NTTドコモのLTE-Advancedプロモーションワードロゴ

LTE-Advancedで200Mbps超えへ ~NTTドコモ、3/27より提供開始~

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by [2015年3月04日]

NTTドコモのLTE-Advancedプロモーションワードロゴ

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現在の(広義の)携帯電話では、CDMA2000系やW-CDMA系といった第3世代(3G)の通信方式と共に、LTE(Long Term Evolution)やTD-LTEと呼ばれる通信高速化技術による第4世代(※注1)通信方式が広く用いられています。

 ※注1:4G。LTEは本来厳密には第3.9世代と呼ぶべきストップギャップ(中継ぎ)技術規格だったのですが、現在では様々な事情から第4世代に数えられています。

このうちLTE方式は当初下り37.5Mbps(5MHz幅)あるいは75Mbps(10MHz幅)の通信速度でスタートし、途中で112.5Mbps(15MHz幅)へ通信に使用する周波数帯域を拡大することで通信速度の引き上げを図っていたのですが、当然ながらこの手法では通信速度の向上率が割り当てられた周波数帯域の増分に制限され、また同じ基地局・同じ周波数帯に既存のLTE非対応端末による3G通話のための帯域を確保するとなると、そのままではこれ以上の速度向上(=帯域割り当て)が困難です。

NTTドコモのLTE-Advancedサービス提供を告知するプレスリリース

NTTドコモのLTE-Advancedサービス提供を告知するプレスリリース

実のところ、LTEサービスの開始当初に下り最大75Mbpsを謳いながら、少なくないエリアで最大37.5Mbpsでの通信とならざるを得なかったのも、正にこの既存LTE非対応端末による通話・通信に利用するための周波数帯域を十分確保する必要があったためです。

この辺は基地局増加などで底上げ可能ですが、それにしても物理的な上限が存在し一定以上の速度向上を得ることができません。

そしてこのたび、NTTドコモがLTEを高度化させた次世代通信方式であるLTE-Advancedを採用し下り最大225Mbpsでの通信を実現する新サービスを2015年3月27日より提供開始することを発表しました。

LTE-Advanced、という言葉そのものは最近よく耳にするようになってきていますが、今回はこのLTE-Advancedについて考えてみたいと思います。

LTE-Advancedとは何ぞや

それでは、LTE-Advancedとは具体的にはどのような技術なのでしょうか。

先にも触れましたが、LTEによる通信速度向上は同じ基地局・同じ割り当て周波数帯に3Gの古い通信規格で通信を行う機器、具体的にはいわゆるガラケーが残存する限り、それらの機器のための帯域を確保せねばならないためもあって、必ず限界があります。

実のところ、これまで大手キャリア各社がスマートフォンユーザーに対して利用できる場合にWi-Fi接続を可能な限り利用するように(=通信をLTEからオフロードするように)Wi-Fiルーターの無償貸与キャンペーンまで行って促し、またそうしたLTE通信に対応するスマートフォンに最後に残った3G通信である音声通話をVoLTEつまりLTE通信による通話に置き換えをはじめ(※注2)、さらに必死になってガラケーユーザーにスマートフォンへの移行を促すキャンペーンを展開してきたのは、こうしたLTEの実効通信速度を維持/向上するための割り当て帯域確保が一因だったのです。

 ※注2:VoLTEが3G通信の削減を一つの目的としていることは、いずれのキャリアでもこの通話方式に対応するスマートフォンについて、3G通話機能を削除している=3G通話のない新しい料金体系としていることでも明らかです。

もっとも、スマートフォンのWi-Fi接続へのオフロードやVoLTEの導入はともかく、ガラケーのスマートフォンへの移行は先日ご紹介したAndroid搭載フィーチャーフォンAQUOS K SHF31の記事でもご紹介したように遅々として進んでいません。

2年縛りによる機種変更促進策を採ってもなお、日本国内で契約され使用されている携帯電話(スマートフォンを含む)の総数の半数以上に当たるおよそ6000万台が未だガラケーのままで、機種変更時にガラケーからガラケーへ移行する、あるいは一旦スマートフォンへ機種変更してもガラケーに戻すユーザーが後を絶たない状況なのです。

そのような状況下で、一つの周波数帯域でLTE系の通信に割り当てられる帯域の比率を変えずに現状のLTE以上の通信速度を確保するにはどうすればよいのかという問題の解決策として出てきたのが、LTE-Advancedと総称される新しい技術です。

