東芝 SD-NFC32GA「NFC搭載SDHCメモリカード」の最大容量モデル。

Androidスマホをかざすだけで写真が確認できる? ~東芝、NFC搭載SDHCメモリカードを発売~

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by [2015年2月26日]

東芝 SD-NFC32GA「NFC搭載SDHCメモリカード」の最大容量モデル。

東芝 SD-NFC32GA
「NFC搭載SDHCメモリカード」の最大容量モデル。

デジカメなどの記録媒体として広く利用されているSDHCメモリカード。最近はより大容量なSDXCメモリカードの普及も始まっていますが、この規格はストレージに使用されるフォーマットのライセンスの問題(※注1)もあって、普及は思ったより進んでいません。

 ※注1:SDXCでは標準フォーマットとしてexFATが採用されているのですが、これはMicrosoftの保有する合衆国特許を基礎としており、同社からのライセンス供与が必須です。そのためもあって、低価格スマートフォンやカードリーダーなどでは技術的には(micro)SDXCに対応可能でも、そうしたライセンスに必要なコストを嫌ってあえて対応規格を(micro)SDHC止まりにしているメーカーが少なくありません。

実際のところ、動画保存ならばSDXCクラスの大容量メディアが欲しいシーンはいくらでもあるのですが、静止画保存であればメディア紛失のリスクはあるものの、無理に高価なSDXCメモリカードを1枚使用するよりも、複数枚の廉価なSDHCメモリカードを利用した方がコスト面でも入手性などの点でも有利です。

ニコン D750 SDメモリカードスロット部以前のデジタル一眼レフカメラではコンパクトフラッシュが主体であったが、近年は入手性がよく性能も向上したSDHC/SDXCメモリカードに対応するスロットをダブル搭載する機種が増えてきている。

ニコン D750 SDメモリカードスロット部
以前のデジタル一眼レフカメラではコンパクトフラッシュが主体であったが、近年は入手性がよく性能も向上したSDHC/SDXCメモリカードに対応するスロットをダブル搭載する機種が増えてきている。

例えばデジタル一眼レフカメラの上位機種では、ニコンD750のようにSDメモリカードスロットを2スロット搭載して順次記録や空き容量のある方のメモリカードに保存する機能を搭載した機種も存在していますから、こうした使途ではよほど特殊な条件を求められない限り、無理をしてSDXCメモリカードを選ぶ必要は無いと言えます。

むしろデジカメ市場の状況を考慮すると、先に述べたような事情でSDXCメモリカード非対応の機種が少なくないことから、SDHCメモリカードには今なお確固たる需要が存在していると言えます。

恐らく、そうした市場の状況を考慮したのでしょうが、先日東芝 セミコンダクター&ストレージ社から「NFC搭載SDHCメモリカード」として「SD-NFC08GA」、「SD-NFC16GA」、それに「SD-NFC32GA」の3機種が発表されました。

今回はこれら「NFC搭載SDHCメモリカード」と、その周辺事情について考えてみたいと思います。

主な仕様

今回発表された「NFC搭載SDHCメモリカード」3種の主な仕様は以下のとおりです。

  • 容量:8GB(SD-NFC08GA)・16GB(SD-NFC16GA)・32GB(SD-NFC32GA)
  • インターフェイス:UHS-I
  • スピードクラス:UHS Speed Class 1(UHS-I)・Class 10(SD)
  • NFC:NFC Forum Type3 Tag準拠
  • 周波数:13.56MHz

UHS-I対応かつスピードクラスがUHS(Ultra High Speed)-Iモードと通常のSDモードの双方で最速クラスとなっていることから、連写などで高速記録が求められるデジカメをメインターゲットとすることがわかります。

ちなみに、SDモードのClass 10はその数字が示すとおり未使用状態のメモリカードで10MB/sの連続書き込み速度を最低限保証することを意味し、UHS-IのSpeed Class 1も同様に10MB/sの最低保証レートを意味します。

つまり、これら3種のメモリカードは書き込む機器=デジカメなどのインターフェイス部分の性能さえ十分ならば、ほぼ確実に10MB/s以上の速度でデータを書き込めるメモリカードであるということになります。

