OLYMPUS AIR A01色はホワイトとブラックの2色が用意される。

OPCはカメラの未来を拓くか ~オリンパス、OPC Hack & Make Project~

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by [2015年2月13日]

OLYMPUS AIR A01色はホワイトとブラックの2色が用意される。

OLYMPUS AIR A01
色はホワイトとブラックの2色が用意される。

ここ数年のスマートフォンの急激な高性能化で最も大きな打撃を受けたのがデジタルカメラ(デジカメ)であることは、ほぼ間違いないでしょう。

事実、ここ数年カメラメーカー各社が発売するデジカメ、特にコンパクトデジカメ(コンデジ)は例えばミラーボックス搭載のフルスペック一眼レフに迫る高画質であるとか、新しい撮影スタイルの提案であるとか、スマートフォンの内蔵カメラにない「何か」を模索する動きが鮮明になっていて、通り一遍の機能・性能・デザインの機種では市場競争力が得られなくなってきています。

また、こうしたカメラ単独でのクオリティ向上を追求する動きがある一方で、スマートフォンとの共存・連携を目指す動きも現れてきています。

例えばそれはカメラ本体へのWi-Fi通信機能の搭載→撮影した画像データのスマートフォンへの転送機能の搭載が代表例なのですが、その方法論の行き着く先に、ほぼレンズとセンサー部分、ストレージ、それにWi-Fi通信機能を組み合わせて単独の商品とした、つまりそれ単独では撮影のためのファインダーを搭載しない、レンズスタイルカメラという新しいジャンルがあります。

これは2013年秋に発売開始されたソニーの「QXシリーズ」が典型なのですが、ファインダーや画像処理などカメラとしての機能の一部をスマートフォン(の液晶ディスプレイ)に肩代わりさせることで、新しい可能性を見いだそうというものです。

このソニーの「QXシリーズ」は当初そのあまりに身も蓋もないというか、割り切った仕様故に戸惑いを持って受け入れられたのですが、それなりに売れているようでここ1年少々の間に各社から似たような製品がぽつぽつ現れています。

そんな中、このほどオリンパスから「AIR A01」として、こうしたレンズスタイルカメラの新機種が発表になりました。

実はこの機種、昨年9月よりオリンパスが進めてきた「OPC Hack & Make Project」というプロジェクトの産物という位置づけになっていて、このプロジェクトでは「新しい映像・写真体験の開拓」を謳っています。

そこで今回は、量産製品化されても実験臭の漂うこの「AIR A01」およびその母体となった「OPC Hack & Make Project」について見てみたいと思います。

AIR A01の仕様

公開されている「AIR A01」の主な仕様は以下のとおりです。

  • 形式:マイクロフォーサーズ規格準拠レンズ交換式カメラ
  • レンズマウント:マイクロフォーサーズマウント
  • 寸法:
    • 56.9mm × 57.1mm × 43.6mm(CIPA準拠 突起部含まず)
  • 重量:
    • 約147g(CIPA準拠 付属充電池おおよびメモリカード含む)
  • 撮像センサー:
    • センサー形式:4/3型Live MOSセンサー
    • 画素数:カメラ部有効画素数 16.05メガピクセル・総画素数 約17.2メガピクセル
    • アスペクト比:1.33(4:3)
  • 露出制御:
    • 測光方式:TTL撮像センサー測光)
    • 測光範囲:EV -2~20(17mm F2.8 ISO100相当)
    • 標準出力感度:ISO 200~12800
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  • シャッター:
    • 形式:電子式
    • シャッター速度:1/16000秒~4秒
  • 記録媒体:
    • microSDメモリカード:SHHC・SDXC・UHS-I対応
  • 入出力:
    • USB:マイクロUSBコネクタ(USB 2.0対応)
    • Wi-Fi:IEEE 802.11 b/g/n
    • Bluetooth:Bluetooth Smart対応
  • センサー:
    • 水準器:2軸
  • 充電池:
    • 種類:リチウムイオン二次電池
    • 容量:未公表
AIR A01本体のみの状態レンズ交換式のため、本体はセンサーやバッテリーなどを収めた鏡胴にマイクロフォーサーズ規格準拠のバヨネット式レンズマウントを組み合わせた部分のみとなる。

AIR A01本体のみの状態
レンズ交換式のため、本体はセンサーやバッテリーなどを収めた鏡胴にマイクロフォーサーズ規格準拠のバヨネット式レンズマウントを組み合わせた部分のみとなる。

この「AIR A01」は単体ではレンズが備わっておらず、マイクロフォーサーズ規格準拠の交換レンズを別途装着する必要のあるレンズ交換式カメラです。

マイクロフォーサーズ規格に対応する交換レンズは、この規格を提唱したパナソニックとオリンパスの二社が結構がんばってレンズファミリーを整備しています。そのため、アオリレンズのような特殊なものを別にすると、最低限必要そうな画角・開放絞り値のレンズは揃っています。