もっとも、新しいと言っても既存の技術やアイデアをより高速な通信に援用した部分もあって、決して革新的で斬新なアイデアばかりというわけではないのですが、ともあれこのLTE-Advancedに含まれる主要な技術には、以下のようなものが含まれます。

・下り方向の通信において複数の不連続な周波数帯による通信を束ねて利用することで速度向上を図るキャリアアグリゲーション(Carrier Aggregation:CA)
・下りでは8 × 8,上りでは4 × 4と端末-基地局間で通信に用いるアンテナ本数を増やすマルチアンテナMIMO
・通信の送受信に用いるアンテナの指向性を高める(電波到達範囲を絞る)ビームフォーミング
・基地局で広範囲をサポートするマクロセルと狭い範囲をサポートするスモールセル、つまり異なる特性のセルを同じチャネルで展開するための異種混合ネットワーク(Heterogeneous Network:HetNet)
・1台の端末に対する通信を複数の基地局(マクロセルおよびスモールセル)で連携して行う事を可能にするセル間協調送受信(Coordinated MultiPoint Transmission and Reception:CoMP)
・自己組織化ネットワーク(Self Organizing Networks:SON)の導入による基地局配置の最適化

他にも幾つかあるのですが、一般的にはこのあたりの技術が既存のLTE通信との互換性を保ちつつ通信速度の高速化および安定化を実現するためのキーテクノロジーであると理解しておけばよろしいでしょう。

速度向上の鍵となるキャリアアグリゲーション

この内、単純に見て速度向上に一番「効く」技術がキャリアアグリゲーション(CA)であることは議論の余地がありません。

先ほどからくり返しているように、LTEでは一つの割り当て周波数帯域の中で、3G通信とLTE通信が混在しているためにLTE通信に全ての帯域を割り当てできず、そのため通信速度向上が頭打ちになっているわけですが、現在の日本の大手キャリアは概ね3つ程度の周波数帯を総務省から割り当てられて使用しています。

そしてCAは、一つの通信をそれら複数の周波数帯に分散/分割して送受信させる事で通信の実効速度向上を図る技術です。

つまり、普通のLTE通信で下り最大112.5Mbpsの通信しか行えない状況でも、2つの周波数帯を束ねて利用するようにすれば、道路で2車線を4車線に拡幅するように、同時に流せるデータ量を理論最大値でこれまでの倍に増大させることができるようになります。

今回のNTTドコモの発表で下り最大225Mbpsと謳っているのは、まさに112.5MbpsのLTE通信を2周波数帯で束ねて使用するからなのです。

なお、これと同時に将来的に下り最大300Mbpsへの速度向上を予告していることから、同社が通常のLTE通信で150Mbps、つまり20MHz幅での通信を行うことを計画していることもわかります。

一つだけでは得られる効果は小さい

もっとも、実はこのCAを含めLTE-Advancedに属する各種技術はそれぞれ独立して性能を発揮する性質のものではなく、それぞれを有機的に組み合わせて利用することで最大限の性能を発揮するようになっています。

今回のNTTドコモの発表では当然のようにCAが前面に押し出されているのですが、同時に一つの周波数帯で十分な利得を確保しつつより高い速度で通信を行おうと思えば少なくとも2つ目のマルチアンテナMIMOの技術は不可欠なわけで、LTE-Advancedでは決してCAだけで高速通信が実現するわけではないことは明らかです。

また、複数の端末がそれぞれ複数のアンテナを用いて通信するとなると相互干渉の問題が出てくる訳ですが、そのあたりを回避するにはビームフォーミングが有用で、また通信過密状態のエリアでエリア分割を行い、それぞれの基地局が担当するエリアを絞って複数端末の通信干渉による速度低下を最低限に抑制するためのアイデアであるHetNetや、この技術を導入した場合に問題になる、各セル(基地局)の境界付近での相互干渉による通信速度低下を抑止するためのCoMPや、そもそもそうした相互干渉に出にくいような基地局配置を自律的に行うためのSONも有用です。

ちなみにこのHetNetとCoMP、それにSONの組み合わせによる基地局密度の向上は、結果として一つのセルの担当するエリア内に含まれる端末の台数を削減することになるため、LTE通信に割り当てられる帯域をより大きくすることが期待できます。そのため、NTTドコモが予告しているようなCAなしでのLTEによる150Mbps通信実現も視野に入れられるようになるわけです。