ちなみに、Blu-ray Discのビットレートは音声やシステムデータ込みで最大でも54Mbps、つまり約7MB/s強といったところですから、フルHD解像度のMPEG2 TSで圧縮された(あまり圧縮効率の高くない)動画データでも駒落ちなく保存できる性能が保証されているわけです。

そのため、これら3種のメモリカードは(動画では1ファイルあたりのサイズ上限が気になるものの)フルHD解像度動画と高解像度静止画のいずれを撮影する際にも十分な性能を発揮できると言えます。

SDメモリカードにNFC機能を搭載する意味

さて、今回のこれら「NFC搭載SDHCメモリカード」(※ちなみにこれが正式なシリーズ名です)では、その名のとおりメモリカードにNFC機能が搭載されています。

今まで、SDカードにはBluetoothや無線機能、GPS、PHS通信、果てはデジカメ機能を搭載した機種まで存在していましたが、実は今回の「NFC搭載SDHCメモリカード」はそれらと決定的に違っているところがあります。

「Memory Card Preview」画面イメージ何と言ってもかざすだけで保存されている画像のサムネイルが(わずかな枚数とは言え)表示されるのがありがたい。

「Memory Card Preview」画面イメージ
何と言ってもかざすだけで保存されている画像のサムネイルが(わずかな枚数とは言え)表示されるのがありがたい。

それは、これまでの「メモリカードでない」SDカードが基本的にSDIO規格というSDスロットを汎用のデータ入出力スロットとして利用するための規格に準拠して設計された製品=SDメモリカードスロット経由で接続された機器からそれらの機能が認識・利用できる構造であったのに対し、この「NFC搭載SDHCメモリカード」は少なくとも通常のSDメモリカードスロットに挿して認識させる範囲では、先に触れたような規格のSDHCメモリカードとしてしか認識されないような構造となっていると推定されるためです。

つまり、これらのカードに内蔵されているフラッシュメモリは、SDHCメモリカードとしてアクセスするためのインターフェイスと、NFC機能により無線通信を行うためのインターフェイスにそれぞれ独立して接続されていると推定されます。

そうすることで、専用の対応アプリである「Memory Card Preview」をインストールし、NFC機能搭載かつOSとしてAndroid 4.0~4.4を搭載するスマートフォンをこれらのメモリカード上にかざすだけで、保存された一部の撮影画像データのサムネイル表示や撮影開始日や最終撮影日の表示などが、特にメモリカードリーダーなどを使用することなく行えるようになっています。

「この中から(急いで)お目当ての1コマを探さなくてはならない」となって途方に暮れた経験のある方も少なくないのではないだろうか。

「この中から(急いで)お目当ての1コマを探さなくてはならない」となって途方に暮れた経験のある方も少なくないのではないだろうか。

SDに限らず写真撮影用メモリカード、いや往古のネガフィルムやポジフィルムの時代から、どの記録媒体にどんな写真が撮影されていたかを確認するのは大変に手間のかかる作業で、実際筆者も撮影から自室に戻って、多数の現像の終わったフィルムやメモリカードの束を抱えて途方にくれたことが何度もありました(※注2)。

 ※注2:SLブームやブルトレブーム、あるいはF1ブームなどの時代から三脚付き一眼レフカメラを、それも複数の交換レンズと共に担いで撮影地を行脚されてきた方には、恐らくあの幾ら探してもお目当ての1コマが見つからないという絶望的な気分を味わったことのある方が少なくないと思います(そう思いたい)。

そうした自身の経験を踏まえると、NFC機能必須で対応スマートフォンが限られるとはいえ、SDHCメモリカードにスマートフォンをかざすだけでアプリ上からそのメモリカードに保存された画像の一部のサムネイルや、そのメモリカードを使って写真撮影した時期が確認できるというのは、涙が出そうなほどうれしい機能であると断言できます。

無論、読み出しを行うスマートフォンが発生する磁界による電磁誘導でフラッシュメモリに対するアクセスや通信に必要となる電源を確保するNFCの仕組みから、保存された全ての画像のサムネイルを表示するのはほぼ不可能に近いようですが、それでも1枚か2枚でも撮った画像が確認できれば、それだけでもお目当てのメモリカードを判別する作業の効率は格段に向上することになります。