また、この規格はコンパクトなミラーレス一眼カメラを前提としていたことからミラーボックスがない分レンズ後端のフランジバック(マウント面から撮像素子までの距離)が短くてレンズ設計の自由度が高く作りやすいのか、他の既存各種マウントからの変換アダプタが多数発売されており、ライカM/RマウントやオリンパスOMマウント、ニコンFマウント、それにペンタックスKマウントなど主立った規格の各社製レンズが利用可能となっています。

この規格ではセンサーの寸法が17.3mm×約13.5mmの4/3型(これがフォーサーズ(Four Thirds)という規格名の由来となっています)で他社が採用しているAPSサイズや35mm判サイズのセンサーより小さいので、レンズ本来の設計焦点距離より長い焦点距離となるという制約があります。

また給電系の供給可能な電力量が比較的小さいため、消費電力の大きな超望遠レンズなどの利用を前提として設計されたキヤノンEFマウント対応レンズでは外部給電を行わないと動作が厳しく、そうでなくともカメラボディ内蔵のモーターでオートフォーカス機構を駆動するタイプのレンズなど様々な制約からオートフォーカスが使えないレンズが少なくありません。

とはいえ、対応するアダプタさえ持っていれば大概の古物レンズが制限付きながら利用できるというのはこの規格の大きなメリットです。

もっとも、この手のアダプタがたくさん用意されるようなマウント規格、あるいは各社共同提案の共通マウント規格というのは趣味的には大変興味深く、また楽しくもあるのですが、つまるところ自前でレンズファミリーをフルラインナップさせることのできる体力あるいは資産のないメーカーの苦肉の策という側面があって、カメラメーカー最大手で充実したレンズファミリーを提供しているキヤノンとニコンの二社は、例えば自社で新規格を発表する際に旧規格レンズを利用可能とするためのアダプタを提供するようなこと(※注1)はあっても、他社製レンズを利用可能とするためのアダプタを提供することはまずありえません。

 ※注1:実際、ニコンはミラーレス一眼カメラのNikon 1シリーズでNikon 1マウントという新マウントを採用した際に、既存のFマウント用レンズを利用可能とするための変換アダプタ(マウントアダプターFT1)を提供しています。

このあたりは色々面倒なトレードオフの関係が成り立つのですが、とりあえずはこのAIR A01が(対応する変換アダプタさえ持っていれば)交換レンズの揃いに困ることはまずないと理解しておけばよろしいでしょう。

額面上のスペックでは見えないもの

さて、このAIR A01、カメラ単独の性能で見ると、上に記したように実効画素数16メガピクセルで、他の規格で一般的なAPSフィルムサイズのセンサーよりも小さな4/3型センサーを搭載するマイクロフォーサーズ規格準拠であるため、正直それほど高性能というわけではありません。

実際、現行機種で言えばソニーのXperia Z3などは画素数20メガピクセルの裏面照射型CMOSセンサーを搭載しているのですから、解像度的にはそれらよりも低いわけで、撮影条件によってはそれらに完敗しかねないスペックであると言えます。

しかし、このAIR A01に限らず一般的なデジカメには、スマートフォン内蔵のカメラでは真似のできない重要な特徴があります。

それは、絞り値(レンズを通過する光の量)を変更できるため、被写界深度、つまりピントの合っている奥行きの範囲を調整できることです。

基本的にスマートフォン内蔵のカメラは(絞り機構が複雑でしかもレンズの鏡胴部長さを長くしてしまうことを嫌って)レンズの絞り値が開放値で固定されていて、撮影時に被写界深度を変えることができません(※注2)。

 ※注2:絞り値を変えられないレンズ/カメラモジュールで撮影した画像の被写界深度を変えるには、メインのカメラモジュールに加えてサブのカメラモジュールを搭載し、三角測量の要領で被写界深度を計算・処理させるHTC J butterfly HTL23のような手法をとる必要があります。

また筐体の厚さの制約などからレンズ面からセンサーまでの奥行き(長さ)を大きくとれないため、必然的に画角が広角になりがちです。

広角のレンズで被写界深度を深く取るとやけに平板な写真になってしまうため、実用を考えると開放絞り値で使うほかない、という話もあるのですが、ともあれスマートフォンの内蔵カメラでは絞り機構は省かれていて画角が広角で固定(ズームはデジタルズームでソフトウェア的な拡大縮小により対応)のレンズを搭載するのが普通です。

そのため、スマートフォンのカメラは例えば鉄道車両の形式写真撮影で尊ばれるような「隅々までびしっとピントの合ったシャープな、それでいて適度に奥行き感のある写真」を撮るのはまず無理な話で、また逆に例えば人物のポートレートなどで適度な「ボケ」を意図してコントロールした写真を撮る、といった作業を行うのもかなり難しい、ということになります。

実際、一眼レフなどをお使いの方なら既にお気づきのことと思いますが、よほど特殊な機種を除くと、スマートフォンのカメラにはAE、つまり露出の自動制御(Automatic Exposure)のモード選択メニューが一切なく、シャッタースピードとセンサーの感度、それに色調やエフェクトなどを選択するくらいしかできないようになっています。