つまりLTE-Advancedの目指す速度を実現するためには、これらの技術を全て網羅して対応しなくてはならないということなのです。

問題は山積みだ

以上のように、LTE-Advancedではいくつかの新しい技術を導入することで、LTEに対する上位互換性を保ちつつ通信速度の向上を実現します。

その点は大変に結構なのですが、この方式には幾つか問題があります。

最終的に、基地局配置の抜本的な再編と通信アンテナおよび各種機器の更新が必要で、しかも端末側もこの方式に対応するには(マルチアンテナMIMOのためのアンテナの増設を含め)結構大がかりな変更が必要になってくるのです。

基地局については、ここ数年HetNetの考え方によるスモールセル(※ピコセル(au)あるいはアドオンセル(NTTドコモ)などとも呼びます)の設置やそのためのSONの導入が各キャリアで進んでいたり、CA、マルチアンテナMIMO、あるいはビームフォーミングに必要な機材の導入が前倒しで行われていたりする(※注3)のでLTE整備時と同様に順次整備が進むものと考えられますが、問題は端末側です。

 ※注3:ここ数年の通信系の展示会では基地局機材を開発しているメーカーなどからこの種の技術に対応した製品の展示発表が相次いでおり、地上設備側の対応が順調に進んでいることを示しています。

何度も記したとおり、LTE-AdvancedはLTEに対する上位互換性を保って高速化を実現する技術であるため、LTE-Advancedのサービスが開始されたからといってLTEにしか対応しない端末のユーザーが何か害を受けるようなことは特にない筈なのですが、逆に言えば端末を対応機種に変更しない限り、ユーザーがその恩恵を受けることは全くといって良いほど無いということでもあります。

それを裏付けるように、今回のNTTドコモの発表では現在発売中の最新モデルを含む既存端末全てがこの新しい通信方式に対応しないことと、当面は2015年2月18日に発売になったばかりのモバイルWi-Fiルーター「Wi-Fi STATION HW-02G」のみがこの方式に対応することが示されています。

無論、それではほとんど意味が無いので、3月に同じくモバイルWi-Fiルーター「Wi-Fi STATION L-01G」を発売し、スマートフォンについてもこの方式に対応する機種を2015年度の早期に発売するとしています。

もっとも、サービス開始時点では1都1道2府18県でのみ実施、しかも一部では県庁所在地すらスルーされるという、直前の時点でのNTTドコモの基地局整備状況を反映したかのごときサービスエリアが示されていますから、自分の行動範囲がサービスエリアに含まれるようになるまでは特に無理をして機種変更やルーターの新規購入を急ぐ必要は無いでしょう。

将来に向けた重大な布石

以上、今回NTTドコモが導入を発表したLTE-Advanced技術についてみてきました。

実を言うと、LTE-Advancedに属するCA技術は2014年にauが先行導入して75Mbps(10MHz幅)のLTE通信を2周波数帯(※2.1GHz帯(band1)とN800MHz帯(band18))で束ねることで150Mbpsでの通信を実現していたのですが、こちらは「4G LTE CA」というブランディングで展開しており、LTE-Advancedという語を用いていません。また、このauのCAサービスは同年5月8日発表の新端末のほとんどの機種で対応として開始していました。

今回のNTTドコモの施策と比較すると、このauの施策はブランディングも機種対応も全く対照的な状況となっており、非常に興味深い差となっています。

当然ながら、CAなしで112.5MbpsのLTE通信を2チャネル束ねてCAで利用できるようにするには、ある意味技術的に「枯れた」75MbpsでのLTE通信を2チャネル束ねるauのサービスと比較して技術的なハードルが高くなるため同列での比較には意味が無く、またそうであればこそauがLTE-Advancedという語の使用をあえて避けた事情も見え隠れするのですが、ともあれここ数年各社で基礎研究が続いていたLTE-Advanced技術の本格的な導入が遂に始まりました。

もっとも、LTE-Advancedの最終的に目指す下り最大速度は3Gbpsだそうですから、NTTドコモが当面の目標としている下り最大300Mbpsでもその1/10にしかなりません

3Gbps通信を実現するにはCAで束ねる周波数帯の数を増やす必要があると考えられるため、限られた周波数帯を巡って各社が壮絶な争奪戦を繰り広げている現状を考えると、その実現は当分先の事になると思われますが、いずれにせよその布石となるサービスが始まるわけです。

今後のLTE-Advancedサービス拡充から目が離せません。

▼参考リンク
報道発表資料 : 国内最速となる受信時最大225Mbpsの次世代ネットワーク「LTE-Advanced」を提供 | お知らせ | NTTドコモ

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