ちなみに、今回の製品でSDXCメモリカードにこの機能を搭載していないのは、恐らくこのサムネイル表示機能に原因があると推測できます。

というのも、SDXCメモリカードの場合、ストレージの論理フォーマットとしてexFATだけでなく、SDHCと同じFAT32にも対応していることから、NFCによるサムネイル読み出しの際には2種の異なるフォーマットに対応させる=回路構成が複雑化する必要が出てくるためです。

もっとも、筆者の感想としてはSDXCメモリカードをFAT32でフォーマットして使うというのは他に予備のSDHCメモリカードがない場合などの緊急避難的な使い方でしかありません。

そのため、SDXCメモリカードについてはexFATフォーマット時しかサムネイル表示や撮影時期の確認ができません、としてしまえばそれで済むような気もしますが、製品を作る側としてはなかなかそうも行かない/両フォーマット対応としなくてはいけないのでしょうか。

メモリカードメーカの生き残り策だが実に有用

以上、東芝の「NFC搭載SDHCメモリカード」について見てきましたが、これはメモリカードにおいて非常に有用な付加価値機能であると断言できます。

半導体の製造プロセスルールの縮小(シュリンク)の進展によって1チップあたりのデータ容量が飛躍的に増大した昨今のフラッシュメモリ事情から、メモリカード1枚あたりの容量が(ストレージのフォーマットによって)制限され、あるいはライセンスの問題から容量増大による付加価値訴求が難しくなっていることは恐らくメモリカードメーカー各社にとって非常に歯がゆい事態なのだと思います。

それはつまり、ことSDHCメモリカードにおいては全体として低価格化競争の場とならざるを得ないことを意味しており、中には先日携帯音楽プレーヤーでハイレゾ音源データを保存し再生する際の高音質を謳うmicroSDXCメモリカードを発表したソニーのように、別の方向性を模索する動きも少なくありませんが、現在のメモリカード市場ではかつての販売価格を知る者からすると驚愕の低価格でSDHC/microSDHCメモリカードが販売されています。

そうした状況を踏まえて考えると、これまでにない、そしてデジカメのストレージとしてSDHCメモリカードを使用するユーザーにとってはこれ以上無いほどに有用な新機能を付加価値として提供するこの「NFC搭載SDHCメモリカード」は、一様に低価格化路線に走ってしまったSDHCメモリカード市場に大きな一石を投じる試みであると言えます。

しいて言えば、今後競合各社から同種のNFC機能搭載SDHCメモリカードが発売されたとして、それぞれで別のアプリでないと情報取得できない/相互に互換性がない状態になることが危惧されますが、これまでのSDメモリカードでの規格化の歴史を考慮すると、そうした状況に陥る可能性は低いと考えられます。

また、NFC機能を必要とすることから、スマートフォン市場で大きなシェアを占めているApple iPhoneではこの機能が利用できない、ということになります。

現行最新のiPhone 6およびiPhone 6 PlusではNFC機能が搭載されているが、日本国内向けではこの機能は一切利用されていない。

現行最新のiPhone 6およびiPhone 6 PlusではNFC機能が搭載されているが、日本国内向けではこの機能は一切利用されていない。

iPhoneではようやくNFC機能が搭載されたもののApple Payによるクレジットカード決済サービスに利用されるだけ(しかも国内ではサービス未展開)という状況ですから、短期的にはこのサムネイル情報などを参照する機能が利用できるようになることは望み薄です。

元々iPhoneにせよiPadにせよ、Appleの製品はSDメモリカードと縁のないデバイスでしたから、NFC+SDメモリカードというこの製品にもご縁がないということなのでしょうが、あるいは今後この「NFC搭載SDHCメモリカード」(およびその他社製同等製品)が広く普及するようになってくれば、iPhoneにも普通のNFC機能が搭載されるようになるのかもしれません。

いずれにせよ、競合他社を含め今後の動向が特に注目される期待の製品です。

▼参考リンク
世界初、NFC搭載SDHCメモリカードの発売開始について | 02 | 東芝 セミコンダクター&ストレージ社

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