた判断を行うということをしているに過ぎないということである。
これを、人工知能 (AI) 開発の入門題材として良く扱われるオセロプログラムの開発を例にして説明してみよう。

まず、誰もが知っている通りオセロの基本ルールは、

    1. プレイヤーは二人で、白黒の石の色を選び、黒から交互に石を置いていく
    2. 石は、相手の石を挟めるところにしか置けない
    3. 自分の石で相手の石を挟むと、自分の石になる
    4. 最後に自分の色の石がより多く盤上にある方が勝ち

というものだが、まずこのルールを「情報」としてオセロプログラムにプログラミングする。
これだけではオセロ AI として動作しないので、例えば「なるべく多くの石を挟めるところに石を置く」という情報もプログラムすると、AI は4つの基本ルールを守った上でなるべく多くの石を挟むように石を置き始める。
この時、プログラマーはオセロプログラムがどこに石を置くかを逐一プログラミングしているのではなく、オセロプログラムが5つの情報に基づいてどこに石を置くかを判断しているので、これは人工知能 (AI) であると言える。

もちろん、毎回「なるべく多くの石を挟むように」石を置いても勝てないので、「その次に相手が取れる石が少なくなるように」とか「角を取られないように」とか情報をプログラミングしなくてはこの AI は強い AI にはならない。
このように、判断の基準となる情報を人力でプログラミングするのが最も原始的な人工知能である。

過去の実例から学習する人工知能

技術の進歩により、判断基準となる情報を人工知能自身が見つけ出す「機械学習」というものがでてきた。
これは、過去のデータをたくさん集め、その中から何度も出てくるパターンを見つけ出す、というものである。
最近では、これによって人間が行うよりも精度の高い犯罪予測や売上予測も可能となってきている。

例えば、その日の気温と売上のデータを両方取っていたとして、人間が「暑い日は清涼飲料水が売れる」という情報を与えていなくとも、過去の売上と気温のデータからこのパターンを見つけ出して売上予測の精度が上げるのが「機械学習」である。
人工知能の売上予測には、「暑い日はのどが渇くから」というような仮説はない。ただ単に、「今までの実例がそうなっているから」というだけの理由で売上を予測していくのが人工知能だ。

人間のような洞察や仮説がなくとも、膨大なデータからの経験知だけで人間を凌ぐ予測を行うのが近年の人工知能というわけだ。

スマホアプリ業界は、まずはアドテクから進化するか

さて、ここからが本題。このように膨大なデータから人間を凌ぐ将来予測を行う人工知能によってスマホアプリ業界がどう変わるか、を考えてみる。
人工知能の性質から、仮説を立てにくく経験知から判断する方が無難な領域から人工知能が役に立っていくだろうことは想像に難くない。

とすれば、まずはいわゆるアドテクに人工知能が導入されるのではないだろうか。
例えば、最適な広告の出し方やブースト期間など、現時点で既に経験知を元に判断しているような領域では人工知能が多くのアプリから情報を集め、それなりの精度で予測を立てられるようになれば開発者にとっては大いに心強いだろう。
また、アドテクのみならず、似たようなジャンルのゲームの過去の収益データから判断して、最適な UI デザインを人工知能に判断させることもできるかもしれない。

しかし、このような人工知能をサードパーティとして開発して、アプリ開発企業に販売するようなビジネスが成り立つかは微妙である。何故なら、自分のアプリ情報を踏み台にしてライバルが強くなる、という見方もできるため、既に売れているアプリはこの人工知能の導入を渋るはずだからである。
このような未来は、まずはアプリを多数リリースしている大手が自社用にこのような人工知能を開発する、というシナリオの方が妥当だろう。

構造が複雑で仮説が立てにくいアドテクのような領域では、人工知能が強いかもしれない。

将来的に人間は必要なのか?不必要なのか?

要するに、データをただ眺めていても仮説を立てにくい、だけど収益に確実に相関はありそう、というものに関して現状の人工知能は大きな力を発揮する。
ただし、人工知能は人間のような知能とは違い、あくまでもデータのパターン比較から判断をしているので、人工知能による発展はこれまでの流れを受け継いだものであることが多い。

いわゆる、突然変異的に非連続な発展を起こすことは苦手なのだ。
しかし、これは人工知能が扱えるデータ量が更に増え、より長いスパンで大量のデータを解析できるようになれば、「そろそろ突然変異が来る」というような予測もできるようになるのではと言われている。

となると、今後より進化した人工知能が普及して、ある程度の知的労働を人間の代わりにこなすようになった時に、それでもまだ確実に人間が必要とされる職は、いわゆる芸術のような定量化・定式化が難しい領域の仕事だろう。
人工知能はデータに基づく判断を下すので、数値として表現しにくい領域は苦手なのだ。
デザインも、工業的な意味でのデザインは人工知能にとって代わられるかもしれないが、芸術的なデザインの領域はまだまだ人工知能には難しいだろう。

現在のスマホ業界は、技術の進化によって構造的な変化が素早く、しかも非連続な発展を遂げているのでまだまだ人工知能にはハードルの高い業界かもしれないが、今後のことを考えると、芸術的なセンスを磨いておいて損はないのかもしれない。

▼参考リンク
感情認識パーソナルロボット Pepper(ペッパー)

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