つまりデジカメが、内蔵カメラの高性能化が急速に進みつつあるスマートフォンに対して優位性を謳うには、この露出制御を生かした高機能ソフトウェアを開発・搭載するといった戦略が必要になります。

「OPC Hack & Make Project」という試み

OPC Hack & Make Project 公式サイト

OPC Hack & Make Project 公式サイト

そのあたりのことをオリンパス自身認識していたのかどうか、同社は昨年秋より「OPC Hack & Make Project」と称して、AIR A01の前身にあたるOpen Platform Camera(OPC)のプロトタイプを用いて各地でタッチ&トライイベントを行い、自社の持つ技術をオープンにし、さらに「Olympus Camera Kit for Developers」というOPCの接続・制御のためのソフトウェア開発キットや、「Olympus Camera Kit for Creators」としてOPCの外形および接合部の3Dデータを提供したり、といった形でこのカメラを利用するためのアプリやこのカメラに装着して利用するアクセサリ類を開発するためのツールやデータの提供を行う、という実験的なプロジェクトを開始しています。

このプロジェクトが始まってまだ半年も経っていないこのタイミングで、このOPCプロトタイプの量産製品に当たるAIR A01の発売に踏み切ったのは、実機がないと開発がはかどらないという事情もあったのでしょう。

このAIR A01については、スマートフォンと組み合わせてカメラとして利用する上で必要な、あるいはカメラを利用する上であった方が望ましい8本の基本的なアプリ(下記)がオリンパス自身によって提供されています。

  1. OA.Genius 被写体を自動識別し一度に6枚のピント、露出、それに画像処理を変えた写真を撮影できる
  2. OA.ArtFilter オリンパスのデジカメに搭載されているアートフィルター機能を移植し撮影時にこれを使えるようにする
  3. OA.ColorCreator 色彩や彩度、明るさを撮影時に自由に調整できる
  4. OA.PhotoStory 撮影シーンに合ったフレームを選択し、フレームの分割選択やアートフィルターを選択して複数の写真を撮影、フレーム指定に合わせて1枚に合成することでストーリー性のある写真撮影を可能にする
  5. OA.ModeDial AEのモード指定や露出補正、ホワイトバランス、ISO感度設定に対応し、本格的なデジタル一眼カメラのような操作をスマートフォンで実現する
  6. OA.Clips 撮影した複数のショートムービーをつなぎ合わせて1つの作品に仕上げる
  7. OA.Viewer 撮影した写真をスマートフォンで閲覧・編集する
  8. OA.Central OLYMPUS AIRを使うための基本アプリ

それぞれの機能が示すように、撮影とフォトレタッチ、動画編集の3つの機能をそれぞれの対応するシチュエーションに合わせて適宜組み合わせたような構成となっています。

恐らく、オリンパス自身は短期間で魅力的な応用アプリやアクセサリが出てくることは期待していなかった/期待しにくいことを理解していたためにこうした基本的な、あるいは基本の枠すら超えるようなアプリを用意したのではないかと筆者は推測しますが、ともあれこのAIR A01と8本のメーカー提供アプリ、それにそれらのアプリをインストールした対応スマートフォンを揃えれば、少なくとも現在の一般的なデジカメで可能な機能はほぼ全部網羅して対応できることになります。

強いて言えば、フラッシュ機能への対応が明言されていないことが気にかかりますが、最近のスピードライト(ストロボ)ではWi-Fi接続によるリモート同期に対応する機種が結構増えているため、固定方法に色々問題がありそうですが対応は可能でしょう。

むしろ、そうしたリモート同期対応タイプのスピードライトに対応するアプリの開発やクリップオンタイプのスピードライトをAIR A01本体に固定するためのシュー付きアクセサリの製作を行うようなユーザーが現れることこそがオリンパスの、そして「OPC Hack & Make Project」が期待していることなのではないでしょうか。

筆者が思い付くだけでも、ユーザー個人個人の手のサイズに合わせてカスタマイズされたトリガー式シャッターボタン付きグリップであるとか、2台のAIR A01本体をマウントするステレオ写真撮影用アダプタであるとか、あるいはOculus Riftのようなヘッドマウントディスプレイ(HMD)と接続して通信することでHMDに撮影画像をリアルタイムで表示させるためのアプリおよびハードウェア(これがあればボトムズごっこができるなぁ、などと筆者は思ったのですが)であるとか、アプリもアクセサリも自由に開発できるように仕様がオープンにされ開発環境が提供されているのならば、この種のカメラはいくらでも遊びよう、工夫のしようがあるように思います。

メーカー標準価格がAIR A01のボディ(本体)だけで33,800円(税込36,504円)、ボディと一般的な14-42mm EZレンズがセットになったレンズキットでも49,800円(税込53,784円)ということで意外と安く設定されていますから、これなら複数台買って色々試すのもありなのではないでしょうか。

▼参考リンク
OLYMPUS AIR A01 | オープンプラットフォームカメラ | オリンパス
オリンパス ニュースリリース: アプリで楽しむ一眼画質、オープンプラットフォームカメラ「OLYMPUS AIR A01」を発売
オリンパス OPC Hack & Make Project

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